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大学は社会からの要請に応えるため、常に改革を行っている。学部の新設・改組はその最たるもの。新設学部の学びを見てみることで、大学が社会の中で果たそうとしている役割が見えてくる。学生の立場から考えると、最先端の施設や設備を利用できる、学生数が少ないことで手厚い指導を受けられるなど、1期生として入学するメリットは多い。興味に合った新設学部があるのかは、早めに確認しておきたい。
22年度の新設学部・学科は医療系学部が多い
新設学部の学びの内容からは、これからの社会で何が求められているかを垣間見ることができる。「2022年度新設予定の大学・学部・学科」を見てみよう。
まず目に付くのが医療系学部の新設の多さだろう。22年度は4校の大学新設があるが、すべての大学に看護学部が設置される。既存の大学においても、日本医療大・医療福祉、群馬パース大・医療技術、同大・看護、金城学院大・看護、名古屋女子大・医療科、宇部フロンティア大・看護などが新設される。
医療系学部の新設は今年に限った動きではなく、近年の大きなトレンドとなっている。高齢化社会の進展による慢性的な人材不足や、仕事につながる資格を取得したいという学生のニーズが根強いためだ。新型コロナウイルス感染症の拡大とともに「エッセンシャルワーク」という言葉が注目を集めたように、こうした仕事の多くは社会に不可欠で、先行き不透明な中でも働き口への心配は少ない。なにより、人を助けられるやりがいある仕事に関心がある受験生は少なくなく、人気は堅調だ。
資格取得につながる学部としては、愛知学院大・心理、人間環境大・心理、神戸女子大・心理など、心理系の新設も続く。19年に「公認心理師」の認定が始まったことをきっかけに、心理系の学科を学部として独立させる動きが目立つ。
医療系と同じくエッセンシャルワークといえる教育系学部の新設も多い。22年に開学する大阪信愛学院大が教育を設置するほか、聖徳大・教育、名古屋芸術大・教育、大阪青山大・こども教育、神戸親和女子・教育などが新設される。国立大では宮城教育大と熊本大が教育学部の改組を行い、小中一貫教育を担う人材育成への対応や、体育・芸術系の教員養成の集約などを進める。団塊世代の大量退職に伴う教員不足や、共働きの増加による保育士不足は社会問題化しており、学部新設による担い手の育成に期待がかかる。
新型コロナ禍においてもグローバル化は止まらない
新型コロナ対策で人々の往来が制限される中にあっても、モノのやり取りは変わらず活発だ。経済のグローバル化はとどまるところを知らず、こうした動きを踏まえた国際系学部の新設も続いている。22年度は武蔵大・国際教養、追手門学院大・国際、摂南大・国際、大手前大・国際日本などが設置される。
近年の国際系学部では、言語や文化に加え、特定の専門領域を学べる学部が増えている。たとえば武蔵大・国際教養の経済経営学専攻では、武蔵大の学位と並行してロンドン大の経済経営学士号の取得を目指すプログラムを用意。英語力に加え、経済学や統計学についての専門性を高めることができる。アフターコロナにおけるインバウンド需要の回復を見越し、観光業を担うグローバル人材の育成を目指すのが大阪成蹊大・国際観光。観光系ではほかに、國學院大・観光や金沢大・融合学域(観光デザイン学類)も新設予定だ。
新たな学問分野を開拓する動きもある。日本で初めて人権問題について学ぶヒューマンライツ学科を設置するのが青山学院大・法。法学だけでなく、経済学や社会学といった隣接する社会科学についても学ぶことで、さまざまな観点から人権について考える学際的な内容となっている。
IoT社会の進展を見据え情報系学部の新設が続く
理工系や情報系の動きについても見ておこう。新型コロナをきっかけに遠隔授業やリモートワークが広がったことで、世界の情報化は急激に進んでいる。こうした流れにあって名城大は、理工学部の一学科だった情報工学科を学部として独立させる。プログラミングなど情報工学の基礎から、AI(人工知能)、VR(バーチャルリアリティ)、サイバーセキュリティ、自動運転といった最先端分野までを幅広く学ぶカリキュラムが用意される。同様に情報技術を極めたエンジニアの育成を目指す学部としては、近畿大・情報や岡山理科大・情報理工も新設予定だ。
理工系では奈良女子大が、日本の女子大で初めて工学部を設置する。化学やバイオといった分野に比べて女性志望者が少なかった工学分野に対し、目を向ける女子生徒が増えるきっかけとなるか。
最後に、大規模改組がある大学の動きを確認しよう。大阪市立大と大阪府立大の公立2大学が統合して開学するのが大阪公立大。開学初年度は、重複する学問分野を集約する形での学部・学科名称の変更が中心となる。農、獣医、看護が独立した学部となる点に注目だ。25年には森ノ宮新キャンパスを開校予定で、大規模な学部再編も計画されている。
東海大学は「日本まるごと学び改革実行プロジェクト」と題する全学的な改組を予定。全国5キャンパス23学部を整備し、社会や地域のニーズに対応した教育・研究を進めていくことを目指している。
これらの新設学部が目指すのは、学生が社会に羽ばたく5年後、10年後の世界で活躍できる人材を育てること。どんな学部が新設されるのかを眺めることでアフターコロナの社会を想像しつつ、興味に合った学部があれば積極的に調べてみてほしい。
2022年度新設予定の大学・学部・学科
表の見方
22年4月開設・改組予定の大学を掲載。新設大学と専門職大学は文部科学省公表の設置認可申請による。学部(学科)は、大学へのアンケートの回答などを掲載。大学名の太字は国公立大、それ以外は私立大、所在地は原則として本部を表す。設置構想段階や申請中などさまざまなケースがあり名称その他の計画に変更が生じる場合がある(4月30日現在)。