新たな再生可能エネルギー活用モデルで 災害に強く自立した持続可能な地域を作る│金沢工業大学

新たな再生可能エネルギー活用モデルで 災害に強く自立した持続可能な地域を作る│金沢工業大学

金沢工業大学が新キャンパスで行う実証実験のテーマは「再生可能エネルギー」。太陽光発電や蓄電設備を活用し、自分たちが使う電気を自前で作り出すための試みだ。地球環境に優しく、災害に強いまちづくりや地域の自立も後押しできる。エネルギー自給の新モデル構築はどこまで進んでいるのだろうか。

新たな再生可能エネルギー活用モデルで 災害に強く自立した持続可能な地域をつくる

私たちのさまざまな活動を支える石油や石炭などの化石燃料は、資源の枯渇が懸念される。燃焼時に発生する温室効果ガスは大気汚染や地球温暖化の原因にもなっている。

こうした中で全世界的に、太陽光・風力・バイオマスといった再生可能エネルギーの活用が叫ばれている。持続可能な開発のために国連加盟国が達成を目指す開発目標「SDGs(※1)」も、「2030年までに世界のエネルギーミックスにおける再生可能エネルギーの割合を大幅に拡大させる」「気候関連災害や自然災害に対する強靭性及び適応の能力を強化する」などのターゲットを掲げる。

クリーンエネルギーが未だ社会の主流となっていないのは経済性の問題が大きい。石油・天然ガス・原子力を使った発電所で一度に大量の電気を作るのに比べ、小規模な太陽光発電や風力発電はコストが高いと言われきた。広域の電力を少数の発電所がまかなう既存の≪集中型制御≫の枠組みでは、電力需給に応じた細かな調整が難しい小規模発電は不利になる。

再生可能エネルギーを地域で融通し合う電力モデルを新たに構築

こうした再生可能エネルギーの弱点とされる部分を発想の転換で克服し、社会での活用を進めるためのプロジェクトが金沢工業大学(KIT)で進んでいる。KITが2018年春から取り組む「エネルギーマネジメントプロジェクト」では、再生可能エネルギーや蓄電池、電気自動車(EV)、水素、熱活用などを組み合わせた電力制御システムを構築し、地域特性に合わせた再生可能エネルギーを有効活用することで、地域で電力を融通し合う「エネルギーの地産地消モデル」の構築を目指す。

小さな単位で発電して電力は近隣で消費する≪分散型制御≫の考え方に基づく、新しい電力供給モデルだ。

こうした≪分散型制御≫の仕組みは「災害に強い社会作り」にもつながる。≪集中型制御≫では個々の発電所が担う役割が大きいため、どれか1つが停止するだけで、たちまち電力が供給できなくなるリスクがある。北海道胆振東部地震では道内で大規模停電が発生し、現代社会の災害への脆弱さが露見した。

≪分散型制御≫であれば個々の発電設備の停止がシステム全体に影響を与えることは考えにくく、直接的な被害がない地域では発電を続けられる。つまり、複数の発電所でリスクを分散することで、災害による社会への悪影響を最小限に抑えられるのだ。

プロジェクトでは、①太陽光・風力・小水力・バイオマス・低熱発電などによる創エネ、②蓄電池・EV・水素へのエネルギー貯蔵、③DC(直流)リンクによる効率化、④温泉水・地下水・バイオマスボイラ・低温発電を用いた熱活用、などを組み合わせ、地域内エネルギーの最適な運用を実現することが最終的なゴールとなる。

18年4月に開設した白山麓キャンパス(石川県白山市)では、すでに実証実験が進んでいる。キャンパス内の4軒のコテージに太陽光パネルと蓄電設備を設置。コテージ間を電気配線で接続することで、発電した電力を相互に融通し合っている。

電力のバランス制御を担うシステムも独自に開発。各コテージの消費電力をリアルタイムに把握することで、電力不足時のコテージ間での電力の融通や、蓄電池への充電・放電といった制御を、事前にプログラムした融通パターンに基づいて自動で行っている。将来的にはAIによる自律的な制御にも挑戦する計画だ。

コテージ間の配線には直流給電システム(DCリンク)を採用している。≪分散型制御≫の電力供給モデルは「地産地消」型のため、発電した電力は基本的にその近隣で消費される。長距離送電をしないため、一般的な送電線のように交流(AC)を用いる必要がない(※2)。太陽光発電と蓄電池はいずれも直流(DC)で電力を出力する。DCリンクを用いることで交流と直流の変換に伴う電力損失を防げるため、全体として電力効率の高いシステムを構築することが可能になる。

コテージに導入された制御システム
コテージに導入された制御システム

EVや水素にエネルギーを貯蔵することで多様な活用が可能に

電気自動車(EV)を電力輸送のための「配電線」として活用する実験も同時に進む。キャンパスにはEVの充電スタンドが設置され、コテージの蓄電池の電力を電気自動車へ給電することができる。充電されたEVは約30キロメートル離れた扇が丘キャンパス(野々市市)との往復に使用されるほか、EVからの電力供給もできるようにすることで、電力が不足する地域に電気を輸送することも可能にしている。EVの電気を活用できれば急な停電時にも役立つだろう。

電力貯蔵に水素を活用する計画もある。蓄電池が少量・短期間のエネルギー貯蔵に向くのに対し、水素は大量・長期間の貯蔵に適している。水素は燃焼時に二酸化炭素が発生せず、再生可能エネルギーを用いれば製造時の排出量も限りなくゼロに近くなる、非常にクリーンなエネルギーだ。発電した電気で水素を作り、水素の形でエネルギーを貯蔵すれば、蓄電池と水素の相互補完的な活用が期待できる。電力消費の少ない休日に水素の形で貯めたエネルギーを、消費量の多い平日に活用するといった使い方も可能だ。

「配電線」に見立てた電気自動車で電力の輸送も行う
「配電線」に見立てた電気自動車で電力の輸送も行う

風力・地熱・バイオマス・小水力などの発電技術を組み合わせて活用することも視野に入れる。温泉水や地下水の熱活用として、白山麓キャンパス内にある温泉施設「比咩(ひめ)の湯」の温泉水や、一年を通じて温度が一定の地下水を、融雪や冷暖房に利用する計画もある。

白山麓キャンパスに併設される国際高等専門学校では、図書コモンズの「ゼロエミッション化(温室効果ガス排出ゼロ)」を目指している。温泉水や地下水で空調を制御し、DCリンクからの電力で照明などをまかなう最先端の空間になる予定だ。

これらの実験が実を結べば、再生可能エネルギーを軸としてエネルギーを「地産地消」できるコミュニティが、全国各地に作られるようになるだろう。地球環境に優しいうえ、地域のエネルギーを誰かに依存することがなくなり、地域創生につながる。災害に強い強靭なまちづくりにも貢献できる。環境の面でも社会の面でも、持続可能性を高めることができるKITの一大プロジェクトの成功に注目が集まる。

※1 SDGsとは持続可能な開発目標と訳される、国連加盟国が2030年までに達成を目指す国際目標。世界を変えるための17の目標と169のターゲットからなる。
※2 交流(AC)は超高電圧で送電できるので、発電所から各家庭など、長距離送電時の電力ロスを少なくできるのがメリット。一般家電は直流(DC)で動作するため、ACをDCに変換する回路が組み込まれている。直流と交流の変換時にも電力ロスは発生する。

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