映像学部と情報理工学部の移転 大阪いばらきキャンパスをTRY FIELDへ―立命館大学

映像学部と情報理工学部の移転 大阪いばらきキャンパスをTRY FIELDへ―立命館大学

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2024年春、立命館大学は京都の衣笠キャンパスにある映像学部と、滋賀のびわこ・くさつキャンパスにある情報理工学部の2学部を大阪府茨木市の大阪いばらきキャンパス(OIC)に移転させる。この移転によりOICは従来の社会科学系学部だけでなく、理系、芸術系を加えた1万人超の学生が集う総合的学問フィールドの様相を呈す。2学部の移転を契機に建築する新棟は、最新技術が集積される次世代の学び空間となる。そのハードの先に見据えるものは何か。立命館大学の山下範久常務理事(企画担当)へのインタビューで浮かび上がったのは、伝統校が描く「ソーシャルコネクティッド・キャンパス構想」で実現する、新時代の学びの形だった。

聞き手 井沢 秀(大学通信)

1万人超の総合キャンパス化で刺激与え合う空間を創造

―まずは今回の2学部の移転の概要を教えてください。

山下範久教授

京都から映像学部、滋賀のびわこ・くさつキャンパスから情報理工学部が移転してくるということで、来年4月からOICがスケールアップしてスタートを切るということになります。移転の結果として、現在は4学部5研究科のOICは6学部7研究科となり、学生数も1万人を超えてきます。これまで社会科学系中心のキャンパスだったのですが、理系や芸術系も入ってくるということで、ここだけで1つの総合大学という形になります。

OICの新展開は2学部の移転を契機に始まるわけですが、立命館大学の大きな流れの中でいえば2020年に策定した「R2030」という10年間の中期計画に源流があります。それまでの立命館大学は「Beyond Borders」というスローガンを掲げていたのですが、さらにその次へ行こうというのがコンセプトです。

地球規模でさまざまな課題が山積みとなっている状況下で、立命館大学の役割として社会共生価値を作っていくということと、高等教育機関としてイノベーション人材を作っていくことが重要であると考えています。この大きな流れの中、OIC移転のコンセプトとして掲げているのが「ソーシャルコネクティッド・キャンパス」というスローガンです。

―「ソーシャルコネクティッド・キャンパス」とはどのようなキャンパスになるのでしょうか。

一言でいえば、大学は地域や社会とより多元的なつながりをもって密に融合していくことが非常に重要だという考え方です。

大学はもちろん知的創造の場ですが、大学の中で閉じた状態で知的創造を行う時代はとうに終わっていて、大学同士だけでなくほかの研究機関や企業、市民社会や自治体とか、さまざまなところとつながって知的創造を行っていくことが大切です。「コネクティッド」に込めた意味は単につながっているということだけでなく、つながりのチャネルが非常に複層化してきている中で、より高度化したつながりの中で社会のさまざまなステークホルダーとともに価値創造を行っていくキャンパスにしたいということです。

映像学部、情報理工学部が移転する。そこにソーシャルコネクテッド・キャンパスというコンセプトがある。それを置き換えてみると、リアルとバーチャルの融合ということになると思います。検討は2020年に始まったのですが、その後の新型コロナの感染拡大という現実を経て、どんどん後押しされるようなかっこうで進んでいます。

現在、能動的な学びというのは高等教育に限らず、小学校や中学校でも進んできたわけですが、定着すればするほど、能動的学びのキットのようなものが出来て、その中で決まった能動的な学びを体験させる、みたいな傾向も出てきているわけです。そこで、もう一度、能動的学びをダイナミックにする必要があると考えると、その能動的学びを作っていく過程自体が開かれているということが重要です。言い換えれば、教室の外、大学の外からさまざまなフィードバックや刺激を得る形にしていきたい。そこにはリアルとバーチャルの融合という基盤が非常に効いてくるわけで、これを我々は「クリエイティブオリエンティッドな学び」と呼んでいます。国際化やグローバル化といったところもリアルだけでなく、バーチャルのつながりも含めてとなってきているので、これを新たなステージで進めていこうと考えています。

我々は次世代研究大学ということも全学的には標榜しているのですが、アカデミックな研究の高みを目指していくということは当然で、それだけではなく、社会実装や社会課題の具体的な解決というところの研究も進めていくことも目標としています。

リアルとバーチャルの融合で新時代の「学び3.0」へ

半屋外広場が地域社会との接点となり、大学の枠を超えたイノベーションのきっかけを創出。

―新しいOICにおける「学び」というのはどう変わっていくのでしょうか?

新しいキャンパスが提供を目指しているものを、我々は「学び3.0」「コミュニティ3.0」と呼んでいます。ここで「3.0」に先立つ「1.0」とは、私が大学にいたころのマスプロの大学での学びであって、知識享受形の学びです。大学はある種の公共性はあったのですが、限られたメンバーシップの中で大学が持っているものにメンバーとしての学生がアクセスするもので、たとえば図書館といった物理的に仕切られた空間に本があるといった、閉じたコミュニティの話でした。その後、学びはどんどん能動化し、場としての大学、コミュニティとしての大学は大学の外に開かれていきました。現在のOICを見てもらえば分かるとおり、塀のないキャンパスは地域社会と非常に溶け合っています。また、キャンパスの空間自体にもコモンズ(開かれた空間)が多く、学生が教室で先生から知識を享受するということよりも、むしろ教室の外で実践を行う、制作を行う、それを通じて学んでいくというキャンパスを作ってきた自負があります。これが「2.0」であり、OICの現時点です。

「1.0」から「2.0」への変化ということを考えると、結局、大学は財産や持ち物とか権益としての知を分け与えていくとか広げていくとかいうものではなく、むしろコミュニケーションの中で知が生まれていくという知の捉え方にあったのだろうと思います。そして、大学の活動の本質がコミュニケーションにあるのだとすると、今起きているさまざまなテクノロジーの変化は、まさにコミュニケーションの基盤を変えているということではないか、と。そうすると、新たな技術環境を前提としたコミュニケーションとしての学び、知的創造の形は変わってくるはずなので、そこへ向けて考え方を変えていくことが「2.0」を体現したと自負を持つOICの新しい形、つまり「3.0」になると考えています。

4~9階を斜めにつなぐオープンスペース。人や活動が交差する空間がイノベーションを促進。

―ラーニングコモンズの充実も進むそうですね。

新棟の2、3階にはコネクティッドラーニング・コモンズと呼ぶ、リアルなコモンズ的活動だけでなく、そこにいない人ともつながりながらコモンズにおける活動ができる施設を設けています。ポストコロナに移行する中で、学生視点で考えれば、ある授業はリアル、ある授業はZoom、次の時間はまたリアルといった状況が生まれます。これをシームレスにしようとすると、大学の中でリアルで参加する教室だけでなく、オンラインで授業に参加するといった場所を用意する必要があります。もちろん、この空間を使ってその場にいる学生、いない学生と次の演習に向けた制作の打ち合わせをするといった使い方もできますし、これが地域社会や大学の外のアクターとの関わりにも効いてくるはずで、「学び3.0」「コミュニティ3.0」という方向につながってくるというイメージを描いています。

R2030の中期計画の中で、教育と研究の拡大的再結合といった目標も掲げています。研究自体が大学の中で閉じているわけではなく、さまざまなアクターとのつながりの中で行われる。その研究活動に学生が参加したり巻き込まれたりする中で、学生が学んでいく。先生方の限られた時間的リソースの中で、広い意味で研究と教育を統合、再結合していこうというのが大きな目標でもあり、OICの新展開の1つということになります。

最先端施設と国際化推進拠点の利点で次世代の人材育成

ディスカッションやワークショップなどに適した共創エリア。

―新たにできる新棟について詳しく教えてください。

屋内面積だけで約4万5千平米あり、キャンパスの重心もこちらに移ってくるかと思います。映像学部と情報理工学部が主に使う実験室や先生方の研究室、さらに全学施設の教室等が入ります。

低層階には特徴的な仕掛けがあります。1階部分はクリエイティブ・コンプレックスと総称していますが、いわゆる教学施設だけでなく、研究をプロセスから見せて、市民の方にも実際に試していただくことを考えています。それも単なるショーケースとして試していただくだけでなく、試していただくこと自体がデータ収集につながるような感じですね。学外からアクセスのいいところですので、地域のみなさんを含めた外側からたくさんの人が入っていただける場所です。

1階の導線部分には約7.5メートル×4.2メートルの巨大なLEDパネルがあります。その先にはファブリケーション施設、いわゆるファブラボがあります。その他にマイクロソフト社のマイクロソフトベースが日本の大学では初めて入り、マイクロソフト社が持つ豊富なコンテンツを通じた学習環境を構築する予定です。さらに多目的ホールはミニシアターにもなりますし、パフォーミングアーツにも対応します。その他に複数のメタバース上のキャンパスが活動の場として用意されており、リアルとバーチャルの融合の先にメタバース上の展開も併せて考えていこうと思います。

また、特殊大教室も1つ設けてあります。教壇のところに大きなスクリーンがあり、階段状になった教室には階段の1つ1つに4〜6人の島とモニターを設置。大教室でありながら、グループワークと大人数に向けての発信が簡単に切り替えられるようになっています。世界でも珍しい教室形式であり新たな共創を生み出す場として期待しています。

高層階の映像学部から情報理工学部にかけて、建物は斜めに動きのある吹き抜けになっています。こうすることで他の階で行われている研究に対する可視性が高まります。廊下も広くとり、デモや実験に使う空間として設定しています。互いのラボでやっている研究の可視性を上げて、刺激を与え合うことを想定しています。

―「学び3.0」という考え方は移転してくる2学部だけでなく、立命館大学全体としてのものですか?

「学び3.0」というのは5年や10年の計画でマイルストーンを実現して完成するというより、北極星的な理想と言いますか、そこを目指して変化していくというイメージです。実際のところ、今起こっている技術的変化のポテンシャルは見通しきれていないと思います。環境の変化に絶えず追いつきながら、方向としては必ずこちらなのでそこへ向かって変わっていく。それが3.0の考え方です。基礎技術を持っている情報理工学部、そしてクリエイティビティの学部である映像学部がやってくるということで、OICが半歩先に実現したものがほかのキャンパスに波及していくというイメージを持っています。

―OICの開設当初の目指すところとして国際化があったかと思います。そちらに新展開はありますか?

2学部が移転してくることによって国際関係学部以外の英語基準のプログラムはすべてここに集まることになります。また、国際学生の数自体も国際関係学部のある衣笠キャンパスよりOICの方が多くなります。実はOICは立命館における国際化推進の拠点キャンパスという位置づけももつことになります。これまでは、各学部が独自にカスタマイズした留学プログラムや英語基準プログラムを作ってきました。今後は、互いに連携し合う中で、集積効果を期待しています。それぞれ教学リソースを出し合って英語基準のプログラムを作っていくなど、今後は考えやすくなると思います。

研究内容の発信やプレゼンテーション活用できる大型ディスプレイを備えた吹き抜け空間。

―来年から学生数1万人以上のキャンパスとなりますが、それを踏まえて受験生にメッセージをお願いします。

新棟は映像学部と情報理工学部が入りますが、キャンパス全体で使っていただきたい施設が満載です。最先端の設備ですし、テクノロジー的なことだけでなく、設計思想から今日本で考えられる一番新しいものとして作っているので、期待して来ていただきたいですね。社系学部だけのキャンパスから理系、映像系と入ってくるため、どの学部に来ても刺激の大きいキャンパスになるとも思っています。産学連携、スタートアップ人材の育成ということも非常に強く意識しています。起業していこうとか、ベンチャーでやっていこうという人たちにとって、そういうカルチャーにあふれたキャンパスになりますので、ぜひそういう人たちに来てほしいと思っています。

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