北の大地が育む「全学教育」と世界トップレベルの研究力で“自ら考え行動する”リーダーを育成―北海道大学

北の大地が育む「全学教育」と世界トップレベルの研究力で“自ら考え行動する”リーダーを育成―北海道大学

「Boys, be ambitious(少年よ、大志を抱け)」の言葉で有名なクラーク博士は、北海道大学の前身、札幌農学校の初代教頭です。欧米の大学に匹敵する高等教育機関を目指して1876年に設立された同校は現在12学部、21大学院を擁し、人文科学から自然科学・医学・農学まで幅広い領域にわたる研究・教育を行う屈指の基幹総合大学に発展しています。
既存の枠組みや価値観にとらわれることなく、新しい世界を築いていく次世代リーダーの育成に注力している北海道大学。140年余りの長い歴史の中で培われてきた4つの基本理念「フロンティア精神」「国際性の涵養」「全人教育」「実学の重視」を掲げ、研究・教育を実践しています。

4つの基本理念の実現のため1年次から全学教育を展開

ウィリアム.S.クラーク胸像

ウィリアム・スミス・クラーク博士は、民主主義と国際性を体現し、人格の完成を目指した建学の精神を掲げました。こうした草創期の理念を受け継ぎ、北海道大学では人間形成のための幅広い教養を培う「全人教育」、未踏の学問領域を積極的に探求する「フロンティア精神」、国際性や多様性への柔軟な感受性を育成する「国際性の涵養」、そして物事の本質を見極め、それを社会に活かすべく研究を進める「実学の重視」という4つを念頭に、「自ら考え自ら行動する」研究・教育を実践しています。

1年次を中心に開講する全学教育科目(1)は、同大学の理念を実現するために設定されたもの。授業を通して他の専門分野や文化に触れる機会が得られ、異なる価値観への理解を通して多様な発想と感性を磨きます。

各学部での教育に加え、グローバルな活躍を見据えて開講されているのが、教育家として名高い新渡戸稲造の精神に基づいた「新渡戸カレッジ(2)」です。12学部すべての学生を対象とし、学部教育を受けながら必要な授業科目を履修、多様な知識・経験が修得できるもので、原則として1セメスター以上の海外留学に参加することが盛り込まれているほか、留学生とともに学ぶ機会も多く、実践的な英語力と多文化理解力が深まる内容になっています。

「新渡戸カレッジ」の、学部を横断した特別教育プログラムを通して身につく基本的なスキルセットは、国際社会で活動するリーダーに必要な外国語運用能力、情報リテラシー、プレゼンテーション力など。また、マインドセットとして、責任感や情熱、リーダーシップ、困難に立ち向かう勇気や謙虚さも醸成されます。

オンライン授業をサポートする専門的センターの存在

北海道大学では現在、新型コロナウイルス感染症の対策として原則オンライン授業に切り替えつつ、対面が必要な演習や実験については一部例外としています。このオンライン授業をサポートする組織が、北海道大学高等教育推進機構オープンエデュケーションセンター(3)です。同センターでは、教職員と学生向けにオンライン授業の導入・実施方法を分かりやすく解説しています。

「新型コロナウイルスの影響により、6月の時点で未だキャンパスに足を踏み入れることができず、オンライン授業だけで不安や困惑を抱えている人がいます。また、授業に限らず研究や課外活動にもさまざまな制約があります。しかし、私たちはこのウイルスと上手に共存していかなければなりません。本学はこの経験を業務の効率化を推し進める契機と捉え、研究力と教育力の向上や研究教育支援体制の強化に取り組んでいます」と、笠原正典理事・副学長は述べています。

笠原正典理事・副学長

コロナウイルス克服をはじめさまざまな研究分野で注目

北海道大学には、新型コロナウイルスの克服に関する研究に対しても大きな期待が寄せられています。

「医学研究院の西浦博教授(現・京都大学教授)が率いるチームが厚生労働省のクラスター対策班に参画し、数理モデルで感染状況の分析や予測を行うなど、終息に向けて日々貢献しています。人獣共通感染症リサーチセンターでは製薬会社と共同して治療薬の創製に努め、今年度内の臨床試験開始を目指しているほか、北海道や札幌市からPCR検査を受託する体制を整備するなど、精力的に取り組んでいるところです(4)」。

国立大学では最多の12学部・21大学院を有する基幹総合大学として、北海道大学では他にも多様な研究が行われています。長年にわたり地球惑星科学の研究・教育に携わり、同位体顕微鏡を世界で初めて開発するなど国際的に活躍し、今春、紫綬褒章を受章した理学研究院の圦本(ゆりもと)尚義教授や、竹が「軽さ」と「丈夫さ」を併せもつ理由を構造・材料力学的に解明し文部科学省科学技術・学術政策研究所の「ナイスステップな研究者」に選ばれた工学研究院の佐藤太裕教授など、各分野の第一人者が研究活動を行っているのです。

北海道大学総合博物館

SDGsの先進的な取り組みで国内大学1位に選出

北海道大学は、農業に関する知識や技術の提供により食料生産に貢献していることが高く評価され、イギリスの高等教育専門誌が発表した「THE 大学インパクトランキング2020」の総合ランキングで国内1位(世界76位)に選出されました(5)。

このランキングは、国連が定めるSDGsの17のゴールと照らし合わせて大学の取り組みを可視化するものです。同大学が特に高く評価されたのは「飢餓をゼロに」の項目。「飢餓に終止符を打ち、食料の安定確保と栄養状態の改善を達成するとともに、持続可能な農業を推進する」ことが掲げられています。

持続可能な社会の実現に向けた世界トップレベルの研究推進・社会実装として北海道を中心とした農林水産業のロバスト(強靱)化を目指し、農林水産業従事者、関連企業、自治体等と連携し、喫緊の問題解決や中長期までを見据えた技術革新につながる研究プロジェクトを進めている北海道大学。農学研究院の野口伸教授が開発した農作業を無人化するロボットトラクターは、多くのメディアでも取り上げられています。

作業の効率化や省力化、収益性向上を達成することにより、農林水産業の魅力を向上させ、若手労働者を呼び込むことがこの業界の強化に繋がります。次世代に持続可能な社会を残すために、北海道大学が力を入れてきた取り組みの数々。ランキング国内大学1位という結果は、その姿勢が国際的に高く評価された事実を示しています。

1876年に設立された札幌農学校に起源を持つ北海道大学農学部本館

フロンティア精神と探究心 大きな変革の時代を切り拓く

北海道大学では例年、全国はもとより、100カ国を超える海外から多くの若者が、緑豊かで広大なキャンパスに集い、共に学んでいます。

「今は世界各地で猛威を振るっている新型コロナウイルス感染症の影響により、人々の日々の行動やものの考え方にまで、大きな変革が迫られています。しかしこのような時代だからこそ、皆さんと一緒に学問を深め、新たな叡智を創り出していきたいと考えています。飽くなき探究心と、フロンテイア精神を有する皆さんが入学され、協働の精神で学ばれることを心より期待しています」。

(1) 全学教育科目
北海道大学の教育課程は、教養科目・基礎科目・専門科目の3つから構成され、そのうち専門科目は2年次進級後の学部で行われる。教養科目と基礎科目は1年次を中心に全学年を対象に開講され、この2科目を一括して全学教育科目と呼ぶ。1年次生は全員、総合教育部に所属し、全学教育科目を履修することになる。科目によっては高年次の履修も可。

(2) 新渡戸カレッジ
新渡戸稲造の精神に基づき、各学部の専門教育において高い専門性を修得するとともに、学部横断的な特別教育プログラムを通して、コミュニケーションツールとしての英語力やグローバル社会で必要とされるリーダーシップ、チームワーク力、問題発見・課題解決力、社会的な責任・倫理観などを身につける。
修得した学生には、新渡戸カレッジの修了証が授与される。

(3) 北海道大学高等教育推進機構 オープンエデュケーションセンター
情報通信技術を活用した教育・学習の支援を行うとともに、オープン教材を北海道大学の教育へ活用し、学習の機会を広げることを目的として2014年に設置された。大学教育の改善・改革に関する取り組みを支援し、その魅力を国内外に発信することを目指す。

(4) 新型コロナウイルス感染症対策
公共政策大学院の石井吉春客員教授らが北海道の新型コロナウイルス対策を検証する有識者会議のメンバーに選出されているほか、遺伝子病制御研究所の村上正晃教授らの研究グループが同ウイルスによる致死性感染症の誘導について考察論文を発表するなど、さまざまな研究が進められている。

(5) THE大学インパクトランキング
イギリスの高等教育専門誌「Times Higher Education(THE)」が、大学の社会貢献の取り組みを国連のSDGs(持続可能な開発目標)の枠組みに沿って可視化したランキング。SDGsが掲げる「飢餓をゼロに」「ジェンダーの平等」「エネルギーをクリーンに」など17のゴールに合わせ、大学が社会や経済に対してもたらすインパクトを測る。
総合ランキングの1位はニュージーランドのオークランド大学。北海道大学は日本の大学で1位、世界76位に選出された。

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