小・中学校の教員就職者数比較で分かる教育学部の実力

小・中学校の教員就職者数比較で分かる教育学部の実力

教員免許は大半の学部で取得可能だ。しかし、教員として様々な資質を身に着けるには、教育学を専門に学ぶ教育学部に一日の長がある。教育学部に進学するメリットについて、教員養成に強い大学ランキングと併せて見ていこう。

学部一丸となって教員を目指す教育学部の強み

小中学校はもちろん、高等学校も含め、本気で教員を目指そうとするなら、教育学部への進学を視野に入れたい。教職に関する多数の科目を履修し、さらに実習を行い、そして教員採用試験に向けて頑張り続けるには、学部生全員が同じ目標に向かって切磋琢磨し、ときには互いに学びあい、高めあうことも大事だからだ。

このような環境を教育学部以外に求めることは難しい。一般企業をめざす学生と一緒にいれば、勉強が苦しいときに流されてしまうかもしれない。現行の大学生の就職活動は、4年生の6月に選考が始まり、すぐに結果が出る。今後、就活の長期化も考えられるが、選考時期が遅くなることは考えにくい。

教員採用試験対策が佳境に入った時期に、同級生が一般企業の内定を得れば、気持ちが揺らぐかもしれない。大学生の売り手市場が続く現在の就職環境が続くとしたらなおさらだ。

教育学部の強みとして、複数の校種の教員免許が取得できることもある。近年、小中一貫教育や中高一貫教育など、複数の校種をまたぐ学校の設置が進み、複数の教員免許を持つことの優位性は増すばかり。その点、千葉大や山梨大など近年の教育学部の多くが複数免許の取得に対応しているので安心できる。

ただ、複数免許を取得するためのカリキュラムは、事前によく検証しておくべきだ。教員になるためのカリキュラムは負担が大きいのに、さらに過度な負荷がかかるのは考えもの。複数の免許を取得できるかだけではなく、無理なく取得できるのかも確認しておきたい点だ。

そうした視点から注目されるのは、岐阜聖徳学園大・教育学部。独自の教育システムにより、小学校教員免許に加え、中学校、高校、幼稚園教諭の免許が無理なく取得できる。小中一貫教育を見据え、初等教育と中等教育を統合して学べるカリキュラムも設置している。また、文教大・教育学部の学校教育課程では、専門教科の学習指導の基礎となる知識・技能の習得と、小学校から高等学校までの学習体系の理解の上で、「小・中・高の学びのつなぎ」のスペシャリストを目指すとしている。

教員免許を取得するだけなら、大半の大学に教職課程があるので、教育学部への進学にこだわる必要はない。ただ、一般企業のように研修制度はなく、社会に出ると同時に1人立ちしなければならないのが教員という仕事なので、即戦力としての資質を伸ばしてくれることも重要なポイントとなる。そういった点においても教育学部は一日の長がある。

前出の文教大や岐阜聖徳学園大は、教育実習以外の教育現場体験を重視する大学として知られる。着任と同時にクラスを任されることもある教員になる上で、学生時代に十分な経験が積めることは貴重だ。教育現場体験を重視する大学には、愛媛大や信州大、島根大、玉川大、明星大、早稲田大、桃山学院教育大などがあり、多くの教育学部で行われている。

教育学部の実力を示す教員就職実績

教育学部の取り組みの成果である大学別の教員就職実績について、20年3月卒の学生の小学校と中学校の教員就職者数ランキングから見ていこう。ランキングは教育学部以外の学部からの就職者を含むが、両ランキングともに上位は教育学部を持つ大学が大半であり、各大学の教育学部の実力と見て差し支えないだろう。

まず、小学校の教員就職者数ランキングを見ると、1位は就職者304人の福岡教育大。前年の就職者数を85人上回り、5位からジャンプアップした。中学校教員のランキングでも、8位に入っている。ベスト3は教育学部を持つ国立大が並び、2位に北海道教育大、3位に大阪教育大が入った。 

私立大も数多くの大学がランキング上位に入っており、国立大と拮抗している。ランキングのトップ3は国立大に譲るが、4位の文教大と6位の岐阜聖徳学園大の2大学は就職者が200人を超え、卒業生が400人に満たない学部規模にもかかわらず、学部定員が多い国立大と伍している。100人以上の小学校教員を輩出している私立大には、玉川大(7位)、明星大(8位)、白鷗大(11位)、中村学園大(13位)、秀明大(15位)、武庫川女子大(16位)などがある。

中学校教員就職者数ランキングも国立大と私立大が拮抗しており、ベスト10の内、私立大は1位が日本大、2位が文教大とトップ2を占め、日本体育大(5位)、東海大(6位)、秀明大(10位)もランクインしている。国立大は北海道教育大(3位)、大阪教育大(4位)、信州大(7位)、福岡教育大(8位)、広島大(9位)が入った。国立大は前年の6大学から5大学に減少している。

教員になるには、学校種を問わず教育学部に進学することが理想的。しかし、近年は私立大で新設が進み、教育学部は数多くの大学で設置されるようになった。

この中から志望校を選択するには、免許の取得状況や実習環境などに加え、教員就職者数もポイントになる。様々な指標を総合して、生徒を教員という目標に強く導いてくれる大学を選びたい。

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