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猛暑の季節が到来した。出足の早い受験生であれば、志望校をしっかりと定め、受験勉強に邁進している頃だろうか。
一方で、大学への進学自体を迷っている受験生もいるのではないだろうか。意欲はあるのに経済的事情で進学をためらっている場合や、専門学校などへの進学を視野に入れている場合など、様々な事情がある。
本稿では、そんな受験生たちの選択肢の1つとして、短期大学を提示したい。多くの読者が実感しているように、確かに短大への進学者数は減少の一途をたどっている。だが、実は魅力の多い進路でもあるのだ。
文 雫 純平(大学通信)
短期大学は、学校教育法において、四年制の大学とは目的及び修業年限の異なる大学と位置付けられている。目的は「深く専門の学芸を教授研究し、職業又は実際生活に必要な能力を育成すること」。修業年限は2年または3年。つまり、四年制大学よりも短期間で教養教育と専門教育の両方を受けられる場というわけだ。このことを裏付けるように、2005年には短大を卒業すると「短期大学士」の学位を授与する制度が創設されている。
四半世紀で短大生の数は約5分の1に
長らく、特に女性の高等教育の場としての役割を担ってきた短大だが、女性の社会進出に伴う四年制大学志向の高まりや、少子化などの影響を受け、校数、学生数ともに減少の一途を辿っている。表❶を見てほしい。1996年には598短大に約46万人の短大生がいた。それが2021年には校数は約半減し、短大生の数は約5分の1に減った。同時期の四年制大学が校数、学生数ともに伸ばしているのとは対照的だ。
ただ、短大が減少したからといって、必ずしもその魅力が失われているわけではないはずだ。大学通信では、より短大の現状を明確にするため、通信制や募集停止中など一部を除く289短大にアンケートを行い、144校からの回答を得た。その回答を順番に見ていきたい。
専門知識・技能の習得、学費の安さ……
短大のメリット
まずはグラフ❶を見ていこう。高校からの入学者数について、昨今の状況を尋ねたものだ。
「入学者は減ってきている」の回答が85.0%と、圧倒的な割合だ。理由を見ていくと、一般論として「四年制大学志向の高まり」「18歳人口の減少」などが多く挙げられている。また、工業系短大では「若者の自動車離れ」、福祉系短大では「介護職への関心の薄れ」といったように短大の専門性に関する要因も挙げられた。コロナ禍の影響としては「将来の見通しが立てにくいので、時間的猶予のある四年制大学でじっくり学びたがる受験生が増えた」「経済的事情で短大進学を断念」といった回答がある一方、「地元志向の高まりで短大志望者が増えた」という回答もあった。数は少ないが、「十分な人数が入学している」と回答した短大の理由は、「就職実績が高い」「専門分野について確かな実績を残している」「強みを効果的に広報できている」などだ。
次に、短大ならではの強み・魅力についても聞いてみた。結果はグラフ❷の通りだ。
一番多かったのは専門的な知識・技術の習得に関するもので、実に88%もの短大が挙げている。保育士、幼稚園教諭、栄養士、看護師、歯科衛生士、介護福祉士など、就職に有利な資格取得に力を入れている短大が多い。また、四年制大学と比べて小規模なため、少人数制で一人一人の個性と進路に合わせた指導が可能で、就職実績も高い傾向がある。
ほかに、短大の魅力として直感的に分かりやすいのは、「修業年限の短さ」と「学費」だろう。それぞれ58%、68%の短大が強み・魅力として挙げている。
修業年限が短いと、その分だけ早く社会に出ることができる。特に資格・免許が重視される職に就く場合、実務年数などに関わってくるので恩恵が大きい。修業年限が短ければ、当然学費も安く済む。私立の四年制大学と短大について、卒業までにかかる費用の概算を表❷に示した。あくまで概算だが、短大の学費は2年間で約202万円。4年間で約469万円かかる四年制大学と比べると半額以下だ。短期間であるため生活費を節約できること、早く就職して収入を得られることと併せて、トータルでコストに優れた進路といえる。
もっと深く学びたい場合は、四年制大学への編入学も
短大入学後、学びに関心を持ち、四年制大学でより専門性の高い研究をしたいと考える学生もいるだろう。また、まだまだ学歴社会で大卒・短大卒・高卒で給与体系に差をつけている企業・官公庁も多く、就職に際してやはり四年制大学に行けばよかったと考え直すこともあるかもしれない。そんなときは四年制大学への編入学という方法がある。意外かもしれないが、東北大学や法政大学などの難関大学を含めて、多くの四年制大学が短大からの編入学を受け付けている。四年制大学への編入学に力を入れている短大もあり、例えば近畿大学短期大学部では21年3月卒業生の93.6%が近畿大学ほか関西大学や同志社大学など、四年制大学への編入学を選択している。短大を2年間で卒業して四年制大学の三年次に編入学すれば、現役で四年制大学に進学した同級生と同じ年齢で卒業できる。また一般選抜では原則として前期と後期で1校ずつしか受けられない国公立大学も、編入学試験では複数受験可能であることも大きな特徴だ。
以上が、短大の現状と特徴・強みについての紹介だ。確かに短大は女性の高等教育の場としての役割を終えつつあり、校数・学生数ともに減少している。その一方で安価・短期間で教養教育・専門教育を受けられる上に卒業後の選択肢も多様という、独自の魅力がある進路であることが分かっていただけただろうか。
夏になっても志望校が決まっていない。学びたい内容が定まらず、まだ進路に迷っている。そんな受験生にこそ、短大という進路を選択肢のひとつとして頭に入れておいてほしい。
短大卒業後は4年制大学への編入も選択肢の一つに ー中央ゼミナール
短大卒業後の進路の一つに、4年制大学への編入がある。専門分野の学びをさらに深め、専門分野を生かすための語学や経営、PCなどのスキルを獲得できるほか、大卒資格を得ることで、その後の人生の選択肢が広がる。中央ゼミナール ステップアップサポート部部長の粕谷裕一さんに、編入制度のポイントを解説してもらった。
―編入とはどういった制度なのですか。
高校卒業以降の学歴を持つ人が、大学の3年次、もしくは2年次に入学するための制度です。新たなキャリアを2年または3年という短期間で修得できることが、編入試験を活用する最大の利点です。
―どのくらいの大学が編入制度を用意しているのですか。
大学の数でいえば、全大学の9割以上が何らかの募集を行っています。ただ、最上位の難関大では募集していない場合もあります。
また、受験資格も学部により大きく異なります。短大卒の人は4年制大学の在籍者よりも受験資格上はやや有利で、受験できる大学・学部が多いです。
―編入試験の内容は。
多くが大学3年次に入るための試験なので、専門性の高さが試されます。たとえば、経済学部では経済学の、文学部哲学科では哲学の試験が課され、内容は論述形式が一般的です。一般入試とは求められる質と力が大きく異なると言えます。英語は多くの大学で課されますが、学部の学問分野に関する英文を和訳させる問題の比重が高かったりと、こちらも一般入試とは傾向が異なります。
編入試験では、知識があっても論述力がないと得点できません。だからこそ中央ゼミナールでは、知識のインプットと論述のアウトプットを繰り返す授業スタイルを取り入れ、過去問の傾向を踏まえた「得点できる力」を身につけるための授業を行っています。
―編入試験を受けるまでの大まかなスケジュールは。
文系学部は秋に試験が集中しますので、前年の冬から動き始める人が多いです。まずは短期講習などで基礎力を身につけ、試験の半年前の4月からは、志望校を見据えた本格的な受験対策を始めます。ただ、理系学部は5、6月に試験があることもありますから、試験対策のスケジュールは人それぞれですね。
―編入試験を活用するメリットがあるのは、どんな人でしょうか。
短大や専門学校での学びをさらにステップアップさせたい人が大半ですが、4年制大学への進学で最終学歴を高めたい人や、大学入学時の専攻とは別の分野を新たに学びたい人が編入試験を活用しています。さらに深い学びを求め、一度入学した大学より上位の大学を目指す人もいます。
編入試験は受験者が少なく、一般入試より倍率が低いことが多くなります。試験のハードルは高く見えがちですが、論文型の試験では、適切に論理を組み立てる力があれば失敗することは少なく、十分に合格を狙えます。
また大学によっては併設短大の卒業生を「内部推薦」として優遇する編入制度を用意する大学もあります。
まずは短大へ進学してから、4年制大学への編入で第二・第三のスキルを目指すような戦略が、これからの多様性が求められる社会では大きな武器になるでしょう。
中央ゼミナールが発行する『まるわかり!大学編入データブック』(オクムラ書店)には、各大学の受験資格や試験日、選考方法などが一覧で掲載されている。憧れの大学に編入制度があるか、調べてみるのもいいだろう。