先進的なグローバル教育で学生の挑戦意欲を掻き立て成長を後押しするー昭和女子大学

先進的なグローバル教育で学生の挑戦意欲を掻き立て成長を後押しするー昭和女子大学

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2019年にテンプル大学ジャパンキャンパスが学内に移転し、キャンパスのグローバル化が加速する昭和女子大学。コロナ禍においてもグローバル教育に最大限注力し、学生たちも数多くのプログラムで活発に学び続けているという。その源流にある「昭和ボストン」の歴史や、進化系とも言えるダブルディグリー・プログラムなど、同大ならではの先進的な取り組みについて、グローバル推進委員会委員長を務める柏木厚子教授に話を伺った。

グローバル推進委員会委員長、国際学科教授
柏木厚子

早稲田大学法学部卒業後、米国コロンビア大学大学院英語教授法・応用言語学専攻修士課程修了。早稲田大学エクステンションセンターや東京外国語大学、慶應義塾大学での非常勤講師を経て、1995年に昭和女子大学に着任、2008年より現職。専門は英語教授法、英語音声学、通訳・翻訳研究。

カスタムメイドのプログラムが光る昭和ボストン

―まず、海外キャンパスの先がけとして1988年に開設された「昭和ボストン」について教えてください。

現在ほど留学がポピュラーではなかった1980年代、当時の人見楠郎理事長・学長には「グローバルを体験させたい」「現地で異文化体験をさせたい」という思いが強くあり、1988年にアメリカ・マサチューセッツ州に設立したのが海外キャンパス「昭和ボストン」です。

ただ、当時はボストン留学自体がいわばゴールであり、保護者に安心していただきながら、学生を安全に留学させることが重要でした。しかし、いまは決してボストンがゴールではありません。ボストンで成長した学生を協定校への認定留学などに送り出すケースが多く、昭和ボストンは成長のための中継地点と考えています。

昭和ボストンでは、キャンパス内での授業に加え、いかにキャンパス外で経験を積めるかにフォーカスしてきました。例えば、授業外に行う「ボランティアプログラム」や就労体験の実施先の開拓、現地の大学生と本学の学生の交流を促進する「カレッジコネクションプログラム」も立ち上げました。また、昭和ボストン内での寮生活のほか、週末にホームステイを経験する「フレンドシップサークル」などにも力を入れてきました。いずれも自前の海外キャンパスが拠点ですので、一般的な語学学校ではできないような、カスタムメイドでのプログラム開発が強みです。

また、国際学部の2学科と、グローバルビジネス学部ビジネスデザイン学科では、留学がカリキュラムに含まれています。国際学部英語コミュニケーション学科は、原則として全学生が昭和ボストンに留学し、国際学科は英語以外の外国語も学ぶ「英語プラス1」を採用していますので、選択する言語によって中国・韓国・スペイン・ベトナムなど留学先は多様です。

グローバルビジネス学部ビジネスデザイン学科は、全員が昭和ボストンに留学します。マーケティングや経済学、経営学など、学科の特性に沿ったビジネス関連の内容を英語で学ぶ科目を用意しています。

昭和ボストン

米・中・韓の3大学とダブルディグリー・プログラムを構築

本学は昭和ボストンの立ち上げ以来、教員たちが留学プログラムを成功させようという気概に満ちあふれています。こうして脈々と受け継がれてきたグローバル教育への情熱がさらに高まった要因として、2012年に私立の女子大学で唯一、文部科学省の「グローバル人材育成支援事業」に採択されたことが挙げられます。これを機に英語圏から非英語圏まで協定校が飛躍的に増え、現在は43校を数えます。昭和ボストンを含め、約900名の学生が留学を経験している状況です。

また、国際学科では2013年度以降、中国の上海交通大学や韓国の淑明女子大学校の学位を取得できるダブルディグリー・プログラムをスタートさせました。さらに、2016年にはアメリカのテンプル大学ジャパンキャンパス(TUJ)と単位互換協定(定員年間45名)を締結し、多くの学生が学んでいます。これらのプログラムに参加するにはクリアすべき基準がありますが、より間口を広げて多くの学生が参加できる環境をつくることができています。

国際学部の2学科は2018年度入学者から、ビジネスデザイン学科は2020年度入学者からTUJとのダブルディグリー・プログラムを始めました。2021年度入学の1年生の希望調査では、3学科を合わせて30名以上の学生がTUJのダブルディグリーを志望しているようです。国際学科ではTUJに加えて中国、韓国とのダブルディグリー・プログラム志望者も多く、合計すると学科の約3分の1の学生がダブルディグリー・プログラムを志望しています。

TUJとのプログラムは、その教育度の高さだけでなく、国内、学内にいながらグローバルな環境で学べる点もメリットの一つです。渡航費や現地での生活費もかかりませんし、日本での生活を続けながら留学できるという点からも、学生の意欲を掻き立てているのだと思います。

プログラムの充実に加えキャンパス自体がグローバルに

―果敢に挑戦しようとする学生が多いのですね。

TUJとのダブルディグリー・プログラムでは3年次の後期にTUJに編入しますが、宿題の量が膨大ですし、事前のリーディング課題も多いことが特徴です。それでも学生はやり遂げて成長していくので、さらなる伸びしろを感じています。

とはいえ、最初は負担も大きく、環境の変化に戸惑う学生もいますので、本学の教員がチューターとしてサポートします。教員は、いわば自転車の補助輪です。補助輪を必要としない学生もいるかもしれませんが、あることで安心感は与えられます。学生の将来にも影響しますので、「頑張ればできる」「努力しよう」で片づけるつもりはありません。教員が責任をもって成長を後押ししていくのです。

なお、必ずしも高度な英語力を必要とするプログラムだけではなく、学生の興味やレベルに合ったチャレンジができることも本学の特徴です。春季休暇等に実施する昭和ボストンでの「短期海外研修」では、学科のニーズに沿った内容を用意しています。例えば人間社会学部初等教育学科なら、ボストンの小学校や幼稚園と連携したプログラムとして、現地で授業体験などを行います。また、食健康科学部管理栄養学科では、ボストンの病院や福祉施設などと連携したプログラムを用意しています。もちろん、これらも細かいニーズに合わせてカスタマイズした自前のプログラムです。

こうした本学のグローバル教育は、昭和ボストンに始まり、さまざまなプログラムの開発とブラッシュアップを繰り返し、現在はキャンパスの国際化というフェーズに立っています。キャンパス内にTUJが移転し、ブリティッシュ・スクール・イン・トウキョウ昭和(BST)というインターナショナルスクールもキャンパス内にあります。さらに、本学では毎年多くの外国人留学生を受け入れています。2020年度は新型コロナウイルス感染症拡大の影響で126名となりましたが、2019年度は174名を受け入れました。

こうした利点を生かすために現在進めているのが、TUJとの共同授業の充実化です。すでに2020年度の秋学期から、本学の人間文化学部歴史文化学科とTUJのアート学科が共同で「コミュニティアート」という科目をスタートさせ、コミュニティが抱える問題の解決にアートを活用する方法を考える授業が行われています。授業は日本語と英語で行いますので、語学力に自信のない学生でも、教員や周囲の学生のサポートを受けながら受講できます。

「コミュニティアート」の授業の様子

また、国際学部では、BSTの教員がオムニバス形式でイギリスの社会と文化について英語で講義をする授業を2021年度後期から開講します。授業にはBSTの生徒も参加し、ディスカッションを行います。こうしてキャンパス内のリソースをフル活用する授業を開発することで、学生が日常的にグローバルを体感できるのです。

学生の意欲と成長にコミットする教員たちの情熱

―コロナ禍の影響はいかがでしょうか。

学生の海外留学は中止していますが、2020年の夏季からは多くのグローバルプログラムをオンラインで実施し、2020年度は559名の学生がオンラインで留学しました。昭和ボストンでは、現地の教員とともにオンライン用の留学プログラムを組み立て、これまで同様、現地住民と交流するようなアクティビティもオンラインで実施しています。

また、主要な留学プログラムの派遣先である海外協定校(スペイン、中国、韓国、ベトナム)からの協力を得て、本学の学生に向けたオンライン留学プログラムを用意してもらいました。これらが実現した背景には、本学の教員が現地を訪れ、各大学の教員とミーティングを重ねるなど、協定校と築いてきた信頼関係があります。さらに、従来は米国・コロラド大学の学生が来日して本学で実施していた共同プログラムも、COIL(※)型の授業で行いましたが、これも相手校との信頼関係があったからだと思います。
※COIL:Collaborative Online International Learning、ICTを活用して、オンラインで海外の大学と協働で課題解決に取り組む学習。

オンライン授業では、世界中の大学と気軽につながることができるという新たな気づきも得られましたし、有効なツールとして今後も活用していくと思います。ただ、現地での実体験を伴うプログラムに勝るものはありませんので、まずは昭和ボストンへの渡航型プログラムの再開を検討しています。もちろん再開ありきではなく、学生に選択の余地も与えますが、感染症対策を徹底し、早ければ2021年秋の再開をめざして準備を進めているところです。

―最後に、高校の先生や受験生へメッセージをお願いします。

「英語はできて当たり前」とさえ言われる昨今、高校生の皆さんには英語を学ぶ以上に、英語を使って何を学ぶのか、語学力向上の一段上を意識してほしいと思います。また、一つの国や文化しか知らないということは、それに縛られてしまう不自由さを内包しているということも認識してほしいですね。海外に出て多様な文化を知ることは、自らを縛る狭い視野から解き放たれ、客観視できるようになることでもあります。グローバルに学ぶことで、語学力向上だけでなく、視野の広がりを享受できるのです。

本学は豊富なグローバルプログラムがありますので、きっと自分の興味に合うものが見つかるはずです。まずは教員が補助輪となってサポートしますし、その手厚さは本学が受け継いできたDNAでもあります。いずれは教員も手を離し、学生が自立しなければ留学は成功しませんが、多くの学生が着実に成長し、社会へと巣立っていった実績と経験が本学にはありますので、安心して本学に飛び込み、世界に飛び出すチャレンジをしてもらいたいと思います。

在学生インタビュー

カリキュラム留学(昭和ボストン)+認定留学(トリノ大学)



留学によって向学心が高まり将来の目標も見えてきました

国際学部英語コミュニケーション学科4年
丸山佳夏さん

私の学生生活は、昭和ボストンへのカリキュラム留学やトリノ大学への認定留学など、挑戦の連続でした。昭和ボストンでは、現地のNPO法人を訪ねて日本との比較に挑んだり、学生有志で和菓子を作って販売し、売上金を現地の動物愛護団体に寄付したりと、一人ではできないような経験ができました。また、少しでも英語に触れる時間を増やそうと、ボランティア活動に参加するなど、意識と行動しだいで英語力が向上することを体感しました。

一方、トリノ大学では、カンパリやフィアットなどイタリアの企業を題材にケーススタディを行う授業が印象に残っています。企業運営の背景にあるイタリアの国民性や価値観の理解にもつながりました。イタリア語の習得にも挑戦し、全く知識のない状態から日常会話が苦にならないレベルまで上達できたこともいい思い出です。帰国後は、TUJの科目等履修が英語力を試す絶好の場となり、国際情勢がテーマのゼミでも、国際社会における各国の立場や思惑の分析などにおいて、海外で多様な価値観に触れた経験が生かされています。

留学先で日本製品の品質や信頼性の高さをあらためて実感したため、将来は“Made in Japan”の魅力を世界に発信する仕事に携わりたいと考えています。

TUJダブルディグリー・プログラム



英語を使った学びで視野が広がり論理的思考力も向上しました

国際学部国際学科4年
岩本 渚さん

私がTUJのダブルディグリー・プログラムに参加した理由は、留学経験者が増えているなかで、2つの大学の学位を持つ人は希少価値が高いと思ったからです。しかも同じキャンパスに通いながら5年間で取得可能な点も魅力。TOEIC®やIELTSTMに加え、GPAの評価も重視されるため、すべての授業に真剣に取り組みました。

事前リーディングやライティングの課題が多くて大変な面もありましたが、昭和女子大学の先生方がサポートしてくださる安心感がありました。おかげでロジカルなライティングスキルが身についたばかりか、日本語で論理的に思考する力も高まった実感があります。

TUJの授業で印象深いのは「Asian Behavior and Thought」というアジア哲学のクラス。哲学に触れたのは初めてでしたが、インド哲学や中国の孔子、孟子、老子など、現代に息づく多様な思想や価値観を理解することは自身の成長につながり、何より新しいことを学ぶ楽しさを知りました。また、専門的な内容を英語で学ぶうちに、さまざまな場面で物事に対する考え方が柔軟になり、社会の諸問題に関しても広い視野で捉えられるようになったと思います。

2021年春学期は、Dean’s List*に入ることができました。これからも挑戦する気持ちを忘れず、邁進していきたいです。

*Dean’s List:TUJの成績優秀者リスト。選考基準は米国・フィラデルフィア本校と同じもので、米国本校を含めた学部生全体のトップ16%程度の極めて高いGPAの学生が選ばれる。

TUJとの共同授業「コミュニティ・アート」履修



アートを英語で学ぶ過程で勇気を振り絞る大切さも学びました

人間文化学部歴史文化学科4年
秋田安佳里さん

私は現代社会の背景にある歴史を学ぶことが、自分の世界を広げ、未来を照らす光になると感じ、人間文化学部歴史文化学科に入学しました。普段は西洋美術史を中心に、宗教学や文化財保存学などを学んでいます。TUJとの共同授業である「コミュニティ・アート」を履修したきっかけは、TUJの学生と昭和女子大学の学生が一緒に美術館を訪れる「ミュージアムビジット」という企画に参加したこと。TUJのアート学科の学生との交流から、TUJでの学びに興味を持ったほか、純粋に「アートを英語で学ぶ」という経験をしてみたいと思いました。

しかし、いざ授業が始まると、グループワークやディスカッションで意見を出すことに苦手意識があり、少人数とはいえ英語での会話には身構えてしまうばかり。それでも先生方の励ましを受け、物怖じせずに発言する学生の姿から勇気をもらい、結果的には過去のどんな授業よりも自分の考えを発信できるようになりました。

この共同授業に参加したことで、たとえ自信がなくても、関心のあることが目の前にあるなら一歩踏み出し、勇気を出して行動する大切さを身をもって感じることができました。そして、そういう学生を全力で後押ししてくれるのが、昭和女子大学の魅力なのだとあらためて実感しています。

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