ミディアムサイズと100年の伝統がもたらす財産 多方面に張り巡らされた〝つながり〟が学生を力強くサポート―甲南大学

ミディアムサイズと100年の伝統がもたらす財産 多方面に張り巡らされた〝つながり〟が学生を力強くサポート―甲南大学

100年を超える伝統を持ち、10万人以上の卒業生を世に送り出してきた甲南大学。実業界や社会福祉事業などで活躍し、文部大臣も務めた創設者・平生釟三郎が掲げた「人格の修養と健康の増進を重んじ、個性を尊重して各人の天賦の特性を啓発する人物教育の率先」という教育理念を体現し、経済界でリーダーとして活躍している卒業生も数多い。近年はキャリア教育・就職支援プログラムが大きな成果を上げており、2020年3月卒業生の実就職率は93.7%を達成。これは卒業生2000人以上の大学では全国8位、近畿では2位だ。高い就職力は、どのように実現されているのか。キャリアセンター所長を務める杉山善浩経営学部教授に話を伺った。

全国的なネットワークときめ細かなサポートを両立させる「ほどよい規模感」

―甲南大学のキャリア支援プログラムの特徴を教えてください。

キャリア支援に関してはさまざまな取り組みを行っていますが、ポイントとしては次の5つがあげられます。すなわち、①1年次からの支援、②一人ひとりに対する徹底的な支援、③内容が充実した就職情報検索システム、④卒業生によるバックアップ、⑤首都圏での就職活動支援です。

これらのなかでも本学らしさが発揮されているのが、まずは②の一人ひとりに対する徹底的な支援です。本学は8学部14学科を擁する総合大学でありながら、全学生数は8800人あまりという「ミディアムサイズ」の大学です。教員1人あたりの在学生数は31.6人。この規模感ゆえに、学生の希望や悩み、就職活動の状況について把握しやすく、また、それらに応じたきめ細かい支援を行っています。

④の卒業生によるバックアップも特徴的です。本学の同窓会組織は非常にしっかりとしています。そして、「後輩たちを支えてあげたい」という思いを持った卒業生が数多くいらっしゃいます。例えば就職活動にあたっては、OB・OGに大学へお越しいただき、ご自身の仕事内容や仕事のやりがいをお話しいただく「OB・OG懇談会」というイベントを行っています。ここでは、「仕事とは、社会人とは」という、先輩たちが体験してきたリアルで熱のこもった話も披露していただいています。企業による説明会とはまた違った話のため、学生生活に対する意識を高めたり、就職活動のモチベーションを高めたりする学生も多いです。同窓会組織は地元・神戸だけでなく全国で活動しているので、UターンやIターン就職を考えている学生にとって心強い存在になっています。

ミディアムサイズならではの教員と学生とのつながり。卒業生とのつながり。このように考えると、本学の就職力は多方面での「つながり」が支えていると言えるかもしれません。また、学生の能力伸長を可視化する「ジェネリックスキル測定成長分析」、学修成果や課外活動の実績などを記録して目標設定や教職員によるアドバイスに活かしていく「KONAN学修ポートフォリオ」、社会で必要とされる実践的応用能力の修得を目指した科目群である「キャリア創生共通科目」、各種免許取得のサポート体制など、キャリアセンターのみならず全学的な取り組みも、就職力を支える特徴的な取り組みです。

―首都圏での就職活動支援について教えてください。

東京駅から徒歩1分というアクセス抜群の場所に「ネットワークキャンパス東京」を構えています。学内ネットワークに接続したパソコン環境を整えているほか、学生に就職活動中の休憩スペースや着替えの場所を提供しています。学生を首都圏に連れて行ってキャリア支援を行うツアーも開催しています。「就活先取り体感ツアーin TOKYO」「業界・企業研究in TOKYO」といったプログラムで、これらは3年次を対象に開催しています。内容は、OB・OGとの懇談会や企業訪問などです。首都圏の大学生を交えたグループディスカッションや企業説明会もこれらのツアーに合わせて行っています。例年、これらのプログラムには50~100人の学生が参加しています。

学部や教員との連携、学生同士の良好な人間関係が高い就職把握率を支える

――地元の企業との関係構築についてはどのような取り組みをされているでしょうか。

本学学生の約8割は兵庫県や大阪府の出身で、地元での就職を希望する学生も多くいます。そこで、地元企業を学内に招いて企業説明会を開催するなど、活発な支援を行っています。企業の方からは、「甲南大学の卒業生は非常にコミュニケーション能力が高い。初対面でもスムーズにコミュニケーションが図れる」という評価をいただいています。この評価に今後も応え続けられるよう、学生が人間性を磨くサポートをすることも、企業との関係構築という点で大切な取り組みだと考えています。

―高い就職率の背景には、大学による進路把握率の高さがあると思います。進路把握のために力を入れていることはありますか?

ここでも大きな要因となるのは「ミディアムサイズ」という本学の規模感です。例えば進路届を提出していない学生がいたとすると、私たちはその学生に直接電話をかけて状況をたずねます。学校の規模が大きいと、そこまですることは、なかなか難しいと思います。

ミディアムサイズであることは、キャリアセンター職員と学生との距離を近くするとともに、学生同士の距離も自然と近くなります。私たちはよく学生に、「友だちで就職が決まっていない人がいたら、キャリアセンターに連絡するように言ってあげて」と声をかけています。そうすると、実際に多くの学生が友人に伝言してくれます。学生同士が良好な人間関係を築いているからこそ、このような状況となります。

キャリアセンターと学部や教員との関係性も、把握率を押し上げる大きな要因です。キャリアセンター職員は、学部ごとに「担当」を設けており、学部の事情に応じた情報提供や困りごとへの相談など、きめ細かな対応が可能になっています。また、各学部のゼミなどにキャリアセンター職員が出向いて「出張キャリアガイダンス」を行うこともあります。ここでは、ゼミの内容に合わせてカスタマイズした情報を提供するとともに、ゼミ生から寄せられるピンポイントの質問にも答えるようにしています。これらの取り組みの結果、学部の先生方もキャリアセンターの取り組みや就職活動のあり方に理解を深めてくれるため、結果、進路把握率の向上につながっています。ときには、就職活動が思うように進まない学生をゼミの先生が心配し、キャリアセンターへ連れてきてくれることもあります。これは、学部との連携の成果を象徴している事例だと言えるでしょう。

学生の「主訴」に目を向けながら、自立を促す支援を行う

キャリアセンターのオフィスがあるiCommons

――キャリア支援において個人面談が果たす役割は大きいです。甲南大学において、個人面談時の対応で気を付けていることがあれば教えてください。

学生の「主訴」をしっかりとキャッチするように注意しています。主訴とはカウンセリングの用語で、相談者の発言の奥に潜む本当の悩みや要望のことです。例えば、「履歴書はどこでもらえますか?」という相談に来た学生がいるとします。この相談に対する答えは、「生協で購入できますよ」などになるでしょう。ただ、学生は履歴書を何らかの目的で必要としているのです。そこに思いを巡らせ、「就職活動に使うのですか?」「就職活動の進み具合はどうですか?」などと声をかけてみます。そうすると、「実は……」と言って本来の悩み、すなわち主訴を話してくれるケースがあるのです。こういったやり取りから、個人面談につながったり、ガイダンスなどのイベント参加につながることもあります。

もちろん、学生が抱えるすべての悩みを職員がくみ取り、解決することが学生の力を高めるとは限りません。学生が自分で悩み、自分で解決することも非常に重要です。ですから私たちは、主訴を見つめたうえであえてすべてを解決するのではなく、学生の自立を促すというバランスの見極めを常に心がけていると言えます。

2019年度には、のべ4860件の個人面談を行いました。これは、前年度から約600件の増加です。本学では2017年度以降、個人面談の件数が年々増加しています。この背景には、同年に完成した、学びや課外活動など、学生生活を充実させる複合施設iCommonsの存在が大きく関係していると考えています。このiCommonsに、キャリアセンターもオフィスを構えています。学生が日常的に利用する場所にキャリアセンターがあることが、センター利用の促進と個人面談の件数増につながったのではないでしょうか。

コロナ禍の現在、個人面談はオンラインで行っています。オンライン面談の仕組みは以前から準備を進めていたのですが、今回のコロナ禍をきっかけにして利用が加速しました。今後もオンライン面談の周知を図り、「いつでもどこでも」というオンラインならではの利便性を活用してもらいたいと考えています。

―甲南大学の良さを教えてください。

やはりミディアムサイズという規模感です。キャンパスを歩いていたら親しい友人や先生に出会え、温かい笑顔を見ることができる。コロナ禍にある今だからこそ、このありがたさを強く感じます。また、多様な学生と交流できることも、総合大学ならではの魅力ですね。

―最後に、受験生にメッセージをお願いします。

いま皆さんにとって、「どの大学に入るか」は最大の関心事だと思います。もちろん第一志望の大学に進学できるに越したことはありませんが、多くの社会人が「どの大学に行くかより、大学時代をどのように過ごすかが大切」とおっしゃっています。ですから皆さんには、主体的に目標へ向かってチャレンジする学生時代を送ってもらいたいです。この点において、甲南大学は充実した環境だと自信を持って言うことができます。受験校選びの際にはぜひ、「どのような学生時代を送ることができるか」という視点で大学を見てみてください。

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