不確実な時代に求められる “アントレプレナーシップ”の本質を学ぶ、武蔵大学の新たな試み

不確実な時代に求められる “アントレプレナーシップ”の本質を学ぶ、武蔵大学の新たな試み

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2022年に学園創立100周年を迎える武蔵大学では、2020年度から学部横断型の正課科目「現代日本の課題」〈アントレプレナーシップ ―新しい事業を始めるための経営学―〉を開講した。社会で活躍するアントレプレナーやベンチャーキャピタリストが多数登壇するほか、学びの成果を披露する「ビジネスプランコンテスト」も開催している。さらに、2022年度にスタートする副専攻制度では「アントレプレナーシップ副専攻」を設置する予定だ。こうした新たな取り組みの背景や意義について、高橋徳行副学長に話を聞いた。

アントレプレナーの育成は社会的要請に応える本学の使命

高橋徳行副学長
経済学部教授。慶應義塾大学経済学部卒業後、アメリカ・バブソン大学経営学修士課程修了。国民生活金融公庫(現日本政策金融公庫)総合研究所主席研究員などを経て現職。専門はアントレプレナーシップ。

―アントレプレナーシップの大切さからお聞かせください。

まず「アントレプレナーシップ」を「新しいビジネスを始めること」だと考えている方は多いと思います。企業への就職をめざす学生が「自分は起業しないから無関係」と考えるのもこのためです。しかし「アントレプレナーシップ」の本質は、ビジネスに限らず広く新しいことにチャレンジすることです。会社員や公務員といった社会的な立場を問うものでもありません。

例えば、公務員が環境保全を進めようと役職にとらわれず声を上げ、市長に直訴して、すでに議会で承認された案件をひっくり返してしまうような事例もあります。会社員にも、新規プロジェクトや社内ベンチャーなど、新たな挑戦の機会があるでしょう。新しい挑戦がなければ企業活動は停滞してしまいます。特に日本は成熟社会と呼ばれるからこそ、立ち止まることなく新たな価値を創造し続けることが重要です。アントレプレナーシップを発揮できる人材の育成は、切実なる社会的要請なのです。

また、ビジネスでも日常生活でも、リスクや不確実性は存在しますから、これらと向き合いつつ行動を起こすことが必要です。新しく事業を始めるプロセスは、アントレプレナーシップの本質を学ぶには絶好の素材です。ただ、アントレプレナーシップの学びの対象はもっと広く、私たちが不確実な世の中を生きるための技術を身につけることだともいえます。

多彩なゲストスピーカーが学生の幅広い興味に応える

―具体的な授業内容を教えてください。

「アントレプレナーシップ ―新しい事業を始めるための経営学―」は、株式会社アルプス技研の創業者である松井利夫氏の寄付講座としてスタートしました。「基礎編」となる前期の授業では、社会で活躍するアントレプレナーやベンチャーキャピタリストをゲストスピーカーとしてお招きします。企業への就職をめざしながらも、自分でビジネスを始めるというキャリアの選択肢があることを、学生に認識してもらうことがねらいです。

ただし、短期間で事業を拡大させて上場するようなストーリーばかりでは、学生は狭く偏ったイメージを描いてしまい、「おもしろいけど自分には無理」と考えかねません。そこで、大企業で大規模なプロジェクトを手がけた方から、発達障害児を対象とする比較的小規模な塾を立ち上げた方、子ども食堂を運営している方まで多彩なゲストを迎え、学生の幅広い興味・関心に応えられる内容にしています。

―後期の授業内容についてもお聞かせください。

後期は「実践編」です。実際にビジネスプランを考え、集大成として「ビジネスプランコンテスト」に挑戦します。前期に学んだ事例も参考に、世の中の困りごとや利便性の向上が期待されることなどを課題として設定し、解決方法を模索します。本学の学生は身近な社会問題への関心が高く、子どもの貧困やジェンダーの問題などの解決を題材にしたビジネスプランを考えています。

また、当コンテストには本学園の設置校である私立武蔵高等学校の生徒や、社会人も参加しています。経験値の異なる多様な年代が刺激し合えるメリットがあるほか、実践的な学びを通じて高大連携の効果が高まる可能性も感じています。

なお、コンテストの大賞には最大100万円の賞金を授与します。大賞は、実際にビジネスをスタートすることが条件のため審査が厳しく、2020年度は該当者なしでしたが、興味深い発表もありました。

―どのような発表があったのでしょうか。

例えば、多くのスーパーでは閉店前に割引が行われますが、実際に店舗へ行かなければ顧客が詳細を知ることはできません。そこで、スマートフォンから予約を受け付け、福袋感覚で売れ残った惣菜を詰め合わせて届けるシステムの構築により、売上アップとフードロス削減の両立をめざす提案がありました。

また、地方が衰退しているとはいえ、現地で暮らす人々がいることは確かです。そこで「学習塾がほしい」「税理士事務所が必要」といった各地の個別のニーズを集約して発信することで、都市部の起業家予備軍とのマッチングを促進するサービスを企画したチームもありました。さらには、料金体系が複雑なスマートフォン市場において、一人ひとりに最適なキャリアや料金プランをアドバイスするサービスなど、実体験に基づく地に足のついた内容が多かったですね。

対話を重視する武蔵大学の強みが生かされる

―今後の展望についてお聞かせください。

本学では2022年度から副専攻制度がスタートし、その一つとして「アントレプレナーシップ副専攻」が設置されます。授業では大企業の事例だけでなく、創業期の取り組みなど、多様な企業規模やフェーズにおいて実践・体現すべきアントレプレナーシップを伝えていきます。また、歴史を振り返ってみると、例えばコロンブスはアントレプレナーシップによって“大航海”を実現したとも考えられます。学生には視野を広げて学ぶことで、アントレプレナーシップの本質を理解してほしいと考えています。

加えて、アントレプレナーシップは本学が重きを置くリベラルアーツ&サイエンス教育にも通じるものです。世の中の当たり前を見つめ直しながら多様な専門知を深め、それらの相互作用によって総合知を形成していくのがリベラルアーツの本質です。総合知を身につけるためにも、また総合知によって課題解決に辿りつくためにも、アントレプレナーシップは不可欠な資質なのです。

―最後に受験生や高校の先生方へメッセージをお願いします。

「アントレプレナーシップ副専攻」には、さまざまな学部の学生が集結することが想定されます。そこで培ってほしいのは、対話を通じて知を深め、また形成していく力です。「ゼミの武蔵」といわれる本学が重視してきたことは、まさにこの対話です。ディスカッションを含め、対話する機会の多いゼミでは、学生同士が刺激し合う伝統があります。2008年にスタートした「学部横断型ゼミナール・プロジェクト」も、多様な考えを持つ学生が学部の垣根を越えて対話を重ね、企業からの課題を解決していくものです。こうしたゼミや授業からもわかるように、本学にはアントレプレナーシップを育む土壌が創立時から受け継がれてきたのです。武蔵大学の強みを存分に生かした新たな学びのアプローチとして、「アントレプレナーシップ ―新しい事業を始めるための経営学―」や「アントレプレナーシップ副専攻」にぜひ期待していただきたいと思います。

株式会社MonotaROを創業し、現:株式会社LIXIL社長兼CEOの瀬戸欣哉氏による授業(10月1日)。質疑応答形式をメインに行われた。

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