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武蔵大学といえば、少人数制のゼミナール教育。学生が教員を交えて活発に議論を重ねながら視野を広げ、専門性を高める「ゼミの武蔵」の伝統が受け継がれている。2022年には学園創立100周年を迎え、国際教養学部の新設とともに、文理融合教育の拠点となるリベラルアーツ&サイエンス教育センターを開設した。伝統と革新が融合する“武蔵大学らしさ”と今後の展望について、髙橋徳行学長に伺った。
聞き手 井沢 秀(大学通信)
髙橋徳行学長
慶應義塾大学経済学部卒業後、米国バブソン大学経営大学院にて経営学修士課程修了(MBA)。国民生活金融公庫総合研究所で主席研究員を務めた後、2003年に武蔵大学経済学部経営学科教授となり、経済学部長、副学長を経て学長に就任。専門はアントレプレナーシップ。
ゼミと講義を両輪に教養と専門性を磨く
―開学時から続く「ゼミナール教育」の意義やメリットについてお聞かせください。
本学は、ゼミや少人数形式の授業を全学で4年間履修します。そのような教育を根幹に据えていることから、「ゼミの武蔵」として広く認知していただいています。その最大のメリットは、活発なディスカッションを通して視野を広げながら研究テーマに関する理解を深め、専門性を高められることです。ゼミでは、高度な専門知識を持つ教員のもと、講義型の授業では難しい個別性の高い丁寧な指導が可能です。自由度が高く、学生の知的好奇心に応える柔軟な指導ができますので、最先端の事例なども交えながら学びを深めていけます。
一方で、もちろん講義型の授業にもメリットはあります。多くの学生が体系的に同じ内容を学ぶことで、得られる知識の内容を標準化できます。こうした授業を必修科目として設定すれば、“本学で学ぶことによって何が身につくか”というベーシックな学習効果を明示することにつながります。
今後はこのベーシックな学習部分の強化も重視していきます。所属する学科の講義型授業で基本的な知識を盤石にした上で、他学科が扱う入門的な授業も履修して幅広く学んでほしいと考えています。所属学科や専門分野にとらわれない広い視野と知識を身につけ、ゼミでの専門的な研究に生かしてほしいのです。豊かな教養と専門性を兼ね備えた人材を育成するためには、ゼミ教育と講義型授業はどちらも欠くことのできない両輪です。
―正規科目となって17年目の「学部横断ゼミ」も学生の視野を広げる特徴的な教育ですね。
所属する学部の垣根を越えて学生がチームをつくり、企業が提示する課題に取り組む「学部横断型ゼミナール・プロジェクト」は、多様な視点からの意見が飛び交う典型的なPBL型(課題解決型学習)の授業です。ただし、最初から多角的で高度な議論を期待しているわけではなく、第一に大切なのは、所属する学部学科で身につけた知識を最大限に注ぎ込むことです。経済学部の学生であれば、経済学や経営学の考え方を生かしてチームに貢献してほしいですし、人文学部の学生なら文化や歴史の側面から分析する、社会学部の学生なら数字では表しきれない企業の社会性を考えるなど、所属学部で養った視点や専門性をベースにした意見を発信することが大切です。その中で新たな気づきを得ながら課題を整理・集約し、議論を深めて解決策を導き出すことが目的なのです。
本学はワンキャンパスだからこそ、全学的な取り組みとして学部横断ゼミを推進しやすく、学生間の“化学反応”が起こりやすい恵まれた環境だと考えています。近年はこのゼミのOBOG会も組織され、在学生のサポートなどを通して縦のつながりができているほか、専用スペースも用意して専任のスタッフと担当教員が学生の相談に応じています。相談内容は教職員で共有し、スピーディーな解決につなげられていることも、学部横断ゼミが長く続いている要因だと思います。
―2023年度は、パラレル・ディグリー・プログラム(PDP)で過去最多の14名がロンドン大学の学位を取得されました。
PDPでは、これまでに武蔵大学とロンドン大学の2つの学位を取得した学生が40名以上にのぼります。効果的な学習方法が先輩から後輩へと受け継がれた上で、同じ目標を持つ仲間と切磋琢磨し、努力してきた結果だと思います。また、PDPを提供する国際教養学部が開設から3年目を迎えましたので、ロンドン大学の学位取得者は今後さらに増える見込みです。国際機関をはじめ、グローバルに活躍したいという目標がある学生にとっては、海外大学の学位は有利に働きますし、ロンドン大学の学位取得後に国内外の大学院に進学するケースも増えています。
複数の専門分野が融合し新たな総合知へと結実する
―2022年に開設した「リベラルアーツ&サイエンス教育センター」について、現在の状況と今後についてお聞かせください。
リベラルアーツ&サイエンス教育センターでは、専門知と専門知を融合させ、新たな知を生み出す力である「総合知」を養うことを目標に掲げています。総合知は複数の専門分野を横断してつなげる力ですので、同センターでは、それまで各学部で全学科目として設定していた科目の一元管理を行い、新たな全学科目としてカリキュラムを設計しました。全学生が経済学の基礎や社会学の基礎など他学部の学びに触れられますし、学部を問わずデータサイエンスの基礎を学べる科目も用意し、複眼的に物事を考える力を養う科目群になります。
一方で、特にデータサイエンスに関しては、今後各学部でそれぞれの特長を生かした授業を展開します。例えば、経済学部の金融学科の学びはデータの取り扱いと密接不可分ですし、社会学部でもデータサイエンスとの親和性が高い領域があります。データと社会情勢との関係など、データを解釈するためには社会学の専門的な知見が必要となることもあります。こうした各学部での学びの基礎となるのが、同センターが全学科目として配置するデータサイエンス科目です。
さらに、2024年度からは「データサイエンス副専攻」を新たに設置しました。社会でのデータ利活用について理解を深め、統計学やプログラミングなどの基礎を習得した上で、ビッグデータの解析方法論や企業などでのデータ活用の実際まで、専門的に学ぶことができます。
なお、こうした文理融合教育やデータサイエンス教育に加えて、引き続きグローバル教育にも注力していく方針です。今後は、欧米などの先進国だけでなく、アジアやアフリカを含めた地球全体を意識しながら、学生が自分の立ち位置や役割を考えていけるよう、語学教育や留学制度をさらに拡充していきたいと考えています。また、2024年秋に完成する新学生寮は、キャンパスの隣に位置します。外国人留学生30名と国内の学生10名ほどの入寮者を想定しており、キャンパス内での留学生との交流がより活発になることを期待しています。
―キャリア形成支援や就職支援についてもお聞かせください。
本学のキャリアサポートは、ある意味で“手間をかけ過ぎ”なほどの充実ぶりだと思いますが、そうした環境を学生が理解して存分に活用している印象がありますね。例えば、学生とキャリアコンサルタントとの面談件数は、1カ月平均で延べ500回以上です。個別相談の利用経験者は全学生の91%にのぼり、利用者の平均利用回数は8回と、多くの学生が繰り返し相談におとずれていることがわかります。多くの場合、面談で最初の話題となるのはエントリーシートで、何を書くべきかわからずに悩む学生は少なくないです。そんなときに悩みを抱え込んでしまわないよう、早期から1対1で気軽に相談できる環境が整っているのです。
また、キャリアコンサルタントの有資格者のほか、就職活動を終えた4年生や、卒業から10年以内程度の卒業生がアドバイスをするなど、多方面から学生の就職活動を支援しています。学部横断ゼミやPDPと同様に、先輩が後輩を育てていく校風が根づいていることは、ぜひ多くの受験生に知っていただきたい本学の強みです。
学生の学びのエンジンに火をつける豊富な機会を用意
―では最後に、受験生へのメッセージをお願いします。
現在の高校3年生は、新学習指導要領のもとで、「思考力」「判断力」「表現力」、そして主体的に学習に取り組む姿勢が重視されてきた世代です。これらの資質を大学でさらに伸ばすために大切なのは、自分で何かを解決したい、知りたいといった意欲や好奇心と、明確な目標設定だと思います。これは私が入学式で必ず話すことですが、知識を得たい、学習したい、目標に到達したいといった意欲は、頭の中の知的な領域で起こるのではなく、感情的・直感的な領域から生まれるものです。だからこそ本学は、学生に何らかの意欲が生まれたときに、いつでもそれに応えられる環境を整えておくことを、大学が果たすべき責務として考えているのです。
例えば、物事を多角的に考える力を養える4年間のゼミや学部横断ゼミもそうですが、海外でも地方の過疎地でも、日常とは違う社会のリアルを知って問題意識を高められる機会や、企業が取り組む社会的な課題を知った上で自らの目標設定につなげられる機会など、さまざまな学習機会を豊富に設けています。そして、こうした“学びのチャンス”との出会いをただ偶然に任せるのではなく、入念に設計したカリキュラムに組み込むことで、学生たちのさまざまな化学反応を促進させたいと考えているのです。受験生の皆さんには、ぜひ多様な学びにあふれた本学に入学して、自らを突き動かす学びのエンジンに火をつけてほしいと願っています。
新2号館を建築中
2025年完成予定の新2号館は、隈研吾氏の設計。これまでの2階建てから5階建てとなり、食堂を中心として“学生が楽しみながら過ごせる居場所”をテーマに設計されている。