デザインの力でアイデアを具現化する―多摩美術大学×東京理科大学

デザインの力でアイデアを具現化する―多摩美術大学×東京理科大学

<PR>

みなさんは「デザイン」に対してどんなイメージを持っているだろうか。ファッションデザイン、グラフィックデザイン、建築デザイン、都市デザイン、エンジニアリング・デザイン、サービスデザイン―など、現代デザインの領域は多岐に渡る。
美大で学ぶデザインと理工系大学で学ぶデザインでは、デザインの捉え方はどう違うのか。また、共通する部分はあるのだろうか。
多摩美術大学美術学部統合デザイン学科の米山貴久教授と、東京理科大学経営学部国際デザイン経営学科(IDM)学科主任就任予定の飯島淳一教授が、デザインをテーマに対談した模様をお届けする。


対談の様子は動画でもっと詳しく見られます。
https://www.youtube.com/watch?v=PA3GlXBB7wY&t=1004s
  

飯島淳一(いいじま じゅんいち)
東京理科大学
経営学部経営学科教授
(国際デザイン経営学科〈IDM〉学科主任就任予定)
東京工業大学教授を経て、2020年より東京理科大学教授。専門は情報システム学。文部科学省が14年から実施した「グローバルアントレプレナー育成促進事業(EDGEプログラム)」で、デザイン思考をベースにした1年間の教育プログラムを開発。その経験をもとにIDMの立ち上げに関わり、「ビジネス」「技術」「人」の3つをバランスよく学ぶカリキュラムの実現に取り組んでいる。

米山貴久(よねやま たかひさ)
多摩美術大学
美術学部統合デザイン学科教授
多摩美術大学美術学部立体デザイン専攻プロダクトデザイン専修(現プロダクトデザイン専攻)卒業後、株式会社東芝に入社。医用機器、事務機器、放送機器のデザイン、PCやDVDのユーザーインターフェイス開発、電力・交通・流通など社会インフラ分野での機器UIデザイン、サービスデザインなどに従事。2013年に統合デザイン学科の立ち上げに参加し、14年より多摩美術大学教授。

「デザイン」をどう捉えるか

―今回の対談では、2つの学科に共通するキーワードである「デザイン」を学ぶ魅力を紐解いていきたいと思います。まずは、各学科がデザインをどう捉えているかについて教えていただけますか。

米山 よく、アートとデザインの違いを聞かれることがあります。アートは自己表現であり、意図的であるかにかかわらず、世の中に問題提起をしていきます。アートはクエスチョンなのです。
対してデザインは、問題を解決する手法です。人々の生活に求められるモノ・コトを想像し、具現化します。求められることを嗅ぎ分ける力は「感性」、抽象的な概念を具現化する力は「表現力」とも言い換えられます。デザインは、感性と表現力、プランとアイデアを統合したものだと言えます。

飯島 国際デザイン経営学科(IDM)では、デザインを「問題解決を支援する人工物を創り出す知的活動」(H・A・サイモン『システムの科学(第3版)』第5章)と捉えています。問題解決の出発点には「やっかいな問題」があります。これは、正解のない問題と置き換えることも可能です。
やっかいな問題の解決にあたってはまず、問題を抱える人々や組織との対話から、「何が問題か」、「解決のために何が必要か」を「共感」をベースに明らかにします。この後の解決策の実現に向けてベースとなるのは論理的思考です。実現方法を考え、解決策の青写真をつくっていきます。IDMで主に扱う領域はこの辺りまでですが、実際の課題解決ではその青写真に従って、専門家と一緒にプロダクトやサービス、社会制度を実現していきます。

―デザインに対する互いの考え方について、どう感じましたか。

米山 プロセスは違えども、具現化することを強く考えているのは、統合デザイン学科のデザインに対する考え方と共通する部分です。考えたり思い描いたりするだけではプランでしかなく、それをデザインまで高めるには具現化しなければならない。そこに共感します。

飯島 統合デザイン学科は意匠のレベルに留まらず、かなり広い意味でデザインという言葉を使っており、IDMとの共通点が多いです。一方で、アートを意識しているのが美大らしいところですね。

―美術系大学、理工系大学でデザインを学ぶ意義を、それぞれどのように考えていますか。

米山 「感性」を深められる部分が大きいでしょう。しかしそれは論理的に学ぶのが難しい。これをすれば感性が高まるということはないのですが、美しいものを観察したり、作品を制作したりして深まっていくものだと感じます。学生同士で美について語り合うことも非常に意味があります。

飯島 以前、統合デザイン学科の永井一史先生が、デザインの特性として「美と調和を大切にする」ことを挙げられていました。科学の分野においては単純なものが美しい、たとえば数学のオイラーの等式が美しいなどと言われます。統合デザイン学科では美をどのように捉えているのでしょうか。

米山 システムや製品をつくるにあたり、秩序や調和はとても重要なものです。そこに美は大きく関わってきます。
米アップルの創始者であるスティーブ・ジョブズが初代マッキントッシュを作るにあたり、カリグラフィー(西洋や中東などにおける文字を美しく見せるための手法)を学んだことが大きく役立ったと言われています。美しい書体や佇まいが、どんなモノやシステムにするかを考えるにあたって、重要な意味を持ったのだと思います。
単に「かっこいい」だけでなく「美しい」ことで、人にとって使いやすく、価値のあるモノになっていくのではないでしょうか。

飯島 理工系大学でデザインを学ぶ意義は「共感と論理をクロスさせる」ことにあります。共感とは問題を自分ごととして捉えることであり、その力は対話を重ねることで養われます。IDMでは北海道長万部町※にお住まいの皆さまと対話をしながら現地の問題解決をする授業が1年次に用意され、課題の引き出し方を実体験から学ぶことができます。理科大の強みである論理的思考に共感を加えることで、問題解決につなげることができるのです。また、IDMは経営学部に設置します。ビッグデータやAIの普及があり、ビジネスでのデータは多種多様な大量のデータであふれています。デジタルとデザインをうまく組み合わせることで、新しいビジネス価値が生まれると考えています。

デザインにも求められる抽象力や言語化する力

―どちらの学科もデッサン教育を取り入れていますね。どんな狙いがあるのでしょうか。

米山 空間把握能力、コミュニケーション力、感性の3つを養うためにデッサンは重要です。デッサンを通して秩序や調和を感じ取れるようになりますし、言葉にしにくい抽象的なことでも、絵で表せば簡単に伝えられることがあります。統合デザイン学科ではアートのように上手な絵を描ける必要はありません。

飯島 IDMでは、デザイン経営領域におけるデッサン教育の目的は抽象力を養うことと考えています。抽象力とは、全体を捉える俯瞰力、本質を見抜く洞察力、余分なものを切り捨てて必要なものを抜き出す捨象力の3つの力を指します。抽象力があれば、似ているものから発想を得てイノベーションの契機にできますし、見かけは違っても構造は同じものを見出すことが可能です。異なる背景の人とコミュニケーションを行う際に、専門的な言葉を一段階抽象化して“翻訳”すれば、伝わる表現に改めることもできます。

米山 本質を見るために物事を抽象化するのは良い方法だと思います。人は先入観でものを見てしまいがちです。周りの装飾の部分に目が行ってしまうと、本質を見ることができません。ものをよく見て、構造や質感まで描くことで、そのものの本質を捉えることが可能になります。

―デザインを言語化することについてはどう考えますか。

米山 美大の学生は感性は優れていますが、その弊害として抽象的なままアウトプットしてしまうことが多くあります。言語化することは、そのデザインの意味を自分に問いかけ、考えてみることになります。言葉がなくても分かるデザインに高めていくための途中のステップとして、言語化は必要です。日頃の作品制作でも、なぜそのデザインをしたのかの意味を問いながら講評会を行っています。

飯島 一般的にはデザインの評価は作品に拠るという考え方もあると思いますが、デザインの意味を問うているのは素晴らしいと感じました。IDMでは4年生の卒業研究で、Capstoneプロジェクト(デザイン思考のプロジェクト活動)で開発したソリューションや、その制作過程について、論文にまとめます。デザインの言語化については、この卒業研究で取り上げていきたいと考えています。

卒業後は幅広い領域で社会のニーズをデザイン

―先ほど具現化を重視していることが共通点として挙げられました。なぜデザインの具現化は大切なのでしょうか。

飯島 デザインを実現してみないことには、本当に動くのか、使えるのかが分かりません。それを証明する意味でも、形にすることは重要です。理科大出身でイベルメクチンを発見し、ノーベル賞を受賞した大村智先生は、「実践躬行」を座右の銘にしているそうです。口先だけでなく、実行するのが大切だという言葉です。IDMも実践躬行を大切にしたいと考えています。

米山 最近は電子工作やプログラム、3Dプリンタなど、イメージしたものをすぐ形にして、イメージ通りに動かすことができる環境があります。学生でも、形だけでなく動きや操作といった最終製品に近いところまで検討し、デザインを提案できるようになりました。実現できる幅が広がり、従来にない具現化ができるようになっています。

―デザインを学ぶことで将来はどんな進路が期待されますか。

飯島 広告、通信、マスコミ等の情報を扱う業界や一般企業の企画部門。FinTech、EdTechなどのX-techと呼ばれる企業群。国連などの国際機関や公務員、アントレプレナーや大学院進学といった進路も考えられます。

米山 広告代理店、自動車や電気、ゲームなどのメーカー、IT企業といったデザインに関わる人が従来から選択することが多かった進路はもちろん、デザインコンサルとしてコンサルティングファームに就職する学生も増えています。これからの社会では、企画やプランニングといった分野でも力を発揮できると思います。

―最後に、高校生へのメッセージを。

飯島 東京理科大学でデザインを学ぶ魅力は「共感と論理をクロスさせる」ことです。高校までは正解が一つしかない問題をたくさん解いてきたと思いますが、世の中は正解のない「やっかいな問題」に満ちあふれています。IDMでこうした問題を、学生と教員が一緒になって解いていこうではありませんか。

米山 「楽しい人生」がデザインを学ぶ魅力です。クリエイティビティを発揮して新しいモノを作り上げていくことには人生の楽しさがあると思いますし、デザインは人を楽しませることができる仕事でもあります。楽しいと言える仕事は少ないと思いますが、自分を含めデザインを仕事にした人の多くは仕事を楽しいと言っています。デザインを学びに多摩美術大学に来てくれることをお待ちしています。

学科紹介

多摩美術大学 美術学部統合デザイン学科

2014年に開設した統合デザイン学科は、デザインに求められる領域が複雑化、拡大する現代社会において、あらゆるメディアを駆使して「統合的に課題を解決できる」人材を育成しています。
統合デザイン学科では、多摩美術大学の他学科の内容を分野横断的に学びます。造形、操作性、ブランディングなど、すべてが一貫性を持っていることが求められるデザインの現場では、専門的な細かい分野の内容をつなげる必要があるからです。各分野が交わるところが統合デザイン学科の学びとも言えます。論理的思考力を持つ学生も求めており、実技を課さず数学を重視した入試を2018年度から実施しています。
特徴的なカリキュラムとして、「プロジェクト」と呼ばれるゼミ形式授業や、興味関心に合わせて選択できる「デザイン演習」があり、世界で活躍する各分野を代表する現役クリエイターから直接指導を受けることができます。著名人による特別講義やワークショップを開催するなど、社会との接点も数多く設けられています。

統合デザイン学科HP http://www.tamabi.ac.jp/integrated/

東京理科大学 経営学部国際デザイン経営学科 (2021年4月開設)

正解のない「やっかいな問題(wicked problems)」の解決のため、さまざまな個性を束ねる優れたマネジメント(経営)能力を備えた“異才”を育成します。異なる背景を持つ人が境界を超え、チームで協力して活動することを基本方針としており、さまざまな場面にチーム活動が用意されます。1年次には北海道長万部町※を舞台にしたデザイン思考のプロジェクト、4年次には企業の課題解決に取り組むCapstoneプロジェクトが用意され、チームで課題解決を目指します。
IDMの学びは経営学をベースに、「デザイン表現のスキル」「デジタル技術の基礎知識」「異文化への対応力」の3つを柱としています。隠れたニーズや課題を拾い上げる観察力や共感力を養う科目や、デジタル技術、数理分野、データ分析などに関する科目が用意されます。デジタル技術とビジネスの架け橋となって、問題解決につながるプロダクトやサービスの開発ができる人材となるためのカリキュラムが揃っています。
※新型コロナウイルス感染症拡大防止のため、2021年度は北海道・長万部キャンパスでの授業実施を見送り、神楽坂キャンパスで実施します。

国際デザイン経営学科HP https://www.tus.ac.jp/idm/

ユニヴプレスMAGカテゴリの最新記事

ユニヴプレス