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実学に裏づけられた実践的な教育研究が高く評価されている東京農業大学。「農学」の扱う研究領域が広がり続ける中、2018年には応用生物科学部に農芸化学科を新設した(生物応用化学科より名称変更)。「生産から消費までのトータルソリューション」を掲げる農芸化学科では、どんな学びが待っているのだろうか。
食に関するゼネラリストを目指せる 東京農業大学の農芸化学科
東京農業大学が2018年に新設した応用生物科学部農芸化学科。学科名称から学びや研究の内容をイメージできる人は少ないかもしれないが、農芸化学という言葉は、西洋から多くの科学技術が輸入された明治初期以来、100年以上にわたり使われてきた。
この学問分野は、化学や生物学といった学問領域を結びつけて、食料生産に関する新技術の提案や基礎的な原理の追及を推進するために誕生した。農芸化学の「芸」という文字は「技術(art)」を意味しており、研究した内容を応用し、イノベーションにつなげていく姿勢を表している。
農芸化学科長の樋口恭子教授は、新たな学科名称として「農芸化学」という言葉を採用した理由を次のように話す。
「私たちの学科では人間の生活に直結する部分、とりわけ『食べる』ということに関して、さまざまな方面から研究しています。いずれの研究も突きつめると農作物に端を発しており、技術と基礎研究が連携しながら新しい領域に手を広げ、今も発展を続けています。こうした点を踏まえると、この学科を最も適切に表現できるのが古くからある『農芸化学』という言葉だったのです」
幅広く学び専門力あるゼネラリストを目指す
農芸化学科で扱うのは、農作物の生産手法、食料生産に必要な肥料や農薬などの化学物質、人に幸福感を与える食品にするための加工技術、食品が人の健康に与える影響、食品への微生物の関与など多岐にわたる。
農芸化学科での学びを端的に表すと「生産から消費までのトータルソリューション」という言葉に集約される。単に広く薄く学ぶ学科というわけではない。食に関わる大切な事項をピンポイントに深く勉強した「食に関するゼネラリスト」の育成を目指しているのが特長だ。
とはいえ、具体的にどのような研究が行われているのかは気になるところ。実際の研究内容について、栄養生化学研究室の井上順准教授と、応用微生物学研究室の梶川揚申准教授がそれぞれ説明してくれた。
井上准教授は、特定保健用食品(トクホ)などの「機能性食品」として応用可能な食品成分の探索に取り組んでいる。たとえばトクホの緑茶に多く含まれる「カテキン」はそうした食品成分の一つだ。
「食品には3つの機能があります。栄養素を摂取する機能、おいしさや香りなど食を楽しむ機能、そして健康を維持する機能。私の研究は3つ目に関係しており、『抗メタボ作用』のある食品成分を探索し、分子レベルで科学的根拠を示すための研究を続けてきました。ビールの原材料であるホップに含まれる『キサントフモール』という成分が、肥満や脂肪肝を抑制することを突きとめましたが、効果を出すにはビールに換算すると1日に7万リットルもの量が必要なことも明らかになりました。実用化するにはサプリメントの形にするなど、別の方法が必要です」
キサントフモールが肥満を抑制するメカニズムの解明や、ホタル由来の発光物質を用いた効率的な評価手法の確立などにも取り組んできたそうだ。
応用微生物学研究室の梶川准教授は、微生物の中でも発酵食品などに含まれる乳酸菌にスポットを当てる。乳酸菌の遺伝子を組換えてワクチンの効果を持たせる研究に取り組んでいる。
「ワクチンには弱めたウイルス、細菌成分などさまざまな形態がありますが、どうしても低確率で副作用が発生してしまいます。乳酸菌の遺伝子を組換えてつくったワクチンは元が乳酸菌なので、より高い安全性が期待できます。この手法が確立されればワクチンのレパートリーを増やせますし、大量生産も比較的容易です」
乳酸菌のワクチンは注射ではなく経口での接種が可能なため、接種のしやすさという面でもメリットがある。同じワクチンを投与する場合、理論的には注射よりも粘膜経由の方が効果的だと分かっていることもあり、経口投与できる「乳酸菌ワクチン」への期待が高まっているという。
研究に打ち込んだ経験が社会で働く上での自信に
こうしたさまざまな研究が行われる農芸化学科では、学部生の研究室活動にも力を入れている。
「4年生は1人1テーマを決めて、1年間継続的に研究活動を行いながら卒業論文の作成に取り組みます。年に3、4回の研究発表の機会があり、レジュメをまとめる、要点を絞って数分で発表する、質疑応答に対応するといった経験を通して、社会で活躍するための下地となる能力やテクニックが全て身につきます。在学中はつらく感じる場面もあると思いますが、困難を乗り越えた達成感や自信が仕事をやり遂げる力につながっていきますし、幅広く学ぶことで得たさまざまな知識が、仕事での気づきにつながっていると振り返る卒業生も多いです」(樋口教授)
卒業後の進路としては、食品や化学品を扱う製造業に進む割合が最も高いが、情報関係の企業に進む人も多い。職種は、開発、製造、品質管理のほか、専門的な知見から顧客に製品の使い方を説明する技術営業など幅広い。
大学院への進学や、理科教員として教師の道を選ぶ人も少なくない。研究室活動で培われる論理的思考力や予期せぬ出来事を乗り越える人間力が、卒業後の多様な選択を可能にしている。
農芸化学科の魅力や求める人物像について樋口教授は「全ての学びがつながっていることを意識しながら、さまざまなことに取り組めるのがこの学科の一番の魅力です。化学と生物の知識や技術を使って社会貢献したいと思う人であれば、誰でも歓迎します」と答えてくれた。大きな視点で「農」や「食」をとらえてみたい高校生には特におすすめの進学先だ。