東洋大学に聞く 2023年入試にみられた特徴は

東洋大学に聞く 2023年入試にみられた特徴は

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入試改革のフロントランナー
東洋大学 理事・入試部長 加藤建二氏に聞く

高等教育は国策であるから、その入り口である大学入試はその時々の施策に大きく影響される。例えば、総合型選抜や学校推薦型選抜など年内入試の比率が高まっているのは、多面的な評価を求める文部科学省の方針を反映したものだ。では、2023年入試はどのような傾向があったのか、東洋大学理事・入試部長の加藤建二氏に聞いてみよう。合わせて、現在の大学入試のトレンドに対する東洋大学としての考え方や、今後の展望についてもお伺いしている。

私立大学入学生の半数以上が年内入試の合格者に

―2023年入試を総括して、どのような特徴がありましたか。

現在の大学入試の大きな傾向は、従来型の一般選抜よりも、総合型選抜や学校推薦型選抜などの年内入試の比率が年々高まっていることです。最新の調査によると、22年入試では私立大学の入学者のうち15.7%が総合型選抜、41.7%が学校推薦型選抜での合格者だったそうです。知識・技能に加えて思考力や主体性など、いわゆる“学力の3要素”に基づく多面的な評価を求める文部科学省の方針に沿ったものですから、この流れは今後ますます進んでいくと思います。

―既に私立大学の入学者のうち、年内入試の割合が半数を超えているのですね。東洋大学としては、このことについてどうお考えでしょうか。

確かに一部の難関大学においては、総合型選抜や学校推薦型選抜で合格した学生の方が大学入学後の成績が良いというデータがあるようです。入試の時点で高度な知識・技能に加えて、総合的な能力を発揮して合格した学生ですから、当然のことかもしれません。ただ残念ながら、すべての大学が理想通りの入試ができている訳ではないようです。早めに進路を決めたい受験生の思惑や、一定の入学者数を確保したい大学側の思惑が重なり、各大学とも年内入試の定員を増やしています。その結果、前提となる知識や技能を軽視し、小論文やプレゼンテーションの力だけを磨いて大学に入学しているケースも見受けられます。このような知識・技能を軽視する傾向には抗いたい思いがあり、本学では一般選抜での入学者比率が64%程度と他大学に比べて高い割合となっています。

入試科目に込められた大学からのメッセージとは

―教科科目の学習の重要性を忘れてはいけませんね。

一般選抜においても同様です。多くの大学が1教科型や2教科型など軽量化した入試を導入し、志願者を集めています。本学では逆に、4教科型や5教科型などの多教科型入試、文系学部での数学必須入試、英語外部試験利用入試など、受験生にとって負担感のある入試の割合を増やしています。これは大学で学問や研究をするためには幅広い知識や技能が必要であるということと、高校時代に地道に勉強をする習慣を身につけておいてほしいということを示す、本学から受験生へのメッセージでもあります。これらの方式を開始した当初は志願者が減少することを懸念する意見もありましたが、今ではどの方式も多くの志願者を集めています。

―貴学のメッセージが受験生たちに少しずつ伝わった結果かもしれませんね。入試方式に関すること以外で、23年の入試になにか特徴はありましたか。

23年入試の大きなトピックとして、文部科学省の通知により、定員管理のルールが変更されたことがあります。16年以降徐々に定員管理が厳格化され、22年時点では収容定員8000人以上の大規模大学について、入学定員を基準とし、定員の1.1倍を上回る入学者となった場合、補助金が減額または不交付となる罰則が設けられていました。それが23年からは入学者ではなく1~4年生までの在学生数が基準となり、経過措置として23年は収容定員の1.3倍、24年は1.2倍、25年以降は1.1倍まで可となったのです。つまり、今年に関しては事実上の緩和で、多めの合格者を出す大学も少なくありませんでした。ただ、来年以降は徐々に定員管理が厳しくなる上に、入学者数だけでなく留年者数や中退者数なども考慮する必要が出てきます。定員管理はこれまで以上に難しくなり、今年ほどには多くの合格者が出ない可能性があるので注意が必要です。

―東洋大学の今後の展望についても教えてください。

17年の開校以来整備をし続けてきた赤羽台キャンパス(東京・北区)について、23年に福祉社会デザイン学部と健康スポーツ科学部を開設し、ようやく完成を迎えました。福祉社会デザイン学部は社会福祉学科、子ども支援学科、人間環境デザイン学科の3学科体制で、それぞれ異なる視点から福祉にアプローチしていきます。また、これからの高齢化社会で福祉と同じく大切になるのが健康です。健康スポーツ科学部は健康スポーツ科学科と栄養科学科の2学科体制で、運動と栄養の両面から健康な社会を作り上げていきます。赤羽台キャンパスにはIoT(モノのインターネット)やAI(人工知能)、データサイエンスを学ぶ情報連携学部もありますから、3学部で連動して新しい時代のシステム作りを担う人材を輩出したいというねらいがあります。

また、24年には板倉キャンパス(群馬・板倉町)と川越キャンパス(埼玉・川越市)にあった学部学科を再編しながら移転し、朝霞キャンパス(埼玉・朝霞市)に集約させる予定です。近年は学部を置いていなかった朝霞キャンパスですが、生命科学部と食環境科学部の2学部を擁する、“命と食が輝くスマートキャンパス”として新生させる予定です。

朝霞キャンパスイメージ図 ©㈱石本建築事務所
赤羽台キャンパス HELSPO HUB-3

―最後に、進路指導教諭へのメッセージをお願いします。

冒頭にお話ししたことの繰り返しになりますが、総合型選抜や学校推薦型選抜など年内入試への流れは今後さらに加速していくでしょう。そこで心配なのが、生徒たちが安易にそちらへ流れ、教科科目の勉強を疎かにしてしまうことです。4教科や5教科をしっかり学んでおけば国公立大学を含め、選択肢の幅を広げることができます。高等学校の先生方におかれましては、生徒の皆さんが自らの選択肢を狭めてしまうことないよう、上手に導いていただけることを願っています。

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