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拓殖大学は2021年に「教育ルネサンス2030」を策定した。これは30年をゴールとして大規模な大学改革を図るもので、そのねらいは「国際性・専門性・人間性」を兼ね備えた“拓殖人材”の育成にある。
大学全体が変革の最中にある中、25年度に向けて特に大きな変化を予定しているのが政経学部だ。社会安全学科※の新設に加えて、既存の法律政治学科と経済学科でもカリキュラム改訂を予定している。政経学部長の服部哲也教授に、その詳細を聞いてみよう。
※社会安全学科は設置認可申請中のため、今後変更になる場合があります。
取材・文 雫 純平(大学通信)
構成 石塚祐次(大学通信)
警察や消防、地域の安全を守る民間企業などへのキャリアが開けた新学科
―まずは、貴学の政経学部の構成を教えてください。
今現在の政経学部には、文京キャンパス(東京・文京区)で学ぶ法律政治学科と経済学科の2学科があります。この2学科間は学びの垣根が低くゼミを含めた科目履修が相互にできるので、どちらの学科でも法律、政治、経済という社会科学の主たる3分野を学際的に学べることが特長です。そこに2025年度からは八王子国際キャンパス(同・八王子市)で学ぶ社会安全学科が新しく加わり、3学科体制となります。
元々、本学には警察官や消防官、行政職員など地域の安全に資する職業を志望する学生が多く、法律政治学科内に彼ら向けのモデルコースを用意していました。社会安全学をより専門的に学びたいという学生の要望に応えるため、また、本学としても育成したい人物像をより明確にするために、今回、新たに1つの学科としての設立に至ったのです。
―新しくできる社会安全学科では、どのような内容を学ぶのでしょうか。
特色ある科目としては、社会安全論や地域安全論などが挙げられます。社会安全論は、防犯、防災、防衛に関してそれぞれの分野を専門とする教員がオムニバス形式で講義を行うものです。実務家の教員も招き、現実に起きた災害や事件など具体的な事例に基づきながら、必要な対応などを教授していきます。地域安全論は、地元警察の協力を得て学外でのフィールドワークも取り入れながら地域の安全と安心を図る方法を学ぶ、学生参加型の科目となっています。ほかには、警察学や消防学、捜査法、犯罪学など。また、情報化社会が進む中で情報と安全は密接に関わってきますので、情報系を専門とする教員も用意し、社会調査法や情報セキュリティ論なども学んでいきます。
もうひとつ、社会安全学科の大きな特徴は、政経学部の既存2学科が学ぶ文京キャンパスではなく、八王子国際キャンパスに置かれることです。八王子国際キャンパスは面積がとても広くて施設などを拡充する余地が十分にあるので、新しいことを展開するのにふさわしいキャンパスと言えます。警察官や消防官を目指す学生は運動を好む場合が多いですから、広いキャンパスの充実したスポーツ施設を活用していただきたいです。また、八王子国際キャンパスでともに学ぶ外国語学部、国際学部、工学部はそれぞれ地域連携に力を入れています。ここに政経学部社会安全学科を加えることで、さらに総合的に八王子の街への地域貢献ができるのではないかという期待もあります。一方で文京キャンパスの2学科とは対面とオンラインを組み合わせたハイフレックス型授業などを取り入れることで、物理的な距離を超えて学部全体としての連携を密にしていきます。
プログラムとゼミの組み合わせで希望の進路を叶える学びを
―既存の法律政治学科と経済学科のカリキュラムについても教えてください。
社会は日々変容しています。新しい社会の課題に対応する力を養うために大切なのは、学びの“横糸を通すために、縦糸を強く張る”ことと考えています。ここでの縦糸とはすなわち、法律、政治、経済の3分野それぞれの専門性のことです。より専門性が高められる、カリキュラムツリーの見直しを行いました。そして横糸とは、3分野を横断する学際性です。本学部の特長ともいえる学際性をより活かすために、グローバル・スタディーズ、SDGs、データ・AI活用という3つのプログラムを拡充しました。
グローバル・スタディーズプログラムは、地域研究や地域の言語など、地域のスペシャリストを目指すものです。SDGsプログラムでは、貧困や環境・街づくりなど、人権を軸にしながら、グローバルの視点を養います。データ・AI活用プログラムでは、データを専門知識と結びつけて実践的な活用を学んでいきます。いずれのプログラムもアクティブラーニングを重視した学びになっており、4年次には課題解決型の「実践科目」で4年間の学びの成果を発表する機会が用意されていることが共通しています。
今まで、法律政治学科と経済学科の学生はゼミでの学びが一本柱となっていましたが、今後は1ゼミ+1プログラムの組み合わせで二本柱となります。例えば、地方政治に関心のある学生であれば、ゼミで地方自治や行政学を学び、プログラムで社会調査法や選挙分析を学ぶなど、組み合わせ次第で自分の希望するキャリアに近づく学びができるわけです。そのために履修指導は毎年実施することとし、学生一人ひとりの目指すキャリアに最適な学びを提供していきます。
―25年を機に、政経学部での学びが大きく変わっていきますね。最後に、高校の進路指導の先生方へのメッセージをお願いします。
拓殖大学が育成を目指すのは、「国際性」、「専門性」、「人間性」という3つの素養をバランス良く身につけた人物です。本学ではそれを“拓殖人材”と呼んでいます。新しい学科が誕生し、政経学部は大きく生まれ変わりますが、めざす理想像は決して変わることはありません。高い志を持って大学で学び、卒業後は“拓殖人材”として社会に貢献してほしいという思いがあります。