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高崎健康福祉大学(以下、健大)の農学部は2019年開設。今春第一期生が卒業したが、初年度から農学系統の実就職率が全国第1位という結果をあげた。もとより表1の通り就職実績に定評のある健大ではあるが、農学系で例年上位を占めている国公立大学群を抑えての首位は驚嘆すべきものである。そもそも現代の農学は何を学び、どのように社会で活かされる学問分野なのか。健大の教育内容と共に大政謙次農学部長に話をうかがった。
―現代の「農学」についてお聞かせください。
農学を『第1次産業のみ』と思っている方がまだまだ多いかと思いますが、現在の農学は第1次・2次・3次産業全てを含む6次産業、つまり社会のあらゆる分野に関連しています。具体的には、グローカルなレベルで、食料の生産から加工、流通、消費までの分野が関連し、さらに、地球環境や自然保護、地域活性化などの問題にも関係します。学問用語で言えばマーケティング、バイオテクノロジー、分析化学、ICT関連技術、植物工場、アグリビジネスなど多彩な分野に関わる学問です。現在の高校生はSDGsや探求の学びを体験していますが、農や食の分野に触れた高校生も多数いる通り、実は身近で幅広い学問なのです。
―健大農学部の特徴は何でしょうか。
多岐に渡る分野を学ぶため、4つのコースが設置されています。生命科学コースは生物から医療・環境・製薬までの領域で遺伝子工学や細胞工学などを含む分野、作物園芸システムコースは作物と環境との関係を知り、ICTやゲノム解析、ドローンや地理空間情報を駆使したスマート農業の研究開発分野、フードサイエンスコースは食品の衛生管理や化学分析、加工、保存、発酵や醸造など食品そのものに関する分野、アグリビジネスコースは経済・環境・資源などと食料問題を多角的な視点から捉える分野と、それぞれ専門性を深めるコースです。1年次は全員が共通教養科目で農学の全体像を学び、2年次は各コースの学びを知ることにより、農学の基礎知識を広く修得することができ、これが将来社会で活躍する際大変役に立ちます。また産官学連携の充実やインターンシップが多く実施されていることも学生の学びの幅を拡げることと経験値を増やすことに貢献しています(表2)。
―施設設備面についてはいかがでしょうか。
農学部棟の隣に1ヘクタールの実習農場があり、講義や実習そして研究を密接につなげることが可能で、農作物の生産・収穫から測量実習まで様々な活用をしています。敷地内のスマートグリーンハウスでは最新のICT技術やドローンによる画像計測システムを実習で習得しています。そのほかDNAや食品成分の解析機器など、実習に使う最新機器も、また、ドローンの操縦練習やゲノム解析、3次元構築、衛星データの解析、マーケティング分析などに使用するコンピュータ機器も多数備えています。よく高校の先生方は『施設設備は国立大学が圧倒的に優れている』と言われるようですが、本学の研究施設には本当に自信があります。
―1期生の就職状況につきましてはどのように思われますか。
県内外の農業関連や食品に関わる開発・製造・流通関連が多いのはもちろんですが、特筆すべき点は群馬県職員に5名が就職したことです。大きな視点を持って農政に携わるには、広範囲の知識と体験が必要ですから、本学の教育が評価されたものと確信しております。また公務員対策講座や1年次からのキャリア教育など、大学の支援体制にも力を入れています(表3)。
―先生の農学に対する思いをお聞かせください。
先にも触れましたが現在の農学は一昔前のように農作物を作るだけではなく、極めて広範囲な形で社会に関連しています。対象の規模も一農家から地球規模まで様々、正にグローカルな分野です。また高齢化、ビジネス化、環境への対応などを大きな課題として取り組む、現代の社会問題解決に向かう学問でもあります。
一方現時点で将来の職業観を持っていなくても、例えば植物、食品、生命科学や遺伝子、コンピュータ、環境など、現在興味のある分野が本学の農学部にあるのなら、学びを深めるために進学するのも有効です。高校時代は食べ物に興味があり、入学後は食品について学んでいる学生もいます。農学は幅広い分野に関連して、社会貢献度の高い面白い分野ですから、もっと高校生に興味を持ってもらいたいですね。