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社会課題をビジネスの仕組みで解決しようという、起業家が増えてきている。企業をはじめとした組織内でも、新たな事業を立ち上げたり、チームをけん引するリーダーシップは欠かすことができない。このような社会の変化に対応すべく、起業家マインドを備えた人材の育成に取り組むのが、流通科学大学の商学部経営学科起業・事業承継コースだ。コースを担当する岡田恵実専任講師に、学びの中身と「起業」を学ぶ意義を伺った。
聞き手 松本陽一(大学通信)
文 松本守永(ウィルベリーズ)
岡田恵実 専任講師
中小企業基盤整備機構(中小機構)にて、起業志望者や新規事業の立ち上げを志望する人の支援に従事。主にセミナーやワークショップを企画・運営し、参加者への情報提供や参加者同士の対話・交流の促進、人的ネットワークの拡大、それらによるビジネスプランのブラッシュアップなどをサポートする。開催したセミナーは、年間約200本におよぶ。2022年4月から現職。経営管理修士(専門職)。高校生におすすめの本は岩崎夏海氏著作の『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら』(新潮文庫)。
―起業・事業承継コースでは、どのような学びが行われているのでしょうか。
コース名の通り起業や事業承継を目指す学生はもちろんですが、それ以外の学生も対象にした学びを展開しています。
現代は、かつてなく先行きが不透明な時代です。前例や周囲の勧めに何となく従うのではなく、自分で考えて自分の進路を決めなければいけない時代でもあります。とはいえ、誰もがすぐにそんなことができるわけではありません。そこで、大学時代にさまざまな知識や経験を得ることで、自分の人生を自分で創っていく力とマインドを養おうというのが、本コースの学びです。「自分のやりたいことを実現できるようになるコース」と言ってもいいと思います。
この目標に向かって、段階的で体系的なカリキュラムが構成されています。コース選択の準備期間である1年次には、起業家についての理解を深めます。起業家を講師に招いた講義などを通して、起業家が持つ社会への課題感やそれを解決すための情熱と行動力を知り、リアルな起業家の姿を捉えられるようになります。
コースの本格的な学びが始まる2年次には経営戦略論、組織論、ベンチャー論など、さまざまな理論を学ぶことで知識を身に付けていきます。そして3年次からは少人数制の教育体制となり、ビジネスプランの作成などに取り組みます。ここでは実際の収支計画を立てたりプレゼンテーションとディスカッションを行ったりして、それまでに得た知識を用いながらアイデアを形にしていきます。
―流通科学大学ならではの学びも行われているのでしょうか。
本学では、学生が企業や地域、自治体と連携して課題解決に取り組む「社会共創プログラム」に全学を挙げて取り組んでいます。起業を学ぶ上では、講義や書物から得る知識だけでは不十分です。自分の考えを社会で実践し、反応を肌で感じることが、さらなる学びへとつながっていきます。社会共創プログラムは、そのための格好の場となっています。
「流科大版マネーの虎」というプログラムも、本学ならではです。このプログラムでは、企業経営者などで組織された審査員にビジネスプランをプレゼンテーションすることで、出資・投資などの支援を得ることができます。学びを通して磨き上げていったプランを社会実装するフェーズに至ったとき、大きな障壁となる資金面でのバックアップ態勢が整えられているのです。すでに3人の卒業生が支援を受け、実際に起業しています。
―岡田先生は長年にわたって中小機構で起業家の支援などにあたってきました。その経験を踏まえて、流通科学大学ではどのような指導を行っているのでしょうか。
受け持つ科目のなかでは、例えば「中小企業論」に力を入れています。マーケティングや組織論の題材は大企業であることが多いのですが、日本の企業の99%以上は中小企業です。日本の生活や経済を担っているのは中小企業と言えるでしょう。そういった企業群が抱える課題や、備えているポテンシャルを理解してもらいたいと考えています。
指導を行う上では、社会の出来事を「ジブンゴト」として捉える力を養えるように心掛けています。例えば中小企業の概要を講義した翌週には、「この1週間で、どんな中小企業に出合った?」と問いかけます。食べ物についての話題が出たときには、「その食事の原価っていくらだろうね?」と問いかけたりもします。起業やビジネス、経済は、自分とは関係ない外の世界で起こっているのではなく、自分のすぐそばで起こっていることなのです。その感覚を得て、「自分ならどうする?」という意識を身に付けてもらいたいです。それが結果的には、将来の進路選択を自分の意思で行う力につながっていくと考えています。
―コースでの学びを通して、学生はどのような力を養っているのでしょうか?
学生の柔軟さやフットワークの軽さには驚かされています。学生は、スイッチさえ入ればものすごいパワーで前進していきます。ときには失敗することもありますが、それも大切な経験です。「失敗してもいいんだ」と安心してチャレンジできる環境を整えることが、教員にとって重要な役割だと考えています。そのためにも、大人の尺度で学生の行動をとがめてしまったり、大人の“メガネ”にかなう正解を押しつけないように注意しています。
ゼミでは、このような私の考え方を学生が理解してくれ、「一緒に実現していこう」と工夫を凝らしてくれています。あるプロジェクトについて学生が発表したときは、周囲の学生が応援のコメントを寄せてくれたり、「自分にはこういう協力の仕方ができる」と提案してくれたりします。これは、仕事には欠かすことのできない「チームづくり」に他なりません。組織が共有すべき目標が何かを感じ取り、それを実現するために自分ができることを考えて行動するという体験を、無意識のうちに積み重ねているのです。非常に頼もしく感じています。
―コースで学ぶのは、起業や事業承継を考えている学生ばかりなのでしょうか? どのような学生にコースに入ってきてほしいとお考えですか?
「起業に興味はあるものの、具体的な将来像はまだ描いていない」という学生がほとんどです。実家が事業をされている学生もいますが、それも多数派ではありません。
本コースで大切にしているのは、「起業家マインド」を養うことです。起業家マインドとは、「自分で考えて、自分で決める力」のことでもあります。これは、ますます多様化・複雑化するこれからの社会においては、全ての人に必要な力です。会社員になるにしても起業家になるにしても、どのような規模の組織で働くにしても、非常に汎用性の高い能力を養えるのが本コースだと言えます。
高校生の皆さんは、「将来のことを考えよう」「将来の職業や働き方を決めた上で大学を選ぼう」と言われていると思います。でも実際のところ、進路を決めることは簡単ではありません。決められないことに不安を感じたり、もやもやした気持ちを抱えている人もいるでしょう。そんな人こそ、本コースで学んでほしいと考えています。世の中のさまざまな出来事を「ジブンゴト」として考える経験を積み重ね、「自分ならどうするか」と考える習慣を身に付けることはやがて、「自分の将来を自分で決める」という力へとつながっていくはずです。
―起業するにあたって、ひいては自分のやりたいことをやり切るために、最も大切なものを挙げるとすれば何でしょうか。
まずは「will(意思)」です。付け加えるなら、「誰のどんな課題を、なぜあなたが解決したいのか?」に対する確固たる答えです。特に重要なのが後半の「なぜあなたが解決したいのか」の部分で、ここを明確に答えられるようになると、いわゆる「響く言葉」になります。そして、周囲を巻き込んでいくことができます。
なぜ明確に答えられるかと言うと、解決したい課題が「ジブンゴト」だからです。自分事にするためには、机の上で学ぶだけでなく、社会に飛び出し、実践することが大切です。自分事であるかどうかは、大きな違いを生み出していくのです。
―最後に、高校の先生方と高校生の皆さんへメッセージをお願いします。
本学は、学生一人ひとりが「自分」を主語にして考えることを大切にしている大学です。4年間の学びを通じて、自分とはどんな人であるのか、どんな自分になりたいかを考えられる機会が豊富です。その結果、「自分で選択できる自分」になることができます。今はまだ自分のことや将来のことがよくわからない人こそ、本学での学びをお勧めしたいです。皆さんと共に学べることを楽しみにしています。