少子高齢化、グローバル化、情報化社会―急激に変わりゆく社会に対応できる人材養成が進む

少子高齢化、グローバル化、情報化社会―急激に変わりゆく社会に対応できる人材養成が進む

閉塞感から脱しきれない、日本社会を変革する人材養成が大学に求められている。
そうした中、大学改革のトレンドは、理系人材やデジタル人材、グローバル人材の養成。
具体的な大学の動きについて、24年度の状況を検証してみよう。

文 井沢 秀(大学通信)

生産年齢人口の減少や国際競争力低下などによる、日本社会の閉塞感を打破する人材養成が急務とされる。その大きな役割を担う大学の改革状況を、「主な大学の学部学科改組・入試変更点」にまとめた。表には、筑波大や千葉大、お茶の水女子大、熊本大、東京理科大など難関大が多い。中でも注目されるのは、東京工業大と東京医科歯科大の統合により開設を目指す東京科学大(仮称)で、工科系と医科系トップ大学間の医工連携に期待がかかる。

東工大の改革には、総合型選抜と学校推薦型選抜における女子枠創設もある。日本の将来を担う人材養成に向けて協議する「教育未来創造会議」の第一次提言には、女性の理系人材養成が盛り込まれ、東工大以外にも多くの大学で理系学部の女子枠設置が進む。

すでに名古屋大・工や芝浦工業大など女子枠を設けている大学は多い。24年度も東京理科大が総合型選抜(女子)を新規実施するなど拡大が進む。女子大も動いており、22年度の奈良女子大・工に続き、お茶の水女子大が共創工を新設。日本女子大は建築デザインを新設予定だ。男社会の古い体質の日本企業が閉塞感を打破できなかったのは事実。今後は優秀な女子が増えることによるイノベーション創出に期待がかかる。もちろん、理系人材は、男女を問わず求められており、京都府立大の農学食科と生命理工情報、麗澤大・工などの共学大も新設予定だ。

新設される理工系学部の学科を見ると、お茶の水女子大の文化情報工学科や、京都府立大・生命理工情報の理工情報学科、麗澤大・工の情報システム工学専攻など、教育未来創造会議の提言に盛り込まれた、デジタル人材養成の文脈が色濃く表れている。情報系学部の新設も多く、千葉大の情報・データサイエンスや千葉工業大・情報変革科、明治学院大・情報数理、福岡工業大・情報工の情報マネジメント学科などがある。

理系学部や情報系学部以外では、グローバル人材の養成を目指し、実践女子大・国際や甲南大・グローバル教養など、国際系の新設も進む。社会の変革期を支える人材養成のため、有名大学の改革も数多いので、進路指導の参考にしていただきたい。

2024年度入試
主な大学の学部学科改組・入試変更点

国公立大

大学名 主な変更点
茨城大 地域未来共創学環を新設
筑波大 マレーシア(クアラルンプール)に学際サイエンス・デザイン専門学群を新設
宇都宮大 データサイエンス経営学部を新設
埼玉県立大 保健医療福祉学部の後期日程を廃止
千葉大 情報・データサイエンス学部を新設
お茶の水女子大 共創工学部(人間環境工学科、文化情報工学科)を新設
東京医科歯科大 東京工業大学と統合し「東京科学大学」(仮称)を開学予定
東京工業大 東京医科歯科大学と統合し「東京科学大学」(仮称)を開学予定。総合型選抜・学校推薦型選抜の募集人員を増枠し「女子枠」を新設。24・25年度で計143人の募集枠となる
東京海洋大 海洋工学部の前期・後期日程において、英語外部試験・検定試験の受験を出願要件から削除
富山大 経済学部(昼間主)は現行の3学科を「経済経営学科」1学科に、理学部は現行の5学科を「理学科」1学科に、それぞれ改組
富山県立大 情報工学部(情報システム工学科、知能ロボット工学科、データサイエンス学科)を新設
金沢大 理工学域(除く物質化学類、生命理工学類)の総合型選抜で女子枠特別入試をを新規実施
山梨大 工学部は現行の7学科を「工学科」1学科に改組。工学部(除く総合工学枠)で学校推薦型選抜Ⅰを新規実施
都留文科大 文学部(比較文化学科、国際教育学科)を教養学部(比較文化学科、国際教育学科)に改組
三重大 生物資源学部は現行の4学科を「生物資源学科」1学科に改組
豊橋技術科学大 総合型選抜を廃止
京都大 経済学部特色入試の理系型で、英語外部試験・検定試験の受験を出願要件から削除
京都府立大 生命理工情報学部(生命化学科、理工情報学科)、農学食科学部(農学生命科学科、栄養科学科、和食文化科学科)、環境科学部(森林科学科、環境デザイン学科)を新設
兵庫教育大 総合型選抜を新規実施
岡山大 教育学部学校教育教員養成課程で学校推薦型選抜Ⅱを新規実施
広島大 薬学部薬科学科で後期日程を新規実施
下関市立大 データサイエンス学部を新設
周南公立大 経済経営学部、人間健康科学部(スポーツ健康科学科、看護学科、福祉学科)、情報科学部を新設
山口東京理科大 工学部に医薬工学科を新設
高知工科大 データ&イノベーション学群を新設
熊本大 情報融合学環を新設。工学部に半導体デバイス工学課程を新設
大分大 経済学部は現行の4学科を「総合経済学科」1学科に改組
鹿児島大 農学部は現行の3学科を「農学科」1学科に改組。共同獣医学部獣医学科を共同獣医学科に名称変更、共同獣医学部に畜産学科を新設

私立大

大学名 主な変更点
国際医療福祉大 成田薬学部(薬学科)を新設
千葉工業大 情報変革科学部(情報工学科、認知情報科学科、高度応用情報科学科)、未来変革科学部(デジタル変革科学科、経営デザイン科学科)を新設
麗澤大 経営学部と工学部を新設
大妻女子大 全学部の一般選抜A方式Ⅰ期において、英語外部試験・検定試験のスコア利用が可能になる
芝浦工業大 工学部は、現行の9学科を5課程9コースに改組。「理工系女子特別入学者選抜」を実施
実践女子大 国際学部を新設。人間社会学部に社会デザイン学科を新設。現代社会学科をビジネス社会学科に名称変更
順天堂大 浦安・日の出キャンパス(千葉県浦安市)に薬学部を新設
成蹊大 理工学部エリアの再開発で24年秋に文理融合のコラボスペースが誕生
東京工芸大 工学部情報コースを「データサイエンス」「AI・コンピュータサイエンス」「画像・写真応用」の3分野にリニューアル
東京理科大 3学部16学科で、「総合型選抜(女子)」を新規実施
東洋大 生命科学部と食環境科学部が学科改組。朝霞キャンパス(埼玉県朝霞市)に移転
日本女子大 建築デザイン学部を新設
武蔵野大 ウェルビーイング学部を新設
明治学院大 横浜キャンパス(横浜市戸塚区)に情報数理学部を新設
神奈川大 外国語学部(除く英語英文学科GEC、中国語学科)、国際日本学部、法学部、経済学部、人間科学部で共通テスト利用入試後期を新規実施
北里大 新潟キャンパス(新潟県南魚沼市)に健康科学部(看護学科、医療検査学科)を新設
フェリス女学院大 総合型選抜Ⅱ期を新規実施
椙山女学園大 外国語学部(英語英米学科、国際教養学科)、情報社会学部(情報デザイン学科、現代社会学科)を新設。人間関係学部人間関係学科を人間共生学科に改組
中部大 人文学部コミュニケーション学科をメディア情報社会学科に改組
京都女子大 心理共生学部を新設。文学部英文学科を英語文化コミュニケーション学科に名称変更
立命館大 情報理工学部と映像学部は大阪いばらきキャンパス(大阪府茨木市)に移転
大阪経済大 国際共創学部を新設
関西外国語大 外国語学部に国際日本学科を新設
阪南大 国際学部(国際コミュニケーション学科、国際観光学科)、経営学部、総合情報学部を新設
甲南大 グローバル教養学環を新設
神戸女学院大 心理学部と国際学部(英語学科、グローバル・スタディーズ学科)を新設。全学部(除く音楽表現学科)で総合型選抜後期を新規実施
武庫川女子大 文学部に歴史文化学科を新設
広島修道大 人文学部人間関係学科を社会学科に改組
久留米大 医学部に医療検査学科を新設
福岡工業大 情報工学部システムマネジメント学科を情報マネジメント学科に改組
立命館アジア太平洋大 全学部の一般選抜英語重視方式において、英語外部試験・検定試験のスコア利用が可能になる

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