医学を英語で学び、グローバルに活躍できる医師をめざすーハンガリー国立大学医学部

医学を英語で学び、グローバルに活躍できる医師をめざすーハンガリー国立大学医学部

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今、海外の医学部を経て、医師をめざすルートが注目を集めている。入試面、教育面、経済面で、さまざまなメリットがあるからだ。どのような制度になっているのか、特色を紹介しよう。

日本の医学部と比較して入試のハードルが低い

国立セゲド大学医学部
セゲドは、30,000人の学生が集う歴史ある大学町。大学の図書館には約14万冊の医学関連の蔵書や、約1,000席の自習机、300台のパソコンなど、学習環境が充実している。

2006年、「ハンガリー医科大学事務局(HMU)」が東京・新宿に開設され、ハンガリーの医学部を経て、医師をめざす制度がスタートした。

留学先はセンメルワイス大学、セゲド大学、ペーチ大学、デブレツェン大学の4国立大学の医学部。年々、日本からの入学者が増加しており、現在では約470名以上の日本人学生が在籍し、熱心に医学を学んでいる。これだけ人気が高まっているのは、どのような点にメリットを感じているからなのだろうか。

最も大きいのは、日本の医学部と比較して入試のハードルが低いことだ。それはHMUが設立された理由とも関係している。

「私たちは日本の医学部の入試制度に疑問を感じていました。国公立大学医学部に合格するためには、センター試験で文系科目も含めて数多くの科目が課され、すべての科目で高得点を上げる必要がありますが、古文や漢文、数学などが苦手な人が、良い医師になれないかというと、決してそんなことはありません。厳しい入試を突破するために、多浪生活を強いられ、貴重な時間を浪費するよりも、入試のハードルが低い海外の医学部を活用する方がよほど合理的です。入学前の古文や漢文、数学でその人の資質を試されるよりも、医学部に入学してから、病理学が出来るかどうか生理学の単位が取れるかどうかで、その人の医師としての資質を見る方が合理的だとは思いませんか。また、医師とは人を診る職業ですから、人間としての総合力が勝っている人の方が、医師に相応しいことは明らかです。その思いがHMU設立の契機になったのです」

ハンガリーの医学部には、最初から本コース(医学部)に入学することも可能だが、英語力や理科系の学力に不安がある学生は予備コースで半年、あるいは1年学んでから、本コースに進むことになる。予備コースの試験は英語、理科(生物・化学・物理から2科目選択)と面接だ。英語は英検®(※)2級ぐらいのレベル、理科は、高1・2の基礎が理解できていれば8割以上得点できるレベルの問題だという。何よりも重視されるのは面接で、コミュニケーション力、人間性、医師をめざす意欲などが問われる。成績上位者から順に定員を満たすまで合格とする形ではなく、基準点を満たしていれば人数に関係なく合格となる。逆にいえば、基準に達していなければ、たとえ定員を満たしていなくても合格とはならない。要は、人間的に優れていて意欲があれば、当初の学力がそれほど優秀でなくてもチャレンジできるというシステムである。

一方の本コースの入試は、一次は予備コースと同じ科目で、二次で生物、化学の筆記試験と、教授によるマンツーマンの口頭試問が課される。基本的な理科系の用語を英語で説明できることが合格の条件になる。

※英検®は、公益財団法人 日本英語検定協会の登録商標です。

デブレツェン大学講堂

日本の医師国家試験合格のためのフォローも万全

このように、日本の医学部に比べれば、入試問題も易しく、入学しやすいことから、これまではいわゆる「日本の医学部入試失敗組」の学生が多かった。しかし、ここ数年は、誰もが知るような難関進学校の生徒や、日本の有力医学部にも合格していながら、あえてハンガリー留学を選択する生徒も増えている。

そうした生徒が魅力を感じているのは、ダブルライセンスの取得のチャンスがあり、将来、グローバルなステージでの活躍が期待できることだ。

ハンガリーはEUの加盟国であり、卒業と同時に取得できるハンガリーの医師免許は、EU圏内のすべての国で通用する。もちろん、卒業後帰国して日本の医師国家試験に合格すれば、日本の医師免許も取得できる。

英語で医学教育を受けることが大きな強みになる

なお、ハンガリーの医学部では、英語で授業を受ける。これが、日本で医師になってからも大きな強みになっている。

なぜなら、研究論文を仕上げる場合、今や英語で書くのが当たり前の状況になっているからだ。国際学会はもちろん、国内で開催される学会も英語が共通語になりつつある。外国人観光客などの増加により、急患の外国人と適切なコミュニケーションが図れる医師は重宝される。こうしたさまざまな背景により、英語が使える医師を確保したいと、ハンガリーの医学部卒業者は、数多くの病院から引く手あまたの状況になっているのだ。

デブレツェン大学での卒業式の様子

経済面のメリットも大きい奨学金制度も充実

もう一つ大きいのが経済面のメリットだ。予備コースの学費は年間70万円、本コースは大学によって異なるが、年間180〜200万円だ。生活費などを含めて、予備コース+本コースの7年間学んだと仮定した場合のトータルの費用は2200〜2600万円。日本の私立大学医学部に通った場合と比較すると、割安といえる。

奨学金制度も充実で、2014年9月入学者からは、ハンガリー政府による日本人学生向けの奨学金制度がスタートした。医学部6年間の授業料が全額免除されるほか、生活費、住居費の補助金が合わせて月額約3万円支給される。地方都市なら手頃なアパートが借りられる金額だ。昨年度は14名が受給しており、破格の待遇の割にはもらいやすい奨学金制度になっている。

EUと日本のダブルライセンスを取得し、英語を駆使できる医師として、グローバルに活躍できることは大きな魅力に違いない。そんな自分の将来像をモチベーションに、頑張る覚悟を持った人にこそ適した制度といえよう。むしろ、こういう方式で医師を育成し、世に送り出すのが、本道と言えよう。

世界中から人が集まる環境で学ぶ

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