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1919年の学園創立以来、100年以上にわたって質の高い人物重視の教育に取り組んできた甲南大学。約9000人の学生と大学院生が学ぶ「ミディアムサイズの総合大学」であり、「人物教育の甲南」とも評される同大学は今、「甲南新世紀ビジョン」のもとで次の100年を見据えた改革に取り組む。その中でも学内外から大きな期待と注目を集めているグローバル教養学環「STAGE」と「進化型理系構想」についてレポートする。
聞き手 松本陽一(大学通信)
文 松本守永(ウィルベリーズ)
―グローバル教養学環「STAGE」が2024年4月に開設されました。カリキュラムの特色をお教えください。
STAGEが目指すのは、グローバルな知識や経験を備えたうえで、自身が活動する地域(ローカル)の課題解決に向けて行動する「グローカル人材」です。このような人材になるために、留学をはじめとした海外経験や、複数の外国語の習得、国際理解、異文化間コミュニケーションに力を入れたカリキュラムを設計しました。いっぽうで、法学や経済、経営など、社会科学の知識も必要です。さらに現代社会では、データサイエンスやAIも重要な課題解決のツールとなります。これらの文理融合の学問領域を幅広く学ぶことがSTAGEの特長です。各分野の基礎をまず学び、そのうえで自身の興味や目標にマッチする分野を掘り下げて学んでいくというカリキュラムになっています。
SATGEは「学環」という体制のもとで展開されます。学環では、さまざまな専門分野の教員陣が指導を担当します。必然的に、学びの幅が広がります。学部間だけでなく、地域社会や企業との連携が強化されることも学環の特色です。まさに「環」のように学びがつながり合うのです。また、名称こそ「学環」となっていますが、教育プログラムとしては学部に並ぶ組織です。学環として実施される入試を経て入学し、卒業時には「グローバル教養」の学位を得ることができます。
―複数の外国語運用力向上のため、カリキュラムにはどのような工夫がなされているのでしょうか。
STAGEでは英語に加えて、ドイツ語、フランス語、中国語、韓国語から選択した第2外国語を必須で学びます。英語の授業は留学に向け短期間に集中して英語力を高めることができるように、週に4回組まれています。ネイティブ教員がスピーキングとリスニングを担当して運用力を高め、文法やリーディング、ライティングは日本人教員が担当し、つまずきやすいポイントを意識した丁寧な指導を行います。
第2外国語についても週2回の授業が設けられており、外国語に対する語学感覚を鍛え上げています。
―複数言語圏への「ダブル留学」が必須になっています。その狙いや学びの内容、支援体制などについて教えてください。
インターネットで手軽に海外の情報に触れたり、オンラインで外国人と交流できる時代になりました。しかし、現地でしか体験できないことはまだまだたくさんあります。「皮膚感覚」とも言える感覚で異文化を体感することに留学の意義があるのです。さらに、違いというものは1つ知るだけでは十分ではありません。日本人が英語圏を経験し、「世界はこんなにも違った」というだけでは足りないのです。2つめの違いを知ることで、より深く「違い」について考えることができるようになります。ここにダブル留学の意義があります。また、英語や第2外国語として学んだ言語を、実際に用いられている地域に出向いて本物の環境で学んで言語運用力を鍛えることも、ダブル留学の狙いです。
2回の留学のうち1回は半年から1年の中長期留学、もう1回は1カ月程度の短期留学という組み合わせです。留学期間中は、日本とオンラインでつないでゼミをはじめとした授業に参加します。現地で取り組んだ活動などをレポートにまとめて提出し、日々の活動を「ラーニングログ」として記録し、教員陣が学習指導を行います。こうして中長期留学に行っても4年間で卒業できる仕組みになっています。
中長期留学は交換留学、奨励留学、認定校留学などさまざまな種類があります。交換留学は留学先の学校に支払う授業料は不要です。その分、高い基準の語学力や日頃の成績などが求められます。奨励留学と認定校留学の場合、本学の授業料の減免措置を受けることができます。短期留学は渡航費、滞在費、現地の授業料などの費用が1回分免除されます。
―「STAGEゼミ」についてお教えください。
課題解決のための企画立案・提案力を養うことがSTAGEゼミの目的です。STAGEゼミでは「持続可能な社会」「地域創生」「異文化間コミュニケーション」「グローバルイシューズ」「グローバルビジネス」という5つのテーマが設けられています。1年次には各テーマの担当教員がリレー形式で講義を行い、2年次からは興味あるテーマを選択・深掘りするという流れになっています。甲南大学では毎年、学生が研究や活動内容を学内外に向けて発表する「リサーチフェスタ」という独自のイベントを開催しており、このイベントにSTAGEの学生が参加することも予定しています。
STAGEの専任教員は11人です。対する学生は、初年度生は24人(※)。これ以上ないほど贅沢な少人数制教育と言えます。1つの授業に対して常に複数の教員が参加し、多角的に学生を指導しています。教員は「アカデミックアドバイザー」として学びの支援を行う役割も兼ねているため、学生は非常に手厚い指導を受けることができます。
※定員は25人
―プロジェクト学習にも力を入れています。
地域社会や国際社会が抱える課題の解決に向け、STAGEならではのグローカルな視点から取り組む科目が「グローカル実践プロジェクト」です。1年生は現在、海外の大学とオンラインでつなぐ「COIL」という形式の授業を体験し、さらに異文化間の問題や移民・難民といった問題を学んでいます。私たちの地元である神戸市にはたくさんの外国人が生活しており、言葉や文化、仕事などで支援を必要としている人もいます。そこで神戸国際コミュニティセンターと連携し、在住外国人支援に関わる課題に取り組む予定です。今、社会では「英語を話すこと」だけでなく「英語で何をするか」が求められています。その力を養うのが、STAGEのプロジェクト学習だと言えます。
―2024年4月にSTAGEが始まって以降の手応えや今後の期待を教えてください。
学生はそれぞれの得意なことや強みを持ち寄り、教え合うというコミュニティを確立しています。非常に頼もしいです。また、それぞれに素晴らしいポテンシャルを秘めています。しかし、自分自身でそのことに気づいていないようにも見えます。良いところに気づかせて、それらをさらに伸ばしてあげられる教育に取り組みたいと、改めて感じています。
―高校の先生方と受験生へメッセージをお願いします。
進路選択にあたっては、高校生の皆さんがこれまでに感じてきた興味や関心を継続し、深められる大学を選んでもらいたいです。「進学先で何ができるか」という視点で大学を選ぶとも言えるでしょう。その点において、甲南大学は非常にユニークです。探究活動やグローバルな学びに取り組んできたのであれば、それをさらに高めていくことができる大学だとも言えます。ぜひ甲南大学のSTAGEで、夢と希望に向かって仲間たちと切磋琢磨する4年間を過ごしてください。
在学生インタビュー
国境を越えて様々な人の幸せに貢献したい
石原美杏さん(兵庫県・須磨友が丘高校出身)
STAGEは自分を変えるきっかけになる場所
奥井奏心さん(兵庫県・神戸龍谷高校出身)
■STAGEを志望した理由
石原 グローバル化がますます進む今の社会において、異文化理解は必須です。「いろんな文化を肌で感じたい」という思いがあり、ダブル留学ができるSTAGEで学ぶことを決めました。また、私は両親がベトナム人です。韓国語に興味があり、高校時代から少しずつ勉強してきました。そういった私ならではの個性を活かす方法を見つけたいという思いも、STAGEを選んだ理由です。
奥井 高校時代にカンボジアの教育問題について学んだり、ボランティアで支援する活動に参加しました。その経験から、貧困や教育格差、伝統文化の消滅といった課題が世界中にあることを知り、興味がわくと同時に「課題解決に貢献したい」と思うようになりました。この気持ちにマッチする学びがSTAGEでした。
■STAGEでの学び
石原 「SDGs概論」という、起業家の方が来られて講義をしてくれる授業がおもしろいです。異文化コミュニケーションを学ぶゼミでは、食べ物や服装などの「見える文化」のほかに、価値観や言葉の意味など「見えない文化」の存在を知ったことが印象的でした。
奥井 多くの授業でディスカッションが活発なことが印象的です。高校では問いに対する答えは1つでしたが、STAGEでの学びには明確な答えがないものも多いです。みんながそれぞれの意見を持ち寄ることで、自分の考えが広がっていくことがおもしろいです。
■ダブル留学、複数言語の習得
石原 第2外国語として韓国語とベトナム語のいずれかをしっかりと学んでいきたいです。両方とも今は日常会話ができる程度ですが、経済や政治について話せるレベルまで引き上げたいです。留学は中長期は英語圏で、短期は韓国で考えています。
奥井 サッカーが好きなのでドイツ語を第2外国語で学び、ドイツに短期留学をしたいです。中長期留学は英語圏で考えています。とはいえ英語はまだまだ苦手。今はとにかく話すことに慣れようと思い、学内の留学生が集まるエリアに通い詰めています。
■少人数編成
奥井 1学年24人と少人数ながら、とにかくみんな個性的。いろんな人に出会って視野を広げたかった僕にとって、まさにぴったりな環境です。想像力豊かな人が多いこともSTAGEの特色かもしれません。「どうしてそんなことを思いつくの?」というような、柔軟な発想を持った仲間から刺激を受けています。
石原 自分とは違った価値観を持った人がたくさんいて、クラス内が異文化コミュニケーション状態。いろいろな意見を聞くことができるので、勉強になることが多いです。
■成長
石原 自分の気持ちに正直になりました。以前は周囲の反応や意見がぶつかることを気にして自分の気持ちを抑えることもあったのですが、入学後は伝えられるようになりました。もちろん、ぶつかることはあります。でも今はクラスのみんなが、「対立しながら関係を深めていく」ということを理解しています。だから正直になれるんです。
奥井 「みんな考え方が違う。それが当たり前」ということを共有しています。だから自分の意見を言えるし、話し合えます。僕は英語力がかなり高まりました。とっさの場面でも英語が口から出てくる場面が増えたように思います。
■目標
石原 まずは語学力の向上です。ネイティブレベルで話せるようになりたいです。夢は、国境を越えていろんな人の幸せに貢献できる人になること。貧困や人権など、社会の課題を変えていくことができる人になりたいです。
奥井 大学時代に、やれることを全部やってしまいたいです。もちろん失敗することもあるでしょうけど、それもいい経験になるはず。後悔のない学生時代を送ることが今の目標です。
■メッセージ
奥井 STAGEでの学びのなかには、SDGsに関係するものがたくさんあります。高校生のうちにSDGsについて理解を深めておくと、大学での学びがさらに有意義になりますよ。
石原 海外に興味がある人や、異文化の方とコミュニケーションを図ることが好きな人にとってSTAGEはぴったりな場所です。でもそれだけではなく、「今はまだ難しいけれど、異文化を理解したい、受け入れたい」と望んでいる人にもSTAGEの学びは役立ちます。
奥井 STAGEって、自分を変えるきっかけになる場所だと思います。
石原 新しい自分と出会いたい人は、ぜひSTAGEで一緒に学びましょう。
「グリーン」「デジタル」「マテリアル」をキーワードに、未来へ真の価値を生み出す進化型理系構想
甲南大学の理系学部の歴史は、1951年の開学時に設置された文理学部にまでさかのぼる。文理学部は1957年に文学部と理学部に分離。その後、幾度かの学部・学科の改編を経ながらも、物理、化学、生物を中心として伝統的に基礎科学に強みを発揮してきた。21世紀に入ると、2008年の知能情報学部、2009年のフロンティアサイエンス学部と、相次いで新学部を設置。現在に至る理系3学部体制となった。そして今、時代のニーズに応える新たな学びと研究を目指し、「進化型理系構想」が動き出している。
理工学部 成長分野の人材ニーズに応える学科を新設
理工学部は現在、物理学科、機能分子化学科、生物学科の3学科からなる。これを2026年からは、環境・エネルギー工学科、宇宙理学・量子物理工学科、物質化学科、生物学科という4学科体制へと改編する構想が進められている。
新設される環境・エネルギー工学科は、太陽光発電、バッテリー、水素、資源・カーボンニュートラルなど、社会からの期待が非常に大きくなっている分野での人材育成に取り組む。理工学部長の町田信也教授は、「従来から本学で行われていた学びや研究を、『グリーン』『エネルギー』という軸で抽出・再編成した学科が、新たに誕生する環境・エネルギー工学科だと言えます。環境やエネルギーを考えるうえで、『マテリアル』は欠かすことのできない要素です。マテリアルの視点から『グリーン』『エネルギー』について貢献することで、応用の色合いの強い、実社会に近い研究を進めていきます」と新学科設置の狙いを語る。
甲南大学理工学部物理学科は、宇宙や原子核物理の研究に強いという伝統を持つ。積み重ねてきた実績やノウハウを継承し、「宇宙」と「量子技術」により明確にフォーカスするのが宇宙理学・量子物理工学科だ。「宇宙と量子技術という社会から大きな期待が集まる領域を、コース制のような形で学ぶ環境を整えたいと考えています」(町田学部長)
物質化学科では、現在の機能分子化学科が取り組む学びや研究のうち、基礎力重視の化学教育を土台に、次世代の化学を理学と工学の両面から切り拓く物質化学研究を行う。特色は理学と工学の垣根を越え、「物質化学」というキーワードで横串を貫いている点だ。「現代社会の基礎を支える物質化学は、これから大きく発展するでしょう」と町田学部長は期待を込める。
知能情報学部 近未来の情報学を見据えた甲南デジタルツイン研究所を開設
数理に基づくAI・データサイエンスから近未来社会を構築するための応用技術までを興味や目標に合わせて横断的に学び、AI時代に求められる人材育成に取り組む知能情報学部。同学部は2024年4月に、「甲南デジタルツイン研究所」を設立した。
AI技術を基盤とし、他に類を見ないインパクトある研究の実施を目的として誕生する同研究所は、サイバー・フィジカル空間(CPS)上で人を中心としたAI・VR・ロボットの研究を行う「未来創造型研究」と、輸送経路の最適化などデジタル技術を物流業で活用するための「社会実装型研究」を行う。前者では甲南学園の創立者である平生釟三郎のアバター(3DCG)とその精神を学習したアバターとの対話を生成AIによって作成し、学生がサイバー空間上で学園創立者と対話し、甲南の精神などを学ぶ機会などの創出を目指す。また、コミュニケーションロボットや対話生成AIの開発にも取り組む。後者では、中小企業でも手軽に小規模に実装できる新たなロジスティックスを開発し、社会実装することを目指す。
フロンティアサイエンス学部 「ナノ」×「バイオ」を核にした4つのサブコースを設置
化学と生物学を融合させた「ナノ」×「バイオ」の視点から教育・研究を行うフロンティアサイエンス学部は、2021年から「先進科学コース」を導入した。同コースでは学部在籍中に2〜3年間にわたって研究に取り組むことが可能で、研究職を目指して大学院進学を検討する学生の学びを後押ししている。進化型理系構想では同コースをさらに進化させ、「医療」「創薬」「先端材料」「化粧品・食品」の4つのサブコースを設置する予定。学びの内容をより明確にすることで学生の選択を支援するとともに、さらに深く社会と結びついた学びや研究を行うことができる環境を整備する。
フロンティアサイエンス学部のキャンパスがあるポートアイランドには最先端医療技術の研究拠点が集積しており、「神戸医療産業都市」の舞台でもある。この“地の利”を活かし、周辺の研究機関や企業との連携活動である「アイランドシップ連携」に注力。進化型理系構想では「研究開発リーダー養成プログラム」を導入し、アイランドシップ連携のもとで神戸医療産業都市のイベントへの参加、イベントの企画・運営、企業見学、交流活動などを行う予定だ。これらの活動により、研究開発に関する実践的な知識を得たり経験を積むことが期待されている。
ハードとソフトの両面で“進化”が続く
甲南大学は大学院進学率の向上を重要テーマと位置付けており、そのための環境整備が進められている。町田学部長によれば、「学部時代から大学院の授業を履修できる仕組みを検討中です。学費を支援する制度の導入も協議しているところです」とのこと。さらに、現在は大学院自然科学研究科に含まれている知能情報分野の研究を、「知能情報研究科」として独立させる構想も。学部から修士・博士まで、一貫して学びと研究に取り組むことができる体制の構築を予定している。
理系分野を志す女子受験生の支援も始まる。2025年度入試からは、理工学部物理学科と知能情報学部において公募制推薦入試に「女子特別推薦型」が導入される。
ハード面では、2027年の完成を目指して岡本キャンパスで新理系棟の建築計画が進んでいる。新棟には実験機器をはじめとして充実した設備が導入されるほか、理系学生が交流できるスペースも設けられる予定。学部や学問領域の枠を越えて気づきや学びを得る場となることも期待されている。
「本学の学生はコミュニケーション力が高く、物事を俯瞰して見る力を備えた人が多いです。これは文系・理系に共通した傾向です。『甲南らしさ』を伸ばしながら優れた理系人材を育成していきますので、どうぞご期待ください」と語る町田学部長。加速する進化に、要注目だ。