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学習院大学航空部は、エンジンのない航空機である「グライダー」で優雅に空を飛ぶ部活動です。学習院女子大学と合同で活動しており、2024年度は合計12名の部員が在籍。「自家用操縦士」というパイロットの国家資格取得に向けて飛行訓練に励んでいます。3年生で2024年度の主将を務める庄司さんと、同じく3年生で主務の森さん、そして知識豊富な2年生の濱田さんに、同部の活動内容や魅力をお聞きしました。
庄司 誠 さん(2024年度 主将)
法学部法学科 3年
東京都・私立学習院高等科出身
森 信人 さん(2024年度 主務)
理学部化学科3年
福岡県・私立東筑紫学園高等学校出身
濱田 英樹 さん(2024年度 渉外)
法学部政治学科2年
埼玉県立秩父高等学校出身
最大の醍醐味は、自分の操縦で空を飛べること
―まずは部の概要から教えてください。
庄司:私たちは月1回のペースで年間12回ほど、埼玉県熊谷市で土日の“週末合宿”を行い、合宿所からすぐの「妻沼滑空場」でグライダーの飛行訓練をしています。また、夏休みと冬休みにはそれぞれ5日間程度の合宿もあるほか、地方で開催される大会にも参加して滑空距離や滑空時間などを競います。目標は、在学中に国家資格である「自家用操縦士」の資格を取得することです。
森:グライダーはエンジンのない航空機で「滑空機」とも呼ばれ、紙飛行機のように高いところからゆっくり滑らかに高度を下げながら飛行します。普段は「ウィンチ」という“ロープ巻き取り装置”を使い、“凧揚げ”のように引き上げてもらって離陸します。
濱田:グライダーは、いわゆるジェット機のようなエンジンがない点を除けば、操縦方法などは航空機そのものです。航空工学に基づいて設計されていますし、翼に重たいエンジンを積んでいない分、上空での摩擦が少なく、滑らかに飛行できるんです。
―みなさんはどのような思いで入部されたのですか?
森:私はジェットコースターですら苦手なほどでしたが、目新しいことがしたくて体験搭乗に参加しました。怖さもありましたが、離陸時の加速で一気に気持ちが高ぶり、楽しさに引き込まれました。学生時代でなければ集中的にできない活動だと思いましたし、自分の操縦で空を飛べるという魅力が決め手になりました。
庄司:私も新しいことに挑戦しようと思いました。私はそこまで怖さを感じることもなく、体験搭乗では離陸時から動画を撮っていたほど余裕がありました。絶景が広がる上空での爽快感はいうまでもなかったですし、私も“自分が操縦できる”という点に魅力を感じました。
濱田:私の場合、実は大学で部活動やサークルに入るつもりはなく、自由時間を謳歌して悠々自適な大学生活を送ろうと考えていました。ただ、乗り物全般が好きで高校時代から原付バイクに乗っていましたし、やはり「操縦できる」という点に惹かれて心が動かされました。ただ、それまで旅客機にも乗ったことがなく、初めて空を飛ぶのがグライダーとなったため、体験搭乗では緊張感もありました。コックピットに入ってから離陸するまでの時間がとてつもなく長く感じられ、怖さとドキドキワクワクが交錯する複雑な感情だったことを覚えています。また、ジェットコースターだと急勾配を下るときに“フワッ”とする瞬間がありますが、これは「サブG」や「ネガティブG」と呼ばれるもので、グライダーでも下降気流で機体が上から押される瞬間には同様の現象が起こります。ただ、心も体も慣れていきますし、ジェットコースターでは何も感じなくなる“副作用”もありますね。
陸での学びを空で実践
―入部希望者はどうすればいいですか?
庄司:まずは体験搭乗で実際に空を飛んでもらいます。「複座機」と呼ばれる2人乗りの機体に乗ってもらい、インストラクターが操縦します。体験後は、その場で入部を即決してくれても、何日間か検討してくれても構いません。なお、入部後もしばらくはインストラクターが一緒に乗り、少しずつ学生が操縦するようになります。そうやって経験を重ね、インストラクターのチェックを経て単独飛行が可能になります。
濱田:入部に際しては「航空身体検査」を受け、「航空機操縦練習許可証」を国土交通省から発行してもらうことで、インストラクターが同乗する飛行訓練や、地上でインストラクターが監督する中での単独飛行が可能になります。その後、規定の飛行経歴をクリアして学科試験にも合格したら「指定養成」というプロセスを経て、パイロットの国家資格である「自家用操縦士」のライセンスを取得できます。インストラクターは監督をはじめOBが3名いるほか、他大学の関係者にもお力添えいただいています。
森:なお、インストラクターのほか、部員も「機体・無線係」と「動力・機材係」に分かれ、全員が協力することで初めて安全かつ円滑な飛行訓練が可能になります。ただ、部員数が限られていますので、臨機応変な対応も不可欠になります。
濱田:少人数だからこそ、すべての部員が“ジェネラリスト”として動けることが大切ですし、何らかの事情で参加できなくなった学生がいた場合に、誰もが代役を務めて助け合える体制にはなっていると思います。
―パイロットとしてはどんな技術を身につけていくのですか?
濱田:エンジンがなくても長時間飛び続けるために、うまく上昇気流に乗って高度を保つ技術などを磨いていきます。上昇気流は体でも感じますし、計器を見ていてもわかります。普段乗っている機体は非常に軽いため、上昇気流があるとお尻を突き上げられるような強い力を感じることもあります。
森:太陽光で暖められた地上からは常に上空に向かって風が発生していて、高度が上がるにつれてその風が合流して勢いが増していくんです。また、フライト中に視線の先に雲があれば、そこには上昇気流があることが多いので、視覚的にも体感的にも上昇気流を見つけることができます。
濱田:雲の下で発生しているのは、地面が温められることで生まれる「サーマル」という上昇気流です。ほかにも、山に当たった風が跳ね返って上方に吹く「リッジ」という上昇気流もあり、「ウェーブ」や「コンバージェンス」といった現象からも上昇気流が生まれます。ただし、例えば片方の翼だけに上昇気流が当たって機体が傾いたり、機体全体で下降気流に当たって高度が押し下げられたりすることもあります。
庄司:その結果、着陸地点まで距離があるのに予定よりも高度が下がってしまうケースもありますが、さまざまな状況に応じた対処方法をインプットした上で飛んでいるので、みんな特に焦ることなく、冷静に対応しています。多様な気象条件での操縦方法を平日に座学やフライトシミュレーターで身につけていますので、それを上空で実践する流れですね。
―では、平日の活動についても教えてください。
森:平日は毎週木曜日にミーティングがあり、週末の合宿に向けた準備やインストラクターへの依頼を行うほか、グライダーで安全に飛行するために必要な知識の習得に励みます。
濱田:航空工学や、ライセンス取得に必要な航空法などのルール、滑空場での“マナー”、緊急時の対応方法なども勉強しますし、滑空場でのコミュニケーションで必要になる無線免許の取得に向けた勉強もします。無線免許は筆記試験のみなので、1年生のうちに取得してもらいます。
庄司:また、部室にはグライダー用のフライトシミュレーターもあります。簡易的なものですが、実機と同じペダルと操縦桿があり、離陸から着陸までの一連の動きを練習できます。操作に映像が連動し、必要に応じて映像を止めて最適な操縦方法を確認することもできます。ちなみに私は、シミュレーターソフトと専用のペダルと操縦桿を購入して、自宅のパソコンでも練習できるようにしています。
濱田:好き嫌いや向き不向きもあるのですが、海外では主にフライトシミュレーターで練習をして、実機での飛行は数回でソロフライトに出るケースもありますので、効果的な練習ができることは確かですね。あと、私は合宿のない土日に監督から声をかけていただいて、社会人クラブの活動にお邪魔したり、整備の講習会などに参加したりする機会もあり、部活動以外でも経験を積ませてもらっています。社会人クラブに行くと、夫婦で複座機に乗り、順番に操縦しながら長距離フライトを行う楽しむ光景も見られます。学習院のOBでも夫婦で一緒に飛ぶインストラクターがいますし、純粋に素敵だと思いますね。
部費は“飛び放題”のサブスク。感動はプライスレス
―フライト技術以外でも成長を感じる点はありますか?
庄司:グライダーは気分爽快で楽しい一方で、フライトする本人も、それを支えるメンバーもきちんと手順を踏まなければ危険を伴いますので、危機管理能力が磨かれてきた自負はあります。また、上空での経験をとおして判断力や対応力、決断力が養われてきたようにも思いますし、監督をはじめ社会人とのやりとりも多いので、メールや電話で連絡する際の礼儀・マナーなども身についていきますね。
森:私は、どちらかといえば“世間知らず”を自認したまま大学生になったのですが、航空部で常識やら教養やら、社会で生きていく力が少しずつ培われてきた実感があります。また、主務である私の行動次第では、合宿などの活動が成立しない可能性もありますので、特に責任感の高まりは我ながら感じていますし、より効率的に運営するための工夫を心がける意識も高まりました。
濱田:私は、滑空場でのチームワークから、合宿での集団生活まで、周囲との協調性が向上したと思います。航空部は協力してこその部活動ですので、周りのため、仲間のためという意識や、人間関係、信頼関係を大事にする意識が高まりましたね。
―部費はどのくらいかかりますか?
庄司:部費は月額コミコミで2万8000円で、ここに合宿中の宿泊費や食費、保険料なども含まれています。
濱田:他大学では固定額の機体維持費や合宿運営費に加えて、フライトごとに数千円かかるケースもあり、月に10万円近くになる人もいるようですが、学習院はコミコミで“飛び放題”ですので恵まれていると思います。
森:学生からすると安くないかもしれませんが、この3人は全員が家庭教師のバイトをしていて、高時給ですので効率的です。大会となると追加で移動交通費や宿泊費、食費などが必要になりますが、そこはありがたいことにOBから寄付もいただいています。ちなみに、私が2024年に出場した「久住山岳滑翔大会」は、上昇気流が発生しやすい山間部の滑空場で行われ、滑空高度や滑空時間を点数化して競うものでした。大会では、競技後に他大学の学生も交えたBBQで“お疲れさま会”になることもあり、楽しい思い出がいっぱいです。
庄司:大会の話だと、3人とも出場経験のある「全日本学生グライダー新人競技大会」は、離陸から着陸までいかにきれいに滑空できるかを競うもので、上空では自分が得意な実技を選択して採点してもらいます。
濱田:この新人戦は、「自家用操縦士」の資格取得に向けた審査と同じ実技項目で採点されますので、予行演習として絶好の対策にもなります。また、森さんがいうように、大会ではグライダーという共通の興味を持つ全国各地の仲間と大学の垣根を越えて交流を深めることができますし、狭いコミュニティなのですぐにお互いの顔と名前を覚えられることも魅力ですね。
―最後に、新入生や高校生へのメッセージをお願いします。
濱田:“百聞は一見に如かず”です。「怖いから」という食わず嫌いはよくないですし、非常にもったいないと思うので、まずは飛んでみてほしいですね。旅客機や航空自衛隊のパイロットとして活躍されている卒業生もいて、実際にお会いして生の声を聞けるチャンスもありますし、他大学の学生との横のつながりもできます。
森:他大学と比べると部員が少ないため、サポート役としてやるべきことが多いのは確かです。ただ、少人数のメリットとして合宿でのフライト回数は多くなりますので、技量向上がしやすい点は強みだと思います。また、部員は学年を越えて仲がいいですし、平日にOBの方がご飯に連れていってくれることもあります。そして何より自分で操縦しているときは鳥になった気分になり、“幸せ”を感じられますよ。
庄司:そうですね。まずは体験搭乗に参加してくれれば、きっとグライダーの魅力を全身で感じてもらえると思います。また、平日に朝練などがあるわけでもなく、週1のミーティングと月1の合宿以外は自由度が高く、アルバイトや学業とも十分に両立させられます。部員全員が少しでも多く飛んで経験を積めるよう努めていますので、少しでも興味を持ってくれたら気軽に連絡してほしいですね。