創域理工学部と先進工学部が社会に「新しい価値」を創造するー東京理科大学

創域理工学部と先進工学部が社会に「新しい価値」を創造するー東京理科大学

2023年度に理工学部(=創域理工学部)と先進工学部の再編を予定する東京理科大学。異なる分野を融合・統合して、時代が求める新しい科学技術を追求する。学部再編の背景や各学部の学びについて、石川正俊学長、伊藤浩行理工学部長、田村浩二先進工学部長が語り合った。
 

石川正俊学長
伊藤浩行理工学部長
田村浩二先進工学部長

―東京理科大学は2023年度、理工学部の名称を創域理工学部に変更し、先進工学部には物理工学科と機能デザイン工学科を新設します。なぜ積極的な再編を行っているのですか。

石川 科学技術の「構造」が近年大きく変化しているからです。

これまでの科学技術は「真理の探求」を目指すものだと理解されてきましたが、現在は「価値の創造」という新しいタイプの科学技術も重要になりました。人々が「あったらいいな」と思うような価値を提案し、それが社会に受け入れられることで、未来の真実が作られていく。「価値の創造」と「真理の探求」が、車の両輪のように一体となって科学技術を発展させていくことが求められているのです。

これからの大学は「価値の創造」を特に強化することで、未来の科学技術の先端に立つべきだと考えています。新しい価値の提案には相応のリスクがあり、積極的にリスクを取れる大学が研究を進めるべきです。

そして、新しいものを作るには、既存の学問分野を超えた融合・統合が必要です。今回再編される理工学部や先進工学部には、新しい科学技術を生み出すとともに、その技術を広く認めてもらうための社会への積極的な発信を期待しています。

―各学部はどう変わっていくのでしょうか。

伊藤 理工学部では学部創設50周年を機に、17年に「大学院横断型コース」を作りました。特定の専門を有しつつ横のつながりも持つことで、自分の研究を異なる視点から見て、他の研究室とも連携しながら課題解決を目指します。大学院までの6年間を、まさに分野を融合して学ぶのです。横断型コースの出身者は、「研究の立ち位置を俯瞰して全体を見る力がある」と高く評価されています。

創域理工学部への名称変更を機に、こうした動きをさらに推し進めます。「創域」とは、新しい学問領域を作るだけでなく、新しいものをつくるプロセスも含めて「創域」だと考えています。現代の社会課題は、あらゆる学問分野を融合しないと対処できません。横断的な研究教育を行うことで、そうした課題の解決を目指していきます。

田村 先進工学部の前身の基礎工学部は、21世紀の技術の基盤となる「IT」「ナノテクノロジー」「バイオテクノロジー」という当時の最先端分野の研究のために開設されました。21年度に先進工学部へと名称変更を行い、学部の先進性はより分かりやすくなったと思います。

本学部が推しているのは「デザイン思考」という考え方です。まったく問題のない状態からスタートして、まずは何が問題となっているかを共感してみる。その後、問題を定義し、概念化し、試しに何かを作ってみる。こうしたサイクルを回すことで、現代社会の課題を解決する新たなイノベーションの創出を目指します。

23年度からは物理工学科と機能デザイン工学科が加わり、5学科体制がスタートします。物理工学科では物理学の論理を現実社会に応用し、「物質科学」「複雑科学」「エネルギー科学」「ナノデバイス」という4つの分野でのイノベーションを、機能デザイン工学科では「ナノ医療」や「ロボティクス」分野に「デザイン思考」でアプローチし、「ヒトのカラダを助ける工学」を創出します。

石川 科学技術の短命化は、大学の教育モデルにも影響を与えています。将来的に今の専門分野が変化・衰退する可能性が高いことを踏まえ、「現在の科学技術を支える力」「次の科学技術を生み出す力」「変化する科学技術に適応する力」という3つの力の養成が求められるようになりました。両学部の学生には、学びを他分野へと展開する力を身に付けてほしいですね。

他分野の学生との協働がイノベーションを生む

理工学部(=創域理工学部)がある野田キャンパス

―各学部の特徴的なカリキュラムを教えてください。

伊藤 創域理工学部は、すべての学生に「創域」の概念を植え付けるカリキュラムが大きな特色です。その一つが1年次に必修化される「創域特別講義」です。学部の歴史や基本的な考え方に加え、創域理工学部が位置する野田キャンパスのすべての学科の先生に、融合という観点から講義をしてもらいます。さまざまな「創域の芽」や「自分の学科の学問領域に囚われない意識」を早くから持ってもらうことが狙いです。1200人の1年生を学科が異なる5人ずつのグループに分け、専門が異なる学生とディスカッションや課題提出に取り組んでもらう仕組みも用意しています。

また、大学院修士課程1年次には「創域融合特論」を設置しています。これまでの融合の事例紹介や、横断型コースの教員による授業を通して、融合を擬似的に体験できます。研究を本格化させるにあたり、専門にとどまるか、融合型コースに進むかを考える機会になればと考えています。

田村 先進工学部では、2023年度からは5学科すべての1年生に「デザイン思考入門」を必修化します。グループワークを積極的に取り入れることで、1年次から他学科との連携の素地を養います。

本学部は20年度まで、すべての1年生を対象に北海道の長万部キャンパスを利用した全寮制を前提とする教育を行ってきました。学生は親元を離れ、同級生と相部屋で生活することになります。自分から発信しないと生活できない環境で、学科間の垣根は自然と低くなりました。本学部の教育はその伝統を引き継いでおり、ベースとなる学問教育をしっかり行った上で、他分野との連携方法など学部に共通する考え方を身に付ける内容となっています。

伊藤 融合を推進するためには、分野が異なる人が同じ言葉でコミュニケーションを取る必要があります。そのための仕組みとして、創域理工学部では数学、物理、化学、データサイエンスといった基礎的な内容を学ぶ「専門基礎教育」を共通化し、創域に向けた壁を低くすることに取り組んでいます。

石川 本学は現代的な意味での「教養」を重視しており、21年度からは各学部の教養教育を集約した「教養教育研究院」を立ち上げ、大学全体で強化を図っています。科学者側が新しい技術の活用方法までデザインする時代になったことで、社会の評価に対する「感度」を持つことが大切になっているのです。

田村 科学者がどこまで研究を突き詰めていいかは現代科学の大きな課題です。私の専門に近い分野では、遺伝子を自由に書き換える技術を使って、さまざまなことが可能になっています。しかしながら、科学技術が使われる過程では、「ここまではいいが、ここからはダメ」という、社会の中で生きる人間として越えてはならない一線が絶対にあるはずです。先進工学部では専門教育に進んだ後も「人間的な教養」が必要になると考えており、大学全体の教養教育をこうした力の養成の場と位置付けています。

学問の融合を後押しする学習環境と長年の伝統

―キャンパスの環境も充実した教育研究を後押ししています。

伊藤 理工学部が位置する野田キャンパスは隣に自然公園がある環境で、敷地が非常に広くゆったりとしています。学科間の壁が低く、対話重視の風通しの良い雰囲気で、融合研究が生まれる素地があります。

東京都心と研究都市であるつくば市の中間にある立地を生かして、外部の研究機関との連携も活発です。学生時代から外部との共同研究に取り組む機会が数多く用意されています。

田村 先進工学部がある葛飾キャンパスは「イノベーションキャンパス」と呼ばれており、門も塀もない市民に開かれたキャンパスです。イノベーションにおいては、社会との関わりが非常に重要です。自分たちの研究が社会にどのように受け入れられ、あるいは批判されるのかを、常に意識できる環境だと思います。25年度の薬学部移転に向けた新棟建設も進んでいます。

―創域理工学部では新たな入試方式が始まります。

伊藤 数理科学科と電気電子情報工学科の2学科で「S方式入試」を始めます。他の学生は専門である「系」を決めるのは入学後ですが、この入試の受験生は事前に「系」を決めた上で入学します。進みたい分野が決まっている受験生に向けた方式で、得意科目を重視した選抜を行い、入学後も専門分野の学習をサポートしていきます。

先進工学部がある葛飾キャンパス

―卒業後の進路についてはいかがですか。

石川 本学の人材は企業から高く評価されており、就職状況は非常に良好です。さらに、企業が求める人物像が、本学が育てる人物像に近づいてきたことを感じています。

今は銀行や証券会社、商社など、これまで「文系の仕事」というイメージだった企業が積極的に理系人材を求めています。理系人材の将来の進路が大きく広がっていることを受験生には知ってほしいですね。

―最後に、高校生に向けてメッセージをお願いします。

伊藤 創域理工学部は、理工系のすべての分野が揃っていると言っても過言ではない多様な学部で、キャンパスでは6000人の多彩な学生が自由に学んでいます。一つのことを突き詰めたい人、何でもやってみたい人、どちらも歓迎です。授業は大変ですが、自分の特長を発揮しに来てほしいと思います。

田村 先進工学部には、コミュニケーションを前提に、連携して研究を行う伝統があることをぜひ知ってください。大学には、高校までの勉強では想像もつかない未知の世界が広がっています。受験勉強は大変だと思いますが、それぞれの可能性の芽を摘まないためにも、少しでも心に余裕を持ちながら、幅広いことに挑戦してみてください。

石川 東京理科大学は、知識だけでなく、展開力や融合する力、価値を創造する力など「科学技術のすべて」を学べる大学に変わります。科学技術が中心となって動く社会で生き生きと活躍するためのスキルを本学で身に付け、自らの道を進んでいってほしいと思います。 

ユニヴプレスMAGカテゴリの最新記事