コロナ禍に見舞われた大学生の就活戦線 各大学の実就職率は下降傾向

コロナ禍に見舞われた大学生の就活戦線 各大学の実就職率は下降傾向

コロナ禍に見舞われた大学生の就活戦線

2021年3月卒の大学生はコロナ禍での就活を余儀なくされた。それでも、求人倍率が極端に下がったわけではなく、就職氷河期の再来というわけではなさそうだ。そうした状況下で各大学の実就職率はどのように変わったのか。卒業生の規模別にランキングを見ていこう。

唐突にコロナ禍の就活環境に投げ出された21年卒の大学生。リクルートワークス研究所が発表した21年卒の求人倍率は、20年卒を3ポイント下回る1.53倍となったが、00年の就職氷河期の0.99倍に比べれば求人は底堅く、多くの識者は「就職氷河期の再来ではない」と口をそろえる。それでも、進路未決定者が増えて民間企業の就職者が減り、公務員が増えるといった影響が見られた。

実就職率に注目すると、右肩上がりが続いてきた大学の平均実就職率は85.4%となり前年を3.3ポイント下回っている。個別の大学の実就職率も前年を下回っている大学が大半だ。こうした背景には、求人倍率の低下とともに、採用の長期化、オンラインによる就職活動などの逆風にさらされたこともある。

コロナ禍でも就職に強かった工科系大学

卒業生の規模別に大学の実就職率を見ていこう。「卒業生数500人以上、1000人未満」は、1位が大和大で、以下ベスト10は、藤田医科大、聖徳大、岐阜聖徳大、福岡工業大、東京薬科大、畿央大、ノートルダム清心女子大、金沢学院大、名古屋市立大となった。一般的な大学に加え、医科系や工科系、薬科系大学が入り、バラエティに富んだ大学によるランキングとなった。

次に、「卒業生数1000人以上、3000人未満」の大学を見ると、1位は金沢工業大だった。同大は、卒業生の上限を決めない、卒業生1000人以上の大学の中で、5年連続でトップとなっている。実就職率が高いだけではなく就職先に関する実績も高く、上場企業と大手企業(資本金3億円以上または従業員300人以上の企業)の就職者は、卒業生の64%に上る。

この規模の大学では、愛知工業大(2位)、大阪工業大(4位)、名古屋工業大(5位)、芝浦工業大(8位)、広島工業大(9位)といった工科系大学がベスト10に入り、コロナ禍でも就職の強さを証明した。製造業の求人が多いことに加え、研究や論文執筆などを通して「前に踏み出す力、考え抜く力、チームで働く力」といった、社会人基礎力が身につくことも高い実就職率を支える要因となっている。

総合大学では福井大(3位)と宮崎大(7位)がベスト10に入った。福井大は、卒業者数1000人以上かつ複数の学部を持つ国立大の中で13年連続のトップ。就職に強い工、教育、医の3学部の定員が多いことが、高い就職率の背景にある。

学生の進路が多様な大規模総合大学は実就職率が抑えられる

「卒業生数3000人以上」は、名城大が1位となり、以下、トップ10には、東京理科大、関西学院大、東京工業大、龍谷大、新潟大、岡山大、近畿大、中央大、名古屋大が入った。この中で、関西学院大は、さらに規模が大きい卒業生数5000人以上の大学で、昨年に引き続きトップとなっている。

この規模で実就職率が90%を超えるのは2大学のみで、他のカテゴリーより少ない。この要因として、大規模総合大学、特に難関大ほど学生の進路が多様なことが挙げられる。当ランキングは、起業や国内外の大学の学部への進学、難関資格試験準備などは進路決定者に算入されない。そのため、多様な進路を選択する学生が多い大学の実就職率が抑えられる傾向にある。

21年卒の就活では、大半の大学が実就職率を下げた。21年卒と同程度の求人倍率が見込まれる22年卒の就活で、実就職率を上げるのはどの大学なのか注目したい。

表の見方
表は各大学発表による2021年春の就職状況。医科・歯科の単科大などを除く全国738大学に調査し、回答のあった572大学のデータをもとにランキングを作成した。
実就職率(%)は、就職者数÷〔卒業生(修了者)数-大学院進学者数〕×100で算出。
同率で順位が異なるのは、小数点2桁以下の差による。
設置の※印は国立、◎印は私立、無印は公立。
大学名横の*印はデータに大学院修了者を含んでいることを表す。
大学により、一部の学部・研究科を含まない場合がある。
エリア別の実就職率ランキングは、卒業生数300人未満の大学を除いた。
国際医療福祉大は2021年4月より福岡国際医療福祉大学に移管した福岡看護学部を含む。

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