「本質の理解」を目指す取り組みが「面倒見の良さ」につながるー東京工芸大学

「本質の理解」を目指す取り組みが「面倒見の良さ」につながるー東京工芸大学

東京工芸大学は「面倒見が良い」「小規模だが評価できる」大学として、高校教員から高く評価されている。その秘密を探るべく、授業評価アンケートで学生からの支持を集める越地福朗准教授(工学部・電気電子コース/電波システム工学研究室)にインタビューを実施。「本質の理解」を促すための数多くの仕掛けが見えてきた。

―1年生が基礎的な内容を学ぶ「物理学」の授業で、越地先生は学生から高く評価されています。どんな授業を行っているのですか。

授業のアウトラインを「ワークシート」として事前に配布し、そこに書き込みながら講義していくスタイルを採っています。それが学生から評価されている一番の理由だと思います。本質的なことを分かりやすく噛み砕いて伝えることを意識して、入学後に右も左も分からない状態の学生が、迷子にならないような授業を心がけています。

授業ではスクリーンに私の手元を映して、赤ペンで一つ一つ説明を書き加えていきます。学生は黒板を見てノートを取る代わりに、ワークシートに赤字の内容を同じように書き込みながら受講します。こうした方法により、「全員が一番前の席で授業を受けられる」状態を作り出せています。

授業中に質問が出やすいのも私の授業の特徴です。こまめに10分に1回ぐらいは「ここまでのところで質問のある人いますか」と問いかけているので、問われる範囲が狭く、学生も質問しやすいのだと思います。

私の赤字が入ったワークシートの完成版は、授業後に全員にオンラインで共有しています。さらに、授業はすべて録画して受講生に公開しています。学期の後半や試験前の復習だけでなく、在学中はいつでも見直せるので年次が進んだ際の学び直しにも役立てることができます。

―学生目線で、学びやすい工夫をされているのですね。

学生に「なるべく良い環境で学んでほしい」という思いがあります。今は感染症の関係で登校できない学生も多いですし、介護などさまざまな家庭の事情を抱える学生もいます。だからこそ、全ての授業内容をオンライン上でアーカイブとして公開することで、たとえ大学に来られなくても学修を継続できるようにサポートする体制を整えています。

―成績評価も先駆的でユニークな方法を採っていますね。

「物理学」の授業では担当教員が話し合った結果、従来のような一発勝負のペーパーテストではなく、試験・課題について1週間かけて取り組む方法を採っています。単なる暗記や計算に留まらず、さまざまなことを学び、自ら考え答えを導き出していく力を身につけ、自分の引き出しにしてほしいという思いからです。物理学は扱う分野の幅が広いので、学修を通して多様な課題に対するアプローチの方法を考えながら、「探究する力」を高めてほしいと考えています。

実際の試験では複数の問題を提示し、それらに1週間で取り組んでもらいます。問題数はかなり多いですが、調べるのも、友達や教員にたずねるのも構いません。東京工芸大学には、授業で分からなかったことを1対1で教えてくれる「学修支援センター」という非常に優れたシステムがあります。こうした仕組みを「自分自身の家庭教師」のように活用しながら学ぶのもいいでしょう。

大切なことは自ら行動し、考え、1週間かけてしっかりと学ぶことです。分からないことがあっても、勉強して最終的に知識として定着し良い点数が取れればいいのです。文系学部のレポートのような評価の形ですね。海外の大学では、理系の科目であっても1〜2週間かけてレポートにまとめ、それをもとに成績評価するのが主流です。文部科学省も理解度や達成度を段階的に評価する方向性を示しており、そうした新しい成績評価の方法を先取りした形だと言えます。

―電波システム工学研究室での研究についても教えてください。

電波・光を含む「電磁波」をキーワードに、5G、6Gなどの次世代通信システムに関わる「アンテナ」。電波で非接触に電力を送る「ワイアレスエネルギー伝送」。電波で物を見るための「センサー」。これら3つを研究の柱として、幅広い研究テーマを扱っています。

私の研究室では「この研究をやりなさい」ということを学生に一切言いません。さまざまな研究事例を見てもらった上で、大学生の柔軟な発想でやりたいことのアイデアを出してもらい、相談しながら研究テーマを決めていきます。

私の研究室では、学生と私が二人三脚で研究を進めていくスタイルを取っていて、週に1回は、報告してもらっています。報告を通じて、1週間の間に蓄積された「つまずき」「困っていること」を一緒に解決して、次に何に取り組むかを確認する時間にしています。

単なる透明なガラス板に見えるが、これも越地研究室の最先端の研究成果。電気を流す「透明な膜」がついており、ガラスの表面がアンテナの役割を果たす。実用化されれば、外観に影響を及ぼすことなくスマートフォンや自動車の窓ガラスへアンテナを搭載することが可能に。

―研究指導で大切にしていることはありますか。

学生の研究成果が形になるようにサポートすることを大切にしており、成果がまとまれば国内学会や国際会議で発表します。最初は私が「お手本」を示しながら論文の形にまとめていきます。

研究は3年後期から始まるのですが、早い人は3年生のうちに学会発表を経験します。今の4年生も、6人中2人が3年生で発表を行いました。せっかく研究をやるわけですから、やりたいことに楽しく取り組んでほしいですし、自分の研究が世の中に通用するという経験を全員にしてほしいと思っています。

きめ細かく成長を支えるCA制度や能力別クラス

―面倒見の良さにつながる大学全体での仕組みは。

カリキュラムアドバイザー(CA)という制度があります。教員一人が5〜10人ほどの学生を担当し、学修面・生活面の両方から学生の困りごとをサポートします。特に1年生は授業を受けることで精一杯の学生も多いので、高校の担任制に近いシステムとして、3〜4週間に一回面談を実施することで、なるべく早い段階からフォローするようにしています。

400人を16クラスに分け、学力に合わせた授業を展開しているのも特徴ですし、情報・プログラミングに興味があって入学した文系出身者や数学が苦手な学生に対しては、補習授業でバックアップする体制もあります。

あとは、何よりどの先生も一生懸命です。学生が学会発表で賞をもらって喜んでいるのを見ると私も嬉しいです。誰でも安心して学べる環境が整っていると思います。

―最後に、高校生に向けてメッセージをお願いします。

東京工芸大学の工学部では、さまざまな進路へと展開できる柔軟な「コース制」を敷いています。学修支援センターやCAなど支援体制も充実しており、将来の可能性を広げられる大学です。学園祭やオープンキャンパスへ遊びに来ていただき、進学先の選択肢としてもらえると嬉しいです。皆さんにお会いできるのを楽しみにしています。

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