かぶけ!学習院生! 未経験から「歌舞伎役者」に! ~国劇部~

かぶけ!学習院生! 未経験から「歌舞伎役者」に! ~国劇部~

<PR>

学習院大学国劇部は、1947年設立の「国劇研究会」を起源とする歴史ある部活動。歌舞伎俳優の二代目市川齊入氏や市川新蔵氏、松竹株式会社の代表取締役専務である武中雅人氏など、歌舞伎界を支える幾多の人材を輩出してきました。しかし、現在の正式な部員は2名のみ。そこで今回は、窮地に立たされながらも真摯に歌舞伎に向き合い、部の伝統を守ろうと奮闘する羽渕さんと原さんに、活動内容や歌舞伎の魅力をお聞きしました。

写真左:羽渕 真穂さん(2023年度 委員長) 文学部日本語日本文学科 2年 埼玉県・私立本庄東高等学校出身
写真右:原 彩乃さん(2023年度 会計・衣裳担当) 文学部教育学科 2年 東京都・東京大学教育学部附属中等教育学校出身

未経験から稽古を重ね『白浪五人男』を披露

――おふたりが国劇部に入ったきっかけから教えてください。

羽渕:直接的なきっかけになったのは、入学早々にテレビで『蜘蛛絲梓弦(くものいとあずさのゆみはり)』という歌舞伎の演目を観て、役者が早変わりする「五変化舞踊」の様子に衝撃を受けたことです。演技の経験はありませんでしたが、大学では新しいことに挑戦したいと思っていたため、思い切って入部を決めました。

5月には「新歓観劇会」として先輩方が歌舞伎座に連れて行ってくれて、あらためて歌舞伎の魅力に惹かれました。そのときに観たのは『市原野のだんまり』という演目。私はもともと百人一首などの和歌が好きで、和歌の長唄がもとになったセリフもあり、”運命的なつながり”を感じました。

原:私は高校時代に演劇部に所属していたのと、高校1年生のときの授業で、日本の伝統芸能である「文楽」を学ぶ機会や、歌舞伎を観る機会もありました。それで”ハマった”わけではなかったのですが、高校2年生のときに祖母から着物を譲り受け、着物を身にまとう喜びを知ったことが転機になりました。大学では「着物が着られること」を条件にして伝統芸能系の部活動やサークルを探し、多少なりとも馴染みのあった歌舞伎に挑戦しようと思いました。

――入部後はどのように活動をしてきましたか?

原:1年次9月の本公演で『白浪五人男』という演目を披露することが決まっていたので、必死に稽古を重ねました。ただ、活動は週2回のみですので、自宅でじっくりと映像をチェックして、セリフや動きを覚えました。”着物好き”な私からすると、稽古で浴衣を着ることもやりがいの一つです。

また、5月の新歓観劇会では、ほとんどセリフを聞き取れなかったのですが、耳が慣れて聞き取れるようになっていくことで成長を実感できました。セリフは初見だと意味がわかりませんが、自分で調べたり先輩に聞いたりして理解していくことで、作品の深みを感じられるようにもなっていきました。

羽渕:私は歌舞伎のセリフを口にすることが純粋に楽しかったですね。大げさに”こぶし”をきかせるような抑揚が特徴的で、歌に自信がある人はセリフを読む際に活かせる気がしました。本公演に向けては、私が「弁天小僧菊之助」役、原さんが「赤星十三郎」役に決まり、市川齊入さんと、卒業生でもある市川新蔵さんという現役の歌舞伎役者が師匠として定期的に指導してくださいました。

その際に注意したのは、セリフを覚えておくことなど、学生が最低限しておくべきことを怠らないこと。何から何まで師匠に頼るのではなく、どうしても学生では気づきにくい細かい部分を師匠に指導してもらうよう心がけました。

とはいえ、ちょっとした動きでも難しさを感じることは多かったですね。例えば「見得を切る」ときの首や手の動き。師匠が違和感を覚えるポイントを、私自身はなかなか理解できませんでした。それでも、経験の浅い私がすぐに実践できるわかりやすい指導方法と反復練習のおかげで、なんとかカタチになっていきました。

原:何回もやって体で覚えるしかないんですよね。ちなみに私は、セリフを歌だと思って覚えました。普段の言葉と歌舞伎のセリフではイントネーションが大きく異なりますので、聴いて復唱する「シャドーイング」を何度も行いました。なお、実は羽渕さんは大学祭のカラオケ大会で1位を取ったほどの”歌ウマ”で、私はアカペラサークルにも入っているので、歌舞伎に活かせたことは少なくないと思います。

こうして練習を重ね、本公演当日はプロの方に歌舞伎ならではのお化粧や衣裳の着付けなどをしてもらいました。お化粧をしてくださる「顔師」さんや、カツラを調整してくれる「床山」さんなど、歌舞伎界のプロフェッショナルの方々に身を任せるという贅沢な時間を過ごしました。

羽渕:衣裳もそうですし、大道具や小道具もすべて本物の歌舞伎で使われているものでしたので、これ以上ないほどの高揚感を覚えましたね。また、中学や高校時代の恩師や友人も来てくれたのですが、みんなから「変わらないね」と言ってもらえました。それは、新しいことに挑戦しながらも、”私が私らしく”いられたということ。国劇部に入って本当によかったと思えた瞬間でした。

様々な演目、個性あふれる役にチャレンジしたい!

――主な年間行事を教えてください。

羽渕:「本公演」と「試演会」が2大イベントです。2022年9月の本公演の後は、2023年2月に1年生が中心となる試演会があり、現在は2023年9月の本公演に向けて準備を進めています。演目と公演の日時が決まったら、師匠のほか、学習院のOBでもある松竹株式会社の武中専務などにも連絡するのですが、みなさん経験豊富ですので、演目に応じて必要になる小道具や大道具などはすぐに把握してくれる安心感があります。

そんな先輩方や、師匠と接する際に不可欠なのが、一社会人としての意識と振る舞いです。国劇部は礼儀・礼法を重んじる団体ですので、ビジネスマナーも身につきます。

原:公演の準備では会場の確保も必要なことから1年前くらいから始めます2023年9月に行う本公演では、『一条大蔵譚』の『檜垣茶屋の場』と『大蔵館奥殿の場』を披露することが決まっています。演目も配役も雑談ベースで決まることが多くあります。私は「常盤御前」役を演じるのですが、趣味である着物が綺麗な点も重要でした。

羽渕:配役は、みんな好き放題言いますね。誰かが「これやりたい」と言い出すと、五月雨式に「俺はこれ」「私はそれ」と決まっていきます。私はこれまでの本公演と試演会では2回連続で男の役でしたが、『一条大蔵譚』では「鳴瀬」という”女方”を演じます。『一条大蔵譚』では、結果的に女子が女方、男子が男の役に決まり、キャラクター的にも全員が納得できる配役になりました。

みんなきちんと自分を客観視していて「なるほど」と思える役に落ち着きます。また配役に限らず、演目についての話は日常茶飯事。集まれば歌舞伎の話ばかりしています。

原:だからこそ歌舞伎に詳しくなれますし、いつも今後の目標や活動方針まで話が盛り上がります。

羽渕:今後については、まずは引き続き本公演と試演会に全力を注ぎながら、コロナ禍で中止していた夏休み中の合宿も2023年度からは復活させたいと思っています。実際には、本公演後の”お疲れさま会”のような位置づけになると思います。

一方で、学外からお声がけをいただいて、イベントなどでの上演を依頼されることもあります。ただ、予算を考えると辞退せざるをえない状況が続いているので、せっかくのチャンスを無駄にしないための打開策を探っていきたいですね。

来たれカブキ者!

――おふたりが感じる歌舞伎の魅力を教えてください。

羽渕:歌舞伎は「かぶく(傾く)・かぶき(傾奇)」が元になっているので、「自分は人とは違うんだ」「かっこいいんだ」といった、奇をてらったカッコつけのカルチャーが息づいている気がします。『白浪五人男』や『一条大蔵譚』にしても、長い話の中で人気のある場面を”かいつまんで”上演することが多いのですが、それは登城人物のカッコいいシーンを見せるためです。

「睨み」や「見得を切る」といったシーンもそうですし、「鼻の穴に屋形船を突っ込むぞ」といったような、大げさにも程があるといいたくなるようなセリフもあります。ただ、それが人を惹きつける歌舞伎の魅力なんだと思います。

原:着物も舞台も色鮮やかでキレイですし、不格好な場面が存在せず、どこを切り取っても絵になるのが歌舞伎の魅力ですね。ただ、事前にストーリーを把握しておかないと堪能し切れない部分はあるかもしれません。

羽渕:そうですね。浮世絵が動いているような世界観が魅力なのですが、「よく聞き取れない」「セリフの意味がよくわからない」という歌舞伎特有の言葉の壁があるのも確かだと思います。

とはいえ、それこそが歌舞伎でもあって……、国劇部の公演で初めて歌舞伎を観る人もいると思うので、中途半端な作品づくりはできませんね。

――最後に新入生へのメッセージをお願いします。

原:本物の衣裳を着て、本物の小道具・大道具に囲まれて歌舞伎の舞台に立つ経験は、国劇部でしかできないと思います。日本の伝統芸能に少しでも興味がある人や、多くの人がチャレンジ”しないこと”に挑みたい人にはピッタリの部活動ですので、まずは気軽に見学に来てほしいです。

なお、現在の正式な部員は私と羽渕さんの2人だけですが、同学年の3名の経験者がサポートメンバーとして活動してくれていて、本公演に向けて一緒に練習しています。3人から学べることも多く、全員個性的で楽しい人柄なので、きっと歌舞伎が大好きになっていくと思います。

羽渕:歌舞伎のセリフっぽく言えば、「人と同じこたぁしたくねぇ~」という人には、ぜひ入部を考えてほしいですね。それこそが「かぶき者(傾奇者)」。歌舞伎の適性アリです。

私や原さんのように何の経験もなくても、現役の歌舞伎役者が師匠となって教えてくれますし、何ヶ月も一緒に稽古を重ねた仲間と演じ切った瞬間には、この上ない達成感を味わうことができます。それに、決して就職活動に向けて打算的に活動しているわけではありませんが、どう考えても「ガクチカ」にしかなりませんよ!?

大学のことカテゴリの最新記事

ユニヴプレス