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國學院大學は、1882(明治15)年に設立された、神職養成と古典研究を主とする研究教育機関「皇典講究所」を母体とする。1世紀以上にわたる伝統の「知」のもと、輩出した教育者は1万人以上を数え、常に次代を担う多彩な人材を育成している。2022年4月には、現在の5学部12学科に加えて新たな学部設置をめざす、國學院大學の歴史とその学びに迫る。
“三つの慮い”を具現化する2つの都市型キャンパス
國學院大學の学びは、「伝統と創造」「個性と共生」「地域性と国際性」という“三つの慮い”を軸に展開される。違いを理解し、認め合い、尊重し合える力を育むことを使命とし、古きに学びながら未来の新たな価値を創造する人材の育成をめざす。
國學院大學の源流であり、日本古来の文化や民族性、歴史の延長線上にこそ国家の発展があると位置づけた皇典講究所の姿勢には、現代人が学ぶべき点も多い。日本の本質・真髄に対する理解を深めたうえで、グローバル社会を生き抜くための素養を磨く点に同大の特色がある。
拠点となるキャンパスは、渋谷と横浜たまプラーザの2つ。渋谷キャンパスは各線「渋谷駅」徒歩約13分、恵比寿駅や表参道駅からも徒歩圏内という好立地だ。貴重な史資料が所蔵されている図書館や博物館に加え、神殿なども併設された機能的なキャンパスは、若者文化と伝統文化が共存し、再開発も活発な「渋谷」という環境も含め、学生の好奇心を大いに刺激してくれるだろう。
また、横浜たまプラーザキャンパスは人間開発学部のメインキャンパスであり、渋谷からのアクセスも便利な東急田園都市線「たまプラーザ駅」徒歩約5分。緑豊かで穏やかな空気が流れるなか、音楽教室やリトミック室、最新機器が取り揃えられた運動施設など、学修環境も充実している。2022年設置構想中の観光学部(仮称)の学生も、このキャンパスで4年間を過ごすことになる。
「共通教育プログラム」で複眼的な思考プロセスを獲得
次に、5学部の学びについて見ていきたい。
國學院大學の歴史と伝統を直に継承してきたのは[文学部]だ。日本人としての自覚と教養の修得に主眼を置きつつ、国内外の歴史や言語、文化、思想、芸術に関する知見を深めていく。また、文学部と独自性の双璧をなすのは[神道文化学部]。国内外の宗教や文化と比較しながら、神道の価値を深く理解していく。[法学部]は、価値観が多様化し、人間関係が複雑化した現代社会に対応する幅広い教養と、法学・政治学の専門知識を修得。[経済学部]は、グローバル経済や地域経済、組織マネジメント、会計までを幅広く学び、日々変化する社会での実践力を磨く。そして、教育・保育・健康管理の現場などで求められる教育者を養成するのが[人間開発学部]。
これらの学部別に「専門教育科目」が用意される一方で、より主体性をもって学ぶことで自立した「大人」への成長をめざすのが、学部横断型の「共通教育プログラム」。これは、「学問知」に加え、「技能知」や「実践知」、そして「市民的教養」が身に付く体系的な教育プログラムとなっている。日本文化への理解を深める「國學院科目群」、社会生活に必要な能力を獲得する「汎用的スキル科目群」、複眼的にものを見る力を養う「専門教養科目群」、そして、社会的教養の基礎を身に付ける「総合科目群」の4つの科目群で構成され、「知能・技能」「思考力・判断力・表現力」「主体性を保持しつつ、多様な人々と協働して学ぶ態度」という3分類全12項目の能力向上を目標として設定されている。
2022年4月設置構想中 観光学部観光まちづくり学科(仮称)
國學院大學では、2022年4月に「観光学部観光まちづくり学科(仮称)」の設置を構想している。その背景にあるのは、人口減少に転じた日本における地域社会消滅への危機感である。地方では少子高齢化で過疎化が進み、以前から地域経済の衰退が危惧されてきた。そこで必要となるのは、歴史や文化、伝統、自然環境など地域固有の資源を守り、「観光」という切り口で有効活用できる人材。そして、持続可能な地域社会を構築するための実践力をもつ人材だ。地域の魅力を見つけ、守り、そして観光や産業振興に結びつけることで、経済的にも価値のある資源へと転換する事業企画力をもつ人材の育成が新学部のミッションだ。
多様な切り口で地域の“引力”を最大化
観光学部(仮称)のカリキュラム上の特長は、少人数での演習科目のほか、学外とのネットワークも活用したフィールドワークやインターンシップなどの課題解決型、実践・提案型の学びにある。その際のツールとなる統計やデータサイエンス、デザインの手法など、先端的なテクノロジーを学ぶ基盤科目群も充実し、文理融合の学びが展開される。
また、1・2年次には、歴史・文化的な地域資源や自然資源を守る「地域環境」の管理手法のほか、公共政策や都市計画といった「地域社会」のマネジメント手法、より具体的な観光事業計画や経営・マーケティング戦略といった「地域経済」の振興につながる手法を学ぶ。これらが各地域の資源を総合的に保全・活用するための計画力や、地域の独自性や魅力を観光客の誘致や産業振興に直結する経済的な価値へと昇華させる事業企画力・構想力の基礎となり、3年次以降に生かされる。
また、こうした多様な領域で豊富な知見をもつ教員が多彩に集結する点も魅力。卒業後の進路は観光業界に限らず、公務員や地域密着型の企業、NPO、観光情報を発信するマスコミ関連企業など、幅広い可能性が考えられる。
広く深く、学生本位のキャリア支援を推進
國學院大學では、キャリアサポート課、たまプラーザ事務課、教職センター、神道研修事務課の4つの拠点でキャリア支援を展開。専門知識をもつ職員やキャリアアドバイザーのほか、就職活動を終えた学生も「内定者アドバイザー」として相談に乗り、一般企業から公務員、教職・保育士、神職まで、希望する進路に応じてサポートを行う。働く人のリアルな様子を知ることのできる「業界別体験イベント」や、大手優良企業の担当者が多く来校する「企業セミナー」など多様なプログラムが用意され、職員もエアラインや金融など業界別に担当が分かれていることも特長的だ。
さらに、同大のキャリア支援で特筆すべきは、職員の行動力。数百社にも及ぶ企業の採用実績を過去に遡って分析し、経営の健全性や働きやすさなども考慮したうえで「國學院生にチャレンジしてほしい企業260社」を抽出。これら優良企業へのエントリーを検討させながら、企業を見る目を養わせる仕組みを整えた。さらには、その260社すべてに職員が訪問。学内イベントへの招致をはじめ、学生と優良企業との接点づくりに注力している。これらは、2016年以来のキャリアサポート改革の一環であり、近年は、学生1人あたりのエントリー数・インターンシップ参加数がともに倍増以上となり、学生がより積極的に就職活動に取り組むようになったことがよくわかる。
國學院大學は2022年に創立140年を迎える。その歴史は、母体である皇典講究所から人文・社会科学系の総合大学へと飛躍した歴史であると同時に、たえまない挑戦と改革の歴史だと言えるだろう。新学部設置をはじめとする現在進行形の挑戦と改革によって、グローバル化が加速する現代社会を担う、多彩な人材の育成に期待したい。