<PR>
【CASE.3-1】質の高い就労の実現
【CASE.3-2】「質の高い就労」へ至る関西学院大学での学び
【CASE.4】 理系学部の拡充と 文理の横断-次代を担う Borderless Innovatorを育成する-
2021年4月、関西学院大学が新たな一歩を踏み出す。その舞台となるのは神戸三田キャンパス(KSC)。豊かな自然に囲まれたKSCに、理学部、工学部、生命環境学部、建築学部の4つの理系学部が誕生するのだ。さらに、KSCに拠点を置く総合政策学部との連携を強化し、文理を横断した素養を備える人材の育成に取り組む。関西学院大学のさまざまな改革に迫る本シリーズの第4弾は、「Be a Borderless Innovator」をスローガンに掲げるKSCでの取り組みについて、村田治学長に話を伺った。
関西学院大学学長
村田 治(むらた おさむ)
1955年東京都生まれ。関西学院大学を卒業し、1985年より同大学で助手・専任講師・助教授を務めたのち、1996年に教授就任。
教務部長、経済学部長、高等教育推進センター長を歴任。2014年4月に学長就任。2017年より中央教育審議会委員。
あしなが育英会の副会長やチャンス・フォー・チルドレンのアドバイザーも務める。
―神戸三田キャンパス(KSC)が2学部から5学部に生まれ変わる狙いと、その詳細をお教えください。
関西学院大学では現在、創立150周年の年である2039年を見据えた将来構想「Kwansei Grand Challenge 2039」(以下、グランドチャレンジ2039)」に基づき、さまざまな改革を推し進めています。この構想の中では、「学生の質の保証」が重要な目標として定められています。学生の質を保証するためには数々の具体的な施策が挙げられているのですが、そこに含まれるのが「神戸三田キャンパスの活性化」と「理系学部の再編」です。
「数理資本主義の時代」と経済産業省が謳うように、今後は数学の力が重要な社会になります。OECD加盟各国の学力を調査する「国際学力調査(PISA)」においても、数学と理科の学力はその国の経済成長に密接に結びついていることが証明されています。では、PISAの日本の成績はというと、2015年の調査ではOECDの中で数学と理科が1位でした。一時期の学力低下の状況からは脱しています。しかし、この調査は高校1年生の段階で行われます。日本の高校生は、2年生で文系か理系を選択し、理系に進むのは約2割です。つまり、8割の日本人は、高校2年生以降、物理など理系科目を本格的には学ばないのです。この状況と「数理資本主義の時代」を合わせて考えると、今後の日本の経済は発展どころか、維持することすら難しいと言わざるを得ません。この危機感が、理系学部の拡充の背景にあります。
理系学部を充実させ、その舞台であるKSCが総合政策学部を含む5学部体制になって活性化することは、学びや学生として過ごす時間を今まで以上に有意義なものにします。そのことが「学生の質の保証」、すなわち「関西学院大学の学生ならば間違いない」という社会からの信頼につながります。それは、グランドチャレンジ2039が定める重要な目標である「質の高い就労」につながり、ひいては、関西学院大学で学ぶことによる最終目標である「真に豊かな人生」につながると考えています。
―KSC再編のスローガンである「Be a Borderless Innovator」にはどのような思いが込められているのでしょうか。
1995年にKSCを拠点として開設された総合政策学部は、「Think Globally, Act Locally」という標語を掲げて誕生しました。また、国際化や情報化という当時の時代の変化に対応することを目指していました。つまり総合政策学部は、もともと学際的、すなわち“ボーダレス”なのです。それを今、キャンパス全体に広げようと考えて「Be a Borderless Innovator」というスローガンを掲げました。“イノベーター”の育成についても、総合政策学部にはすでに多数の実績があります。一例を挙げるなら、今年の世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)で共同議長を務められた坂野晶さん(NPO法人「ゼロ・ウェイストアカデミー」理事長)も総合政策学部の卒業生です。このように、学際的に学び、イノベーターを育てる取り組みを理系4学部にも広げていきます。特に文理のボーダレス化には力を入れていきます。
「Be a Borderless Innovator」を象徴する取り組みの一つが、理学部におけるアントレプレナー育成プログラムです。このプログラムでは、総合政策学部の経営学や知財、会計、マーケティングなどの科目群を履修することができます。考えてみれば、GAFA(※)の創業者たちは全員、理系出身です。理系の知識や技術の上に、経営の知識やスキルをプラスすることでイノベーションを起こしてきました。本学が思い描くのはそのような卒業生の輩出です。またこのプログラムでは、日本IBMと共同開発した「AI活用人材育成プログラム」を組み合わせ、起業を大学としてバックアップします。卒業生にベンチャー企業の経営者が多数いるという本学ならではの強みも活かし、卒業生による創業支援も行う予定です。
建築学部は、建物自体の建築を学ぶだけでなく、都市建築や都市デザイン、都市政策にも軸足を置いて学びます。そうなると、総合政策学部との親和性は非常に高いです。具体的には、両学部の間で互いに学ぶことができるメジャー・マイナー制度を導入します。このように、理系4学部を文系の総合政策学部が横串となってつなぎ合わせ、学問領域を超えたイノベーションを起こすことも、スローガンに込めた思いです。
文理の垣根だけでなく、理系の学部や学科の間の壁をボーダレスに越えることも、KSCの大きなテーマです。例えば理系4学部では、各学部の基礎的な内容をどの学部にいても学ぶことができます。これは、大学院への進学を見越したものです。学部生時代に自身の専門分野しか学ばず、院生になった頃には「他の分野のことは何も知りません」というようでは、優れた研究はできません。幅広い分野にまたがる土台があるからこそ、専門分野を高めていけるのです。また、工学部に関しては課程制を導入し、必ず2つの課程を学ぶ「マルチプル・メジャー(複専攻)」という仕組みを導入します。これも、垣根を越えて幅広く学ぶことが専門性を高めることにつながるという考えに基づいています。
私たちは、「新しいことは複数のことを行うからこそ生まれる」と考えています。そもそも、本学の創立者であるランバスは、医者であり牧師です。医学と神学というまったく異なる学びを追い求めたからこそ、本学の設立という新たな取り組みに思い至ったのです。そう考えると、ボーダレスに複数の学びを追究することは、本学のルーツに基づいた取り組みだとも言えます。
ボーダレスは国境を越えるという意味も持ちます。理工学部ではこれまでもインドネシアで海洋生物を学ぶプログラムなど、独自の国際プログラムを展開してきました。再編を機会に海外研修科目(PBL)をさらに拡充し、フィールドワークや実習、インターンシップなど、バラエティ豊かなプログラムにしていきます。
―KSCでは、「持続可能なエネルギー」が重点研究テーマに設定されています。その理由と具体的な取り組みについてお教えください。
国連で採択されたSDGsは、大学での学びや研究を考える上でも大きなテーマです。17個あるSDGsのゴールを本学での研究に落とし込んでいったところ、「持続可能なエネルギー」の分野でユニークな研究を進めている教員がたくさんいました。例えば金子忠昭教授は、SiCという省エネ性能が非常に高いパワー半導体の研究をしています。このほかに、次世代有機ELや人工光合成の研究なども行われています。これらをさらに推進することで、本学をエネルギー研究の拠点地にしたいと考えています。将来的にはリエゾンオフィスを設置したり、アントレプレナーを支援したりという構想も持っています。
―KSCの施設面での特色をお教えください。
アカデミックコモンズが本学ならではの空間です。一般的にアカデミックコモンズは、授業での学びを、グループなどで発展させて学習するための場として用いられることが多いです。これに対して本学では、学生が自ら学びのテーマを見つけ出し、それを他の学生や教職員とともに掘り下げ、発展させる場として用いられています。「学生の学生による学生のための生きた学びの場」として利用されていることが、本学のアカデミックコモンズの特色です。
―郊外型であるKSCで学ぶことにはどのようなメリットがあるでしょうか。
KSCは豊かな自然に囲まれた静かな環境です。勉強に集中するにはうってつけの場所だと言えるでしょう。
KSCがある三田市は、神戸や大阪にほど近いベッドタウンとして変遷してきました。1990年代には日本一の人口増加率を記録したこともあります。一方で現在は都心回帰の流れで、人口減少や住民の高齢化が課題になっています。街を見渡せば農地があり、商店街もあります。これらの産業基盤も、ベッドタウン化、人口減少・高齢化という波の中で衰退したり、次世代への継承が難しいという課題を抱えています。これらの課題は、日本全体が抱える課題と一致します。つまり、三田市の課題解決に取り組むことは、日本の課題解決に先鞭をつけることでもあるのです。
そこで私たちは、三田市と一体となって、地域の課題解決に取り組んでいきます。地域の活性化というテーマは、建築学部が取り組む都市設計や都市デザインというテーマ、あるいは総合政策学部のソーシャルビジネスや地域マネジメントなどのテーマと合致します。自然環境が豊かな地域とあって、生命環境学部が取り組む生物多様性や環境モニタリングを学び、実践する舞台としてはぴったりでしょう。これからの時代の地域の課題解決には、AIをはじめとした情報技術が欠かせません。すなわち、理学部や工学部の知見を活かすことができるという意味になります。このように、KSCの5学部は三田市の課題と非常に親和性が高いのです。ここに、郊外、ひいては三田で学ぶ大きなメリットがあると言えます。
―KSCも含めた関西学院大学全体についてお伺いします。学長が考える、関西学院大学の学生の“良さ”はどんなところでしょうか。
私は常々、「素直であることが一番大切」であると学生に伝えています。そして、企業からも本学の卒業生は素直さを評価していただいており、非常にありがたく思っています。
では、どうして本学の学生が素直さを身につけて社会に羽ばたいていくのか。それは、キャンパスの環境と、本学の根幹であるキリスト教主義に基づいた教育に理由があると思います。本学では、学内に礼拝堂が設けられていることはもちろん、学部ごとにチャペルが設置され、チャペルアワーと呼ばれる礼拝形式の集会を行う時間が毎日用意されています。また、本学のシンボルでもある西宮上ケ原キャンパスの時計台は、雄大な甲山を背景にして佇んでいます。人間の英知の結晶とも言えるヴォーリズ建築と自然とが調和した姿に、私たちの心の中には、無意識のうちに自然への畏怖や先人たちへの感謝の念が湧き上がります。そういった環境の中で過ごすことにより、自然に謙虚さや素直さが養われていくように思います。つまり、キャンパス全体で人格教育を行っているのです。KSCをはじめ、西宮上ケ原キャンパス以外でもヴォーリズ建築を踏襲していることや、学部ごとにチャペルが設けられていることには、そういった意義があります。
―今後、どのような学生を世に送り出していきたいとお考えですか?
先ほどお話ししたとおり、素直さを備えた学生であることは変わりありません。それに加えて、個人としてのコンピテンシーを兼ね備えた学生であってほしいと考えています。コンピテンシーとは、その人なりの、「私はこんなことができる」「私はこんな能力を備えている」という、資質や能力のことです。
現在、日本社会は新卒一括採用の終わりを迎えようとしています。それは、デコボコのない横並びでよかった時代から、デコボコであること、すなわち個性と多様性が重視される時代へ移り変わることを意味します。本学では今年4月に、関西学院大学で学ぶすべての学生に身につけてほしい知識・能力・素養として、「Kwanseiコンピテンシー」を定めました。これを身に付けることを足がかりとして、自分なりのコンピテンシーを磨いていってほしいです。
―読者へメッセージをお願いします。
関西学院大学は日本の私立大学の中で一番、先の社会を見据えている大学であると自負しています。
私たちが見据えるのは、卒業生が生涯にわたって夢を追い続け、生きがいのある人生を送ることです。そのためには、一人の人間として自立している必要があります。そして、自立のための第一歩が就職です。だから私たちは、「質の高い就労」にこだわります。単に就職するだけでなく、納得のいく就職先、やりがいをもって働くことができる就職先で社会人としての人生をスタートすることが大切だと考えているからです。
もう一つ、私たちが自負していることがあります。それは、「日本一、就職活動をする学生のサポートを本気で考える大学」であることです。これは、卒業後の進路把握率が99.6%という高い数字にも表れています。本学のような規模の大学で、この数字は驚異的なことです。
本学のスクールモットーは ”Mastery for Service(奉仕のための練達)”です。「社会に貢献するために自分を磨いていこう、高めていこう」といった意味合いなのですが、しばしば、「for Service」の部分ばかりが注目されます。しかし私は、「Mastery」の部分が非常に大切だと考えています。自分自身が成長し、高まっていないと、社会への貢献をしたくてもできないからです。自分を成長させ、高めることとは、例えば、携わるビジネスを発展させることでもあります。事業を起こすこともその一例です。本学卒業生に起業家が多いのも、「for Service」の過程として、精進しているからです。そして、社会における社会貢献の最初の一歩が、就職です。この考え方があるから、私たちはとことん学生のサポートをするのです。
私たちは、これからの日本、そしてこれからの世界が必要とする人材の育成に取り組み続けます。どうぞ関西学院大学の今後にご期待ください。
※GAFA:世界を代表するグーグル(Google)、アップル(Apple)、フェイスブック(Facebook)、アマゾン(Amazon)4社の頭文字を取って総称する呼称。