KSC活性化は次のステージへ―関西学院大学

KSC活性化は次のステージへ―関西学院大学

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インキュベーション施設や商業施設も併設する300人規模の学生寮が誕生

創立150周年を迎える2039年に向け、将来構想「Kwansei Grand Challenge 2039」のもとで数々の取り組みが進められている関西学院大学。なかでも神戸三田キャンパス(KSC)は、2021年4月に理系4学部が新設されるというダイナミックな改革が行われた。そして来年4月には、キャンパスの近接地にインキュベーション施設や商業施設を兼ね備えた300人規模の学生寮が誕生する。活性化が加速するKSCの取り組みについて、4月17日に行われた記者発表の様子も交えながら紹介する。

取材 松本陽一(大学通信)   
 文 松本守永(ウィルベリーズ)

「境界を越える革新者」を育成するKSC

KSCは1995年4月、総合政策学部の設置に伴って開設された。2001年には理学部が西宮上ケ原キャンパスから移転し、文理融合型キャンパスとなる。その後、学部や学科の再編を経て、2015年には合計で5000人あまりの学生が学ぶ規模のキャンパスに拡大した。

現行の理学部、工学部、生命環境学部、建築学部の理系4学部と文系の総合政策学部からなる5学部体制になったのは2021年4月。この改革を行うにあたり、KSCのコンセプトが「Be a Borderless Innovator(境界を越える革新者たれ)」に定められた。社会の課題が多様化・複雑化するなかで、学生・教職員が国境や文系・理系、学問分野などさまざまな枠を越えた教育を推進し、新しい価値観で課題解決に挑む人材の育成を目指している。

KSCには次の4つの特色がある。

“Sustainable Energy”の一大研究拠点を形成

工学部のパワーエレクトロニクス、生命環境学部の人工光合成、建築学部のスマートシティをはじめとする研究を推進。総合政策学部に蓄積された教育・研究成果も活用し、持続可能な社会の実現へ寄与する。2023年3月には、工学部の金子忠昭教授が取り組むSiCパワー半導体ウエハーの研究開発を行う、大学が出資する初のベンチャー企業を、豊田通商との連携によって設立した。

海外研修を含む国際プログラムの充実

関西学院大学は世界59カ国・地域で310を超える大学・国際機関と協定を結んでいる。この強みを活かして、多彩な国際プログラムを展開。理系学部ではさらに、サンゴ礁や海洋生物をダイビングしながら学ぶプログラムや、マレーシアの最高学府・マラヤ大学で実践的な英語と現地の建築・都市文化を学ぶプログラムなど、学部の専門分野に即したプログラムを展開している。また、研究の連続性という観点から長期にわたって大学を離れることが難しい学生も参加しやすいよう、夏季・春季休暇を利用した海外研修を充実させている。

分野横断型の教育システムを確立

KSCに拠点を置く5学部それぞれの専門分野の基礎科目を学ぶことができる「KSC分野横断科目群」と、文理の学生がともに学んでSDGsへの考察を深めることができる「KSC総合教育科目」を設置。文理や学問の壁を越えた学びで複眼的な視野を養っている。世界最高性能の放射光実験施設「Spring-8」と連携した学びは、理系のみならず文系学生も参加可能。工学部では自らの専門分野に隣接する学問領域を学ぶ「マルチプル・メジャー(複専攻)」制度も利用できる。

アントレプレナー教育の充実

社会に変革をもたらし、次の時代を切り開く力に期待がかかる現代社会。そこで活躍する起業家(アントレプレナー)を育成すべく、KSCでは文理の境界を越えて独自のプログラムが展開されている。

これらの特色に加え、テントの中で学んだり焚火を囲みながらディスカッションを行うなどキャンプの手法を学びに活用する「Camping Campus」や、マイボトルを持参することでドリンク無料提供を受けることができ、なおかつ環境保全とビジネスマインドの醸成をコンセプトとする就職支援を連動させた「BiZCAEE」など、ユニークな取り組みも多数展開。年を追うごとに学びの環境が充実していくなかで、2025年4月には複合施設「KSC Co-Creation Village(C-ビレッジ)」が誕生することになった。

機運が高まる起業家志向 卒業生も一体となって支援

関西学院大学は元来、起業家育成に力を入れてきた大学だ。一部上場企業における社長の出身大学ランキングでは全国9位、関西私立大学1位という実績を誇る(※)。その伝統を受け継ぐように、KSCでもアントレプレナー教育が充実している。

※朝日新聞出版『大学ランキング』2020年版より

AI活用人材育成プログラム

現代社会においてAI(人工知能)は、起業をするうえでも欠かせない要素になっている。関西学院大学は日本IBMと共同でAI活用人材育成プログラムを開発。AI技術やデータサイエンスの基礎知識からビジネスへの応用までを段階的に学ぶことができる講座を、全学科目として開講している。

ベンチャー起業家講座

理系学生が科学・技術を実社会の課題解決に結びつけるための知識や考え方を身につけることを目的とした科目。卒業生で、株式上場している起業家12人がリレー形式で講師を務める。

ベンチャービジネス演習

総合政策学部が開講する科目。起業家として活躍する卒業生が講師を務め、実体験に基づいた起業ノウハウなどを解説する。

Kwansei Gakuin STARTUP ACADEMY for KSC

2017年から西宮上ケ原キャンパスで開講されている「STARTUP ACADEMY」を理系学生が学びやすいようにアレンジし、2022年から始まった正課外プログラム。「学習×実践」の繰り返しによって「本物の起業体験」を積み重ねることが特徴。

記者会見に出席した古川靖洋副学長・常任理事によると、KSC全体で起業への関心は年々高まっているとのこと。「ベンチャー起業家講座は定員が200人のところに、400人を超える履修希望が集まっています。私が知っているだけでも、すでに10人あまりの卒業生が起業しました」(古川副学長)。

卒業生が現役生のために教壇に立つことが象徴するように、起業家の育成は「オール関学」体制で進められている。同大で開発または発明された技術ノウハウや知的財産権等を活用するスタートアップ企業に対する投資は、同学が運営するベンチャーキャピタルである「KGVC」が担当。支援額や支援対象を今後も拡大していく予定だという。また、ベンチャー起業家である卒業生で構成される「ベンチャー新月会」も、ファンドの設立と資金支援を検討中だ。

企業や地域住民と起業家精神を醸成 街全体で起業にチャレンジする

イノベーションの創出やアントレプレナーの育成をさらに加速させるものとして期待が集まるのが、2025年4月に誕生するC-ビレッジの中核にあたるインキュベーション施設「Startup Base(S-ベース)」だ。S-ベースは関西学院大学の教育・研究活動を核としながら、兵庫県や三田市、企業、学校、住民などが交流・協働しながら地方創生に貢献し、社会変革の実践拠点となることを目指した施設。主に次の3項目に取り組む。

起業家の育成

起業や社会課題の解決に興味を持つ人が集まり、目的を達成するために必要な理論と実践を学ぶ。また、ネットワークを築く交流の場となり、事業化に挑戦する機会を提供する場にもなる。

研究成果の社会実装

大学で創出された研究成果を新規ビジネスへつなげる場となることを目指す。そのため、教員・学生、起業家、金融機関、ベンチャーキャピタルなどがつながり合うことでアイデアを醸成したり試行・チャレンジを繰り返したりし、「共創」を行う。

地域課題の解決

住民、自治体、学生、教員、企業などがそれぞれの目線で生活上の身近な課題を共有。対話しながら解決する力を高め合うことで「地域力」の向上と「まちづくり」に貢献する。

S-ベースの大きな特色は、同じC-ビレッジの敷地内に建つ学生寮と併設していることだ。会見に出席した土井健司副学長・常任理事は、「学生は日常的に起業家と交流でき、アントレプレナーシップを身近に感じることができます」とその意義を指摘する。施設内に設けられたカフェやフリーエリアは、寮生のみならずすべての学生に開放されている。KSCの近接地とあって、多くの学生の利用が予想される。「新たな学生が集う場となることも期待されています。交流を深めたりともに学び合ったりと、学生生活の充実に貢献する施設になるでしょう」と古川副学長は付け加えた。

C-ビレッジ開設前年となる2024年度は、企業や住民とのネットワーク構築を目的に、KSCでさまざまなプレイベントが開催される。その中のひとつ、秋に開催予定の「中高生向けアントレプレナーシップ育成ワークショップ」では、自分の将来や世界の未来をテーマにした、創造的なワークショップが行われる予定だ。

学生寮が誕生。KSCをさらに豊かな学びの場に

前述の通りC-ビレッジには、インキュベーション施設と併設して学生寮「創新寮 Genesis Dorm(G-ドーム)」が整備される。300人の学生の生活拠点となるG-ドームは、KSCにとって初めての学生寮。キャンパスの正門から徒歩約3分と、アクセスは抜群だ。個室にはベッド、勉強机、収納棚が備え付けられており、「スーツケース1つですぐに学生生活が始められる」という便利さも魅力。「ラーニングスペース」は寮生専用の学習エリアで、時間を気にすることなく寮生同士で学び合うことができる。1階には、カフェテリア、ダンススタジオ、シェアキッチン、音楽スタジオなどプライベートな時間を寮生同士で充実させる設備も豊富に整っている。寮居住費用は、寮費・光熱水費・インターネット接続費を含む月額6.5から7万円、1回の食事代は朝食が220円、夕食が440円を予定している。格安価格で朝食・夕食が利用できる寮生専用の食堂も備えている点は、栄養バランスや生活リズムなど、健康管理が気になる学生・保護者にもありがたいポイントだ。

このほか、商業施設として、24時間365日利用可能なフィットネスジム「FIT365」が出店。学生だけでなく、近隣住民をはじめ一般の利用も可能だ。

* * *

関西学院は現在、「IPOアントレプレナー100人創出プロジェクト」に取り組んでいる。これは、アントレプレナーシップに基づいて自ら事業を起こし、株式上場を行う卒業生を2039年までに100人輩出しようというプロジェクト。大きな目標の実現に向けて、KSCが実践する学びと研究、そして地域や企業と連携した取り組みに、ますます期待が集まっている。

KSC Co-Creation Village(C-ビレッジ)

2025年4月、KSCの近接地に誕生するインキュベーション施設、学生寮、商業施設からなる複合施設全体の名称。性質の異なるこれら3つの施設を一体として大学が開発・運営し、起業にチャレンジする例は全国でも数少ない。

インキュベーション施設「Startup Base(S-ベース)」
学生寮「創新寮 Genesis Dorm(G-ドーム)」
商業施設「FIT365」(フィットネスジム)

学びに打ち込むことができる郊外型キャンパス

郊外型キャンパスでは、学生が学内で過ごす時間が長くなる傾向がある。そのことは、学生同士の交流が深まる、グループでの学びや学生団体での活動が活発になるなど、学生生活を充実させる一因にもなっている。KSC内の共同学習スペースなどはいつも多くの学生が利用しているという。理系学部では、実験装置を夜間でも稼働させていることがある。研究に没頭できるのは郊外型キャンパスならではのメリットだ。課題となりがちなアクセスに関しては、関西学院大学の場合、大阪梅田、新大阪、神戸三宮から直通バスを運行。1時間30分以内で通学可能なエリアは姫路、大津、奈良、泉佐野(大阪南部)まで広がっている。

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