【2017年の新設大学・学部・学科】実学重視の傾向が鮮明となった

【2017年の新設大学・学部・学科】実学重視の傾向が鮮明となった

日本社会が抱える諸問題についてキーワードを挙げるとすれば、医療・看護やグローバル化、情報化などの言葉が思い浮かぶのではないか。新しくできる大学や学部には、そうした流れを踏まえたものが多い。新設や改組の動きを見ることで、これからの社会がどこに向かっていくのかが分かるのかもしれない。


新設される大学や学部、学科を眺めると、今の社会でどんな人材が求められているかを見て取ることができる。大学の新設がなかった2015年とは打って変わり、来春は新たに5大学が開設予定だ。北海道千歳リハビリテーション大や福岡看護大など、全ての大学が看護やリハビリテーション系学部を持つ。少子高齢化や過疎化が進む地方では、医療従事者の不足が深刻な状況だ。人材養成を通じて、大学がそうした問題に応えようとしているのが伺える動きだ。
既存の大学にも看護の新設が進む。東京情報大・看護は、在宅ケアなど地域医療に力を入れた教育を行う。地域で活躍するさまざまな看護師のもとで実習を行い、多様な働き方に触れることで、自分に合った職場や働き方を見つけられるのが特徴だ。岩手医科大・看護、いわき明星大・看護、人間環境大・松山看護なども新設される。

【2年連続で医学部が新設高齢化で健康需要も増加】

医学部が2年連続で新設されることにも注目が集まっている。今春の東北医科薬科大に続き、来春は国際医療福祉大が千葉県成田市に医学部を設置する。成田国際空港が近い立地を生かし、国内外で活躍できる医師の養成を目指す。
高齢化による健康に対する関心の高まりを背景に、スポーツ科学系の新設も増えている。来春は、中部学院大・スポーツ健康科、日本福祉大・スポーツ科、久留米大・人間健康などが新設予定だ。
私立大では教員養成系の新設が続いている。来春は、学部では開智国際大・教育や松本大・教育、鈴鹿大・こども教育、京都橘大・発達教育。学科では玉川大・文の国語教育学科など、4つの新設がある。国立大の教員養成系では学科等の改組の動きが見られ、愛知教育大・教育(教育支援専門職養成課程)や大阪教育大・教育(初等教育教員養成課程、教育協働学科)が新たに設置される。

【ミッションの再定義に伴い国立大の改組が活発化】

国立大で学部・学科の改組が多いのは、今年が国立大の第3期中期計画の初年度にあたるためだろう。この中期計画の策定段階で文部科学省は、国立大に各学部のミッションの再定義を求めていた。特に教員養成系や人文社会科学系の見直しが強調されたこともあり、こうした学部系統の動きが活発だ。人文社会科学系では、山形大・人文社会科、茨城大・人文社会科、島根大・人間科で新設や改組がある。
理学部や工学部など、国立大の理系学部では、北見工業大や山形大、千葉大、新潟大、名古屋大、琉球大などで学科の再編が行われる。例えば千葉大・工は、建築学科や電気電子工学
科など10の学科を、総合科学科という1つの学科にまとめる予定だ。研究分野のより一層の細
分化が進むことで、分野横断型の研究が増えており、学科として分けることが難しくなっているのだろう。
私大の理工系学部では、芝浦工業大が建築を新設する。東京オリンピックのインフラ整備に注目が集まり、人気が高まっている系統だけに、多くの志願者が集まりそうだ。九州産業大・建築都市工や、これからの都市づくりについて学ぶ横浜国立大・都市科でも、建築を学ぶこ
とができる。建築以外の理系では、東京電機大・システムデザイン工、東京農業大・生命科、大阪工業大・ロボティクス&デザイン工、九州産業大・理工などがある。

【ビジネスでの即戦力人材の育成が主流の国際系学部】

受験生からの人気が高い国際系は、来春も多くの新設がある。日本の大学のグローバル化を牽引する、スーパーグローバル大学に選ばれている東洋大は、国際と国際観光の2学部を同時に新設する。国際では、リーダーシップ力や地域の自律的発展に貢献できる知識や能力を身につけた、イノベーションを起こせる人材の育成を目指す。国際観光では、日本文化の正しい知識や外国人観光客への具体的な提案力をもとに、観光業界をリードする即戦力人材を育成する。津田塾大・総合政策は学部名に国際の文字はないが、歴史のあるリベラルアーツ教育と高度な英語教育を、課題解決という実学的な方向に発展させる学部だ。京都橘大・国際英語は、1年間の留学を必須とし、英語力とビジネスや金融、経営、観光などの専門性を併せ持つ人材の育成を行う。文教大・文は外国語学科を新設し、多文化理解をキーワードに、実践的な言語コミュニケーション能力を養成する。その他には、昭和女子大・国際、南山大・国際教養、大阪産業大・国際などが新設される。
情報系も活発な動きを見せている。東洋大・情報連携は、情報通信技術を活用してさまざまな機能やサービスを組み合わせることで、システムや人、アイデアを連携させる力を身につける学部だ。立命館大・情報理工では、既存の4学科を1つの学科にまとめ、ICTに共通する知識や技術を統一的に学べるようにする。ビッグデータの活用で社会問題の解決を目指す、滋賀大・データサイエンスのように、文理融合型のカリキュラムを導入する情報系もある。
新しい大学や学部には、昨今の社会情勢や問題意識が反映されているため、受験生の志望と合致することも多いだろう。希望の系統に新設がある場合は、教育内容や入試制度の情報を集め、早めに志望校として検討することをお勧めする。

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