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8学部14学科を有し、学部生約9000人と大学院生が学ぶ「ミディアムサイズの総合大学」として特色ある教育に取り組む甲南大学。経済界における数多くのリーダーをはじめ、社会のさまざまな分野で活躍する卒業生を送り出してきた同学は今、「彩り教育」と名付けた新たな教育の確立を推し進めている。その取り組みについて、副学長であり全学教育推進機構長である佐藤泰弘教授に話を聞いた。
―甲南大学が取り組む「彩り教育」とはどのような教育でしょうか。
本学は建学以来、人物教育に注力してきました。卒業生に対する各分野からの高い評価や期待の声は、その成果だと嬉しく感じています。本学の人物教育が成果を上げ続けていくために何が必要なのかを考えたとき、学部間の連携の緊密さや全学教育の充実など、いくつかのキーワードが浮かび上がりました。それらを「フレームワーク」として整理して見つめ直してみると、「全学共通教育」「専門教育」「正課外教育」が密接に連携し合い、学生を成長へ導く多様な教育を展開することの大切さが再確認できました。また、学部を横断した取り組みが活発で教職員と学生との距離が近いという、「ミディアムサイズの総合大学」である本学ならではの土壌も重要です。そこで、本学だからこそ提供できる多彩な教育を「彩り教育」と名付けることにしたのです。
彩り教育において、全学共通教育は大きな役割を果たします。学生は大学生活を通じて、自分の個性や将来を考えながら、さまざまな気付きに出会います。学部での専門的な学びを進めながら、専門以外の事柄にも興味を持つことがあります。そのように広がっていく興味・関心の受け皿となるのが全学共通教育です。いわば全学共通教育は、学びを「拡張」したり「補完」したりする仕組みなのです。逆に、全学共通教育で出会った気付きが、学部での学びの動機付けになることもあります。これもまた、学びの「拡張」「補完」と言えます。
多様な関心を抱えて大学に入学してくる学生もいますが、学部での学びは必然的に分野を絞り込んだ専門的なものになります。そんななか、分野の垣根を越えて自由に学べる全学共通教育は、学生が自身の「好き」や「得意」を広げる場とも言えます。専門分野の枠を越えて、様々な方向に学びを拡張できる場所が、本学の全学共通教育だと言えます。
―彩り教育を通じて、学生にはどのように成長してもらいたいと考えていますか?
専門を深め、学びを拡張できる人、自ら目標に向けて学び続ける人になってもらいたいです。大学の役割のひとつに、「社会人になってからも成長を続けられる人を育てること」があると私たちは考えています。その基盤作りとして、学生時代に「自ら学び、成長していく」という体験をしてもらいたいです。
成長という点では、社会人基礎力を測定する「ジェネリックスキル測定」において、対人基礎力、対自己基礎力、対課題基礎力が全ての学部で伸びています。その背景には、充実したキャリア支援に加えて、「彩り教育」と銘打つ以前から取り組んできた本学ならではの人物教育があると考えています。
―2022年度から、全学共通教育センターが始動しました。センター導入の意図と、具体的な取り組みについて教えてください。
本学では2015年度から共通教育の改革に取り組んできました。その牽引役として同年に設置されたのが、共通教育センターです。同センターでは学部との連携や役割分担を整理しながら、複数の部局が管轄していた共通教育科目を段階的に統合してきました。2022年度からは語学教育も同センターの管轄になり、役割分担の明確化にめどがつきました。すなわち共通教育専門の部署としての基盤が整ったのです。そこで、名称を全学共通教育センターに変更し、新たなスタートを切ることにしたのです。
本センターが提供する重要な科目が「導入共通科目」のひとつ「共通基礎演習」です。高校までの学びと大学での学びを接続する初年次教育は、各学部でも実施されています。それに加えて「共通基礎演習」は、「学部を横断した学び」という視点から高校までの学びと大学での学びを接続しています。ポイントは、この段階で他学部の学生とともに学ぶ経験ができることです。文系・理系に分かれて学んできて、得意教科も物事に対する考え方もまったく異なる学生たちにとって、他学部はいわば「異文化」です。しかし、「異文化体験」をするからこそ得られるものも多いです。一年次に他学部の学生から刺激を得ることで、その後の学生生活の過ごし方を考えるきっかけにしようというのが、「共通基礎演習」です。
もうひとつの特徴的な科目が、「キャリア創生共通科目」です。ここでは、民法・商法やビジネス法務、会計や簿記、IT、ビジネス英語など、専門の学びに加えて、キャリアの設計に必要だと思う学びに取り組むことができます。公務員など、目標の職業に直結した学びや資格・試験対策も行われています。健康寿命の延伸という社会ニーズを見据え、福祉・スポーツ系の知識や技術を体系的に修得できるプログラムも用意されています。カリキュラム変更の柔軟さは、全学共通教育センターならではの強みです。その特色が、時代の変化を見据えながら、フレキシブルにカリキュラムを組み替えて社会が求める人材の育成に取り組むことを可能にしています。
―グローバル教育と地域連携教育についてお教えください。
グローバル教育については、国際交流センターが海外の提携大学の開拓や、留学プログラム作りの中心的役割を担っています。それにより、学部単位で同様のことを行う場合に比べて、より多くのプログラムを提供することが可能になっています。短期間の異文化体験をしたい人から長期にわたって現地でしっかりと学びたい人まで、個人の希望に応じて学ぶことができるのです。これを私たちは、「FITなリューカツ」という合言葉のもとで推進しています。コロナ禍以降は「オンライン留学」もグローバル教育のひとつの形として定着してきました。本学では、オンライン留学を正規の単位として認定する制度も整備しました。
地域連携教育については、取り組みを主導してきた地域連携センターの上部組織として、社会連携機構を開設しました。これまで以上に企業や自治体との連携を強化し、社会貢献を推進するとともに、より実践的な教育プログラムを展開していくことが、同機構を設置した狙いです。例えば、ソーシャルビジネスをテーマにした取り組みを活発にしていきます。放置竹林という課題解決のために竹炭を用いたフードメニューの普及などに取り組んでいる「BambooにThank you Project」はその代表例と言えるでしょう。
グローバル教育や地域連携教育というのは、これからの社会を担っていく誰もが経験しておくべき教育です。同様の位置づけの教育として、データサイエンスがあります。本学では知能情報学部がその中心舞台となっていますが、それとは別に、他学部の学生もデータサイエンスについて学ぶことができる入門科目もあります。自身が所属する学部での専門的な学びと、変化する時代に即した学びの両方を経験し、融合させながら成長していけることが、本学の特色のひとつです。
―充実した彩り教育を可能にしている要因は何でしょうか。
まずは「ミディアムサイズの総合大学」という本学ならではの姿です。私たちは、総合大学とは単に複数学部の集合体ではないと考えています。学部同士や異なる学部の学生同士が刺激し合い、高め合うことにこそ、総合大学の価値があるといえます。そのためには、相手が何をしていて、どんな人なのかを知ることができる「顔がわかる距離感」が必要になります。それが「ミディアムサイズ」なのです。実際、本学では教職員と学生の距離が非常に近いですし、学部間の連携も緊密です。
もうひとつ考えられるのが、校風です。本学は旧制高校としての歴史を持ちます。旧制高校が重視していた教育といえば、教養教育です。その伝統が受け継がれ、教養を大切にする校風へとつながっているように思います。ここ数年来にわたって取り組んできた共通教育の改革は、カリキュラムの再設計など、現場の先生方にとっては大変な作業でもあったと思います。しかし、多くの先生方は前向きに、そして主体的に取り組んでくれています。先生方も教養教育の大切さを理解し、より良い教育を学生に提供したいという思いを共有しているからこそ、改革が着々と進んでいるのだと考えています。
―彩り教育の今後の展望をお聞かせください。
取り組んできた改革が形として整ったというのが、現在の状況です。基盤整備はできたので、これからは、ひとつひとつのプログラムのブラッシュアップや、新たなプログラムの導入に取り組んでいきます。多彩なプログラムを将来の目標に合わせて効果的に組み合わせて学ぶ、「履修モデル」の構築にも取り組んでいきたいです。すでに様々な検討をスタートさせており、早ければ2023年度から新たな学びを提供できると考えています。
本学には、岡本(神戸市)、ポートアイランド(同)、西宮(西宮市)という3つのキャンパスがあります。各キャンパスの特色を発揮しながら、連携を今以上に緊密にしていくことも今後の目標です。
―最後に、高校の先生方や高校生へメッセージをお願いします。
甲南大学は「関西一 面倒見の良い大学」を目指しています。私たちの考える「面倒見の良さ」とは、必ずしも手取り足取り何でも指導することではありません。「学生に寄り添いながら、社会へ巣立っていく後押しをする」ことが面倒見の良さだと考えています。
私たちは、学生の立場に立って話に耳を傾けます。そのうえで、必要とあれば厳しい意見もきちんと伝えます。そして、「あなたはどう思う?」と、自分自身で考えること・判断することを促します。もちろん判断に迷う場面はたくさん出てきます。その時は、様々な情報を提供しますし、励ましたりアドバイスをしたりします。そういった経験をたくさん積めること、そのために教職員が一体となって学生に寄り添うことが、私たちの考える面倒見の良さです。
本学には、多様な学びがあります。興味や目標に合わせて自由に学ぶことができます。みなさんとともに本学で学べることを、楽しみにしています。
人物教育のフレームワーク
甲南大学は、8学部・14学科を備え、学部生約9,000人と大学院生が学ぶ「ミディアムサイズの総合大学」を謳っている。他の大規模な総合大学に比べてコンパクトであり、学生と教員との距離感が近いのが特長。「専門教育」を柱に据え、「全学共通教育」、「正課外教育」を融合させる「人物教育のフレームワーク」を基盤として、学生の可能性を無限大に伸ばすプログラム「彩り教育」を進めている。
全ての学部で在学中に社会人基礎力が伸長
甲南大学では社会で必要とされる力を「見える化」するジェネリックスキル測定を1年次と3年次の全学生を対象に実施。1年次と3年次の結果を比較すると、社会人基礎力の中でもコンピテンシー(自分を取りまく環境に実践的に対処する能力)が全学部で伸長しており、全国の大学でも稀有な特長となっている。これは、人物教育の成果といえる。
大学のwebサイトは「活動紹介」のページに注目
佐藤教授がアドバイス! 大学・学部選びのポイント
オープンキャンパスにはぜひ参加してください。そして、相談コーナーなどで、あなたの疑問や不安、悩み、希望を先生や職員に直接ぶつけてみてください。私が経験から感じる「いい大学」は、そういった高校生の相談に対して、教職員が真摯に回答してくれる大学です。ときには、興味をもっている学部がその大学にはないというケースもあります。それでもきちんと相談に向き合ってくれる大学は、きっと、日頃から学生にしっかりと寄り添っているはずです。校風や教職員との距離感、学生への思いを感じるには絶好の機会になるでしょう。もちろん、あなたの悩みを解決するヒントをもらえる可能性も大きいですよ。
大学のwebサイトを見て学びの内容などを調べている人も多いでしょう。webサイトを見るときは、大学の活動を紹介したページもチェックしてみてください。地域と連携した活動、コンテストへの出場など、教育・研究活動を紹介するページがあると思います。こういったページからは、大学や学部の学びを具体的に知ることができます。カリキュラムを見ただけでは「何をするか、いまいちわからない」と感じるかもしれませんが、活動紹介からは学びのイメージが伝わってくるはずです。
“職員力”で大学の価値をさらに高める「KONANクオリティ・プラス」プロジェクト
“スチューデント・ファースト”の一歩先を行くクオリティを追求
甲南大学では、2021年度に職員組織が学生サポートのさらなる向上を推進する「KONANクオリティ・プラス」プロジェクトを始動させた。
部署ごとに学生支援に対する「KONANクオリティ」の目標を策定。目標をポスター化し、大学全体に周知を行った。今後、目標に対する達成報告や学外への周知活動も行う。目指すは関西私大一『面倒見が良い大学』になることだ。同プロジェクトのリーダーである経営企画室次長の谷向豊氏はこう語る。
「プロジェクトのねらいは、従来の大学職員像を打破し、職員一人ひとりが主体的に学生のために行動する意識を醸成することです。これからの大学職員には、業務を的確に遂行する力だけでなく、企画力や実行力が求められます。それは、どの部署であっても同じです。学生応対のない部署であっても、学生目線で業務を見直したときに、変えられる点は必ずあることを伝え続けました」。
例えば、監査部では課外活動団体向け会計マニュアルを作成。人事課ではネームホルダーのデザイン刷新と着用義務の徹底を行うなど、開始初年度から学生のための取り組みの輪は着実に広がっている。
部署の垣根を越えて質向上に取り組む組織横断型プロジェクト
「KONANクオリティ・プラス」プロジェクトは、さらなる広がりを見せ、部署の垣根を越え組織横断型で改革に取り組む「KONANクオリティ・プラス」チャレンジ・サブプロジェクトが構成された。例えば、若手有志の提案から生まれた「職員キャリアサポーター制度」では、多様な業界で経験を積んできた中途採用の職員が、部署に関係なくキャリアセンターのサポートに入り、出身業界に関する説明や相談対応などを行っている。
このような取り組みは、部署内の既存業務で手一杯では、推進がままならない。そこで、業務改善、業務効率化を目標にスタートしたのが、「KONANクオリティ・プラス」業務改善・サブプロジェクトだ。同プロジェクトでは、職員全員に日常的な仕事のムダを無くす業務改善目標を立ててもらう。さらに、部署を横断する改善案に対しては対応チームの立ち上げなどを行う。業務効率化で時間に余裕ができれば、その分で新たなプロジェクトを進めることも可能になる。
「甲南大学はミディアムサイズの総合大学で、学部の垣根を超えて様々な文理含めた融合教育を比較的自由に設計、実施できるメリットがあります。このメリットを最大限に生かすためには、職員が学生目線に立ったサポートをどれだけ行えるかが鍵となります。それはつまり、“職員力”が大学の価値や学生の満足度を左右するという意味でもあります。部署を越えて職員が一体となって取り組む本プロジェクトの今後の展開に、どうぞご期待ください」(谷向氏)。
一人ひとりに寄り添う履修指導で学生の満足度を高める教務部
「KONANクオリティ・プラス」プロジェクト 実践例
2022年度で2年目を迎えた「KONANクオリティ・プラス」プロジェクト。その実践例のひとつが、教務部での取り組みだ。教務部は全学のカリキュラムを熟知しており、履修指導に力を入れている部署。同プロジェクトでは以下の3つの施策を推進している。
1つめは、履修指導のクオリティ向上を目指す部内研修の実施だ。窓口に多く寄せられた相談内容をもとにケーススタディを行い、個々の対応方法について共有を行った。その後、ディスカッションを行い、教務部での在籍年数にかかわらず、適切な回答ができる体制づくりを目指した。
2つめは、「フィードフォワード型履修コンサルティング」だ。2021年度の新入生のうち履修相談に訪れた学生の状況を確認。今後の学修に不安のある学生に電話をし、履修や学修に対するアドバイスを行った。
3つめは、オンラインでの履修相談だ。学生用ポータルサイト「My KONAN」のQ&A機能から24時間いつでも相談内容を入力でき、職員が窓口で対応するのと同様に回答する仕組みを構築した。
「今回のプロジェクトを通して、教務部にアクセスする学生は、学びに意欲的な学生が多いことがわかりました。今後は、学生に履修のルールを伝えるだけではなく、学生の前向きな気持ちを汲み取って“どうすれば希望を叶えることができるか”を共に考える部署に変わっていきたいと考えています」(石野氏)
「今後は学部別の履修モデルの公開や、チャットボットの導入など、新たなサービスに向けた取り組みを計画中です。学生が気になったことがあれば、いつでも気軽に相談できる部署でありたいと考えています」(田原氏)