Be a Change Maker!
社会変革を担うグローバル・シティズンを育成するー清泉女子大学地球市民学科

Be a Change Maker!<br>社会変革を担うグローバル・シティズンを育成するー清泉女子大学地球市民学科

清泉女子大学が2001年に創設した地球市民学科は、現在でも国内唯一のユニークな学科だ。名称もさることながら、「思考の概念・思考のツール」となる「グローバル・シティズンのための101のコンセプト」を駆使した教育に独自性があり、さまざまなグローバル課題の解決に向けた知の鍛錬が行われている。実際に学生指導にあたる安斎徹教授と、2年生の冨田碧岬さんに学科の魅力をうかがった。

取材・文 鈴木秀一郎

コンセプトを理解できると日常生活にも活かされる

―冨田さんは、なぜ地球市民学科を志望したのですか。

冨田 「101のコンセプトって何だろう?」という純粋な興味から、オンラインで開催された地球市民学科のイベントに参加したことが始まりです。小中高を通じて、一問一答のように正解を出すことが求められ、その答えを覚える努力を重ねてきましたが、答えや考え方は多様であっていいのだと認識できたことが大きな転機になりました。入学後の勉強スタイルもイメージできたため、それ以来、地球市民学科が第一志望になりました。

安斎 「グローバル・シティズン育成プログラム」という、コンセプトを切り口にして社会問題を考える高校生向けのワークショップですね。そのときは「先入観」や「システムダイナミクス」といったコンセプトを用いて、パンデミックにどう対応するかがテーマだったと思います。その後、実際に入学してみていかがですか。

冨田 1年次から物事を多角的に考える練習を繰り返したことで、視野の広がりを実感しています。固定観念にとらわれずに従来とは違う視点に立ち、ときには一歩引いて広く物事を捉えようとすることで、新たに見えてくる世界があると感じています。授業はコンセプトを使って社会問題を考察するケーススタディーが中心ですが、日常生活でのメリットも少なくありません。例えば「損失回避」というコンセプトを学んだことで、店舗のキャンペーン情報などに接した際に目先の利益に踊らされることなく、他の選択肢を含めて慎重に考えるようになりました。また、「情報の質」というコンセプトを学んでからは、メディアが発信する情報を“鵜呑み”にせず、関連する情報も参考にしながら、本当に正しい情報であるかを見極めようとする意識が高まっています。

安斎 人々の思考にはクセがありますので、コンセプトを学ぶことで学生が自らのクセに気づき、日々の行動が変化していく好例ですね。こうしたコンセプトの活用は、世の中では無意識に行われていますが、無意識を意識化することに意義があります。物事を考える際にコンセプトを使いこなせるようになるにつれて、冨田さんのように日常生活でも役立つと実感できますし、学習効果の向上にもつながる好循環が生まれるのです。

正解のない問いだからこそ挑む価値と楽しさがある

―授業で安斎先生が意識していることはありますか。

安斎 授業で扱うのは正解のないテーマばかりのため、教員が何らかの解釈や自論を正解として押し付けることはありません。また、学生の考えに対して「正しい」「正しくない」といったジャッジも行いません。目的は正解を探すことではなく、道筋の多様さを認識すること。学生は自分なりに理解を深めつつも、自分とは異なる考え方や解釈の仕方の存在を認識することで、自分の考えも絶対ではないのと気づくことができます。

冨田 そうですね。ひとつの物事に対してひとつの考え方しかできなかった高校時代から、多角的・複眼的に考えられる思考回路へとバージョンアップされたと思います。頭の回転が速くなり、気づきの感度が高まった自負もあります。さらには、思考プロセスそのものに「逆転思考」などのコンセプトが活かされて、新たな考えが導き出されることもあります。視野の広がりは多くの気づきにつながり、それだけ考慮すべきポイントも増えるのですが、ふとした気づきが課題解決のヒントになることもあり、“考えること”自体が面白く感じられるほどです。

安斎 例えるならば、かつての教育はジグソーパズルのような要素が強く、ひとつのピースを当てはめる“正解”はひとつしかありませんでした。しかし、現代において求められているのはレゴ型の教育です。絶対的な正解がない中で、試行錯誤しながら多くの人が納得できるポイントを模索する教育であり、そのひとつがコンセプトの授業です。正解がない分、“スッキリ”と腑に落ちる感覚は味わいにくいかもしれませんが、そもそも社会には正解のない問いばかりです。社会の“モヤモヤ”を疑似体験できる授業とも言えますし、体験するからこそ、実社会に出てからの対応力にも活かされるのです。

興味関心の広がりが未来の可能性の広がりに

―冨田さんからは今後の目標を、安斎先生からは受験生へのメッセージをお願いします。

冨田 私はコンセプトを学ぶにつれて、「ないものから新しいものをつくる」という考え方に魅力を感じるようになり、今後は「アップサイクル」や「エシカル素材」の可能性を探究していきたいと考えています。一方で、日本語教員課程も履修しており、子どもの教育にも興味があります。日本も高度な英語力が求められる社会になりつつありますが、まずは日本人として日本語をきちんと理解しておきたいですし、子どもたちにも正しい日本語を身につけてほしいのです。海外で日本語教師として活躍する道も拓かれますし、将来に向けて選択肢を増やしておきたいと思っています。

安斎 学生が大学で学業に励む目的は、決してひとつである必要はありません。それこそ正解はありません。冨田さんのような興味関心の広さは素晴らしいことで、さまざまな分野に目を向け、視野を広げて社会に出ることが大切なのだと思います。私は大学教員になる前は28年間ビジネス界にいましたが、閉塞感に包まれた現代において期待されているのは、幅広い視野を活かして社会や企業に変革をもたらし、未来を変えられる人材。いわゆる「チェンジメーカー」です。その資質を養うカギになるのが、地球市民学科で学ぶ「グローバル・シティズンのための101のコンセプト」であり、2021年度・2022年度と継続して一般財団法人三菱みらい育成財団の助成プログラム「21世紀型 教養教育プログラム」にも採択されています。2021年度は44件の申請に対して10件が採択され、旧帝大を筆頭とする国立大学や難関私大も含まれる中、本学は女子大で唯一の採択校となりました。今後も101のコンセプトという地球市民学科のストロングポイントを最大限に活かしながら、学生の無限の可能性を伸ばしていきますので、受験生の皆さんも大きな期待感を持って飛び込んできてほしいですね。

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