新学長が語るこれからの方向性理系学部をさらに強化―関西学院大学

新学長が語るこれからの方向性理系学部をさらに強化―関西学院大学

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関西屈指の私立総合大学であり、政治・経済・文化・スポーツなど各界で活躍する多数の卒業生を社会に送り出している関西学院大学。同学の新学長に4月1日、森康俊教授が就任した。これを受けて4月19日、森学長は就任記者会見で所信を表明した。AIをはじめとした技術のさらなる進化、コロナ禍からの回復、そして人口減少と、大学を取り巻く社会情勢は目まぐるしく変化している。また2039年には、同学は創立150周年という節目の年を迎える。このようななか、森学長はどのように舵取りを行うのか。記者会見の模様をレポートする。

取材 井沢 秀(大学通信)   
文 松本守永(ウィルベリーズ)

理系学部のこれから

森 康俊学長
1967年大阪生まれ。1993年に大阪市立大学法学部を卒業し、1996年に東京大学大学院社会学研究科で修士号を取得。東京大学大学院人文社会系研究科で博士課程単位取得退学。
2003年に関西学院大学社会学部社会学科の専任講師に、2014年には教授に就任する。また、関西学院大学社会学部の学部長や、同大学の先端社会研究所の所長を務める。
研究テーマは、メディア・コミュニケーション、テクノロジーの社会への影響、危機管理。著書には、『メディア・情報・消費社会』(世界思想社、2009年)、『日本人の情報行動2020』(東京大学出版会、2021年)などがある。

関西学院大は2021年4月、理学部、工学部、生命環境学部、建築学部の理系4学部を新設した。理系人材の育成は政府が掲げる方針であり、多くの大学が力を入れている取り組みでもある。そのなかでも関西学院大学は、特色ある教育・研究を進めている。

森学長 環境やエネルギー、健康福祉、貧困や格差など、現代社会には課題が山積しています。国連はSDGsを掲げ、先進国・開発途上国を問わずにこれらの課題を解決するための取り組みを進めています。こういった社会背景を踏まえて誕生した理系4学部を発展させることは、私に課せられた大きな使命だと考えています。

全国的に、理系の受験生は国公立大学を志望しがちです。特に関西ではその傾向があります。そのなかで私立大学にはどのようなことができるのかを発信することは、非常に重要なテーマです。待ったなしで取り組むべきテーマでもあると認識しています。本学では理系学部が拠点を置く神戸三田キャンパス(KSC)をSustainable Energyの一大研究拠点と位置付け、工学部物質工学課程の吉川浩史教授を所長としてSustainable Energyインスティテュートを設立しました。同インスティテュートには理学部化学科の田中大輔教授や工学部電気電子応用工学課程の大屋正義准教授など、学部や学科・課程を越えた研究者が参画し、研究を推進しています。KSCでは文系学部である総合政策学部も一体となり、文理分野横断の学びと研究を実施しています。垣根を越えたシナジーでイノベーションを起こそうというのが、理系4学部を含めた本学の目指す姿です。

キャンパスを飛び出し、学外と連携した取り組みではすでに注目すべき成果が出ています。工学部の金子忠昭教授が開発した技術で、次世代パワー半導体材料SiC(炭化ケイ素)基盤内の欠陥を無害化する表面ナノ制御プロセス技術「Dynamic AGE-ing®」を実用化し、工業化を加速することを目的として、豊田通商と今年3月、共同で研究開発会社「QureDA Research株式会社(キュレダリサーチ)」を設立しました。同社の取り組みは、電動化が進む自動車産業などでカーボンニュートラルに貢献することが期待されています。また同時に、「私立大学の理系はここまでできる力があるのだ」と社会に認知してもらうきっかけになるものと考えています。

KSCでは2025年の完成を目指して、学生寮を併設したインキュベーション施設の準備が進んでいます。この施設はベンチャー企業やスタートアップ企業の拠点になると同時に、学生が先端的な技術および企業経営を実践的に学ぶ場となる予定です。これもまた、本学理系学部ならではの大きな特色となります。

神戸三田キャンパスで整備が進められる学生寮併設のインキュベーション施設

国際教育

2020年に新型コロナウイルス感染症の感染拡大が本格化したことを機に、海外留学を取り巻く状況は全国の大学で一変した。それから3年が経ち、日本でもようやく「ウィズコロナ」のフェーズを迎えた。全国の大学が“仕切り直し”とも言える状況を迎える今、関西学院大学はどのように国際教育に取り組むのだろうか。

森学長 本学は1889年にアメリカ人宣教師が設立したという経緯もあり、早くから国際教育に力を入れていました。2018年度には、協定に基づく日本人学生派遣数が最も多い大学にもなりました。

コロナ禍が一定の落ち着きを見せた現在の状況ですが、中国、台湾、韓国という近隣諸国・地域からの正規留学が再開しました。欧米諸国からの学生も戻ってきています。このようななか、私が期待している取り組みの1つが学生寮における国際交流です。本学西宮上ケ原キャンパスの近隣には、外国人留学生が暮らす学生寮があります(※1)。ここには、日本人学生も暮らしています。日本人学生は、日常的な交流を通して海外生活や留学先での寮生活を疑似体験できます。もちろん、語学力を磨くこともできます。そのことが、留学を検討している学生の背中を押してくれたり、より充実した海外での学びの基礎となってくれるでしょう。

海外からの学生受け入れも今以上に進めていきます。特に力を入れたいと考えているのは、インドをはじめとした南アジア地域です。この地域では、経済発展に伴って高等教育へのニーズが高まっています。いっぽうで、地理的な関係もあって、欧米への留学はハードルが高くなりがちです。そこで受け入れ先になり得るのが、日本です。計画を進め、積極的に環境を整えていきたいと考えています。

本学では、国連や外交分野で活躍する人材の育成を目指したプログラムに取り組んでいます(※2)。コロナ禍では、オンラインを活用した国際教育のノウハウも得ることができました。これらの特色を継続・発展させながら、本学ならではの国際教育に取り組んでいきます

神戸三田キャンパス

研究と教育

大学には研究と教育という2つの大きな役割がある。両者のバランスをどのように位置付けるかは大学がそれぞれに持つ個性の1つである。森学長からはこの点についても言及があった。

森学長 私は常日頃から先生方に、「私立大学は教育がうまく回るからこそ、研究もうまく回る」と言っています。これは、研究がうまく回ることで教育が回っていく国公立大学とは大きく異なる点です。私立大学において教員がベストなパフォーマンスを発揮すべき場所は、まずは教室です。先生方の魅力あふれる指導によって多くの学生が集まり、大学が物心両面で活力を増していきます。それが結果として、豊かな研究につながるのです。この考え方を多くの先生方と共有し、同じ方向を見つめて進んでいきたいと考えています。

幸いなことに文系学部では、本学の教育の質の高さは広く認知いただいています。その結果、研究もハイレベルなものが展開されています。この状態を維持、あるいはさらに高めていくことが文系学部に期待していることです。理系学部においても「教育が研究を豊かにする」という流れを生み出し、力強いものにしていくことが目標です。

教育の質を追求するにあたっては、具体的な指標を設定する必要があります。本学では「質の高い就労」がそれにあたります。質の高い就労とは、就職率が高いという意味だけにとどまりません。学生が納得する企業へ進むことができたかという「内定先の満足度」など、さまざまな角度から学生1人ひとりと向き合い、その人らしいキャリアを実現することこそが質の高い就労です。私たちは質の高い就労を本学における教育の成果が「見える化」したものだと考え、今後も一層の取り組みを進めていきます。

これからの関西学院大学

人口減少に代表されるように、大学経営をめぐる状況は決して楽観を許さない。そのようななか、規模ではなく質を追求し、時代に即した適正な姿の大学を実現していきたいと森学長は語る。

森学長 本学は近年、入試改革に取り組んできました。本学の傾向として、かつては総合型選抜をはじめとした推薦入試で入学する学生の割合が高かったです。それを改め、一般選抜による入学者数の割合を増やすことを目指しました。試験日程や試験の方式の工夫などの努力が実を結び、2023年度は一般入試による入学者数が50%を超えました。また、志願者数も前年比110%となる約4万3000人となりました。

受験生に対する情報発信においては、広報室や入学センターなどが中心になって、SNSを用いた動画配信を積極的に行っています。「現代の受験生に届く情報」を模索し、新たな手法にチャレンジすることもまた、時代に即した大学の姿を追求する取り組みだと言えます。

推薦入試と一般入試については、前述の通り、一般入試の比率が半数を超えるまでになりました。いっぽうで、国公立大学でも総合型選抜による入学者数を増やす動きもあります。主体的に考えて行動する力などを評価する総合型選抜は、これからの時代を生きる学生を本学に迎えるにあたって、非常に重要な選抜方式だと考えています。また、さまざまな形式の入試を通して多様な学生が集まることは、本学をより豊かな学びの場にしてくれます。一般入試と推薦入試のバランス、そして推薦入試における選抜の方法など、これからも一層の検討を重ねて、多様性に満ちた大学を実現するためのより良い形を構築していきたいです。

人口が減少する現代社会において、本学が今よりも大幅に規模を拡大することは現実的ではありません。適正な規模で大学を運営しながら、質の向上を追求していくことこそが、私に課せられた役割だと考えています。

本学は現在、大学院を含めて約2万5000人の学生が学んでいます。この総数は維持したまま、文系・理系の学生数のバランスが変わっていくものだと考えています。具体的にどのようなバランスになるかは、これからの検討になります。社会のニーズと変化の先を見つめながら、適正なバランスを探っていきたいと思います。

規模の適正化は、大学内部の組織についても同様のことが言えます。大学に対して社会から寄せられる期待や要望の多様化により、大学はかつてないほどさまざまな機能を持つようになりました。時代の要請ですので仕方ない側面はあるのですが、変化の激しい現代社会においては、対応力や機動性をさらに高めていく必要があります。組織をシンプルにし、タイミングを逃さず一丸となって動くことができる大学にしたいと考えています。

質の向上とは、「私たち関西学院大学は、どんな学校になりたいのか?」を考えることにほかなりません。それはすなわち、本学の理念に立ち返って考えることです。本学は、「世界市民」としての生涯を送ったアメリカ人宣教師W・R・ランバスによって設立されました。第4代院長であるC・J・ベーツは、今も関学人のあり方を示す言葉として受け継がれるスクールモットー「Mastery for Service(奉仕のための練達)」を提唱しました。そして、設立以来変わることなく、キリスト教主義の教育、すなわちキリスト教を通じて文化や世界を学ぶという教育を実践しています。ミッションステートメントである「“Mastery for Service”を体現する『世界市民』を育む」は、今という時代に私たちが何をすべきかを考えさせてくれる、かけがえのない言葉です。

学長に就任し、改めて現代社会における学長という役割の重要さや難しさを噛み締めています。しかし、だからこそ果敢に取り組んでいきたいと、思いを新たにしました。どうぞ、ご支援をよろしくお願いいたします。

NOTE

※1 日常が国際交流の場になる「学生寮」

西宮上ケ原キャンパスと西宮聖和キャンパスからほど近い場所に設けられた「有光寮」は、関西学院大学で学ぶ外国人留学生と、日本人学生がともに生活する学生寮です。寮内のコミュニティスペースでは、国際交流イベントなどを開催。居住スペースのある各フロアにはラウンジが備えられており、自室を出ればすぐに外国語を使ってコミュニケーションを図る環境が用意されています。日常のなかで密度の濃い国際交流ができる有光寮は、英語力や異文化理解対応力を高める場として、多くの学生に利用されています。

※2 グローバル社会で貢献する力を養う「国連・外交プログラム」

学部での学びと並行して、国連・外交に関する科目を学んだり国際ボランティアなどに参加できるのが、「国連・外交プログラム」です。将来、国際機関や外交・国際協力など、世界の公共の場で活躍するリーダーの育成を目指すこのプログラムは、全学部の学生を対象として開講。国連・外交の舞台で活躍してきた実務家教員を中心として、定員20名という少人数制で密度の濃い授業が行われています。ゼミ形式での基礎からの丁寧な指導、教員によるメンター制度など、夢を実現するための充実した環境が整えられています。

西宮上ケ原キャンパス

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