Society 5.0をけん引するビジネスパーソンを育成-関西学院大学商学部

Society 5.0をけん引するビジネスパーソンを育成-関西学院大学商学部

デジタル教育とグローバル教育をカギに、新たな時代が求める「真に創造的な能力」を養う

岡田太志 商学部長

IoTであらゆるモノや情報、そして人がつながり、知識や情報が共有されることで新たな価値を生み出していく「Society 5.0」。来たるべき時代は、図らずともコロナ禍によって、「すでに到来した」と言えるかもしれない。時代が変わり社会が変わるとき、大学教育も変化を求められる。多くの大学が改革に取り組むなかで、フロントランナーとも言えるのが関西学院大学だ。同学は、次世代のテクノロジーについて体系的に学ぶ「AI活用人材育成プログラム」をいち早く開発・導入した。また、2021年4月には理系4学部を神戸三田キャンパスに新設。学部の枠を越えるボーダーレスな研究・教育で、イノベーションの創出に挑んでいる。立ち止まることなく次の時代を見据えた改革を推し進める同学に迫る、シリーズ「躍動する関西学院大学」。第1回の今回は、2022年4月に大規模な教育改革をする商学部について、岡田太志学部長に話をうかがった。

―関西学院大学商学部の特色をお教えください。

1889年に創立した関西学院のなかでも商学部は非常に歴史のある学部で、ルーツは1912年開設の高等学部商科にまでさかのぼります。本学のスクールモットーである「Mastery for Service(奉仕のための練達)」は、商学部と非常にゆかりが深いです。初代の高等学部長で、後の第4代院長であるベーツ先生の提唱したこの言葉は、高等学部商科の学生が1915年に創刊した『商光』という学生雑誌の創刊号に「講演論説」というかたちで掲載されました。商学部では早くからスクールモットーを体現する人材を育成し、世界市民として社会へ送り出していたと言えるでしょう。

商学部は、「真に創造的な能力を有するビジネスパーソンの育成(Fostering Creative Minds for Business)」を教育理念として掲げています。学部の開設以来、社会やビジネス環境は幾度となく変化しましたが、この理念は普遍的なものです。また、理念の実現のために、理論と実践を有機的に関連付けた教育を行うという点も、変わることのない本学部の伝統です。そのうえで、これからの社会において強く求められる「真に創造的な能力」とは、問題の本質を見つめ、主体的に行動する力だと私たちは考えます。商学部における各種の改革は、これらの力を培うためのものだと言えるでしょう。

学びの面では、1・2年次に基礎科目を体系的に学び、土台を固めた後に3年次から6つのコースで専門性を深められることが特色です。このカリキュラム設定・コース設定により、スペシャリストとしての意思決定能力や分析能力、そして専門分野への深い理解を養っています。このほかに、後述するように「デジタル」「グローバル」「ゼミ」といった教育の特色があります。

―目まぐるしく変化する現代社会において、いま、関西学院大学商学部が育成を目指す人材像を教えてください。また、その育成のために取り組む教育改革について教えてください。

前述のとおり、「真に創造的な能力を有するビジネスパーソンの育成」という教育理念は変わりません。また、「問題の本質を理解する」「主体的に行動する」という力を備えた人材を育成することも変わりません。そのうえで、次の時代を見つめたときに欠かすことができない要素となるのが、「デジタル」と「グローバル」です。そこで私たちは、育成する人材像として「デジタル×ビジネスパーソン」「グローバル×ビジネスパーソン」という2つのキーワードを掲げています。これらの人材はSociety 5.0をけん引する人材であり、本学の超長期ビジョン「Kwansei Grand Challenge 2039」に掲げられたコンピテンシーにも通じる人材像です。

教育改革にあたっては、「3つの方針・5つの施策」を設けました。3つの方針は、世界で最も成功しているスタートアップ養成所と言われるシリコンバレーのアクセラレーター「Yコンビネーター」を参考にしながら設定しました。

第1の施策である「2年次を中心とした充実した学習環境の提供」では、具体的にはPBL(課題解決型学習)を拡充していきます。商学部では従来から、企業や地域社会、行政機関と連携した多彩なPBLが展開されており、「PBLが商学部の魅力」との声が寄せられるほどでした。その背景には、多くの卒業生がビジネスの第一線で活躍していることと、その卒業生たちが「後輩の役に立ちたい」という思いを受け継ぎ、PBLに協力してくださるという伝統があります。現時点でもさまざまなプログラムが展開されているPBLですが、今後はさらに質・量ともに大幅に充実させていきます。すでに「ビジネス&SDGs:ケーススタディ・プロジェクト」「公認会計士・税理士実務業務詳解およびケーススタディ・プロジェクト」など新たなPBLも始まっており、課題解決力や企画提案力などを養う格好の舞台となっています。1年次から基礎科目を体系的に学ぶことは、2年次以降のこれらのPBLでの学びをより効果的にするという狙いもあります。

2つ目の施策である「AI活用人材育成プログラム」は1年次の基幹科目に位置づけられています。同プログラムは、AIを使ってビジネス課題の解決を図ろうという人や、そういった人に対してソリューションを提供するビジネスに従事する人を育成します。それらの人材はSociety 5.0において大きな期待が集まる人材であり、まさに本学部が育成を目指す「デジタル×ビジネスパーソン」を象徴する存在です。同プログラムは2021年度からオンラインで全学生が履修できるようになっており、学びの内容と方法の両面から、非常に先駆的なものとして学内外から注目を集めています。

3つ目の施策である海外大学とのCOIL/VEの充実とはすなわち、オンライン留学の充実です。特にCOILでは、単なるオンライン授業とは違い、海外の学生と交流や協働ができる機会が豊富に設けられています。この経験を通して、クリティカルシンキングやコミュニケーション能力など、「21世紀型スキル」と呼ばれる力を養うことができます。今後はPBLのなかにCOILを組み込んでいき、海外の学生と協働しながら課題解決を目指すという場の提供も予定しています。また、商学部生だけを対象にした、短期のビジネス留学プログラムも設けています。

ゼミ活動でのPBL
ビジネス&SDGs:ケーススタディ・プロジェクト

――関西学院大学商学部の魅力をお教えください。

ゼミ活動が活発なところです。商学部では、企業と連携して商品開発に取り組むゼミや、学外でのビジネスプランコンテストに参加して好成績を収めるゼミなど、特色ある活動を行っているゼミがたくさんあります。先ほどお話したPBLが、さらに実践的な形ですでに行われているのです。また、ゼミではOB・OGとの交流も活発です。おかげで現役生は、社会のリアルな姿を身近に触れて感じ取ることができます。

商学部には「傘下団体(※)」といって、学部公認の学生団体による学びの場があります。ここでは、公認会計士試験合格のための勉強などのように、先輩から後輩へと綿々と知識やノウハウが受け継がれています。傘下団体での活動は、先輩と後輩がともに刺激し合いながら成長し、後輩をはじめとして仲間のために行動するという伝統の土台になっています。
※商学部傘下団体:国際ビジネスコミュニケーション研究会・学生経営研究会・会計研究会・広告研究会・証券研究会

「情報科学」を本格的に学べることも商学部の魅力です。データサイエンスやデータエンジニアリングなど、いわゆる情報科学系の学びはそれ自体で単独の学部になっていることが多いです。対する本学部では、商学部にいながらにして体系的で高いレベルの「情報科学」を学べます。ビジネスと情報科学をバランス良く学び、デジタルテクノロジーを活用しながらビジネス分野で活躍したいという人にはぴったりでしょう。また、データサイエンティストなど、情報分野でスペシャリストを目指すこともできます。「文系だけど情報分野を深く学びたい」「ビジネスと情報科学の両方をしっかりと学びたい」という希望に応えられるのが、本学部です。

―最後に、受験生へメッセージをお願いします。

今後、「高い専門性」を備えた人材への期待はますます高まるでしょう。それと同時に、しっかりとした「価値観」が不可欠になると私たちは考えています。

価値観とは、物事の判断基準であり、考えるときの土台です。どんなに深い専門知識を持っていても、ITをはじめとした高い専門スキルを備えていたとしても、それらを適切に使いこなして社会に貢献していくためには、価値観が重要になるのです。

本学では、専門性と同時に価値観も養うことができると自負しています。例えば本学の教育の根幹には、マックス・ヴェーバーが「資本主義の精神につながっている」と指摘したプロテスタンティズムの倫理にもとづくキリスト教主義教育があります。多様な背景をもった学生や教員との出会いや、多彩な教育プログラムもまた、みなさんの価値観を育んでくれるはずです。私たちは、みなさんが知識や技術だけでなく豊かな人間性を備え、真に社会に貢献できる人材へと成長することを全力でサポートします。どうぞご期待ください。

PBL参加学生インタビュー

リアルな仕事と熱い思いに触れ、税理士を目指すことを決意

「公認会計士・税理士実務業務詳解およびケーススタディ・プロジェクト」に参加
井上雅恵さん | 会計コース 3年

2年生の夏にプロジェクトに参加しました。授業では、経営不振のお店を題材にして業績回復の手法を考えたり、財務諸表に隠されたミスを見つけ出したりと、実際に会計士・税理士が行っている業務を体験。大学の授業で学んでいた知識が、実務と結びついていることを実感できました。

講師を務めてくれた実務家の方々からは、「税理士は街のクリニックのように、企業を支える身近で心強い存在」と教えてもらいました。いま、コロナ禍で飲食店をはじめたくさんのお店や会社が苦しい状況にあります。身につけた会計の知識でそういった事業者さんの力になりたいと思うようになり、税理士を目指すことを決めました。実は以前から資格を目指したい気持ちはあったのですが、勉強が大変そうで一歩を踏み出せずにいました。それが、講師の方々が語る仕事への思いに触れ、迷いがなくなりました。2年の秋から勉強を始め、今年から試験にチャレンジしていきます。

現在、国際ビジネスコースのゼミに所属しています。コースの枠を越えて学べることが、関西学院大学のいいところです。事前に資料を読み込んでクラス内で議論を深めるゼミを通して、本質を見極める力を養えているように思います。これまでに留学には2回チャレンジし、イタリアでは「英語でビジネスを学ぶ」というプログラムに参加しました。ゼミや留学など、選択肢が豊富なのが関西学院大学です。「使わないなんてもったいない!」という気持ちで、これからもいろんなチャンスに飛び込んでいきます。

SDGsの課題を実感。日頃の生活や学びへの意識が変わるきっかけに

「ビジネス&SDGs:ケーススタディ・プロジェクト」に参加
坂井瑞希さん | 2年

高校時代に模擬国連に参加し、ジェンダー平等について議論したことがあります。参加国はそれぞれに思惑や事情があり、政治の力だけで問題を解決するのは難しいことを知りました。また、ビジネスを通して、お金を回しながら課題解決を図るというアプローチがあることも学びました。このことがきっかけで企業活動や運営を学びたいと思うようになり、商学部を志望しました。

プロジェクトに参加したのは、SDGsに対して、「本当にちゃんと理解しているのだろうか」という疑問があったからです。印象的だったのは、カードゲームを通してSDGsの各テーマを体感したこと。経済成長というテーマはゲーム内でもクリアしやすいのですが、環境問題はなかなかクリアできないのです。なぜなら、お金や時間がかかる割には成果が上がりにくいから。ゲームで苦戦することで、「これと同じことが世界で起こっているんだ」と実感することができました。そのうえで環境問題への取り組みを学んだので、これまで以上に深く理解することができました。

プロジェクトに参加して以降、食糧問題やゴミ問題が以前よりも気になるようになりました。知らないことがたくさんあって、「もっと学びたい」という気持ちでいっぱいです。ボランティア活動にも興味があり、特に子ども食堂の運営に携わってみたいです。気づきや成長のきっかけが豊富で、「何かしたい」と思ったときにその実現をサポートする体制が整っていることが、関西学院大学の魅力です。

商学部を目指すあなたへ

商学部を見極めるポイントは? 高校時代にどんなことをしておくべき?
これらの質問に、岡田学部長にお答えいただきました。

Q.どの大学の商学部を選ぶべきか、見極めるポイントはありますか?

教員の研究業績、学会での活動状況や社会活動を見るといいでしょう。マーケティングや会計、経営、ファイナンス、ビジネス情報、国際ビジネス等の分野で教員はそれぞれに専門を持っていて、専門分野にはそれぞれの学会があります。それらの学会のホームページなどを見てみて、活動や学会内での評価を調べてみるといいでしょう。研究業績については、論文発表が指標になります。評価と信頼を得ている雑誌に掲載された論文の数などが、研究業績のバロメーターになります。

とはいえ、これらの調べ方は少し難しいかもしれません。そこで見ていただきたいのが、大学のホームページなどに掲載された教員紹介です。研究テーマや業績はもちろんのこと、研究の中身が噛み砕いて紹介されていたり、ゼミ活動の内容が紹介されていることもあります。そのなかにはきっと、「おもしろそう!」というものがあるはずです。紹介を見比べて、「この先生に習いたい」「このゼミに入りたい」という視点で選んではいかがでしょうか。ちなみに、教員の顔ぶれという点では本学は非常に充実していると自負しています。特に、ビジネス情報、マーケティングや会計分野の一線級の教員陣が商学部に多数在籍しているというのは、本学ならではだと言えます。

学部の規模と教育体制も役に立つ視点です。小規模な学部は、教員との距離が近くてきめ細かい指導をしてもらいやすいというメリットがあります。一方で、人数も少ないため研究テーマが限られていたり、出会える学生の数も限定的というデメリットもあります。大規模な学部はこれの逆で、教員数が多い分、研究テーマも多種多様になります。また、学生数も多いので、さまざまな経験や考え方を持った学生と出会うことができます。多様性や刺激という点が大規模学部のメリットです。

本学部は1学年の学生数が約700人という大規模学部です。教員も学生も個性豊かで、多様性に富んだ学びの環境です。一方でデメリットになりがちなきめ細かな指導という点では、ゼミ活動が懸念を払拭してくれています。教員と学生が一体となって実践的に学ぶ本学部のゼミ活動では、学生一人ひとりの興味や目標、得意・不得意に応じて教員がきめ細かく指導を行っています。大規模学部ならではの強みを持ち、なおかつ少人数制の丁寧な教育環境を備えているのが、関西学院大学商学部だと言えます。

Q.高校時代に、どんなことをしておくと商学部での学びに役立ちますか?

みなさんは日頃の生活を送るなかで、「なぜ?」「どうして?」「本当に?」という素朴な疑問や違和感を持つことがありませんか?それは「問題意識」と呼べるものでもあります。そういった感覚や気づきはとても大切な宝物です。なぜなら、問題意識こそが課題解決の出発点だからです。社会では課題を解決する力を持った人に期待が集まっていますが、そもそも、課題を解決するためには価値ある課題を発見しないと何も始まりません。みなさんの問題意識が、やがて課題を解決する力につながっていくはずです。

また、「何に課題を感じるか」は、個性の源でもあります。自分らしい仕事、自分らしい生き方は、いま、みなさんが感じている「なぜ?」から始まっているのです。

素朴な疑問や違和感を持つと、「自分がおかしいのかな?」と、不安に感じることがあるかもしれません。周囲に伝えても理解してもらえず、孤独になることもあるでしょう。しかし、みなさんはかけがえのない宝物を手にしているのです。ぜひ、その気持ちを大切にして、大学へ進んでください。あなたの問題意識を聞かせてください。一緒に学び、解決策を考えていきましょう。

岡田学部長のおすすめ書籍

大学への進学を考えるにあたって、読んでみてほしい本を岡田学部長に教えてもらいました。

知の体力
永田和宏
(新潮新書)

細胞生物学者であり日本を代表する歌人の著者が、本物の「知」を鍛錬する方法を伝えてくれる一冊。高校までの学びと、大学での学びの違いを知ることができる。この本を通して、大学生や社会人としての意識や姿勢を感じ取ることができる。

生きる意味
上田紀行
(岩波新書)

わが国にとって、経済的不況よりもはるかに深刻な問題は、「生きる意味の不況」だと指摘する著者。本当に欲しいものがわからないという苦しみがどこからやって来るのか。そんななかでいま、何をすることで未来へ進むことができるのか。さまざまな提言に触れることができる。

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