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「ホスピタリティ産業」と言われるエアラインや観光・ホテル業界に高い就職率を誇る白百合女子大学。同大学の「ホスピタリティ・マネジメントプログラム」が今春から全学部対象のプログラムへと進化した。同大学海老根副学長と文学部の4年生2名の対話を通して改めてプログラムの魅力や学生自身の成長について探ってみた。
取材 井沢 秀(大学通信)
ホスピタリティの学びは専攻の学びと深くつながっている
海老根 今日は文学部に在籍する4年生で、ホスピタリティ・マネジメントプログラム(HMP)を受講した学生2名に来ていただきました。お二人はどんな理由でこのプログラムに参加したのですか?
美頭 私は幼少時から英語が好きで、それを活かして将来はグランドスタッフとして航空業界で働きたいという夢があります。白百合女子大学を志望したのも、英語とホスピタリティを学びたかったからです。オープンキャンパスで島田先生(HMPの担当教員)と話して温かいお人柄に触れる機会もあり、ますます参加したいと思うようになりました。
横田 私も別の授業で島田先生とお話ししたことがきっかけですね。航空業界で客室乗務員をめざしていることを伝えたところ、「ホスピタリティ業界を視野に入れている学生向けの授業があるよ」とこのプログラムをご紹介いただきました。
海老根 実際にHMPに参加してみて、どんなところがよかったと思いますか?
横田 「ホスピタリティとは何か」という根本的な理論から学べるところですね。ホスピタリティの語源からその本質を探り、日本独自の「おもてなし」との比較なども学びました。またHMPではパレスホテルやホテルニューオータニを訪問する機会も用意されているので、理論で学んだことを現場で確認し、さらに理解を深められるところも魅力だと感じました。
美頭 私はHMPに参加したことで、ホスピタリティとサービスの違いを強く実感するようになりました。サービスはマニュアル通りに行われますが、ホスピタリティは人に寄り添い、相手とのコミュニケーションや関わりを通じてマニュアルを超えたものを提供することと認識しています。
海老根 お二人は英語英文学科、フランス語フランス文学科の専攻ですが、専攻の学びと並行してHMPを受講したことで、それぞれにどんな影響がありましたか?
横田 白百合でフランス語や韓国語を学ぶ機会を得てきたので、将来はその強みを活かして働きたいと思っていますが、語学だけなら他にもできる学生がたくさんいると思います。でも、ホスピタリティという学びの領域をプラスすることによって、差別化になるのではないかと考えています。
海老根 横田さんは留学経験もありましたね。
横田 はい、大学3年生の夏休みにフランスへ留学しました。現地ではフランス人だけでなく多くの国の方々と交流する機会があったので「いろんな人の考え方を受容する」大切さを身をもって学べましたし、他国の方と関わることで今までの自分にはなかった視点を持つことができました。その経験がホスピタリティの学びに大いに活かされていると感じます。
美頭 私は「子どもにどうやって楽しく英語を教えるか」ということに興味があったので、HMPで行われるハワイでの語学・ホスピタリティの研修で、日本と韓国の子どもたちに英語を教えるインターンシップに参加しました。最初のうちは子どもたちも英語に慣れておらず会話も少なかったのですが、遊びを通じて少しずつ、教えた英語のフレーズを使ってくれるようになりました。私もコミュニケーションを通じて子どもたちへの理解を深めていくうちに、気持ちを汲み取ったり、何を求めているか察したりすることができるようになっていきました。これも一つのホスピタリティで、いろんな学びがつながっていると改めて実感することができた経験でした。
パレスホテル東京では、そのホスピタリティの考え方やブランド戦略を学ぶだけでなく、《五感》を通した心配りを体感
「他者の目線で考える」という社会で汎用性の高いスキル
海老根 2023年度から、HMPはどの学科の学生でもプログラムとして履修することができるようになりました。他の学科の学びとHMPを掛け合わせることで、どんな相乗効果があると思いますか?
美頭 私が専攻している「語学」はHMPの大きな要素のひとつですが、最も大切なのは相手の気持ちを汲み取って行動することだと思います。発達心理学科でしたら心理学的な洞察力ですとか、児童文化学科・初等教育学科なら子どもの気持ちにいかに寄り添うかなど、それぞれ専攻の学びを活かしながら、さらに視野を広げていけるのではないでしょうか。また、私自身もHMPを通じて学んだことは、幅広い学問分野や職業領域で活かせる汎用性の高いものだな、と実感しています。
海老根 どんなことがきっかけでそう思うようになったのですか?
美頭 以前HMPの授業で、宗教上の理由で特定のお肉を召し上がらない方がいることを学びました。その後アルバイトをしているパン屋で、実際に外国のお客様からパンの具材の確認をされたことがあったのです。その授業を受けていたことで、すぐに相手のご事情を察して対応することができました。さらにお店の商品すべての具材や味の特徴などを研究して英語で説明できるように、自分なりに工夫しました。
横田 私も同様の経験がありますね。授業で卒業生のグランドスタッフの方をお迎えして、サービスを提供する側と受ける側の立場をロールプレイングしたことが印象に残っています。その後、アルバイト先でお子様連れのお客様のドリンク注文を受けた際に、お子様の飲み物に氷をお入れするかどうか確認したところ、入れないでほしいとリクエストされました。以前はそんなニーズがあることを知りませんでしたし、HMPを通じて相手の目線に立つことを学び、それを実行できる自分になったな、と感じています。
海老根 HMPに参加している友達には、どんな学生が多いですか?
横田 みんな現在は就職活動中で、同じホスピタリティ業界をめざしている人が多いです。でもライバルという感じはなく、「一緒に頑張ろうね」という学生が多い。蹴落としたりがっついたりすることがなくて、みんな優しい。でもそれはHMPの参加者に限ったことではなく、白百合女子大学の学生全体に共通していると感じます。
美頭 そうですね。それにコミュニケーション能力が高い方が多いですね。学年を問わず声を掛け合い、誰とでもすぐに友達になってしまいます。
海老根 白百合生の優しくて穏やかな人柄は、じつは多くの企業からも評価されているんですよ。
美頭 うれしいですね。自然豊かなキャンパスは大学全体の雰囲気がのびやかで落ち着きます。そんな環境も校風や私たちの気持ちに影響しているのかもしれません。
航空機事故の現場となった上野村の御巣鷹山登山道の整備・清掃活動では、「安心と安全に基づく信頼」がホスピタリティの基本であることを強く心に刻む
即戦力としての単純スキルの付与ではなく、「ホスピタリティ」の本質を4年間しっかり学ぶ
島田由香教授
ホスピタリティ・マネジメントプログラム担当教員
本プログラムでは、「人に寄り添い、その人が何を一番望んでいるかを察して行動する」というホスピタリティの本質を理論としてしっかり学びます。そのうえで実際の企業を見学し、ビジネスでは顧客の信頼を得るためにホスピタリティにどんな工夫をしているかなど、実践的な学びへとつなげていることが特徴です。ホテルや空港の国際線カウンターに行ってお客様の属性を確かめたり、航空会社の訓練所で実際の研修を見せていただいたりすることもあります。授業のほかにもボランティアの参加やプロモーションの企画、産学連携の観光やまちづくりを通じて、多面的なアプローチでホスピタリティの実践に取り組んでいます。
しかしその中で共通しているのは、それぞれの視点、それぞれの立場になって考えること。お客様の目線、その職場に勤務する人の目線、経営者としてどうすればその企業が社会からの要請に応え、収益を伸ばせるか。そうやって様々な視点で考えることが日常化するうちに、実生活でも自分の意見ばかりを押し付けるのではなく、相手の考えを慮れるようになっていきます。つまり真のホスピタリティとは、立ち居振る舞いなど表面的に身に付けるものではなく、もっと日常生活に根ざした思いやりの精神が確立することなんです。だから就職活動ではそのマインドを普通に発揮するだけで、十分に業界が求める人材像になっている、というのが本プログラムの目標ですね。
ホスピタリティの本質とは「徹底的に他者に寄り添う」という本学の建学の精神と非常に通底しています。4年間をかけて、大学でこそ学べるホスピタリティ教育を実践していきたいと思います。
JAL客室教育訓練部での体験講義の様子