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学習院大学三曲研究部「絲竹会(しちくかい)」は、1969年に「尺八研究会」として誕生し、1989年に部へと昇格した歴史ある団体です。「三曲」とは、箏、三味線、尺八の3種類の楽器で演奏する楽曲の総称。2021年度の部員約20名は、箏と三味線は生田流と山田流、尺八が琴古流(きんこりゅう)という流派に分かれて稽古を受け、和風情緒溢れる古典曲の演奏技術を磨きます。ほとんどの部員が初心者としてスタートしますが、定期演奏会などで見事な腕前を披露しています。今回は、箏、三味線、尺八から1人ずつ、3名の学生にお話を聞きました。
3つの和楽器、3つの流派
――みなさんの入部のきっかけから教えてください。
元:私は小学生のときに金管バンドでトランペットやトロンボーンを演奏した経験や、数か月間ですが三味線を教わったこともありました。中学高校では陸上部でしたが、大学ではあらためて音楽に関わりたいと考え、体験会に参加した一つが絲竹会でした。そこで、3種類の和楽器すべてを体験させてもらい、いくらやっても全然音が出なかったのが尺八でした。かつてトランペットの体験をしたときはすぐに音を出せた記憶があり、それと比べてとにかく悔しかったため、尺八への挑戦意欲が一気に高まりました。
緑川:私は習い事でピアノの経験はありましたが、基本的に一人で弾くことが多かったため、大学では合奏の楽しさを味わいたいと考えて入部しました。私も体験会で3種類すべてに挑戦しましたが、尺八は音が出ずに心が折れてしまいました。箏は絃が重いと腕の力が必要になりますが、三味線ではそこまで必要なく、サイズからしても手軽に感じたため、三味線に決めました。
関野:私は中学と高校で筝曲部に所属していて、大学でも箏を続けたかったので入部しました。毎週お稽古があるおかげで、技術的に成長できている実感があります。緑川先輩がいう絃の重さは慣れてくる部分もありますが、アップテンポの曲だと確かに腕の力が必要です。力がある方がきれいに弾けるので、私も筋トレをするようにしています。
――3つの楽器の流派の違いについて教えてください。
元:箏と三味線の世界には二大流派と呼ばれる生田流と山田流があり、絲竹会の部員もそのいずれかに分かれます。また、尺八は琴古流という流派で技術を磨いていきます。違いのひとつとして楽譜がありますが、どれも楽譜は五線譜ではなく、流派ごとに書き方も違うため、流派を超えて合奏するとき以外では、それぞれの流派の楽譜を使用します。尺八の楽譜は縦書きですが、私が所属している琴古流には小節の概念がなく、カタカナと漢字が並べられているだけです。「お経のようだ」ともいわれる特徴的な楽譜となっています。
緑川:私は山田流に所属していて、楽譜には箏と三味線の音が一緒に書いてあります。ただ、流派を超えて合奏する場合は生田流の楽譜を使って演奏するため、山田流の学生は生田流の楽譜の読み方も覚える必要があります。
関野:そうですね。私は中学高校時代も生田流で箏を練習してきたこともあって、山田流の楽譜は読めません。生田流と山田流では箏を演奏する際の座り方にも違いがあり、山田流は箏に向かって真っ直ぐに座りますが、生田流は斜めに座ります。演奏時に指先に付ける”爪”の形も違い、山田流は尖っていますが、生田流は四角です。
――お稽古は流派ごとに行われるんですよね?
緑川:はい。各流派の先生によるお稽古が毎週1回あります。山田流だと、同じ先生が箏と三味線を指導してくださり、1回30分。同じ曲で同じ楽器なら、複数の学生が一緒にお稽古を受けます。
関野:生田流は1対1だと25分で、合奏だと40分が基本です。ただ、たいていは延びますね。
元:琴古流は1人30分で、複数の学生が一緒にお稽古を受けるのは演奏会前の合奏稽古くらいです。そのほかに、卒業生の方が来てくださって一緒に演奏してくださることもあります。
緑川:山田流でも現役生を気にかけ、指導してくださる卒業生の方がいます。演奏会で現役生の人数が足りないときには、助っ人として演奏していただくこともありますね。
晴れ舞台、秋の定期演奏会
――演奏会について教えてください。
元:絲竹会が主催する主な演奏会は年間で3回あり、4月の新歓期間にキャンパス内で行う「春の演奏会」と、6月に同じくキャンパス内で行う「ミニコンサート」、そして絲竹会で最大規模の演奏会となるのが、秋に外部のホールで開催する「定期演奏会」です。4年生にとっての卒業公演になります。1年生は6月のミニコンサートが初舞台となり、演奏会に向けた準備や当日の運営も学生が協力して進めますので、演奏技術以外でも身につくことは多いと思います。なお、関東学生三曲連盟という団体が主催する新人演奏会、大学祭期間中に開催する演奏会など、演奏をする機会は他にもあります。
緑川:演奏会という披露の場があることで、未経験から頑張って成長した姿を家族に見てもらうことができます。家族が来るからには良い演奏をしたいので、練習への意識やモチベーションも高まりますね。
関野:人の心に響くような良い演奏ができると、会場全体の雰囲気が変わるんです。そんな達成感や喜びを味わうことができると、次への励みにもなります。中学高校では箏だけでしたが、絲竹会では三味線や尺八と一緒に演奏することもあって楽しいですし、全員で喜びを共有できることは絲竹会の大きな魅力です。
元:定期演奏会のラストを飾るのが、2年生以上の人が全員参加する迫力満点の大合奏です。2年生以上は和服を着るので見た目も華やかになります。「和楽器なら和服。袴を着て演奏したい」という憧れもありました。
緑川:特に女性は振袖を着るのですが、今年度は4年生の希望者のみに限定したため、私はまだ着たことがありません。就職活動との兼ね合いにより、2022年の定期演奏会に出演できるかはまだわからないのですが、出演することができた際には、振袖に身を包んで4年間の集大成となる演奏がしたいと思っています。
――演奏以外の面で、入部してよかったと思うことを教えてください。
関野:部活動に入っていないと、同じ学科の友達と過ごすだけですが、絲竹会で他学科の人と出会えたことで知識の幅が広がっています。私は小学校の教員を目指していて、子どもたちに箏を教える場もつくりたいのですが、箏に限らない幅広い知識を私自身が身につけておくことで、将来に活かせると考えています。
緑川:コロナ禍でオンライン授業ばかりになったときにも、絲竹会の同期や先輩、後輩の存在は励みになりましたしね。
元:大所帯の部活動ではない分、学年を越えた縦のつながりも強いですし、みんな仲が良いですからね。私は実験を中心に学科の課題が多いのですが、絲竹会の仲間と会うことで気持ちの切り替えができます。もちろんお稽古や自主練習は真剣に取り組みますが、趣味を楽しむ時間というか、勉強のリフレッシュにもなるんです。そういった感覚で日本の伝統について気軽に学べるのは、とても良いことだなと思います。
日本文化を継承する存在に
―― 最後に、新入生へのメッセージをお願いします。
元:絲竹会では、新入生が挑戦したい楽器を選んでいただきます。ほとんどの人は1つの楽器に専念するのですが、先生にご相談したうえで複数の楽器を練習することもできます。
関野:私はまさに、生田流の箏を軸にしながら、三味線にも挑戦し始めたところです。もともと三味線にも興味がありましたし、同じ生田流で楽譜も似ているため、やってみようと思いました。今はとにかく練習を重ねていきたいと思います。
元:尺八は経験者がほとんどいませんし、そもそも音を出しにくい楽器なので、敬遠されがちです。ただ、裏を返せば演奏できる人が少ないので、とても頼りにされますし、特技として誇れるものになります。練習すればだれでも良い音が鳴らせるようになるので、気軽に挑戦してほしいなと思います。
緑川:箏は関野さんのような経験者もいますが、三味線も私が知る限り全員が大学から始めた初心者です。大学で初めて音楽系の部活に入った部員もいますし、ほぼ全員が同じスタートラインから練習を重ねて上達していきますので、ぜひチャレンジしてほしいですね。
元:世間を見渡してみても、和楽器を演奏できる人は限られています。その点、絲竹会で和楽器に触れることで、微力ながらも日本の伝統を継承する一翼を担うことができます。その第一歩として、ぜひ体験会に来ていただきたいですし、4月の新歓期間には春の演奏会がありますので、気軽に足を運んでみてください。万全の感染対策をしてお待ちしています。一緒に和楽器やりましょう!