コロナ禍の中さらに進化、念願の長期留学を再開
「人間としての器」を広げる貴重な留学経験を提供したいーフェリス女学院大学

コロナ禍の中さらに進化、念願の長期留学を再開<br>「人間としての器」を広げる貴重な留学経験を提供したいーフェリス女学院大学

コロナ禍の影響で海外渡航が叶わなかった期間も、オンラインでさまざまな施策を打ち出してきたフェリス女学院大学。海外留学の再開に際して、今後の取り組みについてお話をうかがった。

取材 松平信恭(大学通信 )

フェリス女学院大学学長
荒井 真(Makoto Arai)
上智大学法学部法律学科卒業。上智大学大学院法学研究科修了。国際交流学部教授を経て学長。専門は比較法、ヨーロッパ法史、ヨーロッパ大学史。

国際部長 教授
近藤存志(Ariyuki Kondo)
筑波大学芸術専門学群デザイン専攻(建築デザインコース)卒業後、英国エディンバラ大学大学院博士課程修了。専門はイギリス芸術文化史、建築史、デザイン史。

コロナ禍を乗り越えて、いよいよ長期留学が再開

―コロナ禍で海外渡航が難しい時期が続きましたが、国によっては入国制限がかなり緩和されつつあります。現在の貴学における留学事情を教えてください。

荒井 現在、半年以上の長期留学については渡航可能な国では留学を再開しており、6月末の時点で11名が出発しました。これらはすべて海外に20大学ある協定校との交換留学として送り出しています。他にも自分でそれ以外の留学先を決める認定留学という制度もあり、そちらも留学希望者がかなりおりまして、面接などを順次進めています。ただ夏休みなどに行っていた1か月程度の短期留学はまだ実施していません。こちらも状況を見ながらできるだけ早期に再開したいと思っています。

近藤 長期留学については、万が一感染しても現地で適切な治療をうけて再び大学の学びに戻ることができます。しかし短期留学については、出発72時間前の検査で陽性になるとそこから出発が遅れ、現地で3〜4週間あるプログラムのうち半分は参加できなくなってしまうため、再開はまだ見送っています。本学の国際センターでは、毎月コロナの安全基準について確認を続けていて、来年春には再開できそうな見込みです。正式に決まれば積極的に送り出したいですね。

荒井 真 学長

―留学ができない期間はどのようなことを行っていたのでしょうか?

荒井 海外協定校の協力のもと、ZOOMなどのオンラインツールを利用して現地の学生と交流したり、単位認定する英語プログラムを実施してきました。また協定校が存在する国や地域の大使館、領事館、外務省の方々などに協力していただき、留学準備講座も開きました。これは、留学準備と銘打って、インドネシアなど普段あまり馴染みのない国の文化・歴史・観光などの知識や、現地のコロナ感染状況など、さまざまな情報を学生に提供するものです。留学に行った時と同じ体験ができるわけではありませんが、参加した学生からはとても興味深かったとの声が寄せられましたね。もちろん留学が再開できるに越したことはありませんが、経済的な事情で留学が難しい学生にとっても、オンラインツールが非常に有効な学びの手段になることもわかりました。

近藤 そうですね。またブルガリアやスペインなど、海外で日本語を学んでいる学生と、本学で日本語や日本語教育を学ぶフェリス生がオンラインで交流するケースもありました。こうしたオンライン交流の積み重ねと同時に、本学では「コロナ禍を留学の準備期間にしましょう」というメッセージを発信してきました。ですから前述の留学した11名の学生にしても、その呼びかけに反応してくれたのかな、と思っています。というのも、出発時点で以前よりかなり高いIELTSのスコアを持つ学生が出てきていることから、コロナ禍の期間、しっかり留学に向けて準備して自分を高めてきたことが見て取れます。コロナの発生から2年半、国際センターでは「感染しないためにどうすればよいか」を徹底的に周知するとともに、もし感染した場合にどうするかを保険会社との間で協議し、連絡態勢の見直しなどにも努めてきました。いまは安全を担保し、かつ学生・保護者に、感染リスクについて理解していただいたうえで派遣しています。

留学生活発表会

―長期留学や再開予定の短期留学も含めて、現在はどんな留学制度が用意されているのでしょうか?

近藤 長期では半年から1年の派遣交換留学と認定留学の制度があります。短期では夏季休暇と春季休暇を利用して、語学研修や現地実習といった留学プログラムを用意しています。また英語英米文学科の学生を対象に、1学期間を海外の大学で学ぶ「セメスター・アブロード」という留学プログラムもあります。こちらは、ニュージーランドのビクトリア大学に、新たにハワイ大学マノア校を加え、2校を派遣先にしたプログラムです。また本学では約20年前から海外インターンシップ制度を導入しています。海外企業や日本企業の海外支店・現地法人で職業訓練を行いながら、世界で働くことの喜びや意義について理解を深めてもらいます。

―海外留学に際して、費用面のサポート制度があれば教えてください。

近藤 派遣交換留学と認定留学については、給付型と貸与型の2種類の奨学金があります。英語圏の大学は授業料が非常に高額になることもあるので、本学名誉教授が創設した奨学金制度も利用できます。加えて現地での生活費にあてられる給付型奨学金もあります。学生は自分の希望する奨学金に応募し、それに対して国際センターの教職員が面接や成績等をチェックして厳正な審査を行って資格を授与しています。

―フェリス女学院大学が様々な留学制度や奨学金制度を整備している背景には、大学としてどのような思いがあるのでしょうか。

荒井 自分がかつて留学したときもそうでしたが、単身で海外に行く際には大きな不安を伴うものです。海外というアウェイな場に身を置くことは「自分がマイノリティになる」ということなんですね。この経験は、卒業後に一市民として外国の方とどう接していくのかを考えるいい機会になると思います。また留学先では、電話をつなげたり、市役所で手続きをするなど、親に頼っていたようなことも自分で対処しなくてはなりません。そんな環境では自分から踏み出さなければ物事が進みませんし、それが人の自立心を育みます。よく就職活動において留学経験が評価されるという話を聞きますが、それは語学力だけではなく「受け身でなく主体的に行動できる人間である」ことも評価されるのだと私は解釈しています。留学は異文化で生活して視野を広げたり語学力を向上させる機会というだけではなく、むしろ人間としての器が大きくなるチャンスでもあるのです。

交換留学生の歓迎礼拝

海外で暮らすという選択が「当たり前」の時代に

―フェリスで学んでいる海外留学生も多いとうかがいましたが、現在何名が在学しているのですか?

近藤 留学試験を経て入学した私費留学生が30数名、交換留学生が前期後期あわせて10名程です。もちろん大規模大学と単純比較はできませんが、在籍学生数に占める留学生の割合は他大学と比較しても高く、日頃から学内の至る所で留学生たちが日本人学生と交流する姿を目にします。彼女たちは非常に優秀で成績も素晴らしく、自国を離れて真剣に学ぶそうした姿は日本人学生に大きな刺激を与えてくれていると思いますね。

荒井 そうですね、現に昨年度の音楽芸術学科の総代は留学生でした。フェリスは奨学金制度が充実しているので、さまざまな制度を利用すると年間の学費は20数万円となります。そのためぜひフェリスで学びたいという留学生は多いのです。学内で外国人学生と交わることで日本人学生も刺激を受けますし、留学の疑似体験にもなるのでは、と考えています。

―昨今の国際情勢を鑑みて、ウクライナ人学生の受け入れも開始したとうかがいました。

荒井 本学は「For Ohters」(=他者のために)という教育理念を掲げています。他者に無関心でいてはいけない、という教育理念のもと何かできることはないかと模索していたところ、日本・ウクライナ大学パスウェイズという団体の会議に参加させていただき、関係部署と調整のうえ支援決定に至りました。本学は小規模なので受け入れ人数は最大2名となりますが、渡航費負担だけでなく滞在には国際学生交流会館を提供し、学費も無料としました。生活費も8万円程度の奨学金支給を検討しています。ウクライナでは日本のアニメやマンガを通じて日本文化に興味を持つ人が多く、日本語教育も盛んと聞きます。本学には日本古典文学やマンガ・アニメに関する授業がありますし、歌舞伎のような伝統芸能やデジタルミュージックについて学ぶこともできます。フェリスの幅広い学びは、ウクライナの学生からも興味を持ってもらえると確信しています。

―日本のフェリス生にとってもいい刺激となりそうですね。

荒井 おっしゃる通りです。いろんな学生がキャンパスにいることでフュージョン(融合)が起こり、何か新しいものが生まれるのではないかと期待しています。本学の学生にも一方的に「助ける」という考えではなくてむしろ「共に学ぶ」姿勢を大切にしてほしいですね。他者を助けるというのは、ただ助けるというのみならず、そのことを通じて自分が得るものも必ずあるものです。日本の学生もウクライナの学生も、双方がハッピーになれるプログラムにしたいと考えています。

国際部長 近藤存志 教授

―最後に、お二人からフェリスを目指す学生にメッセージをお願いします。

荒井 本学での4年間の学びを通じて、多様な体験をして「自分が変わった」という体験をしてほしいと思います。留学というのはその体験の最たるもので、ぜひ入学した暁には挑戦してほしいですね。また海外からの留学生も多く受け入れており、キャンパス内にはヒジャブを着けた学生がいたり、イスラム教の祈りをささげるスペースもあったりと、日本にいながら多様性を感じられると思います。ダイバーシティの時代と言われているように、海外から日本に来る外国人やさまざまなマイノリティの人のことを、相手の立場でしっかり考えられるような人間性を育んでほしいと思います。

近藤 私は仕事柄いろいろな国の学生と話をする機会が多いのですが、日本の学生はアジア諸国のなかでも「自分の将来像を日本だけの中で描いている」と感じます。韓国・シンガポール・台湾では「自国での就職」はいくつかある選択肢の中の一つに過ぎず、海外というものをもっと自然に受け止めています。受験生のみなさんの間ではコロナ禍の影響もあり、国際関係の学びがやや敬遠されているかもしれません。しかしいまや政治、経済などどんな分野もグローバル化なしに語ることはできませんし、国際分野の学びが途絶えることもありません。平常化すれば国際的な移動が戻ってくるのも時間の問題ですし、若い人たちほど、実際に海外に赴き、見て、学ぶことが非常に重要です。日本の学生たちの間でも、アジア各国の学生たちのように、当たり前に海外に出て行く感覚がもっと広がってくれるといいな、と思います。

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