国公立大離れが進むも、難関大の志望者は堅調に推移

国公立大離れが進むも、難関大の志望者は堅調に推移

大学入学共通テスト元年にコロナ禍に見舞われた2021年度(21年4月入学)の国公立大入試。受験生はどのような動きを見せているのだろうか。学部の志望状況とともに検証してみた。

地方では公立大の志望者が増加

近年、国公立大の志願者は減少傾向にある。19年度は7年ぶりに増加したが、20年度は再び減少に転じ、43万9565人で前年比93.6%、3万人以上の減少となった。これにより、志願倍率(志願者数÷募集定員)は、4.7倍から4.4倍に下がった。この要因として考えられるのは、翌年に控えた大学入試 改革やセンター試験の平均点ダウン。

国公立大離れは、21年度入試でも継続しそうだ。大学の難易度別にみると、最上位大学の志望者はぶれず、それに続く層が減少すると見られている。地域別にみると、都市部で私立大へ流れる受験生が増える一方、地方では地元国公立大志向が強まりそうだ。先輩たちがコロナ禍でオンライン授業となり、キャンパスに通えない状況を見ている高校3年生は、都市部の大学に進学しようという意欲が削がれているという。そうした受験生が増えている影響で、地方では比較的ハードルが低い公立大の志望者が増えている。

21年度の国公立大入試は、現役生が有利と言われている。20年度入試では、翌年の大学入学共通テストを回避するために無理をせず、入れる大学に入学した受験生が多く、浪人生が減っていること。さらに、現役生は模擬試験や参考書を通じて、早くから共通テスト対策を進めてきており、浪人生よりアレルギーが少ないことが要因として挙げられる。

「理高文低」の学部志望状況が継続

学部系統別の志望状況は、20年に引き続き、理系学部の人気が高く、文系学部の人気が低い「理高文低」で、文系の志望者が減少している。特に、経済・経営・商学系や教員養成系の減少が目立つ。文系の中でも法学系は、コロナ禍で景気悪化が見込まれるため、公務員志望の受験生が増え、人気が上がると見られていたが、志望者は増えていない。就職に弱い系統である人文科学系は大きく志望者が減っている。

コロナ禍の影響で留学が難しくなることにより、国際系は志望者が大きく減ると見られていたが、前年並みに留まっている。ポストコロナでグローバリゼーションが加速化することが確実視されており、しっかりと将来を見据えている受験生は、志望を変えていないようだ。

理系では、医学部(医学科)の志望者が増えている。コロナ禍で医療現場の混乱を目の当たりにして、志望者が減るとみる受験関係者もいたが、実際は志望を変える受験生は少ないようだ。この要因として、医学部の志望者が減り続けており、倍率が下がってきたことへの反動がある。さらに、実際に医療現場に立つ6年後はコロナ禍が収まっていると考える受験生も多いようだ。看護系も医療現場の混乱を目の当たりにしても志望者は減っていない。医療系学部では、新型コロナウイルスに対するワクチンや新薬の開発などに注目が集まる中、薬学系の志望者が増加傾向にある。

理学系と工学系は20年に続き志望者が増えている。学科系統を見ると、電気・電子・通信工学系、情報系、土木・建築系などが増加。情報系が増えているのは、IoTやAIに代表される情報技術の飛躍的な進歩。土木・建築系の志望者が増えているのは、大規模災害が多発し、社会的なインフラの再構築が求められていること。さらに、コロナウイルス禍で民間企業がダメージを受ける中、政府が公共事業に力を入れていくと見られることも背景にありそうだ。工学系では、21年は三条市立大(新潟)に工学部が設置される。さらに、九州大・工学部、群馬大・理工学部、岡山大・工学部、宮崎大・工学部などのように、改組・再編を行い、学科や専攻の垣根を低くして、より学際的な研究を志向する大学が増えている。近年志願者の減少が続いている農・水産系は21年も志望者が減っている。

難関大を志望する受験生はブレない

大学の難易度別の志望状況を見ると、旧七帝大と東京工業大、一橋大、神戸大を加えた難関10国立大は全体としてみると志望者は減っていない。意識の高い受験生は、大学入試改革やコロナ禍にあっても、志望を変えないようだ。最難関の東大と京大の志望状況に注目すると、京大は前年並みで、東大は前年を上回っており、堅調に志望者が集まっている。それでも、両大学共に、コロナ禍の影響から地方の志望者は減っているようだ。難関10国立大で志望者が増えている大学には、北海道大や東北大、名古屋大、大阪大、神戸大などがある。

準難関大は志望者が減少傾向で、都市部の大学で志望者が減っている。特にコロナ禍で二次試験を廃止し、共通テストの成績で合否判定をするとした横浜国立大は、志望者が大幅減。共通テストの成績が読みにくく、二次試験で差をつけられないことが志望度が下がる要因になっているようだ。

首都圏の大学では、お茶の水女子大の減少幅も大きい。MARCH(明治大、青山学院大。立教大、中央大、法政大)などに志望変更する受験生が多いようだ。同様の理由から、前出の横浜国立大や東京外国語大、東京都立大など、首都圏の大学で志望者が減っている。一方、岡山大や熊本大などで志望者が増えており、地元志向の強まりを感じる志望状況となっている。

特集カテゴリの最新記事

ユニヴプレス