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今年4月に新設された龍谷大学の心理学部は「人と人とのつながり」にフォーカスし、社会の現場で役立つ「実践」を意識した学びを提供。人と人との関係から生まれる現代社会の課題を解決へ導く人材育成を目指す。そうした理念のもと、学生は順調に成長しているようだ。商社マン・経営コンサルタントとして活躍した経験を持つ水口政人教授にその学びの特徴を教えてもらうと、社会で活きる心理学の本質が浮かび上がってきた。
聞き手 井沢 秀(大学通信)
―心理学部が新設されて数カ月がたちました。文学部臨床心理学科の時代から教壇に立たれている水口教授から見て、学生の雰囲気はいかがですか?
全体的に元気で積極的な学生が多いことが龍谷大学の心理学部生の特徴だと思います。特に第1期生ということで、自分たちが歴史を作っていくということを喜び、意気に感じて楽しんでいる雰囲気が伝わってきます。そうしたフロンティア精神を強く感じた場面は、1学期に学んだ内容をベースにしたプレゼンテーション大会です。各クラス対抗で実施したところ、非常に盛り上がりました。細かいことは設定せず、来年度以降に入ってくる学生に向けたメッセージをテーマにしたのですが、各チーム趣向をこらして気合いが入ったプレゼンになりました。
人と人とのつながりを重視した「学び」の仕掛け
―先生の授業を拝見させていただいたところ、大人数のクラスの中で3人ずつ見知らぬ学生同士が組んで議論し、発表するというスタイルが特徴的なものでした。龍谷大学の心理学部は心理学の基礎を学ぶだけでなく、実習や演習中心でコミュニケーションスキルを獲得することを重視しているともお伺いしたのですが。
大学生は大学に来て何を欲しているか、と考えると、「一緒に過ごす仲間が欲しい」というのは大きいと思うんです。特に今の学生は直接的なコミュニケーションを取る機会に恵まれていないところがあります。ITが発展すればするほどオンラインで済むことも増えて、人と接する機会がどんどん減っている。その中でやはり接点を増やしてあげたい。
私の授業ではほぼ毎回、ランダムに座席を発表します。その中で必ずコミュニケーションを取る時間を確保します。学生の友達作りを支援するという目的もありますが、クラスの仲が良くなると発言もしやすくなります。顔見知りが多くなると初めて、自由に自分の考えを発信する安心感も生まれてくると思います。この点は企業でも大学でも一緒だと思います。
―つまりコミュニティがしっかりできたうえでの「学び」ということですか?
これだけ情報入手が容易になっている世界で、座学で知識を教えるというのはもう大学の中心とする学び方ではないと思います。そこは各自でやって、それを持ち寄って、どう自分の言葉で発信するか。その発信に対して周囲からどういうフィードバックが返ってきて、どこが褒められ、どこに問題点があると指摘されるのか。そこが「学び」だと思っています。
人間関係あるところすべて心理学の活きるステージ
―カリキュラムの特徴についてお伺いした際、社会における心理学の活用法を伝える、つまり心理学は社会で役に立つということを意識してもらうというお話がありました。それを踏まえて龍谷大学心理学部の学びの特徴を教えてください。
世の中一般に捉えられている心理学という学びの中でも特に人間関係、人と人とのつながりに重点を置いている傾向があります。人と人とのつながりの中で学びを深めていく。もう1つ、常に実践が意識されているというのも特徴でしょう。心理学部の教員は実践経験がある人が多くいます。難解なテキストをしっかり読み解くというより、実務の中で「心理学をこうやって使うんだよ」「心理学はこんなに役に立つんだよ」、ということを語ることができる先生が多くいるのです。
―リアルな「今」の心理学を学ぶということですね。
保護者の方も含めて心理学部に入ってくる学生が一番気にしていることって「心理学で食べていけるの?」ということだと思うんです。心理学はいわゆるカウンセラーのような仕事はもちろんですが、産業の分野でも大いに活躍できると考えています。
―先生はビジネス心理学を専門とされていると思いますが、いわゆる社会一般、サラリーマンになって心理学はどのように活かせるのでしょうか?
例えば会社への入社ですが、窓口となる人事部がどういうところを見ているか、また自分のどこがアピールできるところなのか、という点で、自己分析をしてきた量というのは心理学部の学生は圧倒的に多いと思います。また、入社してから同僚や同期、上司や先輩とのやりとりは日々生じます。心理学部で鍛えられた学生というのは、相手がこういう時に何を考えているかな?ということを考える習慣があると思います。自分の立ち位置からだけではなく、相手の立ち位置からの自分やこの場を見る習慣です。これは企業や組織の中だけでなく、お客様とコミュニケーションを取るうえで大いに活きてきます。
―つまり組織を円滑に回していけるスキルということですね。
心理学部では入学初年度からキャリアに関する科目を学べます。一般的なキャリア教育に加え、専門的な学びの成果を活かしたキャリアを考えるものです。例えば1年次に履修する必修科目の「キャリアと心理」では自己のあり方を見つめ、心理学部での学びと社会のつながりを理解するとともに、人と人とのつながりを深く理解し他者への共感力を持って行動する人間の育成を目指しています。
また、さまざまな業界で働く企業人の方から、社会の中で心理学がどのように活用されているのか、心理学にどのような期待が寄せられているのかを学ぶ科目や、地域社会の諸問題を実践的に探求する課題解決型学習の中で社会における心理学の学びの意義を実感することを目的とした科目などが開講されています。
―心理学を学ぶことで、あらゆる場面でコミュニケーションの中心的存在になれるということが見えてきました。
学ぶ知識であったり、スキルであったりというのはどんどん陳腐化していくと思うんです。すぐ手に入るし、誰かに聞けば分かることですから。でも、それを運ぶ、人と人とをつなぐ能力というのは検索サイトや生成AIで習得できるものではない。それを身につけて実践している人というのは、高速で進歩している技術の波とは別の枠にいるような気がします。
「人と人とのつながりを深く理解し、共に行動する人間を育む」ことが学部の目的であり、本学の先生は、人と人のつながりによるコミュニケーション力を身に付けることを重視していることが大きな特徴です。人とつながるために自らを知る「内省」も重視しながら、「心理的安全性を高められる人」を社会に送り出したいですね。
―最後に高校の先生や生徒にむけたメッセージをお願いします。
心理学部に興味がある学生は自分の心を中心に「心」に興味があって、カウンセラーなどで活躍するというイメージを持った学生が多いと思います。でも、それだけじゃないよ、と伝えたいですね。例えば企業の中で活躍するために心理学を学ぶこともできる。社会のあらゆるステージ、人間関係のあるところすべての場面で活かせる心理学ということを、ぜひ伝えたいですね。