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成城大学社会イノベーション学部は2005年創設。「イノベーション」を学部名称に採用した日本初の学部だ。イノベーションの創造プロセスを学ぶ政策イノベーション学科と、イノベーションの普及プロセスを学ぶ心理社会学科の2学科体制のもと、「政策」「戦略」「心理」「社会」という4つの領域を横断的に学習する。遠藤健哉学部長のほか、遠藤ゼミの新旧のゼミ生3人に、学部の魅力を伺った。
(取材2022年当時)
取材 鈴木秀一郎
実社会で応用可能なロジカルな思考力を鍛える
学部長 遠藤健哉 教授
慶應義塾大学商学部卒業後、同大学院商学研究科経営学・会計学専攻修士課程修了。専門は、経営学。主な研究テーマは、戦略経営論、イノベーション・マネジメント、組織変革論。
大塚栄美子さん
政策イノベーション学科 2012年3月卒業
株式会社エヌ・ティ・ティ・データ(NTTデータ)勤務
神奈川県・私立聖園女学院高等学校出身
―まずは学部の概要や特徴からお聞かせください。
遠藤 社会イノベーション学部は、社会の課題を発見し、横断的なアプローチによってイノベーティブな解決策を考察・提示していく学部です。どんな社会課題にも共通しているのは、解決策が一つではなく、既存の方法を踏襲しても解決には至らないということ。だからこそ、単一の学問領域を探究するのではなく、経済学や経営学、心理学、社会学を中心に、幅広い学問領域で蓄積されてきた知恵や考え方をベースにして、横断的に考察を進めます。イノベーションとは、複数領域から生み出される「新結合」なのです。
大塚 4期生として入学した私は、まさに複数領域を学べることに期待を抱きました。漠然と「グローバル人材になりたい」という願望もあり、世界で通用する経営戦略を学んで視野を広げ、将来像を絞り込みたいと考えました。ゼミでは実在する企業の経営戦略の意図やプロセスをパワーポイントでまとめ、発表と議論を重ねました。卒業研究のテーマは、ICTを活用した企業の競争力向上。現在のDXと同様、その重要性が叫ばれている分野でした。想像力を働かせて仮説を立て、自分なりにロジカルに結論を導き出していく思考プロセスは、現在勤務している通信系企業でも直接的に生かされています。入社後はマレーシアやインドに駐在し、現地に進出した日本企業の効率的なIT導入を支援するワンストップソリューションに尽力しました。海外での経営戦略を効果的に実現するためのIT導入が必ずしも十分ではない中堅・中小企業各社のICTイノベーションを、大学での学びを存分に生かしながら、支援し実現してきた自負があります。
遠藤 イノベーションは「技術革新」と同義で捉えられがちですが、決して技術面だけの話ではありません。人々の行動や態度、周囲との関わりや相互作用自体を“イノベート”することもできるのです。また、イノベーションには多様なフェーズやシーンがあり、何も起業家だけがイノベーションを起こすわけでもありません。大塚さんのように、一企業人が地道に交渉を進めながら企業を変え、社会構造を変えていくことも含め、さまざまな人々が、さまざまな役割を果たしていくことで成し遂げられるのがイノベーションなのです。
深い議論は刺激に溢れ気づきの宝庫になる
―小楠さんはどのような思いで入学されたのですか。
小楠 私が入学時に興味があったのは、国際ボランティアと海外留学です。ただ、ボランティアは一時的な支援ですので、持続的な支援方法を探究するためにも、この学部で視野を広げたいと考えました。少人数のゼミで議論を重ね、仲間の多様な考え方に触れたことで気づけたことも多く、物事の解釈や解決方法を多角的に考える力が向上しました。
遠藤 ゼミではみんな熱心に調べてくるので、多面的かつ建設的に濃厚なディスカッションができますよね。まずは相手の考え方を理解しようと努め、相手を尊重した上で複数の案を融合させ、新たな解決策を模索しようとする空気に満ち溢れていると思います。
小楠 しっかり主張する学生も多かったのですが、何でも同調して上辺だけ仲が良くても議論は深まりませんし、ときには緊張感をもって議論できたことが良い思い出になっています。また、在学中はフィリピンを訪れ、ストリートチルドレンの保護施設をつくるボランティア活動にも参加しました。そこで痛感したのは、継続的な支援のために、ビジネスの力で持続的に収益を生み出す仕組みの必要性です。だからこそゼミではSDGsに貢献できるビジネスモデルを研究し、アウトプットとしてビジネスコンテストにも挑戦しました。
遠藤 中小企業を含め、日本の優れた技術を途上国支援に生かすソリューションでしたね。このとき重視したのは、きちんと利益も生み出す構造づくり。多くの人々の満足度を高める持続可能な手段としてのビジネスモデルだったと思います。
小楠 そうですね。こうしたゼミでの経験は、現在配属されているモバイル事業の企画部署でも生かされています。日々顧客データを分析して、顧客満足度向上に向けた改善策をゼロから考えて各部署に提案しているのですが、ゼミでイノベーションに成功した企業のビジネスモデルを分析したり、ビジネスコンテストに向けて発想力を鍛えたりした経験が、社会での実践力につながっています。
小楠 直さん
政策イノベーション学科 2021年3月卒業
楽天グループ株式会社勤務
埼玉県立浦和西高等学校出身
阿部優介さん
政策イノベーション学科 3年
東京都立武蔵丘高等学校出身
ゼミが人を動かし組織を動かす実践の場に
―阿部さんの大学生活についても聞かせてください。
阿部 私は「大学でこれが勉強したい」という確固たる目標はなかったのですが、「経営学」を学んでおけば、何かしら社会で生かせると考えました。入学後は、幅広い学びに挑戦できることが純粋に楽しくて、中でも興味が深まったのが心理学です。当初は点の知識でしたが、少しずつ経営とのつながりがわかって線となり、企業経営における組織づくりや、組織で人を動かす際にも心理学の知見が有効だとわかりました。ゼミでは国内の携帯キャリアを題材にして、過去の経営戦略の違いが、業績にどう反映されているかを分析していますが、社会情勢との関わりや、社内でどのような心理的な働きかけが行われたのかも調査できればと思っています。
遠藤 阿部くんは3年生のゼミ長です。常に先を見越して方向性を提示しながら、周囲の学生にも意見を出させるなど、リーダーシップやファシリテート能力が優れています。周囲の発言の真意を汲み取り、議論を先に進めていく力もありますね。
阿部 ゼミ長になったのは、人や組織へのどのような働きかけがモチベーションや能力の向上、組織としての成果につながるかに興味があったからです。加えて、私はゼミ生全員の個性をある程度は把握できていると思ったので、自分が上手に工夫をすれば全員が意見を出しやすくなると考えました。みんな意見があっても、自信を持って発言できないケースがありますが、新しい考え方に触れることで視野が広がると思うので、私の力で発言しやすい雰囲気をつくり、深い議論ができるゼミにしたいんです。参考にしているのは、雑談的に話し合いを進める「ワイガヤ」という本田技研工業株式会社の手法です。ただ、有意義な議論をしようにも知識不足を痛感することも多いですね。
遠藤 そうですね。高校までの学習内容も含め、どうしても「基礎工事」としての知識の修得は不可欠になりますね。
学ぶ意義がわかれば学ぶ意欲が高まっていく
―「基礎工事」の大切さについて、詳しく教えてください。
遠藤 大学での「基礎工事」は、授業です。経済学や経営学など、総論と呼ばれる科目での基礎固めなくしては、社会での応用も実践もできません。新たな知識の修得によって新たなコンセプトが生まれ、実現可能性の高いイノベーションの芽が育つのです。知識はいわば共通言語となり、応用・実践領域での議論が深まることで、アクションを起こす際の説得力も高まります。
大塚 仕事でも知識がないと対等に話ができませんので、社会人になっても日々新たな知識を吸収しています。そうできるのも、この学部での経験があったからこそだと思います。その上で私は、ひとつの情報を多角的に分析することを大切にしています。例えばニュースで情報を得た場合、日本のメディアだけではなく、海外メディアの報じ方を知ることで得られる情報も増え、考え方の違いも認識できます。それによって自分の意見も精査されていくのです。
遠藤 学ぶ意義を理解した上で、学び方を学び、それが定着していくことが、この学部の大きな強みですね。
阿部 私は、ある程度知識が増えたことで、ニュースを深読みできるようになってきた感覚があります。企業の業績などの表面的な内容だけでなく、背景にある企業風土や、社会情勢との関連などにも思いをめぐらせられるようになり、ニュースが楽しく感じられるほどです。
小楠 私の場合、「基礎工事」のための総論的な科目自体は、抽象的で難しさも感じましたが、その知識が最低限必要であることを認識できたからこそ、主体的に学ぶことができました。社会では実践力が重視されがちですが、ある程度の知識がないとコミュニケーションが円滑に進まず、太刀打ちできないケースもあります。知識があるからこそ説得力をもって具体的に指示を出せるケースも多いんです。知識を蓄える目的が明確であれば学ぶ意欲も高まりますし、この学部ではその目的や意義を提示してくれたので、前のめりになって勉強できましたね。
大塚 私も授業や就職活動に受け身で取り組むばかりでは悔しいという感覚があったので、「自分の人生にどういう意味があるのか」について、自分なりに納得できるまで解釈と意味づけをして取り組みましたね。
遠藤 知識を獲得すると共に重要なのは、知識をいかに活用するか。その力を鍛えるのがゼミです。設定した社会課題に対し、自分たちなりの解決策を提示する。それについて議論を重ね多面的に検討することで、新たな気づきを生み出す。大塚さんも小楠くんも、そういった試行錯誤を繰り返すことで、「考える力」を大きく伸ばし成長していったと思います。
成長というイノベーションをすべての学生に実感させたい
―最後に先生から受験生へのメッセージをお願いします。
遠藤 受験生のみなさんは、入試に向けて不安を感じ、その解決策を考えることがあると思います。その姿勢自体、大学生活を経て、自らの未来を創造するイノベーションの第一歩といえるでしょう。ただし、イノベーションに正解がないことと同様に、大学入学後の成長ストーリーもまた十人十色です。その点、私を含めた教員全員が、学生一人ひとりが自分に合った成長曲線を描けるように働きかけの方法を工夫していますので、大きな安心感と期待感を持って、この社会イノベーション学部に飛び込んできてくれることを願っています。