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中村学園大学教育学部では、2025年度からのオーストラリア・メルボルン日本人学校での教育実習実施※に向け、メルボルンでの海外教育演習を独自科目として新設。24年2月には同演習のトライアル派遣を行った。一連のグローバル教員養成プログラム(Global Teaching Experience Program:G-TEP)の設置目的やトライアル派遣の成果、今後の計画について、教育学部児童幼児教育学科の木原美樹子先生と中島憲子先生にうかがった。またトライアル派遣に参加した大学4年生の松尾祥果さんと小津和天羽さんにも話を聞いた。
※24年度 海外教育演習(2年次)、25年度 在外教育実習(3年次)
取材・文 林 郁子
独自のグローバル教員養成プログラムがスタート
木原美樹子 准教授
(教育学部児童幼児教育学科)
中島憲子 准教授
(教育学部児童幼児教育学科)
―グローバル教員養成プログラム(G-TEP)について、その概要を教えてください。
中島 グローバル教員養成に向けた国の取り組みとして、2018年に教育職員免許法施行規則の一部が改正され、在外教育施設での教育実習が可能になりました。つまり、教育実習先として、海外の日本人学校などを選択することもできるようになったのです。これまでも、関東・関西の教育学部が東アジアを中心とした在外教育施設や現地校での海外実習を行ってきましたが、多くが教職免許単位外です。そうした中、中村学園大学では23年入学生が2年次に海外教育演習、3年次に在外教育実習を、それも英語圏のオーストラリアで行うことができるG-TEPを立ち上げました。
―貴学でG-TEPを導入することになったのはなぜですか?
中島 本学では、これまでアメリカ、カナダ、オーストラリアへの語学研修や韓国や台湾へ向けた短期研修などを実施してきました。しかし、教育学部に特化した海外研修プログラムは存在しなかったんです。21年に本学部では「理論と実際を統合する力」の育成プログラムを目指して英語圏の「がいこく」で行う「在外教育実習」を目標にしました。しかし、当該国の実際の教育事情を知らずして実習をすべきではありません。中村学園型のグローバル教員を模索していましたので、現地校での研修とセットにした、独自のプログラムを構築することにしました。
トライアルの成果でプログラムが大きく進化
―昨年度に実施されたトライアル派遣について教えてください。
木原 トライアル派遣には24年2月26日から3月7日に、教育学部学生11名と栄養科学部学生1名の12名が参加しました。その中でオーストラリア・メルボルンの、第二言語として日本語を学ぶ現地の小学校や英語と日本語のバイリンガル校、土曜補習校を訪問しました。各学校で授業を参観するとともに、英語でカルタや習字、和食など日本文化を紹介する授業を行いました。バイリンガル校では、やさしい日本語を意識しながら、栄養講座や和食の調理を行いました。訪れた現地小学校に通う子どもの家庭に1人ずつホームステイをし、オーストラリアの子どもたちの日常生活も体験することができました。
―トライアル派遣ではどのような成果がありましたか?
木原 現地に行くと、学生は想像以上にいろいろなことができるのだと実感しました。日本文化を紹介するために約半年前から、グループで役割分担をし、互いに学び合いながら、授業づくりを進めてきました。現地では子どもたちの反応を見て、臨機応変にその場で絵を描いて説明するなど、教育学部の学生としてのスキルを存分に発揮していました。
中島 学生の力を遺憾なく発揮できるよう、どれだけ自律を促すかを重要な指針としていました。学生の中からリーダーを選び、各学生に役割を与えてどんどん任せ、プログラムを進めていきました。短期間のうちに事前準備を完了させ、現地では学生たちが凛として行動しました。現地での最終総括会議や帰国後の報告会も、学生たちが全て仕切りました。さらに、トライアル派遣で得た経験を後輩に繋げてほしいと考え、派遣学生の中から2名をメンターとして、来年2月の第1回海外教育演習に参加してもらうことにしました。メンター学生は2年生とともに事前準備を進めています。3年次のメルボルン日本人学校での教育実習は、この演習で派遣された学生から2名を選抜して行います。その2名以外の学生が、4年次にメンターとして2年生の演習に参加することも予定しています。
木原 このトライアルの成果を受けて、本プログラムは福岡県の「世界に打って出る若者育成事業」に採択されました。参加した学生の頑張りのおかげだと思います。
教育学部の学生が海外に視野を広げる起点に
―G-TEPを今後どのように進めていきたいですか?
木原 教育学部は教育実習などカリキュラムの制約上、他学部に比べると留学しづらいという側面があり、教育学部学生の「内向き志向」が指摘されてきました。G-TEPは教育学部の学生が、海外に踏み出す一歩となってほしい。そして、さらなる留学へと繋がるといいですね。
中島 トライアル派遣に参加した学生は、日本語を第二言語として学ぶ子どもたちに向けて、正しい日本語を話すことを非常に意識していました。現在、日本語の乱れや危機が叫ばれていますが、このプログラムをきっかけに学生に日本語を見つめ直してもらえたらと思います。また、オーストラリア以外の国や地域の教育にも関心を持ってもらえたなら、日本の教育の素晴らしい点や改善点がさらに見えてくるでしょう。大きな話をすれば、日本の教育課程を改革できるリーダーになってほしいと、本音では期待しています。
学生インタビュー
小津和天羽さん
教育学部 児童幼児教育学科 4年
松尾祥果さん
教育学部 児童幼児教育学科 4年
―今回のトライアル派遣で印象に残ったことを教えてください。
松尾 現地の小学校の授業のやり方が日本と全く違ったことです。授業中は教室の後ろにある椅子に座ってもいいし、先生の前で床に座ってもいい。天気がよければ、筆記用具を持って中庭で算数の授業をしてもいい。日本の教育ももっと自由でいいのかもしれないと思いました。
小津和 私も授業が自由なことに驚きました。就学前の子どもたちのクラスには、セラピードックが参加していることもあり、とてもやわらかい雰囲気でした。幼稚園から上がってきたばかりの低学年の授業は多くの遊びを取り入れられていたので、日本では子どもたちが学校に行きたくなるような授業をつくりたいと思いました。
―苦労したことや工夫したことはありますか?
松尾 私は学生代表を務めていたため、グループごとの活動や人間関係を把握し、マネジメントしていく役割を担っていました。トライアルは3、4年生合同でほぼ初対面の先輩もいる中、一人ひとりがどんなタイプで何が得意なのかを見極めて、適材適所で動けるように考えるのは大変でしたが、いい経験になったと思います。
小津和 私は折り紙の授業を担当していたのですが、英語で授業を行うことが難しく、かなり苦戦しました。渡航前にみんなで授業に必要な英語の練習をしましたが、実際の授業では想定通りに会話が進むわけではないためどのように伝えればいいのか考え、工夫しました。
松尾 英語だけでなく、日本語を第二言語として学ぶ子どもたちへの授業では、自分の日本語が正しいのかということもかなり考えました。日本食を伝える際には栄養バランスを教える際にカードゲームを作ってみました。来年はメンターを務めるため、私たちの経験をまとめて、しっかりと伝えていきたいです。
―成長や変化を感じていることはありますか?また将来の夢があれば教えてください。
小津和 オーストラリアの文化を経験したことで、自分の性格も変わったと感じています。服装や考え方も、日本にいたら変わらなかったことが変わりました。海外の文化に興味を持ったので、ワーキングホリデーなどにも挑戦したいと思っています。
松尾 今回のプログラムで、オーストラリアの先住民の文化を取り入れた教育がとてもおもしろいと思ったため、卒業後は日本で教員経験を積んだあと、オーストラリアの日本人学校で働きたいと思っています。