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人文・社会科学分野を学ぶ学生にとって
価値あるデータサイエンスとAIの知識・スキルを提供
駒澤大学(東京都世田谷区)は、約14000名の学生が、文学部、経済学部、法学部、経営学部などの人文・社会科学系の学部を中心とした7学部17学科で学ぶ総合大学だ。以前から一部の学部学科でデータサイエンスやAIに関係する授業や研究が行われてきたが、2022年4月から全学部共通科目の一環として「データサイエンス・AI教育プログラム」を用意し、すべての学生のリテラシー向上に努めている。同教育プログラムを立ち上げた、総合情報センター所長の坂野井和代先生(総合教育研究部自然科学部門教授)に、人文・社会科学系の学生が身につけるべきデータサイエンスやAIの知識やスキルについてうかがった。
取材・文 林 郁子
人文・社会科学分野を学ぶ学生にとって価値あるデータサイエンスとAIの知識・スキルを提供
―2022年度から駒澤大学として、データサイエンス・AI教育プログラムを導入されました。その背景を教えてください。
政府が、これからの日本が目指すべき未来社会のあり方として、仮想空間と現実社会が融合し、高度な人工知能が社会の要となる「Society5.0」を提唱したのが、2016年のことです。その頃から、少しずつ人文系の分野で学ぶ学生にも、教養としてデータサイエンスの知識やスキルが必要なのではないかという意識を持つようになりました。ただ、まだ社会一般ではデータサイエンスやAIなどは理工系で学ぶものという考えが主流でした。それが一変したのが、ここ数年で急激に進歩し、社会に浸透した生成系AIの存在です。文系理系を問わずすべての学生に、データサイエンスやAIに対する最低限のリテラシーを社会に出る前に身につけて欲しいと強く思うようになりました。ちょうど2021年に学長に就任された各務洋子先生も、学生のデータサイエンス教育導入を急務とされていたため、学内のICT関連の取りまとめをしていた私が学長補佐となって教育プログラムの作成などにあたり、2022年度からの導入にいたりました。
学びやすいレベル設定と社会状況との連動を意識
―プログラムには、どのような特色がありますか。
本学のデータサイエンス・AI教育プログラムは、全学部の学生が受講できるリテラシーレベルと、対象の学部・学科の学生が履修できる応用基礎レベルの2つのレベルで構成されています。2022年度からスタートしたのは、このリテラシーレベルの全学共通科目です。科目作成にあたり参考にした学生へのアンケートでは、多くの学生がデータサイエンスやAIについて「よく知らない」という回答でした。高校以降、理数系科目を学んでいない学生も多いため、そうした知識がなくても学びやすいように、「データサイエンス・AIとは何か?」、「なぜデータサイエンス・AIを学ぶのか」といった初歩的な内容からスタートしています。特に意識したのは、こうした情報技術が社会にどういった影響をあたえるかということや、生成系AIと著作権の関係など技術活用にあたっての倫理面について学生に理解してもらうことです。理工系を学ぶ学生とは異なり、ITやプログラミングといった情報技術にあまり触れてこなかった学生だからこそ、しっかりとしたリテラシーを築くことが大切なのです。例えば、ChatGPTなどに代表される、条件入力によって文章が作成される文章生成系AIについては、誰でも手軽に使える非常に便利で有用なツールです。ただ、使い方によっては、単にレポート作成のカンニングツールにもなってしまいます。ぜひ適切に使う方法を身につけ、積極的に学びに役立てていってほしいですね。
―AI関連は今、どんどん進化しているため、授業への反映も必要ですね。
まさに社会の方が先に動いている状況で、変化のスピードは想像以上です。現在、半年ごとに授業方法や内容のアップデートをしています。AIに限らず、データサイエンスなどの情報技術に関わる社会の動きは常に取り入れていきたいと思っています。
人文・社会科学系の学生が社会で活用しやすいスキル
―プログラムの後半は、Excelを使った実習が中心となっていますね。
データサイエンスというと、最新のツールに目が向きがちですが、全員が専門性の高い技術を学ぶ必要はないと考えています。それよりも、大切なのは根本となるデータとは何かという理解とどのように扱うかという部分です。人文・社会科学を学ぶ学生の多くが、将来社会で仕事をする際に、最も必要になるのは、そうしたデータに関する基礎知識です。例えば、実社会で扱うデータのほとんどは、教科書で使うような自動処理に適した「きれいなデータ」ではなく、欠損や重複、誤記などが混在した「汚いデータ」です。そうしたデータをいかに整え、自動処理できるようにするかは、さまざまな仕事の現場で役立つでしょう。
―人文・社会科学を学ぶ学生に適したプログラム内容ということですね。
本学の学生向けの工夫という点では、実際にデータサイエンスを仕事で使っている人文・社会科学系の方を招いて、職業ごとのデータの活かし方を紹介してもらっています。今年度は、デザイン心理学という心理学のデータを生かしてデザインの仕事をしている方に来ていただきました。
来年度からはオンライン化 学生が受講しやすい環境へ
―プログラム開講後、学生さんの受講率等はいかがですか。
1クラス約150名の募集で、前期後期と夏季休暇期間の3回実施しているため、年間450名ほどの学生が受講しています。受講希望者数が定員を上回っているため、今年度は抽選となってしまいました。来年度からはこの点を改善するため、授業の形式を対面からオンラインへと切り替えて、受講できる人数を大幅に増やします。
―データサイエンスやAIを学ぶことに対して、意欲的な学生さんが多いということですね。
興味深いのは、一般的に全学年共通科目の多くは1、2年生の受講者が中心なのですが、この科目に関しては、3、4年生も多数います。就職活動などを通じて、社会でのデータサイエンスやAIの知識・スキルの必要性を実感した結果ではないかと思います。なかには「単位は不要なので受講だけでもしたい」という学生もいます。オンライン化することで、就職活動中の学生も受講しやすくなりますから、社会に出る前にぜひデータサイエンスとAIのリテラシーを身につけてほしいと思います。
―最後に、受験生の方へのメッセージをお願いします。
本学は文系・社会科学系の学部が中心ですが、心理学や経済・経営などデータサイエンスをはじめとする数理の知識を使う分野は多数あります。本来、学びにおいて文理は融合する方がおもしろいのです。
文系を目指す受験生の方の中には、数学の勉強から離れてしまう方もいるかもしれませんが、それはとてももったいないことです。途中でやめてしまうと、必要になった時に取り戻すのは大変です。また、苦手でも、勉強を続けていけば、いつか好きになることも得意になることもあります。できなくても気にしないで、少しずつでもぜひ学び続けてください。
データサイエンス・AI教育プログラム修了で、修了証やオープンバッジがもらえる!
オープンバッジとは、国際的な技術基準に基づいた知識・スキル・経験のデジタル証明。ブロックチェーン技術によって、オンライン上で有効性を証明できるため信頼性も高く、就職活動など対外的なアピールに使用することも可能だ。今後、同プログラム以外のさまざまな教育プログラムで導入が予定されており、オープンバッジを活用した学修歴証明が進むことが期待される。