“次の時代”を担う人材を育成するデータサイエンス教育-関西学院大学

“次の時代”を担う人材を育成するデータサイエンス教育-関西学院大学

1889年設立という長い歴史を持つ関西学院大学は、2021年4月には理系4学部を新設するなど、社会の変化を見つめて改革を積み重ねている。データサイエンス教育にも早くから取り組んでおり、情報技術を活用して“次の時代”をリードする人材を育成してきた。本稿では、ともに教育改革を行った商学部と総合政策学部でのデータサイエンス教育を紹介する。また、2019年度からスタートし、現在ではバーチャルラーニング版を企業や自治体、他大学へも提供するほどに発展した「AI活用人材育成プログラム」について、プログラムを構成する10科目すべての履修を終えた学生の声を紹介する。

商学部 「デジタル×ビジネス」をテーマに、今後の社会を担うビジネスパーソンを育成

数学、統計学、情報の基礎教育が高度なデータサイエンス教育を支える

1912年に高等学部に創設された商科をルーツとする商学部は、関西学院大学のなかでも有数の歴史ある学部だ。現在は6コース制(※)が敷かれ、1年次に学部全体の基礎を学んだうえで、2年次から興味や目標に応じてコースを選択できる仕組みになっている。2022年4月に教育改革を実施する。ビジネスの本質と原理を理解し、デジタル環境を最大限に活かして半歩先のデジタル未来を描くことができる人材を育成すべく、「デジタル×ビジネス」を重要な学びのテーマに掲げた。

商学部におけるデータサイエンス教育の特色の1つは、1年次に行われる数学・統計学と情報の基礎教育だ。商学部で行われるこれらの科目の学びは、一般的には、ビジネスのための必要最小限の内容に絞って行われることが多い。対する同学商学部では、それぞれの科目の本質を理解できるように、しっかりと時間を割いて学ぶカリキュラムが編成されている。ここで養った力が、2年次以降の高度な学びを支えている。

※商学部の6コース:経営コース、会計コース、マーケティングコース、ファイナンスコース、ビジネス情報コース、国際ビジネスコース

企業の実際のデータを使いながら課題解決までを実践的に学ぶ

6つのコースには多彩な学びと研究に取り組む教員が在籍している。そのなかにはデータを用いた実証的な研究を行う教員や、統計や情報の専門家が数多いことも特徴だ。例えばマーケティング分野のゼミでは、研究テーマに対して「どのような情報を集めるべきか」というデータ収集の設定から始まり、実際のデータ収集、集めたデータの統計処理、傾向や特徴の分析、そして課題解決に向けた企画提案まで、実践的な学びが行われている。この際に必要なビジネスの知識とデータサイエンスの知識・スキルの両面を1つの学部内で学ぶことができるのは、同学商学部ならではと言える。

同学部は、企業や地域と連携した学びも活発に進めている。卒業生の多くがビジネス界で活躍しており、企業からの信頼も大きい。これらの背景もあって、実際の企業データベースにアクセスし、実物のデータを用いた学びが行われていることも特徴だ。また、SNSからデータを収集して分析を行うという学びも展開されている。これらの学びではデータが“教材”として加工されていない。データ処理の難しさなどはあるが、それこそが実践力を養う要因となっている。

総合政策学部 「効果測定」の視点から政策を評価。データを活用して社会課題の解決に挑む

データを用いた課題発見から解決策の立案を一連の流れで学ぶ

一般的に政策系の学部は、法の趣旨との整合性を評価する「合目的性評価」に重きを置く学部と、政策の効果を定量的に評価する「効果測定」に重きを置く学部との2種類に大別される。関西学院大学総合政策学部は後者で、統計分析を重視することに特徴があり、そのためのアプローチとしてデータサイエンスやITの積極的な活用が行われている。

同学部が育成するのは、統計分析、すなわち数字を用いて政策の効果を評価したり、より良い政策の立案を行う人材、ひいては社会課題の解決を図る人材だ。そこで学部の学びでも、データを用いた学びが活発に行われている。

学びの特色としてまずあげられるのが、データを用いた課題解決に関する体系的な学びだ。同学部では、課題の発見から解決策の立案までを一連の流れとして学び、そのなかの欠かすことができないプロセスとして、統計学やデータ分析を学ぶ。情報の専門家と課題解決の専門家という2つの側面を併せ持ち、なおかつ両者の役割や関係性に深い理解を備えていることで、的確なデータ収集や分析、政策の立案を可能にするのだ。

「数字で語る」教員のもとでデータの活用を実践的に学ぶ

データ分析にあたっては、専用の統計ソフトやプログラミング言語も用いる。同学部は文系に分類されており、入学時には統計やプログラミングに親しんでいない学生も少なくない。それらの学生に対して基礎から学ぶことができる授業を整備していることも特色のひとつだ。2022年度からは1年生のコンピュータ演習という必修科目にPythonをつかったプログラミング教育も導入される。

効果測定を重視するという学部の性質を受けて、それぞれの専門分野において「数字で語る」取り組みを行っている教員が多いことも特色だ。例えば途上国に対する日本からの経済援助の効果測定を研究テーマにしている教員は、被支援国の経済の伸びはもちろんのこと、貿易や人口動態など多方面のデータを分析。支援の効果を正確に測定する方法や効果が生まれる要因を導き出している。ゼミでも学生は同様の研究に取り組んでおり、プログラミングを行ってデータを処理するプロセスやそこから浮き彫りになった情報を読み解くことにより、データを用いた課題解決の力を養っている。このようなゼミにおける活動は学外のコンテストでも多数発表されており、全国規模の大会で優秀な成績を収めている。

AI活用人材育成プログラム

AIが普及した社会においては、AIを活用したサービスや製品を企画・提供する人材(AIユーザー)や、それらの人材とAIの研究者・開発者とを橋渡ししてシステム開発やデータ分析を行う人材(AIスペシャリスト)の需要が高まると考えられている。2019年度からスタートしたAI活用人材育成プログラムは、AIユーザーやAIスペシャリストの育成を目指したプログラム。文系・理系を問わずAI初学者でも学ぶことができ、AIの基礎知識・スキルから企業の実際の課題などをAIを用いて解決を図るプロジェクト型の学びまで、全10科目の段階的カリキュラムが編成されている。プログラムは日本IBMと共同で開発され、2021年7月からは企業や自治体、他大学向けにバーチャルラーニング版の提供が始まった。

課題解決の強力なツールとしてのAIの可能性に出会う

長谷川優太さん
理工学部
先進エネルギーナノ工学科 4年

以前は、AIと言えばSiriやAlexaぐらいしかイメージがありませんでした。それが今では、チャットボットの仕組みが理解できるなど、どこでどのように使われているかがわかるようになったのです。「AI活用発展演習」では企業に対する提案の際に、プロトタイプとなるAIも自作しました。これらの経験は将来、仕事で課題に取り組む際に「これはAIを使えば解決できるかもしれない」「試作品を作って提案しよう」という発想につながるように思います。

文系の学生とともに学べたことも大きな財産です。私たち理系の学生は、「今ある技術で何ができるか」という視点で考えがちです。ところが文系の学生は、「社会の課題は何か」「企業は何に困っているのか」という視点で考えたうえで、それを解決する方法を考えていることを知りました。この経験もあって、進学する大学院では専門である工学分野に加えて、経済学や経営学の学びにも取り組みたいと考えています。

ユニヴプレスMAGカテゴリの最新記事