いま見直される、安心・安全な共同生活。人と関わり合い、成長する。〝自立サポート”の生活環境とは

いま見直される、安心・安全な共同生活。人と関わり合い、成長する。〝自立サポート”の生活環境とは

大学進学で上京する学生たちに住居や食事を提供する学生寮や学生会館が、安全で安心して暮らせる場所の選択肢として近年注目を集めている。伝統ある男子学生寮として昭和30年に誕生した「和敬塾」の佐々木良夫氏、昭和29年に誕生しこれまで延べ1万人以上の女子学生を預かってきた「北園女子学生会館」代表の塚田陽一郎氏の両名に、実際の暮らしの様子や必要とされるルールやマナー、入居に際しての心構えなどについてお話をうかがった。


生活する場の空気感を よく見て、知ってほしい

―毎年どのくらいの数の学生が入居されるのでしょうか?

益財団法人 和敬塾・佐々木良夫氏

佐々木(和敬塾) 和敬塾では4棟の寮がありますが、毎年各寮20名ほど、全体で80名ほどの学生を迎え入れています。知り合いや先輩がいるとか、親が入っていたとか、先輩や友人、親戚などのつながりで知って入ってくるという方もいらっしゃいますね。同じように地方から上京してきた同級生、同じ寮に住む上級生、それに地域の方々なども交じり合いながら共同生活を通じて成長する、それが和敬塾だと我々は考えています。都会は孤独だとか怖いとか、そういう不安は親にも学生にもあると思うので、こうした出会いの場としても学生寮は安心につながっているのかもしれません。

株式会社北園会館 代表取締役・塚田陽一郎氏
株式会社北園会館 代表取締役・塚田陽一郎氏

塚田(北園女子学生会館) こちらの学生会館では毎年200名くらいですね。女性をお預かりするので、安心・安全に暮らすための体制―住み込みの女性職員が24時間常駐しているとか、セキュリティ面を重視する方が多いです。ある館生さんのお母様の話ですが、『娘を北園に入れてよかったと感じたことがあるんです』とおっしゃっていただいたんです。  聞けば、もう一人のお嬢様がアパート暮らしをしていて、たまたまお母様が泊まりに行った夜、キャッチセールスにドアホンを鳴らされとても怖い思いをなさったそうです。『企業名を名乗ってはいたけれど、本当かどうかわからないじゃないですか』と。やはり女性の一人暮らしとなると、こういった不安やリスクもあるのでお選びいただいているのだと思います。

―新入生の受け入れについては、何か事前審査などあるのでしょうか?

塚田 うちでは事前に必ず親御さんとご本人様に面接を行っていただいています。それは別に合否のための審査ではなく、実際に施設やスタッフの様子などを確認していただきたいからです。そのうえで不安な点をきちんとヒアリングし、学生会館の規則についても理解してほしい。また、親子のコミュニケーションの様子も見ておきたいですね。入館後、こちらからご実家に連絡を取ることもありますから。

佐々木 和敬塾では、面接か書類選考のどちらかを選んでもらいます。書類選考の場合でも、必ず後ほど電話で直接お話していますね。こちらも落とす目的ではなく、対話を通じて和敬塾を理解してほしいんです。相手の人となりも書類の文字だけではわかりませんし、こちらの様子も写真や文章だけではなかなか伝わりにくいので。

塚田 そうなんですよね。そういう空気感を伝えたくて冊子を作ったりウェブサイトも工夫していますが、やはり直接来ていただいて「自分たちが期待すること」と「学生会館が提供できること」が合致しているかどうか確認してほしいんです。 佐々木 私たちは1泊2,000円で泊まれる体験宿泊というプランを用意しています。共同生活や寮の雰囲気には向き不向きがあると思うので、ぜひ体験して双方納得のうえで入っていただければと思います。

―新入生たちはどのように交流したり友達を作ったりしているのでしょうか。

塚田 新歓シーズンには、出身地別やフロア別などでいろんな集まりを企画して、友達を作るきっかけ作りのお手伝いをしています。とは言え、女の子同士はこちらが介入しなくても食堂や廊下で一緒になったとか、ささいなきっかけで仲良くなってくれる子も多いですね。うちの新入生は大学生だけでなく予備校生や専門学校生などいろんな子が集まっているので、学校の枠を飛び越えて親しくなっているのを見ると、こちらも嬉しくなります。

佐々木 和敬塾では、新入生が先輩の部屋を訪れて話をする“部屋回り”と呼ばれる新歓の伝統行事があります。寮の上級生の部屋を順に回って、30分から1時間かけて話をするというものですが、初対面の上級生といきなり30分も話をするって結構ハードルが高いですよね? 先輩のなかには挨拶や礼儀を言いたてる人もいますけど、やっぱり彼らも仲間ができるのが嬉しいようで。この行事は、先輩の部屋で後輩と2人だけで話すので、それぞれがどんな話をしているかはわかりません。思っていたより大変だと漏らす学生もいますが、それでも彼らはやめないんですね。これで鍛えられるのか、ちゃんと出会いの場として機能しているし、結果として彼らの結束はすごく強い。毎年寮生の体育祭があるんですけど、異常なまでに盛り上がります。もちろんクールな人もいますが(笑)。やはり生活をともにしている者同士でないとわかり合えない連体感があるようです。

塚田 それはすごいですね。うちは女性の寮ということもあって、強固な一体感というよりもう少しゆるいつながりでしょうか。淡々と生活して卒業していく子もいれば、卒業後もグループでお花見だ女子会だと集まって、時々学生会館に顔を出してくれる子もいたりと、様々ですね。 人の目で見守り、支える。 でもお客様扱いはしない。

―保護者からはどのような期待や要望が寄せられますか?

佐々木 やはり親御さんもいきなり一人暮らしさせるのは無理かも、と思ってこういう寮を選択されるんだと思います。だから朝晩の食事が出るか、夜間も寮内に大人がいるか、などを確認なさいますね。あとは何かあったとき、例えば病気の時などを懸念しているようです。和敬塾の各寮には宿直の職員がいますので、風邪の時は病院に案内したり氷枕を出したり、食事をおかゆにしたりなどの対応をしています。

塚田 北園女子学生会館では各個室にフロントにつながるインターフォンがあるので、病気の時などは連絡を受けておかゆを部屋まで運んだり、近隣の病院を探すお手伝いもしています。お部屋にうかがうのも女性職員だという点は、安心感につながるようです。

佐々木 あと心配なさるのは、身の回りのことや対人関係でしょうか。なかには人付き合いが苦手だったり、掃除や洗濯などの生活経験が少ないような学生さんもいらっしゃいます。でもゴミの分別や掃除など、身の回りのことを自分でこなせるのが「自立」だし、対人関係は社会に出てからも逃れられない。だから寮という環境で生活することで、友達や仲間など、いろいろな人に揉まれることを親御さんも期待してるのかもしれません。

塚田 なかには「うちの子には厳しくしてほしい」「勉強ばかりしてきたので」などとおっしゃる親御さんもいらっしゃいます。でも、寮や学生会館は「しつけ」の場ではありませんし、学生をおもてなしするところでもありません。もちろんゴミ出しのやり方、掃除のコツなどはアドバイスしますし、お手伝いできることはサポートします。親の代わりにはなれないので、むしろ見守ったり相談に乗るほうに重点を置いてますね。朝晩はひとりひとりを挨拶で送り迎えして、顔色が悪かったら声をかける。卒業生に「一人暮らしを半分サポートしてもらえる環境だった」と言ってくれた子がいましたが、その通りだな、と思います。

共同生活で尊重すべき 最も大切なものとは?

―多くの学生が共同生活を営むうえで、どんな点に気をつけていらっしゃるのでしょうか。

塚田 みなさんに気持ち良く過ごしてほしいのですが、ホテルのように自由に、とはいきません。ですから門限を守るとか、外泊は事前に届け出るとか、ルールを守っていただくことに尽きると思います。またこちらの職員の指導や対応のやり方にも、不公平感やバラつきが出ないように気をつけていますね。その辺りは職員の間でベテランから若手へとノウハウが受け継がれているようです。

佐々木 和敬塾でも同様ですね。夜に騒がないとか、食事の時間を守るとか、当然の決まり事です。ただ、生意気盛りの年ごろの男子に、ルールの話って難しいところもあって。「ルールの遵守とはただ守ればいいのではなく、ルールの意味を理解し、尊重することだ」と説明するのですが、すんなりとはいきません。さらにマナーの問題もあります。マナーって人との接し方や考え方、つまり人間性の問題なんです。女子は身だしなみや人にどう見られるかなど早くから意識できていますけど、男子は就活の直前まで無頓着な子も多いんです。ですから数年前から専門家に来ていただき、就活生向けにマナー講座を始めました。すると1〜2年生も受けたいと言い出して、大勢が受講するようになる。すると寮の大人が注意しても聞かないことも、専門家に言われるとちゃんと改善するんです。これは目論見どおりでした(笑)。でもルールやマナーは今のうちに失敗しながら学んでおく方がいいと思うんです。社会に出てからでは痛い目にあいますから。

塚田 おっしゃる通り、どちらも社会人の素養として必要なことだと思います。当館の就職サポートという点でお話しますと、女性向けということもあり、近くにある資生堂美容技術専門学校にご協力いただいてメイクアップ講座を開きました。人への印象の与え方ですとか、細かいところまでお話いただいたようで、反応もよかったですね。

―進学で親元を離れるにあたって、不安を抱えている受験生も多いと思います。寮や学生会館の立場から、なにかアドバイスがあればお願いします。

塚田 アパートにしても学生会館にしても、家を出ることは人生のいい経験になると思います。新しい文化や価値観に触れることは視野を広げてくれますし、一度離れることで地元のよさに改めて気づくこともあると思います。私自身は東京・板橋で生まれ育ち、社会人になって初めて地元を離れましたが、その数年間はかけがえのないものだったと感じています。

佐々木 地元の高校から地元の国立大学に進学して、そのまま地元に務めるのもいいのですが「地元のことしか知らないままでいいのか?」と一度考えてみてほしいですね。いずれ地元に戻って働くにしても、一度は都会や別の地方の空気を知ることは、視野の広がりや人生の経験値としてプラスになると思いますよ。

塚田 知らない土地で生活する不安については、こうした寮や学生会館のような安心・安全な施設を利用することで一人暮らしを半分サポートを受けつつ、将来自立するための経験値を積んでもらえたらいいですね。

佐々木 そう、寮や学生会館には大人もいるし仲間もいる。何かあった時に一人で抱え込まなくていいんです。周りから助けられたり、他者と向き合ったりと、人と接しながら成長することを求めている人にはおすすめできる環境だと思います。

公益財団法人和敬塾

東京都文京区目白台1-21-2
Tel: 03-3941-7446
https://www.wakei.org/

昭和30年に誕生した由緒ある男子学生寮。都心の好立地にありながら7,000坪の広大な敷地を有し、緑豊かな敷地内部では東京都指定有形文化財である和敬塾本館(旧細川侯爵邸)など貴重な建築を見ることができる。寮は東寮・西寮・新南寮・北寮の4棟からなり、約400人の学生・大学院生・留学生が共に暮らしている。全室個室で冷暖房完備。

入塾金  72,000円
年間管理費 45,360円
月額塾費  東寮:96,096円 西寮・北寮:99,264円 新南寮:98,208円

⃝月額塾費には食費(毎日朝夕2食)、水道光熱費、インターネット使用料を含みます。 ⃝無利子の貸与奨学金があります。また教養講座(14講座)に無料で参加できます。

 

北園女子学生会館

東京都板橋区加賀2-6-1
Tel: 03-3579-8111
https://www.kitazono-j.co.jp

女子学生の安心・安全な一人暮らしを支える北園女子学生会館では、大学院・大学・短大・各種学校に通う女子を全国から受け入れている。約600名が暮らす館内は全室個室で、各部屋にベッドや机などの家具、エアコンや冷蔵庫などの家電も備わっている。個室にはミニキッチンが備わり自炊も可能だが、食券制で食堂も3食利用可能。女性スタッフが24時間常駐する。

入館金

1年●150,000円  2年●180,000円

3年●200,000円  4年●220,000円

保証金

100,000円(ルームクリーニング費40,000円を償却)

室料(月額)

リノベーション
(バストイレ別)10-11F

62,000〜68,000円(向き・角部屋などの条件で価格が異なります)

スタンダード
(3点ユニット)1F-9F

49,000〜60,000円(階数・向き・角部屋などの条件で価格が異なります)

管理費(月額)

20,000円

⃝室料・管理費は若干割引になる年払いもご利用いただけます。
⃝この他に更新料、給水給湯費、電気料金(個別契約)が発生します。
⃝ピアノ室は時間貸し(アップライト無料)で利用できるほか、持ち込みも可能です(別途要契約)

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