まちづくりは地域のファンづくり。現地に足を運び、対話を重ねながら魅力を掘り起こしていくー國學院大學

まちづくりは地域のファンづくり。現地に足を運び、対話を重ねながら魅力を掘り起こしていくー國學院大學

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國學院大學観光まちづくり学部は、観光や都市保全、文化財、建築など、多方面の専門家が指導にあたり、これからの時代が求める広い視野と高い専門性を備えた人材育成を行うことが特色のひとつだ。多彩な顔ぶれがそろうなかで、楓千里教授は情報発信を専門とする。観光業界・出版業界で長いキャリアを持つ楓教授に、新設学部で取り組む学びや育成する人材像などについて伺った。

出版を通じて地域の魅力発信に取り組む

楓千里 教授
学習院大学法学部卒業後、日本交通公社(現JTB)入社。出版事業局にて海外ガイドブック、月刊誌『るるぶ』、『旅』の編集などに携わる。2004年JTBパブリッシング設立と同時に広告部長就任。以降、法人事業部長、取締役ソリューション事業本部副本部長等を経て取締役法人事業部長就任。2020年3月同社を退社。國學院大學研究開発推進機構に所属し、観光まちづくり学部の教授に就任。

――先生のこれまでのキャリアをお教えください。

新卒で日本交通公社(現JTB)に入社し、去年3月まで一貫して出版部門に携わってきました。月刊誌『るるぶ』で副編集長を、月刊誌『旅』では編集長を務めました。

『るるぶ』をはじめとした情報誌は、いわゆるBtoC(※)ビジネスです。それに加えて、企業や自治体、各種団体の情報発信をお手伝いするBtoB(※)ビジネスにも携わりました。例えば、自治体の観光パンフレットを手に取ってもらいやすいように『るるぶ』スタイルで編集をしたり、日本語版だけでなく多言語版の『RURUBU』の制作もしてきました。この仕事では、自治体の観光課や観光地域づくり法人(DMO)などの地域の方と一緒に編集企画を練り上げます。企画を作るにあたっては、地域の方と共に地域を歩き、地元の方が今まで気が付かなかった魅力の掘り起こしの経験を重ねてきました。おかげで、地域づくりに活躍される方々とのネットワークをつくることができました。

※B to C:Business to Consumerの略で、企業(Business)が一般消費者(Consumer)を対象に行うビジネス形態のこと。
※B to B:Business to Businessの略で、法人(Business)間取引のこと。

メディアへの理解を深め地域とともに活動する

――観光まちづくり学部で受け持つ科目と、授業での取り組みをお教えください。

専門科目では、「地域の観光情報メディア」を担当します。観光情報メディアは学生のみなさんには、とても身近なものです。

SNS、オンライン予約サイト、旅行先のサイト、旅行雑誌やガイドブックなど、旅先を決める前、旅先を決めた後、旅の途中など旅行のシーンによって、メディアを使い分けていると思います。それぞれの観光情報メディアの特性をみなさんの実体験と共に考えていきます。また、旅行者を迎える地域の視点では、メディアの特性を考えた有効な情報発信は大変重要なことです。季節性のあるイベントなどは、タイミングに合わせたプロモーションが効果的ですし、訪日外国人観光客誘致の場合などは、国別のターゲットに合わせた発信が重要です。また、観光まちづくりに取り組んでいる地域は、このようなプロモーションと同時に、地域と長く深くつながってくれるファンづくりのための情報発信も必要です。地域の魅力を代弁して周囲に広めてくれるファンづくりのためには、どのような情報発信をすべきかを考えていきます。

暮らすように旅する時代への対応が重要に

――観光産業の今後の見通しをお聞かせください。

国内でのアンケート調査では、7割以上の人が「コロナ禍が落ち着いたらすぐにでも旅行・観光を開始したい」と回答しています。したがって、来年の新入生が社会に出るころには、間違いなく観光産業は回復しているでしょう。

コロナ禍は旅のスタイルを変化させました。以前は友人との旅行も多かったのですが、感染への心配もあって、家族との旅行や一人旅が注目されるようになっています。この変化に、受け入れ側も対応する必要があります。例えば、一人でも参加できる体験プログラムを充実させるという方法が考えられます。「一人旅にやさしい地域」が、今後は人気を集めると考えられます。

コロナ禍を機に、「ワーケーション(※)」という言葉が広まりました。出張にあわせて出張先で余暇を楽しむ「ブレジャー(※)」という働き方・旅の仕方も提唱されています。通信技術などの発達により「どこに住んでいても働ける」時代になりつつあるいま、「暮らすように旅する」というスタイルが生まれてきているのです。このライフスタイルを楽しむ人たちを、地域がいかに受け入れ、引き込んでいくかも重要なテーマです。仕事をサポートするハード面での充実に加えて、地域住民と交流したり、自然や文化など地域の資源を楽しんでもらう仕組みづくりが大切になるでしょう。

※ワーケーション:英語のWork(仕事)とVacation(休暇)の合成語。
※ブレジャー:業務での出張先で、滞在を延長するなどして業務の後に旅行も楽しむこと。英語のBusiness(仕事)とLeisure(余暇・休息)を合成した語。

垣根を越え、地域の連携を支援する人材が求められる

――これからの時代の観光産業や地域の担い手には、どのような力が求められるでしょうか。

コーディネート力です。現在、地域の魅力を発掘しよう、磨き上げていこうという機運が高まっています。そこでは、農業や漁業、製造業、そして宿泊業や飲食業など、業種を越えて連携し、地域として魅力を高める模索がされています。ただやはり、業種ごとの垣根は非常に高いです。観光客を受け入れることに慣れておらず、抵抗感がある人もいます。そういったそれぞれの思いにじっくりと耳を傾け、来訪者が増えることが地域の豊かさにつながることを、粘り強く説いていく必要があります。さまざまな業種の人たちを結びつけ、地域の魅力向上という1つのゴールへと導いていく役割が、強く求められています。

地域へのリスペクトを胸に、まちを歩き、住民と語り合う

――新学部で求める学生像をお聞かせください。

本学部では多方面の専門家が教員として指導にあたります。授業を通して、「地域の見方」を学べるはずです。その結果として、「この地域が気になる」という感覚を身に付けた学生になってもらいたいです。この感覚が、「もっと調べよう」「自分にできることは何だろうか」という、さらなる学びにつながっていくからです。

現地を歩くことや人と話すこと、調べることを楽しめる学生であってほしいとも考えています。もうひとつ大切なのが、地域をリスペクトし、「お邪魔させてもらっている」という感覚を忘れないことです。私たちにとっては学びの舞台である地域は、そこで暮らす人にとっては日々の生活の舞台であり、長い歴史と文化を伝えてきた大切な場所です。リスペクトの気持ちなしには、私たちを受け入れてもらえません。逆に地域の方との良い関係を構築できると、思わぬ魅力と出会えることもあります。

見慣れた景色をじっくり観察してみる経験を

――高校生へメッセージをお願いします。

地元の駅や学校の最寄りの駅など、日頃みなさんが利用する駅を観察するとおもしろい発見があると思います。どんな人が利用しているのか、売店では何を売っているのか、駅の構造や駅舎はどのようなデザインなのか、などを観察してみてください。そこからはきっと、駅がまちのなかで果たしている役割やつながりが見えてくるでしょう。これもひとつの「地域の見方」に関するノウハウであり、本学での学びのひとつです。

観光まちづくり学部は、みなさんと作っていく学部です。真っ白なところから、私たち教員と、学生のみなさんならではの学部を作っていくことができます。このプロセスをともに楽しめる日を心待ちにしています。

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