大学生の売り手市場が継続 前年並みの高い水準を維持した実就職率

大学生の売り手市場が継続 前年並みの高い水準を維持した実就職率

大学生の売り手市場を背景に、2020年3月卒の実就職率も高かった。しかし、前年と比較して伸びているわけではない。今後、新型コロナウイルス禍の影響次第では、実就職率が横ばいもしくは下がる可能性もある。そうした時代が到来する前の就職ランキングを見ておこう。

前年並みの高い水準を維持した実就職率

近年の傾向を踏襲して、2020年卒の大学生の求人倍率も高止まり。リクルートワークス研究所調べの求人倍率は、19年卒を僅かに0.05ポイント下回る1.83倍。相変わらず大学生の売り手市場が続いており、リクルートキャリア就職みらい研究所が発表している「就職白書2020」によると、一般企業に内定した学生の内、52.8%が第一志望群の企業だった。

こうした状況を背景に実就職率は高い。大学通信が医学部と歯学部の単科大学を除く全大学を対象に行っている就職状況調査によると、20年3月卒の大学生の平均実就職率は、88.8%(9月23日現在)。しかし、実就職率は高いが、前年並みで伸びてはいない。求人倍率の高さに加え、採用予定数に満たない場合は、採用基準を緩める企業が増えているといわれ、大学生にとって好ましい就活環境が続いているにも関わらず、である。平均実就職率は右肩上がりを続けてきたが、上限に達しつつあるのかもしれない。

規模別に大学の実就職率を見ていこう。「卒業生数500人以上1000人未満」の1位は福岡工業大。県外で就活を行う学生に交通費や宿泊費の一部を負担するなど、手厚い就職支援が要因となっている。2位以下は、東京薬科大、北海道文教大、聖徳大、愛知県立大、ノートルダム清心女子大、東北工業大、日本工業大などとなり、工科系や薬学系、女子大とバラエティに富んだランキングとなった。

工科系大学の実就職率が高くなる傾向に

次に「卒業生数1000人以上3000人未満」のランキングに注目すると、1位は金沢工業大。卒業生の上限を決めない卒業生数1000人以上の大学で4年連続のトップだ。その要因として、大学通信調べの「面倒見のいい大学」で10年以上トップを続けている面倒見の良さに加え、教育の中心に据える「プロジェクトデザイン教育」により実社会で求められている能力が身につくことが挙げられる。

この規模の大学では大阪工業大(2位)、愛知工業大(4位)、名古屋工業大(7位)、千葉工業大(8位)、電気通信大(9位)といった工科系大学がベスト10に入り、この工科系の就職の強さが際立つ。研究などを通して「前に踏み出す力、考え抜く力、チームで働く力」といった、社会人基礎力が身につくことが就職力に結びついている。さらに、情報技術がどの業界でも不可欠となり、数学的な思考力を備えた理系人材が求められていることも要因として挙げられよう。

多様な学生がいる総合大学は実就職率が上がりにくい

「卒業生3000人以上」の大学は、1位の東京理科大以下トップ10は、名城大、関西学院大、新潟大、法政大、龍谷大、近畿大、中京大、青山学院大、関西大の順になった。ランキング全体を通し知名度が高い総合大学が多く並んでいることが分かる。ちなみに、さらに大規模な卒業生5000人以上の大学でランキングすると、関西学院大がトップだ。

ランキングを概観してみよう。上位の大学の実就職率は、他のカテゴリーより低い傾向にある。実就職率は、就職支援が行き届きやすい規模が小さな大学ほど有利ということもあるが、それだけではない。加えて、大規模総合大学ほど、学生の進路が多様なことが挙げられる。当ランキングは、起業や他のキャリアを求めての大学進学、難関資格試験準備など、一般企業や公務員、大学院進学以外の進路を選択する学生の実績が反映されにくくなっている。そのため、多様な進路を選択する学生が多い大学の実就職率が低めに抑えられる傾向にあるのだ。

大学生の好調な就職状況の背景には、有効な就職支援体制とともに、大学生の売り手市場という環境要因もあった。今後、新型コロナウイルスの影響で業績が悪化する企業が増え、就活環境が悪化した時、各大学の実就職率はどのように変化するのか。その時、大学の就職支援体制の真の実力が見えてくるのではないか。

大学規模別実就職率ランキング

●表の見方
表は各大学発表による2020年春の就職状況。
医科・歯科の単科大などを除く全国735大学に調査し、回答のあった550大学のデータをもとにランキングを作成した。
実就職率(%)は、就職者数÷〔卒業(修了)者数-大学院進学者数〕×100で算出。
同率で順位が異なるのは、小数点2桁以下の差による。
設置の※印は国立、◎印は私立、無印は公立。
大学名横の*印はデータに大学院修了者を含んでいることを表す。
大学により、一部の学部・研究科を含まない場合がある。
エリア別の実就職率ランキングは、卒業者数300人未満の大学を除いた。

エリア別実就職ランキング

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