【2025年度版】公的な給付型の奨学金が拡大　返済義務のない給付型奨学金制度

公的な給付型の奨学金が拡大

学費は大学進学の大きなハードルとなっている。公的な給付型の奨学金制度が始まり拡大傾向にあるが、対象者は限られる。このような状況下で注目したいのが、充実している大学独自の給付型奨学金制度。公的な奨学金の現状と共に、大学の奨学金について見ていこう。

国立大の魅力は学費の安さだが、今後、値上げをする大学が増えそうだ。国立大の学費は標準額の120％を上限として、各大学の判断で引き上げられる。すでに、千葉大や東京工業大、東京芸術大、一橋大などが授業料を上げている。東大も2005年以来の授業料値上げを決めており、現在53万5800円の学費は、2割引き上げられ、64万2960円になる。広島大や熊本大も引き上げを検討しており、国立大の授業料値上げが相次ぎそうだ。

国立大の学費が上限一杯まで上がったとすると、入学金と併せた初年度納入金は92万4960円。対して大学通信が算出した、24年度の私立大の初年度納入金の平均額は、法・政治128万円、理工168万円、医723万円。理工や医はともかく、法・政治に代表される人文・社会系は、国私間の学費差がかなり縮まることになる。授業料が上がると、国立大でも厳しいと感じる世帯は少なくないだろう。

余裕をもって学費を捻出できる家庭が多くないことは、奨学金の活用状況から分かる。JASSO（日本学生支援機構）の22年の学生生活調査結果によると、なんらかの奨学金を受給している学部生は55.0％に上るのだ。その多くは、返済義務のある貸与型であり、大学卒業後に返済で苦労する人は少なくない。奨学金アドバイザーでまなびシード代表の久米忠史さんは、貸与型奨学金の活用方法について、こうアドバイスする。

「貸与型の奨学金利用時は、借金として残ることを念頭に置いてください。返済について、第二種奨学金（有利子）は、申込時に利率固定方式と利率見直し方式を選択しますが、貸与終了年度内に変更が可能です。また、奨学金を代理返還する企業が増えているので、エントリー企業の返済支援も調べてください。借りる時も返す時も、賢く活用したいですね」

公的な奨学金の多くは貸与型だが、20年度から住民税非課税世帯と準ずる世帯（世帯年収約380万以下）を対象とした修学支援新制度が始まった。世帯収入に応じて、入学金および授業料の減免と奨学金給付により支援する制度で、世帯収入により第Ⅰ区分から第Ⅲ区分まである。第Ⅰ区分（住民税非課税世帯対象）で自宅外の私立大生の上限額は、入学金26万円、授業料70万円、奨学金91万円を合わせて187万円となる。24年度からは、世帯収入600万程度の中間層を対象とした第Ⅳ区分ができた。対象は3人以上の子どもがいる多子世帯と、私立の理工農系に進学した世帯。多子世帯には、第Ⅰ区分の4分の1程度が給付され、理工農系進学者には、人文社会科学系等の平均授業料との差額が給付される。そして25年度からは、第Ⅳ区分の多子世帯の所得制限が撤廃される。

充実する大学独自の奨学金を有効活用して大学進学を諦めない

公的な給付型奨学金は徐々に広がっているが、まだ受給対象者は少ない。そこで視野に入れたいのが、大学独自の給付型奨学金だ。入学前に給付奨学金の受給を決める手段として、特待生試験などによる選抜や各種入試の成績上位者、居住地などの資格を満たした上で、合格と同時に給付が決まる事前予約型などがある。

神奈川大は給費生試験で特待生（給費生）を募集する。給付額は入学金と4年間の授業料の合計額を上回り、自宅外の学生には、年間最大で70万円の生活援助金も給付。専修大はスカラシップ入試の合格者に対し、4年間の授業料と施設設備費を免除する。東京工科大の対象者は103人で、奨学生入試の合格者に130万円の奨学金を最長4年間給付。白鷗大は学業特待入試で、定員の3分の1程度を国公立大並みの学費で学べる特待生として募集する。

通常の一般選抜の成績上位者を対象とした大学は数多く、奨学金一覧をご覧いただきたい。この表には事前予約型も掲載している。事前予約型は、大学所在地から離れた地域の学生獲得を目指し、首都圏では1都3県（東京、埼玉、千葉、神奈川）、近畿圏では2府4県（京都、大阪、滋賀、兵庫、奈良、和歌山）以外の学校出身者を対象としたものが多い。難関私大では、早稲田大や慶應義塾大、青山学院大、立教大、中央大、法政大、立命館大などが対象地域を限定した事前予約型を実施。明治大と関西大は世帯収入額を引き上げた上で地元の受験生も対象とし、関西学院大は地域制限なく事前予約型を実施している。

入試と連動した奨学金制度の多くは通常より難易度が高くなる。そのため、第一志望校で受給するのは厳しい場合が多いので、奨学金を得られるレベルまで大学の難易度を下げることも考えたい。

「学部卒が多く、世界的に見て学歴が低いと言われる日本において、今後、大学院進学が一般的になるなら、学部のレベルを下げて入学して、修士で国立など上位大学を目指すのもいいと思います。特待生に対して、手厚い指導や資格支援などのサポートを用意している大学は数多くあるので、積極的に利用するといいでしょう」（前出の久米さん）

入試連動型の奨学金は国立大でも実施している。JASSOや大学独自のもの以外に、自治体や企業による奨学金もある。家計の状況で生徒が進学を諦めないよう、奨学金制度を調べておきたい。

全国有名285大学　返済不要！ 奨学金一覧

表の見方
◆各大学へのアンケートをもとに、一般選抜と連動した、大学独自の給付・免除による返還不要の奨学金制度（留学関連を除く）と予約型奨学金制度の内容を掲載。学部名横の〈　〉内は学科名など。2部・夜間部は除く。表中の1都3県は東京、埼玉、千葉、神奈川（1都6県はさらに茨城、栃木、群馬）、東海4県は愛知、岐阜、三重、静岡、2府4県は京都、大阪、滋賀、兵庫、奈良、和歌山。
◆入試の成績だけでなく、高校在学時の成績や面接が必要な場合もある。受給に特定の資格取得や大会・競技成績が必要なもの、他機関への申請や卒業後の勤務指定があるものは除いた。地域要件は出身者・住所要件など大学により異なり、家庭・収入要件のある場合もあるが、家計急変や被災、疾病を要件とするものは除いた。
◆支給額は原則として一般選抜での合格者に適用される給付額で、減免・免除の場合はその旨を記載。金額は初年度の年額で、継続審査などにより2年次以降も継続されるものもある。大学によっては参考として2024年度の内容を掲載。詳細は各大学の要項で確認を。協力・大学通信

※詳細は必ず各大学のホームページなどで確認してください。

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