入試は大学からのメッセージ 「欲しい人材」を獲得するために入試を変えた東洋大学

入試は大学からのメッセージ 「欲しい人材」を獲得するために入試を変えた東洋大学

一人ひとりの受験生に合わせて多様な入試制度を用意する東洋大学。社会科学系の学部で数学必須の方式を増やすなど、入試と学部教育の連係を重視。入試制度には受験生に対する大学からのメッセージが込められている。東洋大学理事で入試部長の加藤建二さんに、これまでの入試改革の狙いや教育に対する考えを聞いた。

取材・文 松平信恭(大学通信)

―東洋大学は一般選抜で「4・5教科型」「英語外部試験利用制度」を導入するなど、多様な入試を展開しています。どんな狙いがあるのでしょうか。

単に多くの志願者を集めようとするだけでは、本学が求める人材の獲得が難しくなってきたことが背景にあります。「東洋大学はこんな学生を求めている」というメッセージを入試の科目や内容を通して広く伝えていきたいとの考えから、入試改革に取り組んできました。

「4・5教科型」に代表される多教科型入試で入学した学生は、学習習慣や課題に向かう姿勢などが優れている傾向が見えてきています。GPAが高いだけでなく、学生と関わる教員はゼミや研究室でのパフォーマンスの違いを肌で感じているそうです。これまでとは少し異なる学生が加わり、同級生として一緒に学ぶことで、学内に多様性が生まれています。本学はそうした学生を増やしたいと考えているので、多教科を学んできた人が受験しやすい入試を拡大してきたのです。

また、全国からの入学者を確保する狙いもあります。各地域の国公立大学を目指す人は多いですから、そうした層の併願校となることを目指したのです。西日本からの志願者や入学者が増え、入学者に占める関東出身者の比率が下がるなど、実際の数値にも改革の成果は現れています。

―数学受験を必須とする文系学部の方式も増えていますね。受験生の負担が大きく、志願者離れも懸念される中で、導入に踏み切ったのはなぜですか。

数学を必須とする入試方式を最初に取り入れたのは、2011年度から導入している経済学部経済学科です。

経済学は、社会科学の中で最も数学を多用する学問であり、今日の経済学は数学の土壌の上で展開しているといっても過言ではないでしょう。数学を学んでいない学生はその土壌の上に立つまでに時間がかかってしまう。基礎から教えるための教育コストもかさみます。入学後の学びを考えると、入口の時点で数学を問う必要があったのです。

数学必須の入試方式は徐々に拡大し、現在は募集人員の7割近くを占めるまでになりました。経営学部や社会学部など、数学の素養が必要な社会科学系学部にも広がってきています。

―「英語外部試験利用制度」についてはいかがですか。

本学の一般選抜では前期日程志願者の51%が英語外部試験を利用しています。入学者に限れば、その割合は67%です。

入試で英語外部試験を利用した学生は入学後に実施する英語のプレースメントテストの成績に優れ、さまざまな海外プログラムへ参加する割合も高いことが統計的に示されています。入学試験と入学後の学びは、しっかりと連係しているのです。

本学は今後、独自に行う英語の「1技能(読む)」試験を廃止して、英語に関してはすべて外部試験を用いて「4技能(聞く・話す・読む・書く)」を問う形とすることを目指しています。これは17年に英語外部試験利用制度を導入した当初から前提にあった東洋大学の考え方です。実際に何年後に達成できるのかは、全体の動きを見ながら判断していくことになります。

WEB体験授業の活用でやりたいことの深堀りを

―各大学が多様な入試を行うようになっています。どんなポイントに着目して志望校を選べば良いのでしょうか。

すべての情報を細かく集めるのは難しいですが、「どんな学生を育てようとしているか」という各大学の違いは理解した上で進学先を選んでほしいです。

本学も学部ごとの細かな特徴よりも、東洋大学全体としての教育のメッセージを強く打ち出すことを意識しています。そこで本学に興味を持ってもらえた人は、各学部のホームページなどで自分がやりたいことを掘り下げていってもらえればと思います。

本学のホームページでは「WEB体験授業」も公開しています。大学でやりたいことを見つけるために、ぜひ積極的に活用してください。累計600本を超える動画の中から「この先生のゼミや研究室に入りたい」と思える教員が見つかれば、高校生にとってはそれが一番良いことではないでしょうか。

今はインターネットを活用すれば高校生自身が自分で情報を調べられます。高校の先生方には、長年の経験で培われた各大学のイメージや、進学した卒業生のその後など「大人の目線」から大学を見るためのアドバイスをしてもらえるとありがたいですね。

―東洋大学はどんな学生を育てていきたいとお考えですか。

創立者の井上円了は「他者のために自己を磨き、活動の中で奮闘する」ことが東洋大学の心であると説きました。本学がとても大事にしている教えですが、今の世の中で最も欠けていることではないでしょうか。「考える力を鍛える教育」を通して、現実社会における活動の中で奮闘し続ける人材を育てていきたいと考えています。

社会に必要な人材を教育し、輩出していくのは、大学の一つの使命です。どんな人材が必要になるのかを先を見据えて考えていく必要があります。24年度にかけて学部再編やキャンパス移転など教育環境の整備に取り組むのも、世の中をより良く変えていきたいという思いが強いからです。時代に合わせた変化をいとわず常に模索を続けているのが東洋大学という大学なのです。

朝霞キャンパスイメージ図 ©㈱石本建築事務所

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