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実社会と心理学の学びは深い関係がある。しかし、実際にどのような場面で活用されているのかは意外に分かりにくい。2023年4月に龍谷大学が新設する心理学部は、社会における心理学の役割を解き明かし、キャリアとのつながりの中で専門性を深めるという、他大学にはないユニークな教育方針をもつ。その具体的な方向性について、心理学部長に就任予定の吉川悟教授に聞いた。
取材・文 井沢 秀(大学通信)
2023年4月に龍谷大学が新設する心理学部
―まず、心理学部の開設に至った経緯と狙いについて教えてください。
既存の文学部の臨床心理学科は、人との関わりの中で対人支援のための有用なコミュニケーションスキルを身につけた人材輩出を目標としてきました。この理念を発展させる形で心理学部を新設します。現在はさまざまな場面で人と人が関わり合う、共同的な作業がとても増えています。そのためのコミュニケーションスキルを獲得し、社会のさまざまな場面で共同的支援を促進できる人材育成を目指します。
―カリキュラムにはどのような特徴がありますか。
社会における心理学の活用法を学生にわかりやすく伝え、視野を広げていきたい。心理学は社会で役に立つということを強く意識してもらうため、キャリアを中心に据えたカリキュラムになります。卒業後に社会の中で心理学をどのように活かしていけるのかを理解した上で勉強していく、つまり社会に役立つ心理学をテーマとします。正課授業ではキャリア啓発に力を入れ、行政等も含め、幅広い分野で心理学の専門性を持って活躍できる人材を育成します。
チームでの心理学的支援の活性化を目指す
―「生涯発達カウンセリング」と「関係支援とコミュニケーション」の二つのプログラムが用意されるそうですね。
この二つのプログラムは、その特徴を理解した上で、3年生から自由に選択できます。「生涯発達カウンセリングプログラム」は、従来の臨床心理学をベースにして、生まれてから亡くなるまで、乳幼児期、児童期、青年期、高齢期など様々な段階において、専門性を活かして支援を行える人材を育成します。臨床心理学科で柱としていた、ビハーラ(※)を活かした高齢者支援にも力を入れます。
※ビハーラ:サンスクリット語で休養の場所、気晴らしをすること、寺院などの意味を持つ。
「関係支援とコミュニケーションプログラム」は、従来の臨床心理学では扱われてこなかった領域です。2000年代に入って引きこもりが社会問題化し、支援の現場に本人が来られない状態でどのように支援をしていくのかが課題になりました。直接的な支援のための学問体系はできていますが、間接的な形での支援は十分に体系化されていません。このプログラムは、関係者を支援することで本人を支援することを学ぶ、他大学ではあまり見られない学問内容となっています。福祉の現場や学習支援における教員との連携、虐待に対応する包括会議など、チームでの支援が当たり前になる中、チームを活性化できるコミュニケーションスキルを身につけることが目標です。
―授業の特徴について教えてください。
心理学の基礎をきちんと学ぶことに加え、実習・演習中心の授業が多くなると思います。
その中には、スポーツ大会で緊張せず実力を発揮するため、事前にイメージトレーニングをする、メンタルリハーサルに関する授業があります。さらに、自分自身の身体の状態を落ち着けるためのコントロール術を身に付ける、マインドフルネスに関する学びを進めるなど、多様な授業を用意しています。
どの授業においても、チームによる支援を行う際に不可欠な、コミュニケーションスキルの獲得を重視していることが特徴です。
―二つのプログラムを横断する授業として、データ心理学が用意されています。
人の抽象的な概念をデータとして置き換えるための学びとして、データサイエンス教育にも力を入れます。例えば、ウソ発見機は嘘をつくと感情が高ぶることで発せられる電波で判断します。こうした生理的な反応やアンケート調査結果など、幅広いデータから有効な分析をしなければいけません。授業では、まず実際の人同士のやり取りを観察して、そのどこの特徴を見れば有用なデータになるのかを学び、その上でデータの取り方を学びます。基礎をきちんと理解した上でデータの整理という応用的な学びに入る流れです。
データサイエンスで必須の統計学が苦手な高校生もいると思いますが、それほど難しい統計学の知識は必要ありません。母集団から一部の情報を用いて、母集団の情報を推測するという推測統計を理解できれば問題ありません。
―資格取得支援のサポート体制はいかがですか。
臨床心理士は学部で特別な心理学の勉強をしなくても、大学院で単位を取得すれは資格が取得できますが、2015年にできた公認心理師は、学部段階で一定の心理学の科目を修得しなければ受験資格を得られません。そのため、受験資格を取得できるカリキュラムを用意して資格取得をサポートします。大学院も従来からの公認心理師や臨床心理士などの資格が取れるプログラムを提供しています。
人間関係構築により生産性を上げる人材育成
―心理学を社会で活かすということを踏まえて、どのような人材育成を目指しますか。
まず、心理学部で学んだ成果であるコミュニケーションスキルや授業から得られる様々なスキルをもって、自分自身の人生選択のためにメンタルコントロールができるようになってほしい。もう一つは、どんな組織に入っても、つながりの中で人間関係を構築できるスキルを身につけた人材を育成したいと思っています。卒業生には、心理学が社会の中で役立つということをきちんとアピールできるようになってほしいですね。
―最後に高校教諭と受験生に向けて、メッセージをお願いします。
龍谷大学の心理学部は、心理学の専門性を活かして、セルフケアをしながら自分自身と周りとの関係が位置づけられる、社会や組織の中で人間関係を構築して生産性を上げられる人材養成を目指しています。
SDGsがいわれる中、龍谷大学の心理学部には、ウェルビーイングの意識を持って、全ての人に健康と福祉を提供できる意識の高い学生を育成するためのカリキュラムが設置されています。また、ロールプレイや学外の様々な現場で、人間関係を大切にしながら実践的な経験を積む中でコミュニケーションスキルを学ぶこともできます。さらに、心理学的なアプローチとはどのようなもので、現場でどう使われているのかが理解できる授業も数多くあります。
このような取り組みを通して、心理学の専門知識の獲得に留まらず、心理学とキャリアが結びつく教育を展開することが、龍谷大学の心理学部が他大学の心理学部と一線を画す点です。社会の様々な場面で心理学の知識を活用して活躍したいと考えている受験生は、ぜひ龍谷大学の心理学部を目指してください。