学生も企業も手探りの中で行われた22年卒の就活
2022年卒の大学生は、コロナ禍で全面オンライン化された就活に直面。キャリアセンターも対応に追われた。それでも就職状況は、学生とキャリアセンター双方の頑張りにより、前年並みに落ち着いたようだ。
コロナ禍で大学生の就職率は下がり続けている。文部科学省が発表している4月1日時点の就職率によると、就活が本格化する春先にコロナ禍に見舞われた、21年卒が前年を2P下回る96.0%。大学3年生夏のインターンシップから始まり、全ての就職活動のスケジュールにおいてコロナ禍の影響を受けた22年卒は95.8%だった。
コロナ禍で就活に苦労する大学生の姿が思い浮かぶが、実際にどのように行われていたのだろうか。22年卒の状況について、大学のキャリアセンター職員の話とともに振り返っていこう。
近年の就活の始まりは、3年生夏のインターンシップ。同じコロナ禍での就活でも、21年卒の学生は、対面による夏のインターンシップに参加できていた。しかし22年卒からは、インターンシップはもちろん、企業説明会や面接など、ほぼ全ての就活プロセスがオンラインに置き換わった。文化放送キャリアパートナーズ就職情報研究所所長の平野恵子さんは言う。
「オンラインになってハードルが下がった夏のインターンシップに、数多く参加する学生がいる一方、キャンパスが閉じているため、他の学生の就活の動きが見えないことからスイッチが入らず、ほとんどインターンシップに参加しない学生がいるなど、就活の活動量において2極化したことが22年卒の特徴です」
キャリアセンター職員からも、「早期からインターンシップに積極的に参加して内定につなげる学生がいる一方、オンライン授業により周りの動きが把握できず出遅れるケースも見受けられた」「キャンパスに来る機会が少なくなり、学生の就活の動きが見えにくくなり、就活に出遅れた学生もいた」「先輩や友人と情報共有できていたものが、オンラインで限定的になったことから、周囲とのコミュニケーション不足に不安を感じる学生が増えた」などの声が聞こえてきた。
そもそもコロナ禍そのものに対するメンタル面も大きな就活の阻害要因になっており、「コロナで気持ちが落ち込む学生も多く、就活に身が入らないことから、アクティブ層とノンアクティブ層の2極化がさらにすすんだ」と話す職員もいた。
全面的にオンラインに切り替わり、学生も企業も手探りの中で行われた22年卒の就活。コロナ禍は、就活における学生を取り巻く環境の大切さを浮き彫りにしたようだ。
オンライン化が業界・企業選択に影を落とす
企業説明会などの情報収集の場もオンラインになった。体温を感じられないコミュニケーションでは、実際の雰囲気を体感できないことから企業の熱意を感じにくく、オンライン化により、就活においてとても重要な業界・企業研究が深めにくいという弊害が生じた。さらに、複数の内定企業から入社先を絞る際も、企業を訪ねる機会が少なくなったことから決め手に欠け、迷う学生が見受けられた。
就活の現状や進め方、業界・企業の情報収集に関して苦労する学生は多く、学生同士や、学生と教職員あるいは卒業生との対面によるコミュニケーションを希望していたが、コロナ禍でかなわなかったことが、22年卒の就活を厳しいものにした。
就活のプロセスの大半がオンライン化されたことにより、大学もオンライン特有の対策を進めてきた。その一つに、自己PRのための動画制作がある。動画の提出が必要な企業が増えており、工夫を凝らした高いレベルの動画が求められるため、学生とキャリアセンター職員ともに初めての対応に苦労したという。
就活において大きなウエートを占める面接のオンライン対策も力を入れ、学生はオンライン面接に慣れていった。しかし、オンラインが当たり前のものになった結果、最終面接を対面で行う企業では、学生が戸惑うケースが少なくなかったようだ。
求める資質はコミュニケーションと課題解決能力
コロナ禍でも変わらなかったのは、就活成功のカギとなる、企業が学生に求める資質。キャリセンター職員が口を揃えて言うのは、「近年、ジョブ型採用が言われるが、即戦力としてのスキルより、将来性や人柄を重視するメンバーシップ型がまだ主流」ということ。
学生に求められるポテンシャルは、急激に変化する社会に柔軟に対応できる力や自ら積極的に動くことができる力、さらに周りの人を巻き込みながら働くことができる力。つまり、コミュニケーションと課題解決力に収斂される能力が求められていたということだ。
このような能力は、授業やクラブ・サークル活動、ボランティア、アルバイトなど、自らがおかれた環境において、社会性を持って人とかかわることから身につくものであり、そうした経験をしてきた学生が内々定を得られるというのは、コロナ禍の就活であっても変わらないところだ。
コロナ禍2年目で就職率下落に歯止めがかかる
ここまでコロナ禍で苦労する学生の就活状況をみてきたが、実際の就職率はそれほど悪くない。22年卒の就職率が下がっていといっても、下がり幅は0.2ポイントとわずかだ。その背景には、安定した求人環境がある。リクルートワークス研究所の調査によると、22年卒の求人倍率は、20年卒の1.83倍から1.50倍に落ち込んだが、それでも、08年に起きたリーマン・ショックの影響で11年卒から4年間続いた1.2倍台に比べれば高い。就職率も11年卒の91.0%を大きく上回っている。
求人に関して、航空、旅行、外食など、採用を減らしたり無くしたりする業界・企業を目指す学生には厳しい状況だったが、コロナ禍でも業績が好調な業界・企業があり、さらに、採用を再開する業界・企業もあったことから、採用環境は上向きと捉える大学もあった。
コロナ禍という大変な逆風の中で学生にとって厳しい就活だったが、安定した求人環境とコロナ禍への適切な大学の対応により、取材対象大学の大半は、22年卒の就職率は21年卒を上回ると回答した。あるキャリアセンターの職員は、「学生と大学ともに、2年目となったコロナ禍の就活にあらかじめ準備をして臨めたことで、納得のいく進路決定をした学生が増加。前年を上回る就職率になった」と話している。
2023年卒の大学生の就活状況
2023年3月卒生の就活は、コロナ禍で3年目となり、学生、キャリアセンター、企業それぞれの対応がこなれてきた。3年ぶりの就職率の上昇が見込まれる、23年卒生の就活状況について検証した。
23年卒の大学生の就活は6月からの選考開始と内々定出しをもって山場を越えた。外資系など早期の採用を進める企業を除き、3年生6月頃の夏のインターンシップ説明会から始まり、3月からの企業説明会を経てここまで、多くの学生が約1年間の長丁場を乗り切ったことになる。
リクルートワークス研究所によると、23年卒の求人倍率は22年卒の1.50倍から1.56倍に上がり就職環境が好転。キャリアセンターの職員も、「相変わらず大企業の厳選採用は続いているが、求人倍率の上昇など採用条件は好転している」と話し、企業の採用活動におけるコロナの影響は弱まったとみている。
23年卒の学生は、就職環境以外でも22年卒より恵まれた状況にある。文化放送キャリアパートナーズ就職情報研究所所長の平野恵子さんは言う。
「23年卒の学生は22年卒の先輩から企業の動きを聞いているので、就活をしやすかったと思います。受け入れ側の企業も2年目で計画的に採用活動をしたようです。キャリアセンターにも情報が集積されたので、支援プログラムに落ち着きがありました」
実際、コロナ禍で進んだ就活の変化について、「オンライン選考が続きスケジュールが組みやすくなった」と感じるキャリアセンターの職員は多い。
23年卒生の就活の特徴として、3年生夏のインターンシップへの参加が定着し参加者を早期選考する企業が多くなり、早期に内々定を得る学生が増えたことが挙げられる。一方、出遅れた学生はなかなか決まらないという、就活における学生の2極化は23年卒でも見られる傾向のようだ。
これまでのコロナ禍における就活の課題も継続しており、学生時代に力をいれたこと、いわゆる“ガクチカ”の不足を指摘する職員もいる。学業面はオンライン授業の充実でほぼ解消されたが、クラブやサークル、ボランティアなどの課外活動は一部制限が残っているからだ。もちろん、企業もこの点に考慮して選考を行うが、それでもガクチカのアピールに苦慮する学生がいることは事実のようだ。
求人倍率の上昇、学生やキャリアセンター、企業が新しい就活様式になれたこともあり、23年度の就職率は3年ぶりの上昇が見込まれるが、前出の平野さんは、こんな指摘をする。
「大手企業は即戦力の人材を転職市場に求める一方、ムリをしてまで新卒を採用しない風潮になっています。新卒一括採用に変化が見られることから、大手企業の就職者が伸びないかもしれません。さらに世界情勢や円安などの外部要因もこれからの企業の採用活動に影響する可能性があるので、23年卒の就職率は意外に上がらないかもしれません」
23年卒の学生に追い風が吹いているとはいえ、最終的な就職率については予断を許さない状況のようだ。
就活生のお悩み事
就活は今後の人生を左右する重要なもの。活動を進める中で様々な悩みを頂くのは当然。ここでは、大学のキャリアセンターが相談を受けた就活生のお悩みと、それに対するアドバイスの例を紹介しよう。
-やりたいことが見つからない!
大学での就活基礎講座に参加したり、アドバイザーに個別相談をしてみる。また、「業界地図」や「就職四季報」といった資料媒体を活用した業界研究の方法について学ぼう。
仕事や就職活動の自分の軸を見つけ、社会人としての表面的(顕在)ニーズから本質的(潜在)ニーズを深掘りする事がポイント。
-コロナ禍で大学でやりたかった事ができず、就職活動で「学生時代に頑張った事(“ガクチカ”)」のアピールができない!
コロナ禍で制限を強いられた中であっても、アピールする事が全く無い訳ではない。留学やボランティア活動等、特別なエピソードが必要なのではなく、どんな事でも自分自身が頑張った経験、如何に行動したか・行動できたかが成長に繋がっている。
できなかった事よりも『コロナ禍で、これだけはやった!』というものを見つけよう。
-オンライン選考を経て最終選考が初めてとなる対面型で緊張する!
オンラインでも対面でも基本的には同じ面接。これまで通りに臨めば大丈夫。対面面接ならではの基礎的なポイント(入退室のマナー等)を押さえよう。
-周りが内定を決めていくことに焦る!
企業の採用は年度末まで行われているので焦らなくて大丈夫。落ち着いて、自分がやりたい事について考えるのが大切。人と比較する必要は無い。
但し、選考が上手くいかない理由を分析する必要はあるので、エントリーシートや、面接でのやり取り等を振り返り、キャリアサポート部門に相談しよう。
-内定を複数社から貰えたが、就職先の最終決定に迷っている!
改めて企業研究をすることに加えて、OB・OG訪問や社員訪問等で働いている人の“生の声”を聴いてみよう。そして、集められた情報を整理して就職先候補を比較する中で、自分が大切にしたいものは何なのか、自分が働きたいと思う企業は何処なのかを改めて考えてみよう。
CareerCenter’s Voice!
法政大学
本学キャリアセンターでは、学生が希望する進路の実現に向けてきめ細やかな支援を行っています。大学の様々な学びや体験が社会に出てから役立つコミュニケーション能力や主体性の涵養に繋がると考え、低学年からのキャリア形成科目やインターンシップ参加支援等を用意しています。
これらのプログラムを提供することで自ら考え、行動する自主性を育みます。
同時に、迷いや不安を抱える学生には個別相談やワークを通じて、学生が自発的に動き出せるよう寄り添った支援を行い、学生の気づきと行動を促します。
自発的な行動を促す多種多様なプログラムと、学生が自ら一歩を踏み出せるよう一人一人に寄り添ったサポートの両軸での支援が本学のキャリアセンターの特徴と言えます。
立教大学
立教大学は、キャリアを『仕事・就職を含めた、自立した個としての自分らしい人生の在り方』と捉えており、就職=ゴールだとは考えていません。学生が卒業後の人生において、自らの意志によって将来を見据え、主体的に考えながら、自分でキャリアを切り拓いていく力が大切です。その力は、学生生活での学びや経験を基礎として築かれるものです。
本学では、学部とキャリアセンターが連携して1年次生から参加できるプログラム(※)を多数展開し、学生が多くの経験や多様な価値観に触れる事で「学ぶ力」「考える力」を身につけるキャリア支援を行っております。
また、高校生に学部選択やキャリアについて考える機会を提供する為に、2020年から全国の高校生向けにYouTube LIVEも実施しており、好評を得ています(満足度90%超)。
※プログラム例
●立教型インターンシップ
(キャリアセンター主催の企業・行政・団体などと連携した就業体験型インターンシップ)
●社会を知る講座
(ビジネスの最新トレンドをテーマとした講座)
●学内OB・OG訪問会
(様々な業界・企業等で活躍する卒業生と話せるプログラム)
●スタディツアー
(企業訪問プログラム)
神奈川大学
神奈川大学では、キャリア教育と就職活動の双方で学生の進路に対するサポートを行っています。
キャリア教育として、「①自立した良識ある市民としての判断力と実践力」「②国際的感性とコミュニケーション能力」「③時代の課題と社会の要請に応えた専門的知識と技能」の3つを養うことをディプロマポリシー(卒業認定・学位授与の方針)に掲げ、「キャリアデザイン」、「インターンシップ(国内・海外)」を全学部対象の共通教養科目として開講しています。
就職活動では、低年次から卒業後の進路を意識させる就職ガイダンスと、大学教育や社会進出後に必要となる汎用的能力『問題を解決する力(思考力、姿勢・態度、経験)』を可視化するアセスメントを実施しています。
3年次からの就活基礎講座では、就職活動のスケジュールを確認しながら活動の現状と対策を説明しています。その他、神大就活ゼミ、エアライン対策講座、インターンシップ対策講座、SPI対策講座、公務員志望者講座、障がい学生・留学生対象講座、U・Iターン地方就職相談会、内定者・卒業生との就活相談会等に力を入れています。本学は学生の4割が地方出身者である事から、他県の自治体とU・Iターン就職促進に関する協定を締結する等、特にU・Iターン就職支援に力を入れています。
就職講座・セミナーに加え、本学独自に主催している業界研究フェア、合同企業説明会では、就職実績がある企業を中心に年間1,000社以上をお招きしております。
更に、キャリアコンサルティングの国家資格を持つ就職アドバイザーによる個別相談も充実しており、年間で学生2人に1人(延べ人数)が就職相談を利用するほど活用率が高い状況です(2022年3月期の月間相談件数:3キャンパス合計2,126件)。
東洋大学
本学では、学生からの相談に対してその場限りの対処(how)ではなく、企業の採用担当者の意図(why)を学生に考えさせ、その上で妥当な内容(what)や回答の手順(how)を示すことで、学生自身が考えて動き出せるように支援しています。また、キャリアデザインに基づき、1・2年生を対象としたキャリア形成支援プログラム、3・4年生・大学院生(博士前期課程、修士課程)を対象とした就職活動支援プログラムを実施し、学生の自立・職種選択をサポートしております。
2021年度からは1年生を対象としたDX(デジタルトランスフォーメーション)人材育成の為の新キャリア支援プログラム『東洋大学キャリア・オナーズプログラム』を開始し、低学年の内から積極的にキャリアを考えて自走できる学生育成の支援を行っております。
昭和女子大学
昭和女子大学は『就職に力を入れている女子大』として一定の評価を得ていると自負しています。それは、就活生の為になる事、役に立つ事は何でもやるようにしているからです。
例えば、学生が職業・就業を中心に据え、自分の生き方を設計する力を身につけられるよう、4年間を通じて充実したキャリア支援を行っています。キャリア科目、キャリア支援プログラムに加え、独自の「社会人メンター制度」では、幅広い分野で多様なキャリアを積んだ約370人の社会人女性と直接出会い、対話することで、学生は将来の自分をイメージすることができます。
このような取り組みが奏功し、2021年3月卒業生(2020年9月卒を含む)の実就職率は、卒業生1,000人以上の女子大学で、2011年から11年連続で1位を獲得しました。
また、『面倒見の良い女子大』ランキングはトップを維持しています。高校生とその保護者、高校の進路指導の先生にはぜひその辺りを見て頂きたいです。オープンキャンパスに来て頂ければ、それについてのご説明は勿論、個別にキャリア支援センターへのお問い合わせを頂戴しても対応させて頂きます。どうぞよろしくお願い申し上げます。
関西学院大学
本学のキャリアセンターの特徴は『よりそう、きめこまやかなサポート』です。
学生の不安や悩みは一人ひとり異なり、同じ質問内容でも学生によりその背景、必要なアドバイスは異なる場合があります。学生数の多い大規模大学だからこそ一人ひとりに寄り添った丁寧なサポートを心掛けています(2021年度学生対応件数:28,101件)。予約制の個人面談では、一日最大22名のキャリアカウンセラーがキャンパスで学生対応に当たります。キャリアカウンセラーには、定期研修を実施し、学生支援の目線合わせを日頃から行っています。
また、カウンターでの相談に加え、コロナで大学に来られない学生の為に電話での「なんでも相談」をキャリアセンター職員全員で対応しました。さらに、留学中の学生や事務室閉室時間中の対応として、AIによるチャットボットを導入しております。
コロナ禍以降、オンライン中心のキャンパスライフによりキャリアセンターとの間に心理的な距離を感じてしまっている学生の為、就職資料室を職員と親しみのある距離感で気軽な相談ができる空間に衣替えする等、文字通り『学生によりそうキャリアセンター』を体現しています。
さらに、学生自身が自走し、就職活動をはじめ自分の進路を主体的に切り拓いていく為に「将来の事、キャリアの事をじっくり考える」機会としてキャリア教育にも力を入れ、キャリアセンターによる全学年受講可能な正課の科目を開講しています。
キャリア教育からキャリア支援へ、キャリアセンターがワンストップできめ細やかに繋いでサポートする事で、2021年度卒業生においては就職率99.6%の高水準実績、内定先への満足度97.1%という進路決定の実現に至りました。