女子大学による、女子大学生のための、実学志向のグローバル教育を推進―昭和女子大学

女子大学による、女子大学生のための、実学志向のグローバル教育を推進―昭和女子大学

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坂東眞理子総長 インタビュー

昭和女子大学は、1988年に開設した海外キャンパス「昭和ボストン」に多くの学生が留学するなど、先進的なグローバル教育を実践してきた。近年は語学力に加え、深い専門性と教養、さらにはビジネススキルを備えたグローバル人材の育成を重視。各プログラムの拡大・充実を図っている。その中核をなす「ダブル・ディグリー・プログラム」をはじめ、女子大学におけるグローバル教育の重要性について、坂東眞理子総長に話を伺った。

聞き手 松平信恭(大学通信)

学生の伸びしろを最大限に引き出すダブル・ディグリー・プログラム

昭和女子大学 総長
坂東眞理子
東京大学卒業後、総理府(現内閣府)入省。内閣広報室参事官、総理府男女共同参画室長、埼玉県副知事などを経て、1998年にオーストラリア・ブリスベンで女性初の総領事に就任。その後、内閣府初代男女共同参画局長を務めたのち、2003年に昭和女子大学へ着任。昭和女子大学女性文化研究所長や副学長などを経て2007年に学長に就任し、以後2014年に理事長。2016年から総長を務める。ベストセラーとなった『女性の品格』(PHP新書)の著者としても知られる。

―ダブル・ディグリー・プログラムの概要や近況についてお聞かせください。

ダブル・ディグリー・プログラム(DDP)は、本学と協定する海外大学の2つの学位を取得できるプログラムです。2014年度に中国の上海交通大学との間でスタートし、現在は韓国の淑明女子大学校やソウル女子大学校、アメリカのテンプル大学ジャパンキャンパス(TUJ)、オーストラリアのクイーンズランド大学へと拡大しています。いずれも留学先で現地の学生とともに授業を受ける正規留学で必要な単位を取り、海外大学の学位を取得するプログラムです。本学では大学全体でこの機会創出に尽力してきました。

DDPに挑戦するために本学を志望して入学してくれた学生も着実に増えています。彼女たちにはどうか目標を達成して、自信をつけて卒業していってほしいと願っています。また、本学のDDPへの認知度が高まることで、あらためて本学の学生に対する評価も高まっていくものと期待しています。

近況としては、2022年度に国際学部のDDP参加学生12名が海外大学の学位を取得し、2018年に最初の修了者が出て以来、DDP修了者はのべ73名となりました。2021年度に派遣を開始した淑明女子大学校のDDP 1期生のうち1名が、韓国人学生も含めた所属する学部で最も高いGPA(Grade Point Average)を獲得し、卒業成績最優等賞を授与されました。彼女は大学入学後にゼロから韓国語の学習を始めた学生でした。

―今後の展望についてはいかがでしょうか。

2023年2月には、オーストラリア・クイーンズランド大学とのDDP 1期生である、国際学部英語コミュニケーション学科と国際学科の学生がそれぞれ1名ずつ現地に渡ったほか、2024年には2期生の候補として英語コミュニケーション学科の学生2名が渡航する予定です。

また、グローバルビジネス学部ビジネスデザイン学科もTUJとのDDPを2022年秋から開始し、1期生2名が留学、2023年秋の留学にも2期生2名が挑戦する予定です。こうして新たに門戸を開いた背景には、グローバルビジネス学部ビジネスデザイン学科という名称のとおり、ビジネスの分野で通用する知識やスキルを身につけることが、女性が実社会のさまざまなフィールドで活躍するために重要だからです。

かつては「女性が実学を身につけても、どうせ日本社会では評価してもらえない。それならば自分が好きな教養系の学びを深めよう」という考え方が主流でした。しかし、今や女性でも責任ある立場を任され、一人のビジネスパーソンとして成果を求められる社会になりつつあります。本学においても、例えば金融機関での勤務経験のある母親から、経営やファイナンス系の学びを勧められたという学生が増えているなど、社会的なニーズとしても実学志向が進んでいることが見受けられます。

卒業成績最優等賞を授与された、淑明女子大学校DDP1期生

―語学力の向上だけが目的ではないということですね。

これまでは外国語の運用能力が高ければ、それだけでも大きなアドバンテージになりましたが、近年は語学力だけでは不十分といわざるをえません。本学ではTOEIC®スコアが入学当初の400点前後から900点近くまで伸びる学生もいますが、社会が求める水準が高度化している現代では、“語学力を使って何ができるのか”が問われているのです。

一般的なグローバル教育といっても、渡航先の語学学校で短期間に英語の勉強だけをするようなケースもあります。本学の留学は2週間から1カ月間程度の短期留学ではなく、多くが1セメスター以上の中長期プログラムであり、現地の学生が履修する科目を現地の学生と一緒に学びます。DDPも本学におけるグローバル教育の一つですが、単に英語や韓国語、中国語の勉強だけをするのではなく、それぞれの言語を使って専門分野を学ぶために現地へ留学に行くのです。

こうした考え方は、語学力強化を第一に考えられがちな英語コミュニケーション学科でも同じです。この学科での学びの目的は、コミュニケーションツールとして英語力を高めることはもちろんのこと、英語を“道具”として使いこなしながら現地での学びを深めること。英語での分析力や論理的思考力、発信力、課題解決力など、“語学力を駆使してできること”を増やすことが大切なのです。そのために大学として重視しているのは、学生一人ひとりのやる気を鼓舞して応援することです。教職員主体で学生を引っ張るのではなく、学生主体で各々が望む道に進めるよう背中を押してあげるのです。そして、学生が興味・関心を抱くテーマや目標に必要なスキルアップができる環境を整備し、提供することも重要です。

ダブル・ディグリー・プログラム修了生(既卒含む)

自分を見つめ直し、自分だけの強みを見つけて伸ばす

―海外で学ぶ意義や重要性、メリットをお聞かせください。

私自身は30歳を過ぎてから初めて海外で生活しましたが、それまで日本では当たり前だと思われていたことが通用しないケースも多く、いわゆるカルチャーショックを受けました。そして、帰国後にはあらためて海外と日本の違いを痛感する、二重のカルチャーショックがありました。ただ、この両方での経験をとおして、日本と海外、双方への理解が進みました。

例えば、“アメリカ人は積極的に発言する”といった国民性や文化の違いに加え、日本では温度を「摂氏」で表すのに対し、アメリカでは「華氏」で表します。また、長さはメートルではなくインチやマイル、重さはグラムではなくオンスやパウンドで表します。そうかと思えば、同じ英語圏でもオーストラリアでは日本と同じ単位が使われ、自己主張の仕方もアメリカと違います。このように、いろいろな国の特性や文化を体感すること自体に価値があり、それまでの自分自身の生き方や日本の社会を見つめ直す絶好の機会になります。そこに海外留学の意義があると思いますし、グローバル社会で多くの気づきを得ていってほしいです。

一方で、昨今はAI(人工知能)をはじめとする情報技術が急速に発展し、話題のChatGPTを使えば、疑問に対する回答が即座に生成され、ある程度まとまりのある文章も作成できるようになりました。人間の能力とは何か、自分の強みは何であるか、自分にしかできないことは何なのかが問われ、突きつけられる世の中になったことを意味します。グローバル社会で求められるのは、語学運用能力だけではありません。自ら身をもって感じた世界の国々の違いを考慮した上で、多くの人々の利害関係が複雑に絡み合うグローバルな課題解決に力を注ぐことができる能力。その資質を養うためには、語学教育ではなくグローバル教育という人材教育が不可欠なのです。

―その点、貴学独自のグローバルな学修環境は有効ですね。

本学は1988年に日本の大学初の海外キャンパスとして、アメリカ・マサチューセッツ州に「昭和ボストン」を開設しました。コロナ禍では一時的にオンライン留学という代替措置をとった時期もありましたが、2021年の秋に、昭和ボストンへの留学再開を皮切りに、世界各国の協定校への渡航も再開しました。日本の大学ではいち早く、学生に現地教員による授業のほか、現地住民との交流などをとおして本物の英語に触れ、日本とは異なる考え方や感じ方に触れることができる経験を提供しました。

昭和ボストンを開設した当時は、海外渡航に不安を感じる学生や親御さんもいましたが、安心して海外経験ができる“自前”の海外キャンパスとして、他大学にはない独自のプログラムへと進化させてきました。近年は昭和ボストンでの経験を足がかりにして別の海外大学に留学したり、DDPに挑戦したりする学生も増えています。今後も学生の希望や意欲、社会的なニーズなどに応じてプログラムをアップデートしていく考えです。

一方、隣接するTUJとは同時開設科目や科目等履修制度、「TUJ3+1プログラム」など、DDP以外での連携も進んでいます。TUJ3+1プログラムは、早期卒業制度によって3年間で本学を卒業し、TUJでの1年間の修士課程に進むプログラムであり、2022年の秋に始まりました。また、TUJの学生との交流を深める課外アクティビティーも展開しており、七夕や夏祭りなどのイベントも予定しています。

さらに、TUJの学生が本学の人形浄瑠璃に関する授業や日本文学の授業を履修するなど、日本への理解を深めようとする姿勢が本学の学生に良い刺激を与えてくれています。海外を知り、自国との違いを認識することがグローバル社会で活躍していくための第一歩になりますので、学生たちには積極的なイベント参加や制度の利用に期待しています。

昭和女子大学の海外キャンパス「昭和ボストン」

“大学名”ではなく、自分の可能性を追求してほしい

―女子大学の存在意義や貴学の使命について、お考えをお聞かせください。

日本社会から女性が生きていく上での障害がすべて克服されれば、女子大学の存在意義も消えてなくなるかもしれません。しかし、いまだ女性自身の内面に「どうせ女性だから評価されない」といったアンコンシャスバイアスがあるのも確かです。女性自身がこの意識を打ち破り、積極果敢に社会でチャレンジしていく力を身につけることが理想です。そのためには、女子大学こそが最適なインキュベーター、つまり女性としての個性や個々の強みを守りながら成長していくためのベストな環境であると考えています。

もちろん共学の大学で磨かれていく学生もいるとは思いますが、気配りや優しさなど、古い女性らしさを期待する若い男性が少なくない中、そういった男性の目を気にしてしまうことで、自分の意思や意欲ばかりか、将来に向けた可能性を抑え込んでしまうことはとても残念なことです。私自身も、社会に出て女性であるがゆえに越えなければいけない壁に直面してきた経験があるため、少子高齢化と人口減少が進む日本社会において、未来を担う女性に力をつけてもらいたいという思いが強く、それが本学の使命であるとも考えています。

―最後に、高校の先生や受験生にメッセージをお願いします。

伝えたいのは「やればできる」ということです。高校までの成績や入学した大学の偏差値だけで、自分の評価を完結させてしまってはいけません。偏差値は個々のスキルを評価するための一つの尺度ではありますが、社会で役立つ能力は学力だけではなく、多様な人間力です。とりわけグローバル社会では多彩な能力が必要とされ、評価されます。

また、グローバル社会においては、日本のどの大学で学んだかといった学歴は大きな問題ではありません。問われるのは、“今の自分に何ができるのか”ということです。入学後にどのような勉強に励み、どのような力を身につけていったのかが肝心なのです。その点、本学は4年間の在学中に数々のプログラムを通じてとことんスキルアップできる大学であり、学生一人ひとりが新たな可能性を見つけ、伸ばしていける大学です。

そして、入学後に意識してほしいのは、授業で教わった知識を覚えるだけではなく、それを活用して自分で課題を見つけ、自分なりの解決方法を考えて行動してみることです。たとえ失敗しても、それであきらめる必要もありません。失敗した経験が飛躍するきっかけにもなるのです。いきなり大きな目標を立てなくても構いません。たとえ小さな成功でも、成功体験の積み重ねが学生を変え、やればできるのだという自信が未知なる人生を生き抜くための大きな力になっていくのです。

大学選びエキスパートの声

進路づくりの講師、高大共創コーディネーター
倉部 史記氏

昭和女子大学の志望者が増えていると、最近も複数の高校教員から聞いた。以前から評価が高い伝統校だが、さらに近年のさまざまな改革が意欲の高い高校生に支持されているのだろう。中でもダブル・ディグリー・プログラム(DDP)の取り組みは、他大学と比べても内容、成果の両面で際立っている。

制度として同様の仕組みを持つ例は他にもあるが、実績として卒業生を毎年輩出している大学は非常に少ないのだ。しかも昭和女子大学の場合、ただ留学するだけでなく海外の大学で優秀な成績を修める学生が多いという点が素晴らしい。今年も多くの学生が奨学金を得たという。留学先で卒業成績最優等賞を授与された学生もいるそうだ。留学は学びのゴールではなく、その先のキャリアへ続く成長のステップだと考える学生も多いのだろう。

協定校が求める高い水準の語学力を身につけられるよう、1年次からさまざまな講座やサポート体制が用意されているというのも、こうした教育成果が生まれる理由の一つだろう。最初は準備が整っていない学生でも、その気になれば着実に力をつけ、高い目標に挑戦できる。この先の社会を生き抜くために必要なチャレンジ精神や自己肯定感も、こうした学びを通じて磨かれるのではないだろうか。

隣接するテンプル大学ジャパンキャンパス(TUJ)との交流も、コロナ禍が落ち着いてきたことでますます活発になるはずだ。昨年からは両校の連携により、4年間で学士と修士が取得できる「TUJ3+1プログラム」も始まった。今後の取り組みにも、ますます注目していきたい。

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