本当に意味ある高大接続を目指してー金沢工業大学の「KIT入学教育」がスタート

本当に意味ある高大接続を目指してー金沢工業大学の「KIT入学教育」がスタート

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学生を大きく伸ばす「面倒見の良い教育」が評価されている金沢工業大学(KIT)。今年度から始まる高校生向けの「KIT入学教育」では、1年次から目標に向けた活動に取り組めるように、大学で学ぶ覚悟を醸成する。高大接続に対する考え方なども含め、入試センター所長の青木隆教授に話を聞いた。

――今年度から「KIT入学教育」が始まります。高校生を対象とした「KIT授業体験」と、合格者が対象の「キャリアデザイン講座」、そして入学予定者を対象とする「直前集中講座」から成るプログラムです。それぞれの内容を教えていただけますか。


「KIT授業体験」では、本学の全12学科の特徴的な講座を開講します。夏休み期間にオンラインで、45分×2~3コマの授業を行うものです。大学への導入教育として入学後の関連科目も示すようにしています。

この授業体験には、高校と大学の授業のギャップを体験してもらうことで、大学での学修に対する見通しを持ってもらう狙いがあります。どこの大学にも「なんとなく」や「みんなが行くから」という形で進学したことで、入学後に挫折する学生が一定数いると思います。一方で、こうした二極化の問題に対し、大学側が求めるレベルを下げることは、社会での活躍を見据えたキャリアデザインを考える上であってはならないことです。実際の大学の授業を知ることで、自分の夢を叶えるためにどんな努力が必要になるのかを理解してほしいですし、覚悟を持って大学で学ぶきっかけになればという思いです。

この授業体験は本学を目指す高校生だけでなく、興味のある高校生は誰でも受講できます。また、高校の探求学習にも活用していただけます。講座をオープン化することで理系分野を目指す高校生の進路選択に寄与したいと考えています。

――「キャリアデザイン講座」についてはいかがですか。

本学への入学を予定する高校生に対し、大学に進学する目的や目指す将来像といったキャリアデザインを大きく描いてもらうことを狙った講座です。すでに2021年入学者から始めている取り組みで、受講者の反応も良好です。

大きく4つのプログラムがあるのですが、先輩学生が大学入学後の成長過程をプレゼンする「ステークホルダー交流会」の聴講や、KITの充実した施設の活用方法や実際の活動経験について聞ける「先輩との座談会、施設紹介」では、先輩学生の体験談から自らの成長過程をイメージしてもらうことを狙っています。「キャリアデザイン講座、専門紹介」では、高校の探求学習を通してやりたいことや社会貢献への思いを明確にして入学してくる学生に対し、その課題解決に向けて、さまざまなアプローチが取りうることを理解してもらうことを目指します。

たとえば、SDGsについて学び、海洋ゴミの問題を解決したいという思いを抱いた学生がいるとします。その問題に対するアプローチとしては、機械を使ってゴミを回収する、バイオ系を学んで自然に還していくなど、多様な選択肢が考えられます。具体的なアプローチを知ることで、夢や目標を膨らませてほしいと思っています。

これら3つに組み合わせるのが、リメディアル教育に関連した「基礎学力解説講座」です。高校の復習をなるべく入学前に済ませることで、1年次から学生個々人がやりたい活動に取り組めるようになります。

※2020年2月~3月実施のキャリアデザイン講座

第1回ガイダンス
第2回先輩との座談会
第3回在学中キャリアデザイン
第4回解説講座

――学生がスムーズに大学教育へ入っていけるよう、強く意識された取り組みばかりですね。

高大接続は、大学でどのように学び、それを社会につなげていくかを見通したものでないと全く意味がないと考えています。高校生と大学生をつなげる時には1年生が非常に重要で、勝負の一年となります。アパート暮らしを始めるなど生活が一変する入学直後のタイミングで、目標に向かっていく生活リズムを作ることが大切です。大学に入ってから準備を始め、2年生になって一度できた生活リズムを直すのは非常に難しいことだからです。

つまり、入学教育は入学後の生活にどうつなげていくのかが大切なのであって、単に入試改革を行い、大学の授業を高校生に提供するだけでは、本当に意味のある高大接続にはつながらないと強く感じています。

――将来的には入学教育で受講した科目について、入学後に単位認定する方向で検討を進めているそうですね。

ゆくゆくは1年次をクオーター化して7週1単位の科目で構成し、それらの科目を入学教育として高校生も受講できるようにすることが理想と考えています。導入的な内容だけでなく、実際の大学の授業に触れられるようにするとともに、入学後の単位として認定できればということです。今の2単位科目を1単位2科目分に分割することで、1つの授業が半分の期間で終わるようになり、もし単位を落としてしまったとしても早期に再履修してやり直しができる環境となります。入学直後で学びへのモチベーションや耐性が身についていない1年生にとっても基礎的能力をしっかり身につけられ、メリットは大きいと考えています。

高校生が学校行事や受験勉強と並行して15コマの授業を受けるのは難しいと思いますが、7コマであれば夏休みや土日を活用することで実現できるでしょう。そして入学教育を単位認定できれば、1年次の空き時間が増えます。研究室の活動に参加する、留学に向けた英語の勉強をする、多くの工作機械が揃う夢考房でものづくり活動に取り組むなど、一人ひとりの希望に沿って時間を有効活用してほしいですし、そのための環境整備も進めたいと考えています。

――「直前集中講座」についてはいかがですか。

本学の入学を決めた人に向けて、e-シラバスや学内プリンター、図書館の利用方法など、本学独自のWEB上での処理の仕方を先取りして学んでもらうものです。数時間かけて入学後に教えている科目の中で、事前に受講した人を中心にクラスの中で教え合いをしてもらうことで、友人関係を深めるツールとして機能させていく狙いもあります。

――最後に、高校生に向けてメッセージをお願いします。

本学の一番の理念は、学生一人ひとりのニーズに合った教育を展開していくことです。目標を持った人には、それぞれの道を歩んでいくために今の自分より少し高いレベルの刺激を与えていくシステムがあります。授業についていくのに努力が必要な人に対しても、目的や社会貢献の思いを持って卒業してもらえるように、教職員が一丸となって後押ししていきます。

これからは偏差値や理系・文系といった枠ではなく、高校の探求学習を通じて明確化された「こんな形で社会貢献をしたい」という目標に沿って大学や学部を選ぶようになります。その目標に対するアプローチの方法はさまざまですから、高校生のうちはできるだけ広い視野を身につけることを意識してください。スマホやゲームでもいいので、それがどう成り立っているのかを分解して、どのような技術が必要とされるのかを考えてみる姿勢を大切に、多くのことに興味を持ってほしいと思います。

高校生対象「KIT授業体験」の参加者を募集中

KITの授業が体験できる集中講義を、8月1日からオンラインで実施します。1年次に開講される授業や、各学科の専門基礎となる授業の体験講座などを受講できます。大学での学び、専門の学びに先んじて触れてみるチャンスです。開講科目一覧や参加方法の詳細は「KIT入学教育」のウェブページでご確認ください。

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